刑事事件の控訴で何が変わる?上告・上訴との違い、手続について

刑事裁判

刑事事件の控訴で何が変わる?上告・上訴との違い、手続について

刑事事件で逮捕された場合、裁判になってしまうこともあります。裁判となり下された判決に納得がいかない場合、「控訴」することができます。

以下においては、控訴に関する一般的な説明、上告、上訴との違い、控訴提起期間、控訴の手続、控訴により判決が変更される可能性などに触れながら、控訴について主に解説していきます。

なお、刑事訴訟法は「法」、刑事訴訟規則は「規」と略記します。

1.控訴

(1) 控訴とは?

控訴とは、地方裁判所又は簡易裁判所のした第1審の判決に不服がある場合に、高等裁判所に対し、その取消し・変更を求める申立てのことをいいます。

(2) 控訴の申立人

控訴の申立てをすることができるのは、第1審判決を受けた当事者である検察官と被告人です(法351条1項)。被告人の法定代理人、保佐人及び原審(第1審)における弁護人又は代理人も、被告人のために控訴の申立てをすることができます(法353条、355条)。

ただし、被告人の明示の意思に反した申立ては許されません(法356条)。

(3) 控訴する時の要件

控訴の申立ては、第1審の審理の方法(訴訟手続)が、規則等を含めた訴訟法に違反している場合(訴訟手続の法令違反[法379条])、第1審の判決が、認定された事実に対し適用すべき法令を適用していない場合(法令適用の誤り[法380条])、第1審の判決の認定した事実が、訴訟記録中の適法な証拠を考慮に入れて認定されるべき事実と合致していない場合(事実誤認[法382条])、第1審の判決の言い渡した刑が、重過ぎあるいは軽過ぎて、合理的な裁量の範囲外にある場合(量刑不当[法381条])などの控訴理由があることを理由とするときに限ってすることができます(法384条)。

ただし、訴訟手続の法令違反、法令適用の誤り及び事実誤認については、その理由が判決に影響を及ぼすことが明らかな場合に限られます(各法条参照)。

(4) 控訴審について

控訴審では、第1審と同じやり方で審理をはじめからやり直すのではなく、第1審の審理の記録を点検して、その審理のやり方や事実認定、法令解釈に誤りがないか、刑は適当かどうかということを調べることになります。

したがって、控訴審では、公判を開いても、検察官や弁護人が判決に誤りがあるかどうかについて意見を述べるだけで、第1審のように法廷で証人やその他の証拠の取調べをしないのが原則です。

この点が、控訴審は、第1審の審理や判決について違法・不当な点がないかどうかを事後的に審査する事後審であるとされている所以です。

もっとも、第1審の証人を呼んで聞き直したり、第1審当時いろいろな事情で調べることのできなかった証人を取り調べたりして、事実を確かめることは許されています。

(5) 控訴の結果(控訴棄却・原判決破棄)

このようにして、記録を調査したり、事実の取調べをした結果、第1審の判決に誤りのないことが分かった場合には、控訴審は、第1審判決を維持する「控訴棄却」の判決(法396条)をします。

また、第1審の判決に誤りが発見された場合には、控訴審は、これを取り消すため「原判決破棄」の判決をしますが、原判決が破棄されますと、まだ第1審の判決が出されていないのと同じ状態になりますので、この場合は、第1審で更に証拠を取り調べたり、誤りを正して判決をやり直した方がよいときには、事件を「第1審に差し戻す」、又は「〇〇裁判所に移送する」という判決を併せて言い渡します。

そうしますと、事件はもう一度第1審で審理されることになります。これが「原判決破棄差戻し」(法398条、400条)、「原判決破棄移送」(法399条、400条)という判決です。

もっとも、控訴審での審理の結果、すぐに結論が出せる場合には、第1審に差し戻さないで、代わりに自ら判決を言い渡すこともできます。これが、第1審判決を破棄し、控訴審が新たな判決を言い渡す「原判決破棄自判」(法400条ただし書)という判決です。

