「何故勾留されたのか知りたい!」勾留理由開示手続の流れと仕組み

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「何故勾留されたのか知りたい!」勾留理由開示手続の流れと仕組み

刑事事件で逮捕された場合、引き続き勾留されることがあります。勾留に納得がいかない場合、裁判官にその理由を公開の法廷で明らかにしてもらうことができます。

以下においては、勾留理由開示の趣旨等、勾留理由開示の請求の手続、裁判官による勾留理由開示の手続の進め方、開示すべき理由の時点、開示すべき理由の範囲とその程度、求釈明等をめぐる具体例、勾留理由開示の請求をするメリットとデメリットなどに触れながら、勾留理由開示について解説することとします。

なお、以下では、刑事訴訟法は「法」、刑事訴訟規則は「規」と略記します。また、被告人に関する勾留理由開示の規定は、被疑者にも準用されますが、その準用規定の法207条1項は省略し、基本法規のみを掲記します。

1.勾留理由開示の趣旨等

勾留理由開示とは、勾留されている被疑者・被告人(以下、両者を含む趣旨で「被疑者」と総称します。)やその弁護人、法定代理人等一定の者からの請求に基づいて、裁判官がいかなる理由で勾留したかを明らかにする手続です(憲法34条後段、法82条1項2項)。

この勾留理由の開示は、憲法上の要請により、公開の法廷でしなければならないものとされています(憲法34条後段、法83条1項)。そして、勾留理由開示の法廷は、原則として被疑者及び弁護人が出頭しなければ開廷することができません(法83条3項本文)。

なお、勾留理由開示の開示者(裁判官)は誰かについては、各裁判所の事務分配の定めによって決まるとされています。多くの裁判所では、勾留した裁判官が勾留理由開示も担当するようですが、勾留状を発付した裁判官以外の裁判官が担当することもあるようです。

2.勾留理由開示の請求の手続

(1) 請求権者

勾留されている被疑者に加え、その弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系親族、兄弟姉妹その他利害関係人です(法82条1項2項)。

(2) 勾留理由開示の請求

(1)の請求権者は、裁判所に「被疑者に対する・・・・被疑事件について、勾留理由開示を請求する。」旨記載し、署名押印した書面で請求します(法82条1項、規81条1項)。

(3) 請求の時期

被疑者が勾留されている限り、いつでも勾留理由開示の請求をすることができます。

(4) 請求の回数

勾留理由の開示請求は1回しか行うことができず、勾留をした審級でしか行うことができません(最決昭28.10.15刑集7巻10号1938頁、最決昭29.8.5刑集8巻8号1237頁、最決昭29.9.7刑集8巻9号1459頁。なお、最決平26.1.21裁判集刑集313号1頁、判時2223号129頁参照)。

3.裁判官による勾留理由開示の手続

以下では、一般的に行われている開示法廷の流れについて、実際の裁判官の発言を主に紹介することにします。

(1) 開廷宣言

「ただ今から、平成○○年第○○号勾留理由開示の法廷を開きます」

(2) 人定質問(慣行、規196条参照)

「被疑者は前に出て下さい」

ここで、氏名、生年月日、本籍、住居、職業の確認を行います。

(3)開示宣言

「これから、被疑者に対する・・・・被疑事件について、弁護人から勾留理由開示の請求がありましたので、その理由を開示します。被疑者には、後ほど10分の制限内で意見を述べる機会が与えられますので、これから私の言うことをよく聞いているように。

被疑者は、弁護人の前の席に座って下さい」

(4) 勾留理由の開示

「本件の被疑事実は、・・・・(被疑事実の読み上げ)・・・・というものですが、この事実に関しては、一件記録により被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当の嫌疑が認められます。

また、本件は、数人の共謀による計画的な犯行であって、事案の性質、態様から、主として関係人の供述が重要であると考えられるところ、被疑者を釈放すれば、関係人に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があり、法60条1項2号に該当するものと認められます」

