刑事事件弁護 [公開日][更新日]

主文後回しの意味。死刑・無期懲役・無罪・執行猶予判決の重要性

テレビの報道などで「主文後回しです」とキャスターが述べている速報を目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。

重大犯罪の判決言い渡しの際には、裁判官が判決主文ではなく、「判決理由から述べ始めたこと」が報道対象となることがあります。これが「主文後回し」です。

主文の後回しが速報の対象となるのはなぜ?と思った方も少なくないと思います。
また、そもそも、判決主文の朗読を後回しにするのは、どのような理由によるものなのでしょうか。

今回は、刑事事件の判決における「主文後回し」の意味と理由を解説します。

1.公判手続きについて

憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めています。

つまり、冤罪や権力の恣意的行使を防止するために、犯罪者に刑罰を科すときには、必ず「裁判による」必要があるのです。

刑事裁判は、検察官の起訴によってはじまります。検察官が起訴をすると、逮捕されていた被疑者は、「被告人」と呼ばれます。
また、被告人の身柄も、警察の留置施設から拘置所(法務省の管轄)へ移送されます(拘置所の収容人員や捜査の都合から、そのまま留置施設で拘束される場合もあります)。

刑事裁判は必ず公開の法廷で行われ、以下の4つの段階にわけて説明されることが一般的です。

  • 冒頭手続き
  • 証拠調べ手続き
  • 弁論手続き
  • 判決

刑事裁判は「判決の宣告(言渡し)」で終了します。
この判決において、主文と判決理由が述べられるのです。

2.刑事裁判での判決言渡し

「判決」とは、簡単にいえば、「その裁判のテーマとなった事項についての結論(裁判所の判断)」といえます。
刑事裁判であれば、「有罪・無罪の判断とその量刑」が示されます。

通常の事件では、判決の宣告は、結審後に、判決宣告のために開かれる単独の公判期日(判決公判)で行われます。

判決期日では、裁判所による人定質問(被告人の氏名と本籍地を確認する質問)に続いて、判決が宣告されます。

(1) 判決主文と判決理由

判決は、「主文」と「判決理由」から構成されます。

主文」とは「裁判の結論」を示し、「判決理由」とは「判決主文に至った根拠(事実認定や証拠の評価など)」が示されます。

なお、判決には、必ず「理由」を付けなければならないと刑事訴訟法で決まっています(刑事訴訟法44条1項)。

(2) 判決宣告の方法

判決の宣告は、裁判長が主文および理由を朗読(または主文の朗読と同時に理由の要旨を告げる)方法で行われます(刑事訴訟規則35条1項)。

具体的な朗読方法(朗読の順序等)は、「裁判官の裁量」に任されています。
しかし、判決書の様式では、主文の次に判決理由が記載されることから、通常の裁判では、まず主文から朗読されます。

主文朗読後に、被告人に着席の許可を与えてから、理由を朗読することが多いと思われます。

しかし、冒頭でも触れたように、重大事件の判決言い渡しでは、「主文後回し」となる場合があります。なぜなのでしょうか。

3.「主文後回し」となる場合

(1) 重大事件の場合

①死刑判決

一般の方が最も良く目にする「主文後回し」のケースは、「死刑判決」が言い渡される場合です。

死刑判決は、被告人にとって「生命を絶たれる宣告」です。そのため、先に判決主文を朗読すると、被告人が主文内容で動揺・困惑して、判決理由をきちんと聴けなくなる可能性があります。

判決理由は「なぜ死刑となったのか」ということを知るために非常に重要なものです。

被告人に対して「そのまま判決に服するか」それとも「上訴(控訴・上告)するか」を判断する機会を与える意味でも、判決理由をきちんと聴けるように配慮することは非常に大切なのです。

②無期懲役

また、死刑以外にも、「無期懲役」となる場合で「主文後回し」となることがあります。

無期懲役のケースでは、死刑の場合とは逆に「死刑ではない」と気が緩んでしまい、判決理由をしっかり聞けないということが考えられます。

刑事裁判の手続きは、刑罰を科すだけでなく、被告人の更正の場の1つでもあります。
判決理由をよく聴くことで、過去の過ちを振り返ることは、更正の観点からも重要です。

以上のように、「主文後回し」のねらいは「判決理由をきちんと聴いてもらいたい」ということに尽きるものです。必ずしも「死刑・無期懲役などの厳刑だから主文後回し」というわけではないのです。

(2) 重大事件(厳刑)以外の場合

「主文後回し」は、「死刑」や「無期懲役」が問題となる重大犯罪の場合だけに限りません。

死刑以外でも、実際の刑事裁判の多くのケースでは、「執行猶予を勝ち取れるか否か」が一番の争点となることが少なくありません。
この場合にも「主文後回し」となることがあります。

執行猶予の可否は、主文で示されます。
実刑となるのか、執行猶予となるのかでは、天と地ほどの差があります。

したがって、主文の朗読で執行猶予があることがわかると「被告人の気が緩んで」判決理由に耳を傾けてもらえない可能性があります。

実際のケースとしては、著名な音楽プロデューサーが詐欺に問われた事件で、執行猶予判決の宣告が主文後回しとなったことが有名です。

なお、無罪判決の場合には、できるだけ速やかに「無罪である」ことと被告人に伝えるべきでしょうから、主文から朗読することが一般的でしょう。

4.まとめ

一般の方は、報道を通して「主文後回し」の場面に触れることがほとんどです。そのため、「主文後回し=死刑」という印象をどうしてももってしまいます。

しかし、裁判において非常に重要な「判決理由」をきちんと聴いてもらうための配慮が、「主文後回し」です。
したがって、「主文後回し」は、死刑以外で執行猶予の可否が争点となるような事件であってもなされることがあります。

執行猶予を勝ち取るためには、逮捕直後の早い段階から弁護士による手厚いサポートが必要不可欠です。特に、逮捕後72時間は弁護士以外の面会は禁止されています。

万が一の際には、刑事事件の解決実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。裁判となってしまったケースでも、弁護士が最大限に被害者の方をサポートいたします。

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