刑事事件弁護 [公開日]

刑事事件における没収とは何か

刑事事件における没収とは何か

【この記事を読んでわかる事】

  • 没収の目的は、刑事罰としての側面と、社会的保安の側面もある
  • 没収の要件は様々で、警察官に押収された物が必ず没収されてしまうわけではない
  • 警察の押収、没収で困っている方も弁護士のアドバイスを受けられる

 

警察官から職務質問を受けたときに危険物等を持っているのを見つけられてしまうと、提出させられて持っていかれてしまうことがあります。

これは「没収」なのでしょうか?そもそも、没収とはどのようなもので、どのようなときにされるのでしょうか?

以下では、没収について詳しく解説していきます。

1.没収とは何か

(1) 没収の意義

没収とは、物の所有権等を剥奪して国庫に帰属させる処分のことです。

刑罰の種類について定めた刑法9条は、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」としており、没収を刑罰の一種としています。

ここでいう「主刑」とは独立に言い渡すことができる刑罰のことで、「付加刑」とは主刑が言い渡された場合にそれに付加してのみ言い渡すことができる刑罰のことをいいます。

没収は付加刑なので、判決で没収だけを言い渡すことはできず、必ず懲役や罰金等の他の刑罰と一緒に言い渡されます。

(2) 没収の目的

没収は、法的には刑罰の一種ですが、実質的には、刑罰的側面だけでなく、対象物の社会的な危険性を除去し、犯人に犯罪による利得を保持させないという保安処分的側面もあります。

(3) 没収と押収の違い

以上のように、没収は刑罰ですので、裁判官が判決や略式命令の中で言い渡すことしかできず、警察官や検察官、その他の行政官が没収をすることはできません。

警察官が職務質問の際に危険物等を見つけてそれを提出させたり、警察官が家宅捜索を行って事件に関係する物を差し押さえたりすることがありますが、これらは「押収」と呼ばれるもので、没収とは全く別のものです。

押収は、証拠物の占有を強制的に取得する処分のことで、占有を取得するだけなので、所有者が所有権を放棄しない限り、対象物の所有権は失われず、押収の必要がなくなった段階で所有者等に返還されます。

このように、没収と押収は全く別のものなのですが、押収された物について判決等で没収の言い渡しがされるということがありますので、没収と押収が全く無関係というわけではありません。

なお、法律上は押収されていない物でも没収できるのですが、実務上は押収されていない物について没収が言い渡されるということはまずありません。

2.没収の対象物

では、どのような物が没収されるのでしょうか。

没収の対象物については、刑法19条1項が原則的な定めをしています。

刑法19条1項
次に掲げる物は、没収することができる。

  1. 犯罪行為を組成した物
  2. 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
  3. 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
  4. 前号に掲げる物の対価として得た物

(1) 刑法19条1項の「物」の意義

刑法19条1項の「物」とは、有体物をいい、動産のみならず不動産も含まれますが、利益や債権は含まれません

もっとも、有価証券等の有体物に化体されているときは没収することができ、例えば、株券が没収されるとその効果は株主権にも及び、株主権も国庫に帰属することになります(最判昭37.4.20)。

このように原則は有体物でなければ没収の対象になりませんが、例外的に刑法以外の特別法によって有体物以外のものが没収の対象になる場合もあります。

例えば、麻薬特例法と呼ばれる法律では、「薬物犯罪収益等」の没収の規定を定めており、薬物犯罪による収益等に当たるものであれば預金債権等の無体的財産も没収の対象となります。

(2) 刑法19条1項1号の「犯罪行為を組成した物」の意義

その物の存在が犯罪行為の不可欠な要素となっている物をいい、講学上、「組成物件」と呼ばれています。

偽造文書行使罪における偽造文書(大判昭10.3.1)、賄賂罪における賄賂(最判昭24.12.6)、わいせつ物の頒布・陳列・有償頒布目的所持罪におけるわいせつ物等が該当します。

(3) 刑法19条1項2号の「犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物」の意義

犯罪行為の不可欠の要素となっている物ではないが、犯罪行為のために使用され、又は使用する目的で用意したものの、実際には使用しなかった物をいい、講学上、「供用物件」と呼ばれています。

殺人行為に用いられた拳銃、文書偽造に用いられた偽造印(大判昭7.7.20)など、犯罪の実行行為に直接使用され、又は使用する目的で用意された物が該当することは明らかですが、それらだけではなく、例えば、住居侵入窃盗事件において、住居に侵入するために使用された平角鉄棒も窃盗の手段としてその用に供した物として没収することができます(最判昭25.9.14)。

(4) 刑法19条1項3号の「犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物」の意義

これらは、講学上、「産出物件」、「取得物件」、「報酬物件」と呼ばれています。

産出物件(犯罪行為によって生じた物)とは、犯罪行為によって存在するに至った物をいい、例えば、通貨偽造罪における偽造通貨(大判明42.4.19)、文書偽造罪における偽造文書(大判明42.6.11)などがこれに該当します。