(5) 意見陳述

「それでは、引き続き意見陳述に入ります」

通常は、ここで、弁護人が釈明を求めます。なお、弁護人、被疑者及び検察官の意見陳述については、10分の制限があります(規85条の3第1項)。

①開示される理由の範囲

裁判官は、一般的に、「勾留理由は、勾留状発付当時の理由を告げれば足りる。」とする立場を取ります。したがって、勾留延長・勾留更新など開示当時の理由は告げません。

また、弁護人がその後の事情の変更により勾留の要件を欠くに至った旨を主張したときには、相応の手続(勾留取消請求等)を行うように勧めるのが慣行となっているようです。

②捜査の密行性

また、裁判官は、一般的に、捜査の密行性を理由に、証拠の具体的内容には触れません。

③検察官の出席

法83条3項本文では、検察官の出席は必要的ではありませんが、検察官が出席しているときは、弁護人の求釈明に対する意見を述べたりします(法84条2項本文)。

④弁護人の意見書

なお、弁護人の意見陳述に当たっては、裁判官から、後に意見書を提出するように求められる場合が多いようです(規85条の3第2項)。

(6) 閉廷宣言

「以上で、本件勾留開示の手続を終了します」

4.開示すべき理由の時点

裁判官は、勾留の理由を告げなければならないとされています(法84条1項)。では、いつの時点の理由を告げるべき(すなわち、開示すべき)なのでしょうか。

この点については、⑴勾留状発付当時の理由を告げれば足りるとする説、⑵勾留状発付当時の理由だけでなく、開示当時の理由をも告げるべきであるとする説に分かれています。

裁判実務では、一般的に、⑴説に立って運用されていると思われます。⑴説の主たる理由は、

「憲法34条後段は、拘禁の理由、すなわち勾留状発付の正当性の根拠を公開の法廷で明らかにすることを要請しているにすぎず、これを受けた勾留理由開示の制度は、その要請に基づくものであるから、勾留状発付当時の理由を告げれば足りると解される。」

とするものです。

そして、上記2(4)に関する最高裁の判例の趣旨も、⑴説を支持するものとするのです。

⑵説は、

「勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、職権で、勾留を取り消さなければならない(法87条1項)。したがって、最初の勾留当時の事情がそのまま続いている限りでは、告知を要する法60条1項各号に当たる事由は、勾留状発付当時のそれを告げればよい。

しかし、各号の事由が途中で変更された場合には、開示当時のものも告知すべきである。それが、被疑者の、現時点でも、何故勾留されているのか説明してほしいという要請にも答えるものである。

要するに、勾留当時の理由のほかに、その後現在に至るまで勾留している理由をも併せて説明すべきである。」(代表的なものとして、東京地裁判事熊谷弘「令状事務処理の基調―新任裁判官の門出にあたって―」判タ232号31頁、同判事の「座談会における発言」判タ184号70頁各参照)

とするものです。

5.開示すべき理由の範囲とその程度

開示すべき理由の範囲とその程度

開示すべき理由の範囲とその程度については、①単に犯罪事実と法60条1項各号の事由を告げれば足りるとする説、②事実を示せば足り、証拠を示す必要はないとする説、③証拠を示すべきであるとする説に分かれています。

裁判実務では、①説は「勾留の正当性を判断することができず、勾留の理由を開示したことにはならない。」ので、採り得ないとされており、一般的には、②説に立ち、捜査の密行性から、証拠資料の標目や具体的な内容まで告げるべきでないと解されています。

敷衍しますと、開示すべき勾留の理由は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることと、法60条1項各号に当たる事由のあることであって、これらを具体的に告げればよく、それを基礎づけるに足る証拠の標目、内容などの詳細を具体的・個別的に告げるべきではないと解されているのです。また、開示すべき理由は、拘禁するについての正当な理由ですから(憲法34条後段)、これには勾留の必要性をも含むと解されています。

しかし、従来から、裁判実務では、②説を基本としながら、その修正的な運用も行われているのです。

ここで、参考のため、その立場を紹介しておきましょう。

「訴訟書類の開廷前の非公開を定めている関係から、証拠の内容を明らかにするのは適当でないし、また、証拠を開示することによって罪証隠滅に便宜を与えるおそれもあり、検察官の証拠収集の程度を探知する方法としてのみ、この制度を利用するといった弊害も生じかねない。

しかし、勾留理由開示制度の目的は、勾留の理由を開示して、勾留の裁判の正当性を公にするという点にあるから、そのためにはある程度具体的な理由とその根拠の開示が必要である。そうとすれば、犯罪の嫌疑と法60条1項各号の事由(勾留の必要性を含む。)については、裁判所が証拠資料によって認定した具体的な事実を告げるとともに、証拠資料の表題、作成者、供述者等を告げる必要はないが、ある程度の証拠の内容を明らかにすることも許される。

具体的に証拠をどのように告げるのかは、個々の証拠を挙示できないので、準抗告決定の理由で示される程度に、例えば、供述者の氏名を明らかにしないで、単に目撃者の供述によるとか、医師の診断書によるとか、実況見分調書によるとかといったように、概括的に証拠の種類を告げれば足り、それで十分である。」

というものです。

この立場では、どのような勾留理由の開示になるのでしょうか。窃盗被疑事件で勾留され、その早い段階での勾留理由開示の例を紹介しておきます。

「勾留理由を開示します。本件勾留状発付時において、被疑事実の要旨は、『被疑者は・・・・・を窃取した』というものです。一件記録によれば、この被疑事実については被疑者に相当の嫌疑があります。

すなわち、関係者の供述及び被害届等によれば、盗難被害の翌日被疑者が盗品を所持していたことが認められるところ、この点に関する被疑者の弁明には何ら合理性が認められないから、被疑者が本件被疑事実を犯したことを疑うに足りる相当な理由があります。被疑者は居住関係が不明ですから、住居不定に当たります。