(6) 控訴の際の弁護人

弁護人については、選任が審級ごとになされますので(法32条2項。いわゆる「審級弁護(審級代理)の原則」)、控訴審での弁護人は改めて選任する必要がありますが、控訴審そのものを新たに開始させる行為、すなわち控訴の申立ては、第1審における弁護人にも認められています(法355条)。

2.上告、上訴との違い

(1) 上告

上告とは、控訴審の判決に不服がある場合に、最高裁判所に対し、その取消し・変更を求める申立てのことをいいます。上告の申立権者は、控訴の申立てと同じです(法351条1項、353条、355条、356条、414条)。

上告ができるのは、控訴審の判決が憲法に違反していたり、憲法の解釈を誤っていたり、あるいは最高裁判所の判例に違反していることなどを理由とする場合です。

(2) 上訴

上訴とは、確定前の判決に不服がある場合に、上級の裁判所に対し、その取消し・変更を求める申立てのことをいいます。

したがって、上記から明らかなように、判決に対する上訴には、「控訴」と「上告」があることになります。

3.控訴提起期間

控訴の提起期間は、第1審の判決の宣告のあった日から14日(初日は算入されませんので[法55条1項]、判決宣告日を含めますと15日)以内です(法373条、358条、342条)。その間に控訴しなければ控訴権が消滅します。

したがって、控訴の提起は、その期間内に控訴申立書を第1審裁判所に提出しなければなりません(法374条)。

4.控訴の手続

控訴の手続

実際に判決に納得がいかずに控訴したいという場合、どのような手続を取る必要があるのでしょうか。以下では、東京高等裁判所刑事部の取扱いを紹介しておきます。

(1) 控訴申立書の提出

控訴をするには、上述のとおり、控訴申立書を第1審裁判所に提出しなければなりません(法374条)。これが大前提ですが、これで控訴の手続が終わりにはならないのです。

(2) 控訴趣意書の差出最終日の指定、通知

①控訴趣意書差出最終日の通知

控訴裁判所が、控訴趣意書差出最終日を指定しますと、担当部から、被告人及びその時点で選任されている弁護人に通知書が送達されます(規236条1項)。

なお、国選弁護人選任予定の事件については、法テラスへの国選弁護人候補者指名通知依頼書(法テラスから受任希望の弁護士にその写しが交付されます。)に控訴趣意書差出最終日が記載されています。

②控訴趣意書差出最終日の指定後に弁護人選任届を裁判所に提出した弁護人への通知

「電話連絡」や「書面送付」の方法により、控訴趣意書差出最終日が弁護人に通知されます。

なお、控訴趣意書差出期間経過後に控訴趣意書を裁判所に提出した場合、その遅延がやむを得ない事情に基づくものと認められない限り、控訴棄却の決定がなされることになりますので(法386条1項1号、規238条)、そのようなことにならないように、十分注意しなければなりません。

(3) 控訴趣意書の提出等

①控訴趣意書の提出

控訴申立人は、控訴裁判所から通知された控訴趣意書を提出すべき最終日までに、控訴趣意書を提出しなければなりません(法376条1項)。

②提出部数

控訴趣意書については、裁判所から、印影のあるもの2部(原本、検察官用謄本各1[規241条])のほか、運用上、写し3部(裁判官用)の提出を求められます。

③郵送提出

控訴趣意書については、郵送による提出も可能です。ただし、期限内に提出するためには、遅配とならないように留意する必要があります。

④控訴趣意書に疎明資料や保証書を添付する場合の留意点

法が疎明資料や保証書の添付を要求している場合には、裁判所から、該当条文及びどの点の疎明かを控訴趣意書に明示した上、その資料を添付するように求められます。

また、控訴趣意書に添付した疎明資料又は保証書について、事実取調請求の予定もあるものについては、別途、事実取調請求書の提出をお願いされます。

⑤主任弁護人でない弁護人による控訴趣意書の提出

弁護人は、各自が控訴趣意書を提出することができます(規239条)ので、複数の弁護人のうちの1部の弁護人も控訴趣意書を提出できます。

なお、連名で作成された控訴趣意書について、そのうちの1部の提出者の名下の押印が他の提出者の代印の場合がありますが、代印は認められませんので、注意する必要があります。

