主文後回しの意味。死刑・無期懲役・無罪・執行猶予判決の重要性

刑事事件弁護

主文後回しの意味。死刑・無期懲役・無罪・執行猶予判決の重要性

なぜ「主文後回し」となる事件があるのでしょうか?

テレビの報道で「主文後回しです」という速報をリポートしているシーンを目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

重大犯罪事件の判決言渡しの際には、裁判官が判決主文ではなく、「判決理由から述べ始めたこと」が報道対象となることがあります。

主文朗読の後回しが速報等の対象となるのはなぜだろうか?と思った方も少なくないと思います。また、そもそも、判決主文の朗読を後回しにするのはどのような理由によるものなのでしょうか。

ここでは、刑事事件の手続きやその役割とあわせて確認してみましょう。

1.刑事事件の裁判について

まず、刑事事件の手続きを簡単に確認しておきましょう。

刑事手続きは、大きく分けて、「捜査の段階」と「公判手続きの段階」に分けることができます。

(1) 捜査

被害届や通報を端緒とする警察(検察)による捜査から、被疑者逮捕、その後の検察官による起訴の判断までを「捜査段階」といいます。

①捜査と逮捕

通報や被害届などによって犯罪を認知すると、捜査が開始されます。

通常の犯罪捜査は警察によって行われますが、一部の事件では、検察が直接捜査することもあります。

報道等で「東京地検特捜部」という名称を耳にすることがありますが、特捜部の捜査は検察が直接第一次捜査をする場合の典型例です。

捜査によって被疑者が特定されると逮捕に至ります。逮捕には、「通常逮捕」、「現行犯逮捕」、「緊急逮捕」の3つの場合があります。

逮捕されたときには、被疑者には逮捕となった「犯罪事実の要旨」と「弁護人を選任する権利がある」ことを告げられます。

また、犯罪事実についての認否を述べる機会も提供されます(弁解録取手続き)。

警察が被疑者の身柄の拘束が必要だと判断したときには、逮捕から48時間以内に検察官に送致する必要があります。

送致を受けた検察官は、24時間以内に勾留請求するか、被疑者を釈放するかを判断する必要があります。

②勾留

送致を受けた検察官は、直ちに被疑者を起訴できるときには起訴します。しかし、一般的には、起訴・不起訴の判断のために必要な捜査を警察に指示したり、自ら行ったりします。

