ドメスティックバイオレンス(DV)・暴行の様々な形態と刑事弁護

暴行

ドメスティックバイオレンス(DV)の様々な形態と刑事弁護

1.ドメスティックバイオレンス(DV)(暴行)の様々な実態

暴行としてのDVには様々なケースがあります。日常的に夫が妻に暴言や暴行を働いていており、時に傷害を与えて体中があざだらけとなるなどの特徴のあるケースが通常かと思いますが、些細な夫婦喧嘩の流れの中で夫がついちょっと手を出してしまい、妻が懲らしめようなどと思いとりあえず110通報したり、交番に出向いて被害を申告したりした結果、想定外に夫が逮捕されてしまうこともあります。

今回は、実際にどのようなDVの相談があるのか、具体例を挙げながらDVの刑事弁護方法について解説をします。

2.DVで警察に通報したら原則逮捕される?

警察は110通報や交番に被害申告がありますと、DVは同じ住居で生活をともにしていており凶悪事件になる可能性もあることから、複数の警官が住居内に出向き、夫や妻から事情を聴いたうえで、裁判所から逮捕令状を発布してもらい夫をその場で令状逮捕するか、警察署に連行してから逮捕令状を執行して逮捕します(現行犯逮捕は通常できないため)。

警察は逮捕してから48時間以内に検察庁に身柄送検し、検察官が被疑者となった夫を取り調べて10日間の勾留を裁判所に請求するかどうか判断します。

DVは勾留請求せずに釈放すれば、DVの被害者である妻のいる自宅に戻ることになり、そこで凶悪事件が起こることも十分あり得ることから、検察官は通常裁判官に勾留請求し、裁判官は同じ理由から勾留決定します。

そうなると10日間警察の留置場で勾留されることになり、さらに勾留延長されると合計20日間勾留されることになります。

3.妻がとっさに通報してしまい夫が逮捕されるケースが多い

検察官、裁判官は、上記に述べたように、DVの事件で釈放してしまうと被疑者が自宅に戻って再び妻に暴力などを振るうことを懸念して、勾留とするのが通常です。

しかし、DVで警察に通報するケースの中にも、夫から軽微な暴力を振るわれて「被害者」となった妻が(通常ならばよくある夫婦喧嘩の範疇であっても)感情的になって警察に通報するケースもあります。

その場合には、夫が「加害者」として逮捕され、事態が重大になってしまったことに逆に驚いてしまうことも少なからずあります。夫が思わず逮捕されてどうしたらいいのか途方に暮れ、泉総合法律事務所に刑事弁護の依頼をされる方が結構の数でいらっしゃいます。

4.逮捕後の勾留で夫が会社解雇の危機!?

DVで逮捕されると、先ほど述べたように通常は逮捕に続いて10日間勾留されます。そうなると、会社勤めの夫は12、13日間、警察署の留置場で身柄拘束を受けることになります。

2、3日ならともかく12、13日間も欠勤しながら、会社に対して納得するような欠勤の理由を夫に代わって妻が伝えることは困難でしょう。そうなれば会社を解雇され、夫婦や子供の世帯の生活が成り立たない深刻な問題が発生することになります。

DVで夫が逮捕された場合で、「被害者」の妻が逮捕などを望んでおらず、そもそもDV、暴行とまでは言えないような場合には、10日間の勾留をさけ釈放してもらうよう、釈放実績、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することを強くお勧めします。

5.DV事件の釈放活動の具体事例

ここからは、最近依頼があったDVで逮捕された事件について、簡単な紹介と弁護内容の説明をさせていただきます。

5-1.夫婦間のちょっとした喧嘩から逮捕されてしまった

1件目は、夫婦間でちょっとしたいさかいがあり、暴行というよりたまたま腕が妻にあたった程度の案件でしたが、妻が交番に出向いて被害申告をしたところ逮捕されてしまったものです。

