示談・更生保護環境の確保など、不起訴処分のための弁護活動解説

刑事事件弁護

示談・更生保護環境の確保など、不起訴処分のための弁護活動解説

刑事事件で逮捕された場合、最終的には起訴・不起訴のどちらかになります。

不起訴処分になるにはどのような弁護活動が必要なのでしょうか。また、不起訴処分になればそこから先は完全に安心してもよいのでしょうか。

以下においては、検察官による不起訴処分の状況、不起訴処分のメリット、不起訴処分の獲得、不起訴処分後の状況、不起訴処分の告知などに触れながら、不起訴処分について解説することとします。

1.検察官による不起訴処分の状況

検察官の行う終局処分のうち、公訴を提起しない処分を「不起訴処分」といいます。事件を不起訴処分に付するときは、不起訴裁定書により不起訴の裁定がなされます。

ところが、不起訴処分は、判決のように既判力を生じませんので、これによって、公訴権を消滅させるものではありません。したがって、不起訴処分後、新たな証拠を発見し、又は訴訟条件を具備するに至り、あるいは起訴猶予を相当としない事情が生じた場合などは、時効が完成しない限り、いつでも再起して公訴を提起することができるとされています。

また、検察官の不起訴処分に対する法律上の控制制度としては、付審判請求手続及び検察審査会に対する審査申立てがあります。

このほか、不起訴処分をした検察官の上級検察庁の長に対する不服申立てにより監督権の発動を促す方法が実務上認められており、その不服申立てについて当該上級検察庁が受理し、処分を再検討するなどの処理が行われたりします。

このようにして、時には、再起して公訴提起になったり、上記の控制制度を通して、いったん不起訴処分となった事件が公訴提起されたり、上級検察庁の不起訴処分の再検討により公訴提起に至ることはあります。

・実際の再度の起訴率

しかしながら、その件数は統計上から見ても少ないのです。

その中で、件数的にも多い、検察審査会の起訴相当・不起訴不当議決事件の事後措置状況の推移を見てみますと、平成26年から平成28年の最高裁事務総局の資料によれば、3年間の措置済総人員は

  • 総数合計301人、起訴合計47人、不起訴維持合計254人、起訴率平均16.2%

となっています。

また、同資料の事後措置状況の推移(原不起訴処分の理由別)によれば、原不起訴処分のうち

  • 起訴猶予の場合:総数合計55人、起訴合計17人、不起訴維持合計38人、起訴率平均31.1%
  • 嫌疑不十分の場合:総数合計229人、起訴合計30人、不起訴維持合計199人、起訴率平均14%
  • その他の場合:総数合計17人、起訴合計0人、不起訴維持合計17人、起訴率平均0%

となっています。

なお、平成26年から平成28年の検察統計年報によれば、3年間の検察庁終局処理人員に占める起訴率平均は31%、不起訴率平均は62.2%、その他平均6.8%、また、その不起訴処分のうち、起訴猶予率平均は91%となっています。

以上からも明らかなように、いったん不起訴処分になった事件が公訴提起されることは稀なことが分かります。

そして、検察官の不起訴処分には

①訴訟条件(親告罪の告訴等)を欠くことを理由とするもの
②事件が罪にならないことを理由とするもの(心神喪失を含みます)
③犯罪の嫌疑がないこと(嫌疑なし)又は十分でないこと(嫌疑不十分)を理由とするもの
④犯罪の嫌疑が認められる場合でも、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないこと(起訴猶予)を理由とするもの

などがありますが、統計上からも、起訴猶予が圧倒的な割合を占めているため、弁護活動も起訴猶予での決着に力点が置かれるものと考えられます。

2.不起訴処分のメリット

検察官が行う起訴処分には、公判請求と略式命令請求があり、不起訴処分には、上記1の①ないし④を理由とするものなどがあります。

起訴処分の場合には、無罪判決が得られない限り、前科がつくことになりますが、不起訴処分の場合には前科がつかないのです。これが不起訴処分の最大のメリットです。

社会生活を送る上で、前科があることによって、いろいろな不利益を被ることが考えられます。したがって、不起訴処分を勝ち取ることが刑事弁護では重要になるのです。

また、不起訴処分を獲得できれば、早期の社会復帰が可能になり、社会的な不利益を最小限にとどめることもできますし、裁判に必要な時間と労力からも解放されることになります。

3.不起訴処分の獲得

不起訴処分の獲得

では、不起訴処分を獲得するためには、どうしたらよいのでしょうか。

罪を犯したと疑われた者にとって、逮捕されるか否かを問わず、最大の関心事は、いかにして、検察官の不起訴処分が得られるかということでしょう。

そのためには、弁護士の助力が必要不可欠となります。

不起訴の裁定として、一般的に考えられる不起訴処分の種類について考えてみましょう。

(1) 「罪とならず」の場合

これは、検察官が、被疑事実が犯罪構成要件に該当しないとき又は犯罪の成立を阻却する事由のあることが証拠上明確なときにする処分になります。

したがって、弁護士としては、被疑者が被疑事実とされる行為の行為者であったとしても、その行為が犯罪構成要件に該当しない旨、又は被疑者に責任阻却事由がある旨、あるいは法令若しくは正当の業務に基づく行為(刑法35条)、正当防衛(刑法36条1項)や緊急避難(刑法37条1項)などの違法性阻却事由がある旨、それぞれの主張の根拠となる証拠を収集する弁護活動をすることになります。