取得物件(犯罪行為によって得た物)とは、犯罪行為によって犯人が取得した物をいい、例えば、恐喝によって得た契約書(大判昭5.4.28)、賄賂として貸付を受けた現金(最判昭33.2.27)などがあります。窃盗犯人が盗んだ物も取得物件ですが、通常は被害者に所有権があるため、被害者が所有権を放棄したような場合でなければ没収することができません(この問題については後で述べます)。

報酬物件(犯罪行為の報酬として得た物)とは、犯罪行為をしたことの対価・報酬として得た物をいい、教唆や幇助の報酬として得た物を含みます。

例えば、売春業者に建物を提供した場合の家賃(最決昭40.5.20)などもこれに該当します。

(5) 刑法19条1項4号の「前号に掲げる物の対価として得た物」の意義

刑法19条1項3号の産出物件、取得物件、報酬物件の対価として得た物のことをいい、例えば、盗品を処分してその対価として得た物(最判昭23.11.18)、窃盗犯人が盗んだ現金で買った物(仙台高判昭30.11.8)などがこれに該当します。

(6) 「物」はいつの時点で存在している必要があるか

没収するためには、判決や略式命令がなされたときに没収の対象物が存在している必要があります。

判決や略式命令がなされるまでの間に対象物が消費、紛失、破壊、混同等によって存在しなくなり、または同一性を失った場合や、善意の第三者が所有権等を取得した場合には没収することができなくなります。

なお、没収の対象物が消費されるなどして没収できなくなった場合、没収の代わりに対象物の客観的価値相当額の支払を命じられることがあります。

これを「追徴」といい、追徴に関する刑法19条の2は、「前条第1項第3号又は第4号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。」と定めています。

3.没収の要件

没収の要件

以上のような物に該当すれば、それだけで没収できるのでしょうか。

没収の要件について、刑法19条2項に原則的な定めがされています。

また、刑法20条や特別法にも没収に関する例外的要件が定められているほか、没収を言い渡される被告人以外の者が没収対象物について所有権等を有する場合について刑法以外の法律で手続要件が定められています。

刑法19条2項
没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

(1) 「犯人以外の者に属しない物」の意義

犯人以外の者がその物に対して所有権その他の物権を有しない物のことをいいます。

「犯人」とは、没収が言い渡される被告人自身のほか、共犯者を含みます(大判大11.5.19)。共犯者は、被告人と同時に裁判を受けている必要はなく、起訴されていなくてもよいとされています。

誰の物でもない無主物は、犯人以外の者に属しないため、これを没収することができます。

所有者が所有権又は返還請求権を放棄した場合も没収が可能です(最決昭41.4.7)。所有者不明の物については、第三者の所有である可能性がある以上、犯人以外の者に属しないということはできませんので、没収することはできません(最判昭30.1.14)。

刑法19条2項本文は、「没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。」と、少しわかりにくい定め方をしていますが、要するに、共犯者を含む犯人側が所有している物か誰の物でもない物で、かつ第三者が質権等の物権を設定していない物に限って没収できるということです。

(2) 「犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき」の意義

上記のとおり、刑法19条2項本文によって、原則として、犯人や共犯者以外の所有物を没収することができないわけですが、刑法19条2項ただし書きにある「犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき」には例外的に第三者の所有物であっても没収できることになります。

「犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるとき」とは、その物につき、刑法19条1項各号に該当する事実があることを認識した上で取得したという意味です。

直接犯人から取得した場合のみならず、犯人から取得した者から更に取得した場合も含まれ、その場合、犯人から直接取得した者に認識がなくとも、その後に取得した者に認識があればその者から没収することができるとされています。

(3)  刑法19条2項ただし書き以外の場合で第三者の所有物が没収される場合

刑法以外の特別法によって第三者の所有物が没収される場合があります。

例えば、覚せい剤取締法41条の8第1項は、「第41条から前条までの罪に係る覚せい剤又は覚せい剤原料で、犯人が所有し、又は所持するものは、没収する。ただし、犯人以外の所有に係るときは、没収しないことができる。」と定めており、犯人が所有していない覚せい剤であっても犯人が所持していたものであれば原則として没収するとし、例外的に犯人以外の所有の場合には没収しないこともできるとしています。

(4) 第三者の所有物を没収する場合の手続要件

刑法19条2項ただし書きや覚せい剤取締法等の特別法によって第三者の所有物を没収することができる場合であっても、第三者の所有物を没収するためには、別途手続をとる必要があります。

この手続要件は、「刑事手続における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法」という法律が定めており、第三者に対する告知や弁解の機会を与える手続をとらなければならないことになっています。

