ネット誹謗中傷・名誉毀損を書き込み!示談と前科をつけない対処法

刑事事件弁護

ネットに悪口を書いてしまった!弁護士は何をしてくれる?

最近、匿名で野球選手の妻の悪口をインターネットに書き込んだ人が特定され、その人に対し、慰謝料及び弁護士費用等の合計約190万円の支払いを請求する訴訟が提起されたというニュースがありました。

このニュースを聞いて「自分も軽い気持ちでネットに悪口を書いてしまったことがある」という人は不安になったのではないでしょうか。

ネットに悪口を書いてしまった人は、どうすればいいのでしょうか?

1.どのようにして加害者は特定されるのか

(1) 発信者情報開示請求(サイト等の管理者宛て)

ネットに悪口を書き込まれた被害者は、まず、プロバイダ責任制限法を利用して、悪口が書かれたサイト等の管理者に発信者情報(IPアドレス及びタイムスタンプという接続情報)の開示を求めます。

つまり、口コミのサイトや掲示板のサイト及びGoogle、Instagramのようなサービスを管理する会社に加害者の接続情報の開示を求めるのです。

なお、「プロバイダ制限責任法」は、日本の法律であるため、海外の事業者には適用がありません(もっとも、海外の事業者でも対応する企業はあります)。

このIPアドレスから、加害者が利用しているインターネットプロバイダが分かります。インターネットプロバイダとは、「eo光」「フレッツ」など、個人がインターネットを利用するために契約している会社のことです(携帯電話の会社なども含みます)。

(2) 発信者情報開示請求(プロバイダ宛て)

次に、被害者は、プロバイダに発信者情報の開示を求めることによって、書き込んだ人を特定します。

この発信者情報開示請求によって、開示される情報は、加害者の①氏名、②住所、③メールアドレス、④IPアドレス、SIMカードの番号等、⑤情報が送信された年月日・時間です。

プロバイダは、契約者に対して、「発信者情報開示に係る意見照会書」を送り、開示に同意するかどうかの回答を求めます。

プロバイダは、その回答も踏まえ、発信者情報を開示するか否かを決めます。

(3) 発信者情報の開示は簡単ではない

上記のように、被害者は、サイト等の管理者→プロバイダと2つの会社に順次、発信者情報の開示を請求するわけですが、どちらも、簡単には発信者情報を開示してはくれません。

プロバイダ責任制限法では、①権利の侵害が明白で、②正当な目的がある場合のみ、発信者情報の開示が認められることになっています。

しかし、一企業にすぎないサイト等の管理者やプロバイダが、権利侵害が明白か、目的が正当化かということを判断するのは困難です。

そこで、判断が難しい場合には、通常は開示しないことを選ぶからです。

そうすると、被害者は、裁判所を通じた手続きに入ることになります。

被害者はまず、サイト等の管理者に対して、仮処分という保全手続きを取ります。

インターネットの接続情報は、通常、3か月程度で消えてしまいます。そうすると、通常の訴訟では時間がかかりすぎるため、仮処分という方法を選ばざるを得ないのです。

仮処分によって、加害者のIPアドレスを取得した被害者は、次には、通常の訴訟によって、プロバイダに発信者情報の開示を請求します。

裁判所が認めれば、プロバイダは、発信者情報を開示することになります。

2.発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら?

それでは、発信者情報開示に係る意見照会書が届いたら、どうすればいいのでしょうか?

(1) 内容を確認する

発信者情報開示に係る意見照会書」には、①請求者の名前、②掲載された情報(サイトの名前等)、③侵害された権利(名誉棄損やプライバシー権など)、④権利が明らかに侵害された理由が記載されています。

これをみて、まずは、思い当たることがあるかどうかを確認します。

なお、発信者情報開示に係る意見照会書は、プロバイダから送られてくることが多いですが、サイト等の管理者から送られてくることもあります。

どこから送られてきたかを見ると、今、被害者がどの段階の手続きを取っているかが分かるでしょう。

(プロバイダ責任制限法は、正式名称「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といって、サイト等の管理者もプロバイダも「特定電気通信役務提供者」に含まれますので、どちらからも意見を聞かれることがあります)

※総務省の資料によると、特定電気通信役務提供者には、①アクセスプロバイダ (インターネットへの接続サービスを 提供する者)、②インターネット、③ウェブサーバ管理者 (ウェブサーバ全体を管理・運営する者)、④ウェブサーバ (情報の蓄積、送信を 行うコンピュータ)が含まれるとされています.

(2) 同意するかどうかを決める

同意すれば、発信者情報は開示されます。

同意しない場合には、その理由も記載しなければなりません。また、その根拠となる証拠も添える必要があります。

同意しなかった場合、プロバイダは、発信者情報を開示しない可能性が高いでしょう。そうすると、開示を受けられなかった被害者は、裁判所に対する手続きを行います。

また、プロバイダ責任制限法により、回答期限の14日をすぎた場合には、プロバイダは情報を開示しても責任を負わないことになっています。

そのため、無視をした場合、プロバイダによって、発信者情報を開示される可能性は高まります

プロバイダが開示しなければ、被害者は裁判をすることになるでしょう。

3.発信者情報が開示されたらどうなる?