(4) 被告人作成の控訴趣意書

被告人が提出した控訴趣意書は、法令に従った作成がされていないことが少なくないといわれています。

例えば、形式面では、裁判所に提出する被告人の作成書面は、署名押印が必要となります(規60条、60条の2第2項)が、記名押印の場合があります。

また、実質面では、控訴趣意書には、控訴の理由を簡潔に明示しなければなりません(規240条)が、控訴理由が全く記載されていなかったり、法の定める疎明資料や保証書の添付がなかったり、「事実の援用」を欠いている場合があると指摘されています。

(5) 事実取調請求

①請求時期について

法393条の事実取調請求を行う場合、公判期日の1週間前から10日前までに、請求書の提出を求められるのが一般的です。

②請求書及び書証の写しについて(部数)

請求書については、印影のあるもの2部とその写し3部を、添付資料や書証の写しについては各5部の提出を求められます。

③被告人質問を希望する場合

被告人質問を希望する場合、事実取調請求書への記載が必要となります。

(6)被告人の出頭

控訴審では、原則として、被告人に公判期日の出頭義務はありません(法390条本文)が、被告人の公判期日に出頭する権利を保障するため、召喚状(控訴審の召喚状には出頭義務はない旨の付記があります。)を送達する方法により、公判期日が被告人に通知されます。

5.控訴により判決が変更される可能性

(1) 平成23年度司法統計年報(控訴事件)

終局区分別
終局総人員破棄人員棄却人員取下げ
7005人685人(9.8%)4941人(70.5%)1353人(19.3%)
破棄理由別
判決後の情状量刑不当事実誤認法令適用の誤りその他
450人(65.7%)104人(15.2%)80人(11.7%)33人(4.8%)31人(4.5%)

※判決後の情状、量刑不当による破棄が全体の約81%を占めています。

(2) 控訴の理由

控訴審の実務では、統計上も、多くの事件で事実の取調べが行われていますが、その大半は、量刑不当を控訴理由とする事件となっています。

控訴審における量刑の判断方法は、現行の控訴審が、第1審判決の当否を審査する事後審の性格から、第1審の量刑が、控訴審自らが相当と考えるところと合致するかどうかでなく、行為責任(「事案の性質」という見解もあります。)から想定される一定の幅の中にあるかどうかを審査するのが一般となっているのです。

要するに、控訴審は、第1審での裁量の範囲を考えてみて、それが裁量を誤っているかどうか、という観点から判断することになります。控訴審が、はじめから量刑をやり直すわけではないのです。

量刑の一般論としては、第1・2審を通じ、被害弁償や慰謝の措置を講じれば、必ず、被告人に有利に、減軽されたり、執行猶予が付されるというものではありません。

とはいえ、上記の統計結果からも分かりますように、第1審判決後の情状が考慮されて、第1審判決の量刑が変更されているのも事実なわけですから、その結果を得るためには、情状に関する新たな証拠を裁判所に示す必要があります。

その主な証拠としては、情状に関する簡単な被告人質問、情状証人、書証(追加の被害弁償、示談書、被害者の宥恕や減軽を求める嘆願書、被告人の反省の度合いや社会復帰後の更生環境を示す書面等)が考えられます。

他方、事実誤認を控訴理由とする事件での証人尋問、鑑定などの取調べは、統計上もそれほど多くありません。

6.刑事裁判も泉総合法律事務所へ

刑事事件で裁判になってしまい、判決内容に納得がいかないという場合には、控訴することで再び争うことができます。しかし、第1審で納得のいく判決を受けることが第一でしょう。

あなたのことを親身になって弁護してくれる、刑事事件に強い弁護士に相談するべきです。刑事事件でお悩みの方は、経験豊富な泉総合法律事務所に、是非一度ご相談ください。

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