強制性交等罪とは?強姦罪はどのように改正されたか?わかりやすく解説

強制性交等罪

「強制性交等罪」「準強制性交等罪」とは?

1.はじめに

性犯罪を厳罰化する刑法改正案が可決されました。110年ぶりの大幅改正となりますが、罪名が変更された「強制性交等罪」(読み方:きょうせいせいこうとうざい)・「準強制性交等罪」は具体的にどのような内容となっているのでしょうか?

改正刑法は、6月23日に公布され、7月13日に施行されました。

【参考】110年ぶりの刑法改正。性犯罪が厳罰化!

2.強制性交等罪の構成要件及び法定刑

⑴ 強制性交等罪(改正刑法177条)

① 構成要件及び法定刑

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

② 処罰対象の拡張

改正刑法は、処罰対象を拡張し、改正前の刑法(177条)が「女子を姦淫した」と規定していたのに対し、被害者の性別を問わず、人に対して「性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした」と改めました。

③ 要件の検討

㈠ まず、犯行の手段としての暴行・脅迫の程度については、改正前刑法の場合と同じです。重要な点ですので、もう一度、確認しておきましょう。

改正前刑法177条は、「暴行又は脅迫を用いて」なされた姦淫について強姦罪が成立するとしています。この点、最高裁判例(最決昭33.6.6)においては、強姦罪における暴行・脅迫の認定について、

「その暴行又は脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度(抗拒を著しく困難ならしめる程度)には達しないと認められるようなものであっても、その相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴って、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである。」

とされています。

そして、この判例の趣旨から、ここでいう「暴行又は脅迫」とは、強盗罪におけるように相手方の反抗を抑圧する程度のものであることを要せず、反抗を著しく困難ならしめる程度のもので足りると解されています。これが一般的な理解です。

㈡ 次に、問題となるのは、「性交等をした」に関してです。性差による犯罪の成否の差異を解消するという観点から、性交等には、行為者が、被害者の膣内、肛門内又は口腔内に自己又は第三者の陰茎を入れることに加え、自己又は第三者の膣内、肛門内又は口腔内に被害者の陰茎を入れる行為も含まれると解されています。

④ 罪名の変更(強姦罪→強制性交等罪)

上記②③のとおり、改正刑法177条の罪の主体、客体の両方に男女とも該当し得ることとなったことから、罪名の名称も「強姦罪」から「強制性交等罪」へと改められることになったわけです。

⑵ 準強制性交等罪(改正刑法178条2項)

① 構成要件及び法定刑

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

② 処罰対象の拡張

改正刑法は、処罰対象を拡張し、改正前刑法(178条2項)が「女子を姦淫した」と規定していたのに対し、被害者の性別を問わず、改正刑法177条と同様、人に対して性交等をしたと改めました。

③ 要件の検討

まず、「心神喪失」、「抗拒不能」、「乗じ」及び「心神喪失・抗拒不能にさせ」についての理解は、改正前の刑法の場合と同じです。

すなわち、「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいい、熟睡、泥酔・麻酔状態、高度の精神病等がこれに当たります。また、「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態をいい、恐怖・驚愕・錯誤等によって行動の自由を失っているなどがこれに当たります。

そして、「心神喪失・抗拒不能に乗じ」とは、既存の状態を利用することをいい、泥酔している女性を姦淫すること、深夜夫と誤信させて姦淫することなどがこれに当たります。また、「心神喪失・抗拒不能にさせ」る方法には、麻酔、催眠術、欺罔などがあります。

次に、問題となる「性交等をした」については、強制性交等罪(上記⑴の③)で説明したとおりです。

④ 罪名の変更(準強姦罪→準強制性交等罪)

上記⑴の④のとおり、強姦罪から「強制性交等罪」への罪名の変更を受けて、「準強姦罪」も「準強制性交等罪」(改正刑法178条2項)に罪名が改められました。

⑶ 強制性交等罪・準強制性交等罪に共通

なお、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会(以下「部会」といいます。)では、性同一性障害者が受けた性別適合手術によって形成された膣又は陰茎に対する行為についても、個別具体的な判断によるものの、強制性交等罪・準強制性交等罪を構成し得ることが確認されています。

また、強姦致死傷罪は「強制性交等致死傷罪」とし、法定刑下限を懲役5年から6年にしました。

3.強制性交等罪の性交等の種類と量刑

⑴ 性交等の種類と量刑

改正刑法は、性交等として、性交、肛門性交又は口腔性交を構成要件として規定しています。

強制性交等罪・準強制性交等罪の性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害するという実態を持つ犯罪であります。そのような観点から、肛門性交や口腔性交も、膣性交と同等に処罰するものとして、法改正がなされたものと理解されています。