刑法19条2項本文によって没収が可能な場合でも、対象物が共犯者の所有物であるときは第三者所有物となり第三者没収の手続をとる必要があります。

(5) 軽微事件における例外的取扱い

刑法20条は、「拘留又は科料のみに当たる罪については、特別の規定がなければ、没収を科することができない。ただし、第19条第1項第1号に掲げる物の没収については、この限りでない。」と定め、刑罰の内容に拘留又は科料しか定めていない軽微事件については、特別の規定がない限り、刑法19条1項1号の対象物(組成物件)以外の物件を没収できないとしています。

拘留」とは、1日以上30日未満の短期の収容処分をいい(要するに禁錮刑の期間が短いもの)、「科料」とは、千円以上1万円未満の金額を国庫に納付させることをいいます(要するに罰金の金額が安いもの)。

例えば、浴場をひそかにのぞき見る行為は軽犯罪法違反となりますが、軽犯罪法違反には拘留と科料しか刑罰が定められていないため、のぞきをするときに使った双眼鏡(刑法19条1項2号の「供用物件」に該当します)は没収できないことになります。

4.没収の必要性

没収の対象物については、没収の要件がある限り必ず没収しなければならないのでしょうか。

これには原則と例外があります。

(1) 任意的没収追徴

原則は、任意的没収、つまり没収の対象物について没収の要件が充たされているとしても、裁判官の裁量により、没収をすることも、しないことも両方可能です。

刑法19条1項が「次に掲げる物は、没収することができる。」と定めているのは、刑法の定める没収が原則として任意的没収であり、没収するかどうかが裁判官の裁量に委ねられていることを示しています。

裁判官が没収するかどうかを判断するに当たっては、対象物の財産的価値の程度やそれが再度犯罪に用いられるおそれの程度等の諸事情を考慮しているものと思われます。

例えば、自動車運転中の過失による人身事故の事件で、事故当時運転していた自動車は供用物件に一応該当しますので、裁判官が没収しようと思えば没収することもできますが、そのようなケースで自動車が没収されることはまずありません。

それは、通常、自動車の財産的価値は高いので、過失犯という犯罪行為の内容からして、自動車を没収してしまうと刑罰の内容として重くなりすぎてしまう(又は罰金等の主刑とのバランスを失してしまう)からであると思われます。

なお、没収することができない場合に追徴するかどうかも原則として裁判官の裁量に委ねられています。

(2) 必要的没収追徴

例外的に、要件を満たしている限り、必ず没収しなければならない場合があります。

例えば、賄賂罪に関する刑法197条の5は「犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。」と定めており、犯人等が受け取った賄賂は必ず没収され、没収できないときは必ず追徴されることになります。

また、先ほどの覚せい剤取締法41条の8第1項も、「第41条から前条までの罪に係る覚せい剤又は覚せい剤原料で、犯人が所有し、又は所持するものは、没収する。ただし、犯人以外の所有に係るときは、没収しないことができる。」と定めていますので、少なくとも犯人が所有する覚せい剤については必ず没収しなければなりません。

薬物犯罪の犯罪収益については、麻薬特例法11条1項が「次に掲げる財産は、これを没収する。」とし、その第1号で「薬物犯罪収益」と定めていますので、例えば覚せい剤を売った代金の現金については必ず没収されることになり、その現金が既に使われてなくなっている場合でも、麻薬特例法13条1項が「第11条第1項の規定により没収すべき財産を没収することができないとき、又は同条第2項の規定によりこれを没収しないときは、その価額を犯人から追徴する。」と定めているため、代金と同額を必ず追徴されることになります。

意外な犯罪で必要的没収が定められている場合もあります。例えば、無許可で野鳥を捕まえたり、野鳥の卵をとったりする行為は、鳥獣保護法83条1項1号の違反となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられますが、鳥獣保護法83条3項は、「第1項1号から2号の2まで、第4号及び第5号の犯罪行為の用に供した物及びその犯罪行為によって捕獲した鳥獣又は採取した鳥獣の卵であって、犯人の所有に係る物は、没収する。」と定めているため、野鳥を捕まえるときに使った網、捕まえた野鳥、とった卵等については、犯人の所有物である限り必ず没収しなければなりません。

5.没収の効力

没収の効力は、判決又は略式命令の確定と同時に生じ(最判昭37.4.20)、その時点で没収対象物が国庫に帰属することになります。

没収は、目的物に対するすべての者の所有権その他の物権を喪失させ、これを国庫に帰属させる処分ですので、所有権等を剥奪する効果は、判決等を受けた被告人との関係だけでなく、共犯者やその他の第三者にも及びます(対世的効力)。

6.まとめ

以上のとおり、没収の対象物には様々なものがあり、没収の要件や必ず没収されるかどうかも様々で、警察官に押収された物が必ず没収されてしまうわけではありません。

大事な物が警察官に押収されてしまい、それがなかなか返してもらえずに困っている。押収された物がそのまま没収されてしまうのではないかと心配になっている。

このような場合、お早目に泉総合法律事務所にご相談ください。刑事事件に習熟した弁護士がアドバイスをいたします。

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