この際、被疑者の身体の自由を拘束して捜査を行う必要があるときには、裁判所に勾留の請求をします。

勾留請求の理由は、住所不定や逃亡・証拠隠滅のおそれ等が挙げられます。

【参考】逮捕後勾留される要件とは?身柄拘束の不要性・準抗告を主張し釈放

検察官による勾留請求は、送致から24時間(逮捕から72時間)以内になされる必要がります。

この間に、起訴も勾留請求もしないときには、被疑者を直ちに釈放しなければなりません。

検察官による勾留請求が認められるとまず「10日間」の勾留となります。この10日間の間に、検察官は、起訴・不起訴の判断をします。

10日間で起訴・不起訴を判断できないやむを得ない理由があるときには、さらに10日を上限として勾留の延長が認められることもあります。

さらなる勾留延長は認められないので、検察官は、20日(逮捕から23日)が経過してもなお起訴しないときには、被疑者を釈放しなければなりません。

【参考】逮捕・勾留後に期間延長になったら?理由の開示・準抗告なら弁護士へ

(2) 公判手続き

冤罪や権力の恣意的行使を防止するために、刑罰を科すときには必ず「裁判による」必要があります。

憲法31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めています。

刑事裁判は、検察官の起訴によってはじまります。検察官が起訴をすると、逮捕されていた被疑者は、「被告人」と呼ばれます。

また、被告人の身柄も警察の留置施設から拘置所(法務省の管轄)へ移送されます。

しかし、拘置所の収容人員や捜査の都合から、そのまま留置施設で拘束される場合もあります。

刑事裁判は必ず公開の法廷で行われ

  1. 冒頭手続き
  2. 証拠調べ手続き
  3. 弁論手続き
  4. 判決

の4つの段階にわけて説明されることが一般的です。

ところで、刑事裁判で罪が確定すると科せられる刑罰の程度(量刑)は、予め法律で定められています(罪刑法定主義)。

刑事裁判の対象となった犯罪事件が、死刑または無期もしくは3年の長期刑を超える懲役もしくは禁固に該当する事件では、刑事裁判に必ず弁護人が出頭する必要があります。

2.刑事裁判での判決言渡し

刑事裁判は「判決の宣告(言渡し)」で終了します。

判決とは、簡単にいえば、「その裁判のテーマとなった事項についての結論(裁判所の判断)」といえます。

刑事裁判であれば、「有罪・無罪の判断とその量刑」、民事事件であれば「原告が求める請求の当否」についての裁判所の判断が判決で示される内容です。

通常の事件では、判決の宣告は、結審後に、判決宣告のために開かれる単独の公判期日(判決公判)で行われます。

判決期日では、裁判所による人定質問(被告人の氏名と本籍地を確認する質問)に続いて判決が宣告されます。

(1) 判決主文と判決理由

判決は、「主文」と「判決理由」から構成されます。

主文とは、「裁判の結論」を示し、「判決理由」は、判決主文に至った根拠(事実認定や証拠の評価など)が示されます。

なお、判決には、必ず「理由」を付けなければならないと刑事訴訟法で決まっています(刑事訴訟法44条1項)。

(2) 判決宣告の方法

判決の宣告は、裁判長が主文および理由を朗読(または主文の朗読と同時に理由の要旨を告げる)方法で行われます(刑事訴訟規則35条1項)。

具体的な朗読方法(朗読の順序等)は、「裁判官の裁量」に任されています。

しかし、判決書の様式では、主文の次に判決理由が記載されることから、通常の裁判では、まず主文から朗読されます。

主文朗読後に、被告人に着席の許可を与えてから理由を朗読することが多いと思います。

3.「主文後回し」となる場合

「主文後回し=死刑判決」とは限らない!

冒頭でも触れたように、重大事件の判決言い渡しでは、「主文後回し」となる場合があります。その目的や理由について説明します。

(1) 「主文後回し」にするのはなぜか

①死刑判決

一般の方が最も良く目にする「主文後回し」のケースは、「死刑判決」が言い渡される場合です。

死刑判決は、被告人にとって「生命を絶たれる宣告」です。そのため、先に判決主文を朗読すると、被告人が主文内容で動揺・困惑して、判決理由をきちんと聴けなくなる可能性があります。

判決理由は「なぜ死刑となったのか」ということを知るために非常に重要なものです。

被告人に対して「そのまま判決に服するか」それとも「上訴(控訴・上告)するか」を判断する機会を与える意味でも、判決理由をきちんと聴けるように配慮することは非常に大切です。

②無期懲役

また、死刑以外にも、「無期懲役」となる場合で「主文後回し」となることがあります。

無期懲役のケースでは、死刑の場合とは逆に「死刑ではない」と気が緩んでしまい、判決理由をしっかり聞けないということが考えられます。

刑事裁判の手続きは、刑罰を科すだけでなく、被告人の更正の場の1つでもあります。

判決理由をよく聴くことで、過去の過ちを振り返ることは、更正の観点からも重要です。

以上のように、「主文後回し」のねらいは「判決理由をきちんと聴いてもらいたい」ということに尽きるものです。必ずしも「死刑だから主文後回し」というわけではないのです。

実際には、無期懲役が言い渡されるケースでも「主文後回し」となる場合があります。

(2) 重大事件でなくても「主文後回し」になる場合

「主文後回し」は、「死刑」や「無期懲役」が問題となる重大犯罪の場合だけに限りません。

実際の刑事裁判の多くのケースでは、「執行猶予を勝ち取れるか否か」が一番の争点となることが少なくありません。この場合にも「主文後回し」となることがあります。

実刑となるのか執行猶予となるのかでは、天と地ほどの差があります。執行猶予の可否は主文で示されます。

したがって、主文の朗読で執行猶予があることがわかると「被告人の気が緩んで」判決理由に耳を傾けてもらえない可能性があります。

実際のケースとしては、著名な音楽プロデューサーが詐欺に問われた事件で、執行猶予判決の宣告が主文後回しとなったことが有名です。

なお、無罪判決の場合には、できるだけ速やかに「無罪である」ことと被告人に伝えるべきでしょうから、主文から朗読することが一般的でしょう。

ちなみに、無罪判決の場合には、主文朗読を最後まで聞かなくても、最初の言い方だけで結論がわかります。無罪判決の主文だけが「被告人は(無罪)」と記載されるからです。

有罪判決の場合は、「被告人を(懲役○年と処す)」と記載します。

4.まとめ

一般の方は報道を通して「主文後回し」の場面に触れることがほとんどです。そのため、「主文後回し=死刑」という印象をどうしてももってしまいます。

しかし、裁判において「判決理由」は非常に重要なので、「きちんと聴いてもらうための配慮」が「主文後回し」です。

したがって、「主文後回し」は執行猶予の可否が争点となるような事件であってもなされることがあります。

執行猶予を勝ち取るためには、逮捕直後の早い段階から弁護士による手厚いサポートが必要不可欠です。特に、逮捕後72時間は弁護士以外の面会は禁止されています。

万が一の際には、刑事事件の解決実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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