改正前の刑法と対比しながら、もう少し検討してみましょう。改正前の刑法では、肛門性交及び口腔性交は、強制わいせつ罪(176条。6月以上10年以下の懲役)に該当するとされ、強姦罪(3年以上の懲役)に比べて法定刑が軽くなっています。

しかし、肛門性交や口腔性交は、陰茎の体腔内への挿入という濃厚な身体的接触を伴う性交渉を強いられるものであって、強姦と同等の悪質性、重大性があると考えられることから、強制わいせつ罪に該当する行為から切り出して、強姦と同様に加重処罰の対象とすることが適当であると考えられ、改正刑法に盛り込まれたわけです。

そうしますと、性交、肛門性交又は口腔性交という、態様の違いのみで量刑に差をつけることは、法改正の趣旨に反することになります。基本的には、性交も肛門性交も口腔性交も、量刑上、同等の刑罰評価が想定されているというべきです。

さらに、法定刑については、性犯罪の悪質性及び重大性に比して、改正前刑法の強姦罪の法定刑の下限が低きに失し、国民意識と大きく異なるということから、強制性交等罪・準強制性交等罪の法定刑の下限が懲役5年に引上げられました。

そして、法定刑が引き上げられた結果、酌量減軽(66条)がなされない限り、執行猶予が付かないことになったという意味では、従来よりも、性犯罪に対する社会一般の評価を反映した厳しい量刑になることが、一応考えられましょう。

⑵ 逮捕後の流れ

被疑者は、逮捕されますと、最大72時間自由を制限されますが、通常、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、検察官は、被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める勾留請求をします。

裁判官は、検察官から勾留の請求がありますと、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、強制性交等罪・準強制性交等罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときに、被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、事案が複雑、共犯事件、証拠収集が困難など、やむを得ない場合には、更に10日間以内の延長が認めることもあります。さらに、起訴された場合には、釈放され、又は保釈が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

【参考】強制わいせつの痴漢

4.強制性交等罪の特徴と問題点・今後の課題

⑴ 特徴と問題点

特徴といえるのは、強制的な性交等により、身体的、精神的に重大な苦痛を伴う被害を受けることは、被害者の性別によって差はないと考えられることから、罪の主体、客体の両方に男女とも該当し得ることとなった点です。

また、強制性交等罪・準強制性交等罪及び同致死傷罪(改正刑法181条2項)の法定刑の下限(強制性交等罪・準強制性交等罪が懲役5年、同致死傷罪が懲役6年)が引き上げられ、それぞれ改正前刑法の集団強姦等罪(178条の2)及び同致死傷罪(181条3項)の法定刑の下限(集団強姦等罪が懲役4年、同致死傷罪が懲役6年)以上のものとなった結果、2人以上の者が現場において共同して行う強制性交等・準強制性交等については、引き上げられた法定刑の範囲内で量刑上考慮することにより適切な科刑が可能となったため、改正前刑法178条の2及び181条3項が削除されました。

なお、問題点としては、部会で検討された次のようなことが考えられます。

①膣や肛門への手指や異物の挿入についても、性交等と同等に取り扱うべきではないか。

②改正刑法でも、改正前刑法と同様、いわゆる性交同意年齢が13歳と設定されているが、性交同意年齢を引き上げるべきではないか。

③強制性交等罪における暴行・脅迫要件を緩和すべきではないか。

⑵ 今後の課題

今後の課題としては、法内容としての上記⑴に掲記した問題点に加え、教育現場における性暴力防止に向けての取組、性犯罪被害に対する被害者支援、刑事裁判における被害者支援の充実などがあると考えられます。

⑶ 性犯罪の厳罰化のまとめ

  • 「強姦罪」3年以上の有期懲役
    →「強制性交等罪」5年以上の有期懲役
  • 「強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪」無期又は5年以上の有期懲役
    →「強制性交等致死傷罪・準強制性交等致死傷罪」無期又は6年以上の有期懲役

5.性犯罪の相談は泉総合法律事務所に

強制性交等・準強制性交等は、重い性犯罪であり、決して行ってはならないものですが、もし犯してしまった場合には、早急に当所までご相談ください。

その際、ご自身も強制性交等罪・準強制性交等罪について理解していることが、ある程度の先の見通しにもなります。

当所泉総合法律事務所は強制性交等など重い性犯罪の刑事弁護についても経験豊富ですので、家族が逮捕されるなどした場合にはご相談ご依頼ください。

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