クレーム電話で逮捕・罰金・懲役!?威力業務妨害罪とは?

威力業務妨害

威力業務妨害

「注文して届いた商品が壊れていた」「頼んだサービスが期待したような水準でなかった」。このように購入した商品や頼んだサービスに不満があった場合にメーカーやサービス提供会社に電話で問い合わせをしたことがある方も少なくないかもしれません。

もちろん、問い合わせをすること自体は正当な権利と言えますが、度が過ぎると正当性が失われてしまい、場合によっては犯罪になってしまうこともあるのです。

今回は、よくある迷惑電話やクレーム電話が「威力業務妨害罪」になりうること、その条文や構成要件を、判例をもとに解説したいと思います。

1.威力業務妨害罪の条文・構成要件

・刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又は業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

・刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

刑法234条が威力業務妨害罪を定めた条文となり、法定刑は刑法233条より三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金と定められています。

この威力業務妨害罪ですが、以下の3つの構成要件から成り立つ犯罪となっています。

①「威力を用いて」
②「業務を」
③「妨害した」

この3つの構成要件を全て満たすことになると威力業務妨害罪が成立します。

もっとも、これだけでは抽象的なので、それぞれの構成要件を判例ではどの様に具体化しているのかをみてみます。

①「威力」とは

「威力」とは、「犯人の威勢、人数及び四囲の情勢から見て、被害者の自由意思を制圧するに足りる勢力」を言います(最判S28.1.30)。

②「業務」とは

「業務」とは、「具体的個々の現実に執行している業務だけでなく、広く被害者の当該業務における地位に鑑み、その任として遂行すべき業務」をも指しています(最判S28.1.30)。

③「妨害」とは

「妨害」とは、「業務の執行自体を妨げる場合に限らず、広く業務の経営を阻害する一切の行為」を指します(大判S8.4.12)。

以上が3つの構成要件に対する裁判所の判断ということになります。

2.迷惑電話・クレーム電話でも威力業務妨害罪となる可能性

上記の判例の基準からすると、暴行や脅迫をすれば威力業務妨害罪に該当してきますが、暴行や脅迫をしていない場合でも、被疑者の言動が当該状況下で被害者の自由意思を制圧する行為であれば「威力を用いて」に該当することになるわけです。

そのため、電話をかけるという方法であっても状況(電話の回数、通話内容、通話時間、威圧する言動の有無(大声で怒鳴る、暴言)等の総合判断)によっては「威力を用いて」という要素に該当することがあり得るわけです。

したがって、迷惑電話やクレーム電話についても、ケースによっては「威力を用いた」ことになり、それによって相手方の「業務」が「妨害」された場合には威力業務妨害罪が成立することがあり得ます。なお、クレーム電話をして、威力を超えて脅迫的言動をして返金を求めたり、損害賠償を求めたりすれば、威力業務妨害罪ではなく恐喝未遂罪が成立することもあります。

クレーム電話をしたい心情は十分分かりますが、一歩間違えれば犯罪行為になり、警察から任意で事情聴取を受けて刑事事件として立件され、検察庁に書類送検されて罰金刑や懲役刑を受けることになります。相手方の商品などに問題がある場合には、消費者センターなど公的機関に相談されることをお勧めします。

3.威力業務妨害罪に関する過去の判例(しつこいクレーム電話)

ここで、平成17年8月26日に札幌地裁で言い渡された判決を示しておきます。

事案は、鳥取県内に居住していた被告人が札幌市内の寺に対して約7ヶ月にわたって「教義が間違っている」等の3000回以上の迷惑電話を掛け続けたというものでした。

本件に対して裁判所は「嫌がらせ目的なのは明らか」と判断し、威力業務妨害罪の成立を認めています。

裁判所も「1日に何回以上なら威力業務妨害罪が成立する」「合計何回以上なら威力業務妨害罪が成立する」と回数だけで線引きしているわけではありません。

しかし、電話を掛ける回数が多ければ、相手方としてみればそれだけの回数電話の応対を強いられることとなり、負担がより大きくなり、業務に支障が生じる可能性が高くなるのも1つの事実でしょう。7ヶ月で3000回以上となると単純平均で見ると1日に14回を超える回数。電話の応対をする側の負担の大きさがはっきりと見て取れるケースと言えます。

また、動機も「教義が間違っている」ことにあると思われますが、その動機自体正当なものとは思われませんので、しつこい電話の回数とあわせて、いやがらせ目的と認定されて当然といえます。

威力業務妨害罪について、当所では長年の弁護活動でも刑事弁護経験がありませんが、罰金刑もあり犯罪の中では重い部類ではありません。通常ならば警察は任意捜査になり逮捕は少ないと思いますが、悪質執拗な威力業務妨害の場合には令状逮捕も十分ありえます。

令状逮捕の場合には逮捕で2日間警察の留置場に留置された後、警察から検察庁に身柄送検され、検察官の取り調べを受けてその結果裁判所に10日間の勾留請求をするかどうか決めます。令状逮捕は通常裁判所に勾留請求します。裁判官は勾留質問で被疑者にその言い分を聞いて勾留決定するかどうか決めます。

推測ですが、威力業務妨害をする被疑者はある意味確信犯の方が多いように思いますので、ご家族が逮捕されたら早急に弁護士に刑事弁護を依頼して、被疑事実が事実であれば被疑者を弁護士がつよく反省を促し、10日間の勾留を避ける活動をすることになります。

被疑者が反省をしていれば裁判官が勾留決定をしても3名の合議体からなる裁判所に準抗告をすることで裁判官の下した勾留決定が取り消され釈放されることも期待できます。反対に被疑者が反省していなければ10日間の勾留の可能性が高いと考えます。

4.まとめ

商品の欠陥や不具合が散見される今日、泣き寝入りすることなくメーカー等に問い合わせをすること自体は、1人の消費者の行動として決して間違っているものではありません。問題なのは「度が過ぎてしまうこと」です。そこでは、必ずしも回数だけということではなく、内容や話し方、電話を掛ける時間帯等も考えなければいけません。

正しい権利行使であっても節度を保った行動を心がけることが大切と言えるでしょう。一歩言動が行き過ぎると犯罪になる可能性があることを常に念頭において、何事も慎重に行動されることをお勧めします。

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