妻は110番通報ではなく交番に出向いただけなので逮捕までは予想していなかったのですが、思わぬ展開に驚いて泉総合法律事務所に刑事弁護を依頼されました。

翌日検察庁に身柄送検されることになっていましたので、当所では、検察官の勾留請求を阻止して釈放を実現する方針を取って、ただちに逮捕されている警察署に出向いて被疑者の夫に接見して具体的事情を聞き取り、翌日の検察官取り調べに対する対応の仕方などを助言し、同時に書類を作成しました。

それから事務所に戻って、釈放して自宅に戻っても凶悪事件はもとよりDVも起こる可能性はないことを示すため、具体的な事実に基づいた弁護士意見書を作成し、翌日検察官に提出したのです。

検察官からは妻に対して電話連絡して、弁護士意見書などの書類に記載の事情の確認を行い、釈放しても問題ないとの判断に立って釈放となりました。

5-2.警察に注意してもらおうと通報したら逮捕されてしまった

2件目も同様に、夫婦喧嘩の流れの中でたまたま夫が近くにあったナイフを手に持った(ナイフは妻には向けていません)のを見て妻が警察官から注意してもらおう、懲らしめてあげようと110番通報したものです。

かなりの数の警察官が自宅に訪れ、裁判所から逮捕状を発布してもらい令状逮捕となった事案です。

翌日妻が泉総合法律事務所に刑事弁護を依頼され、直ちに被疑者の夫に接見に出向き、事実関係の確認やその他検察官への対応の留意点などの指摘を行いました。ナイフを妻に向けていないものの、ナイフを手にしたことを検察官や裁判官が重大視して勾留決定となる可能性がありましたので、その点を念頭においた対策を織り込んだ弁護士意見書や、妻や妻の実父の上申書などを検察官に提出し、釈放するように働きかけました。

この結果、検察官から妻に事実関係の連絡を入れたうえで釈放となりました。仮に勾留となれば会社の解雇は確実であったケースでしたので、本当によかったと思ったものです。

5-3.日常的な夫婦喧嘩から交番へ駆け込んだら逮捕されてしまった

3件目は、夫婦喧嘩が日常的にあった中でたまたま夫が妻に暴力を振るってしまい、妻が交番に駆け込んだケースで、警察官が多数自宅に来て夫を令状逮捕した事案でした。交番に駆け込んだのが2度目でしたので、先の2つのケースとは異なり、さすがに10日間の勾留は避けられないと判断しました。

妻から刑事相談を受けたのが逮捕された3日目でしたが、相談中に裁判官が10日間の勾留を決定したとの連絡が入りました。妻は、夫婦喧嘩が絶えないものの離婚する考えは全くなく、暴力と言っても夫婦喧嘩の一環で妻にも行き過ぎた言動があったと述べ、夫が10日間の勾留となると解雇は必須でありそうなれば子供も含め家族が路頭に迷うことになるので、何とか10日間の勾留を阻止し、釈放しなければなりませんでした。

裁判官が勾留決定していますので、釈放には、準抗告といって3名の裁判官から構成される裁判所に勾留決定の取り消しを求める裁判を起こすしかありませんでした。

そこで、妻に裁判所から勾留の連絡があったその場で準抗告に必要な書類を作成してもらうとともに、今回の事件で準抗告を認容してもらえるポイントを重点的に主張した準抗告書を作成して、その日の夜に裁判所に提出しました。

準抗告の結果は翌日になるとのことでしたが、幸い準抗告認容、裁判官の勾留決定取消しの判断が出て夫は釈放となり、会社解雇を免れ幼い子を含む家族の生活も守られました。

DV-ドメスティックバイオレンスの事件では、些細な暴力が偶発的に起こった事案でも逮捕・勾留となるのが通常ですので、そのような場合には至急ドメスティックバイオレンスの刑事弁護経験、釈放実績豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することを強くお勧めします。

6.ドメスティックバイオレンス(DV)の関連法令

暴行罪 刑法208条

「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

傷害罪 刑法204条

「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

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