そして、本件事案の性質に加え、証拠の内容、すなわち、被疑者がアリバイ工作をし、参考人の出頭を控えさせ、出頭した場合における供述拒否を指示していることなどに照らし、関係者に働きかけるなどして、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が認められます。

また、本件犯行の性格、被疑者の職歴、家族関係、生活状況、前科前歴などに照らすと、被疑者に逃亡すると疑うに足りる相当な理由も認められます。

以上の次第で、本件については、刑訴法60条1項1号ないし3号に定める事由があり、かつ、前記の諸事情、特に、本件犯行の罪質、動機、態様、結果、前科前歴に照らすと、勾留の必要性も十分認められます。勾留理由は以上のとおりです。」

6.求釈明等をめぐる具体例

ここで、勾留理由開示の法廷において、一般的に行われている具体的なやり取りを見てみましょう。

(1) 勾留理由は開示当時の理由も告げられたい

「勾留状発付当時の理由を告げれば足りると考えます。」「現在の勾留理由の存否を問題にされるのであれば、勾留取消しの手続を取って下さい。」

(2) 相当な嫌疑があることを認定した具体的な根拠ないしは証拠を明らかにされたい

「検察官から提出を受けた関係証拠によって被疑事実が認められます。敷衍しますと、本件被疑事実は、被疑者、共犯者、目撃者、被害者、関係者の供述、被害届、実況見分調書、診断書等により認められたということです。証拠を開示するための手続ではありませんので、証拠資料を挙示することはできません。」

(3) 法60条1項各号の事由を認定した具体的な根拠ないしは証拠を明らかにされたい

「証拠開示の手続ではありませんし、捜査の密行性から個々の証拠は挙示できません。しかし、裁判所が証拠資料によって認定した具体的な事実を告げるとともに、ある程度の証拠の内容を明らかにすべきであると考えます。

ただ、その場合も、個々の証拠は挙示できませんので、単に、被疑者、共犯者、目撃者、被害者、関係者の供述、被害届、実況見分調書、医師の診断書等のように、概括的に証拠の種類を示せば足り、証拠資料を挙示することはできません。」

(4) 法60条1項2号との関係ですが、どの事実に関するどの証拠をどのように隠滅するのか明らかにされたい

「既存の証拠を隠滅・毀滅する場合と虚偽の反対証拠を作出する場合が考えられます。その点でご意見があれば、弁護人の判断に基づき、意見陳述でおっしゃって下さい。」

(5) 現在では、勾留当時の勾留の理由及び勾留の必要性がないというべきですから、勾留を取り消されたい

勾留取消しの申立てをして下さい。」

(6) 接見等を禁止した理由について明らかにされたい

「前に述べたように、被疑者には罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がありますので、接見禁止の処分を付するのが相当であるということです。」「不服があれば、不服の申立てをして下さい。」

(7) 忌避の申立て

新たな裁判をするわけではありませんから、申立ての利益がなく不適法です。

7.勾留理由開示の請求をするメリットとデメリット

勾留理由の開示は、直接に勾留を取り消すための制度ではありませんが、

  1. 準抗告や請求による勾留の取消しなど、被疑者の解放に向けての弁護活動のヒントになり得ること
  2. 裁判官に対して勾留の要件について再考する機会を与えて、職権による勾留の取消しのきっかけとなり得ること
  3. 勾留延長につき慎重さを期待し得ること
  4. 捜査機関、特に検察官の取調べへの牽制になり得ること
  5. 家族との対面の機会にもなること

などのメリットがあります。

他方で、公開の法廷ですので、被疑者の姿をさらすことになることはデメリットといえます。確かに、勾留理由開示請求は、平成27年の司法統計でも、地裁・簡裁の延べ人数の総計が559人(最高裁刑事局「平成27年司法統計年報2刑事編」)と極めて少なく、その少ない理由が、裁判官の開示理由の告知が定型的、画一的で、マニュアル化された通り一編のため、実効性がないと考えられているからと指摘されています。

しかし、上述のように、デメリットはほとんどなく、メリットが大きいわけですから、勾留理由開示の制度を積極的に利用すべきとの意見も強いのです。

8.まとめ

逮捕後、勾留されてしまい、勾留されたことに納得がいかないという場合には、その勾留理由を開示してもらうことができます。

しかし、被疑者又は被告人本人が勾留理由開示の請求をするのはもとより、公開の法廷で裁判官に釈明を求めたりするのは至難のことです。そのため、勾留理由開示はその手続に精通している弁護士に依頼するべきです。

泉総合法律事務所は、勾留阻止・釈放の経験が大変豊富な弁護士事務所です。もし勾留されてしまったという場合、お早めに泉総合法律事務所にご相談ください。初回相談料は無料です。

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