インターネットに他人の悪口を書き込んだ場合、刑事犯罪としての名誉棄損罪や侮辱罪等に問われる可能性があるほか、民事事件として、慰謝料の請求がされる可能性もあります。

(1) 刑事犯罪としての名誉棄損罪と侮辱罪等

名誉棄損罪は、刑法230条第1項に「公然と事実を摘示し、人の名誉を棄損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。

名誉とは、人の人格的価値に対する評価であり、名誉棄損罪は、人の社会的評価を下げるような事実を不特定または多数人が知りうる形で摘示することによって成立します。

事実を摘示するとは、例えば、「Aは不倫している」とか、「Bは万引きした」などという書き込みをすることです。この場合、本当にAが不倫していた場合でも、不倫していなかった場合でも、名誉棄損罪になります。

なお、芸能人の不倫などは、公共性、公益目的、真実性という3要件がそろっていれば、違法性が阻却されるため、メディアの報道は名誉棄損にならないのです。

侮辱罪は、刑法第231条に定められていて、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」とされています。

「事実を摘示しない」とは、例えば「デブ」とか「ブス」というような抽象的な誹謗中傷のことです。

そのほかにも、飲食店などの悪口であれば、偽計業務妨害罪が成立する可能性もあります。

(2) 民事事件としての名誉棄損・プライバシー侵害に対する損害賠償

名誉及びプライバシーを侵害された人は、民法709条の不法行為の規定に基づいて、損害賠償請求をすることができます。

これに加えて、民法第723条は、名誉棄損について「他人の名誉を棄損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に変えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」とも定めています。

民事事件において、ある行為が名誉棄損にあたるか否かは、他人の社会的評価を低下させるようなものであるかが個別具体的に判断されます。

「Aは不倫している」というような書き込みは、名誉棄損になりえると同時に、本当のことであれば、プライバシー侵害にもなりえます。

また、上記の「デブ」や「ブス」という発言は、名誉感情の侵害として不法行為になりえます(ただし、慰謝料請求が認められる程度に違法性が高いと判断されるか否かは、個別具体的な事案によります)。

民事における名誉棄損やプライバシー侵害、名誉感情の侵害に対する慰謝料は、認められても数十万円程度と低額であることが多いですが、悪質であったり、相手の損害が大きかったりすると、数百万円になることもありえます。

4.刑事事件になったらどうすればいいのか

刑事事件になった場合、逮捕されることもあれば、在宅捜査を受けることもあります。

逮捕された場合には、勾留阻止や早急な身柄開放のために被害者と示談をする必要があります。

また、在宅捜査でも、不起訴処分を得るためには、早急に示談をしなければなりません。

刑事事件の結果が不起訴処分であれば、前歴(捜査の対象になったことがあるという経歴)で済みますが、罰金になると前科がついてしまいます。

あまりにも悪質であったり、社会的影響が大きかったり、他の前科前歴があったりすると、正式裁判になって、懲役刑や禁固刑になる可能性もあるでしょう。

刑事事件になった場合には、甘く見ずに早急に弁護士に相談し、示談交渉に入ってもらうべきです。

また、そもそも、刑事事件になりそう(告訴されそう、被害届を提出されそう)という段階で、示談をすることができれば、刑事事件になること自体を防ぐこともできます。早めに行動することが重要です。

5.民事事件になったらどうすればいいのか

民事上の損害賠償請求は、弁護士からの内容証明郵便が届くか、簡易裁判所もしくは地方裁判所に訴訟提起されることによって起こります。

自分が書き込んだ悪口が名誉棄損やプライバシー侵害に当たる場合でも、相手の言う通りの金額を払わなければいけないというわけではありません。その行為に応じた適正な賠償額というものがあります。

内容証明が届いたら、無視せずに慰謝料額の交渉を行い、訴訟提起されないようにするべきでしょう。

また、訴訟提起された場合でも、適切に防御し早期の和解に持ち込んだ方がよいでしょう。

自分の書き込みが不法行為に当たるのか、当たる場合には、どのくらいの慰謝料が相当なのかということは、弁護士に聞いてみましょう。

6.まとめ

発信者情報開示に係る意見照会書が届いたということは、誰かが、あなたを刑事又は、民事で訴えようとしているということです。すぐに弁護士に相談に行きましょう。

自分の書き込みが刑事事件や民事事件に該当するような書き込みなのかという確認を行い、刑事事件や民事事件になる可能性がある場合には、早急に弁護士に請求者との交渉を開始してもらうべきでしょう。

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