また、取調べについては、弁護士の法的視点から、「罪とならず」の可能性がある限り、被疑者に対しては、捜査官に迎合して、安易に被疑事実を認めないように、そして、自己に有利な事実を積極的に述べるようにアドバイスすることが考えられます。

(2) 「嫌疑なし」の場合

これは、検察官が、被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なときにする処分になります。

したがって、弁護士としては、被疑者が人違いである旨、又は被疑者がその行為者であるかどうかどうか、若しくは被疑者の行為が犯罪に当たるかどうか疑わしい旨、それぞれの主張の根拠となる証拠、例えば、真犯人やアリバイの存在など、犯人でないことや犯罪の否定に必要な証拠を収集する弁護活動をすることになります。

また、取調べについては、弁護士の法的視点から、「嫌疑なし」の可能性がある限り、被疑者に対しては、自己の言い分を一貫して述べるようにアドバイスすることが適切といえましょう。

(3) 「嫌疑不十分」の場合

これは、検察官が、被疑事実につき、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なときにする処分になります。

したがって、弁護士としては、被疑者がその行為者であるかどうか、又はその行為が犯罪に当たるかどうか疑わしい旨、それぞれの主張の根拠となる証拠、例えば、犯人かどうかや犯罪の成立に疑いを抱かせるような証拠を収集する弁護活動をすることになります。

また、取調べについては、弁護士の法的視点から、「嫌疑不十分」の可能性がある限り、被疑者に対しては、捜査官に迎合して、安易に被疑事実を認めないように、そして、自己の言い分を一貫して述べるようにアドバイスすることが適切といえましょう。

(4) 「起訴猶予」の場合

これは、検察官が、被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときにする処分になります。

上記のとおり、検察官の不起訴処分のうち、起訴猶予が9割以上を占めますので、弁護活動も必然、起訴猶予での決着に力点が置かれることになります。

したがって、弁護士としては、刑罰を科さなくても、社会秩序の維持を図ることができる旨、また、刑罰を科さないことが、被疑者の社会復帰を著しく容易にする旨、それぞれの主張の根拠となる証拠を収集する弁護活動をすることになります。

また、取調べについては、弁護士の法的視点から、被疑事実が明白で、被疑者に弁解の余地がなく、「起訴猶予」の可能性がある限り、被疑者に対しては、安易な否認・黙秘をしないように、そして、反省悔悟の気持ちや社会復帰後の更生意欲を具体的に述べるようにアドバイスすることが適切といえましょう。

さらに、「起訴猶予」を獲得するための証拠としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。

①被害者との示談

被害者との示談の成立が絶対に必要です。

被害者のある犯罪では、被害者に対して示談金(損害の賠償金や慰謝料)を支払い、許してもらうことは、起訴猶予を獲得するためには欠かせません。

②贖罪寄付

被害者のない犯罪では、公益法人等への贖罪寄付によって、真摯に反省している気持ちを表すことも必要です。

贖罪寄付によって、起訴猶予を獲得できる見込みがあるかどうかについては、示談の場合と違い、絶対的なファクターではありません。

したがって、被疑者に対する説明は必要ですが、改善更生の気持ちを示すものとして、起訴猶予の獲得に有利に働くことも考えられますので、有効な弁護活動のひとつといえます。

【参考】贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?

③更生保護環境の確保等

被疑者作成の事件や被害者に対する謝罪を含む反省文及び更生に向けての誓約書、保護監督者の身柄請書、監督者、縁故者及び知人等の被疑者に対する今後の援助協力方を約束する旨の書面を徴し、社会復帰後の更生保護環境等が確保されていることを明らかにする必要があります。

そして、無職の被疑者の場合には、就労先を確保することが、起訴猶予の獲得に欠かせないことも考えられます。

4.不起訴処分後の状況

不起訴処分が出たことをもって、刑事手続は終了します。

その後に取調べや捜査を受けることは、上記1に見たように、余程のことがなければ、まずないものと考えられますので、安心して生活できるといってもよいでしょう。

5.不起訴処分の告知

被疑者の勤務先等に「逮捕」や「書類送検」の事実が知られたような場合には、不起訴処分になったことの証明書を提出して、「逮捕」や「書類送検」による不利益を最小限にとどめる必要性が生じます。

この点、法は、「検察官は、事件につき公訴を提起しない処分をした場合において、被疑者の請求があるときは、速やかにその旨を告げなければならない。」(刑訴法259条)と規定しています。

しかし、請求しない限り、被疑者には不起訴処分の結果は告知されません。

したがって、被疑者は、その必要がある場合には、検察官に対して、不起訴になったことの証明書(不起訴処分告知書)の交付を請求しなければなりませんし、弁護士が選任されている場合には、弁護士がその証明書の交付を請求することになります。

なお、検察実務上、被疑者の請求があった場合に告げる内容は、「公訴を提起しない処分をした」ことだけで足りると解されています。

6.まとめ

起訴されてしまえば、無罪とならない限り前科がついてしまいます。

不起訴を目指すならばお早めに泉総合法律事務所の弁護士に弁護依頼をしてください。刑事事件はスピードが勝負です。

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