DV防止法~配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

法律

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、「DV防止法」、あるいは、単に「法」といいます。)とはどのような内容で、どのような場合に保護命令が発せられ、それに違反したときはどうなるのでしょうか。

以下では、DV防止法所定の保護命令の内容や類型、保護命令違反で逮捕された後の流れなどについて、順次、解説することとします。

1.DV防止法の目的等

DV防止法は、配偶者の暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講じることを目的としています。

すなわち、DV防止法は、「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった」こと、「配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている」ことなどに鑑み、「このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図る」ものです(DV防止法前文参照)。

(1) 保護命令制度

そして、DV防止法は、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の被害者の保護体制の整備を図るとともに、加害者の被害者への接近等を禁止する保護命令制度(法10条)を導入しています。

この保護命令制度は、配偶者からの暴力により被害者の生命又は身体に対する重大な危害が発生するおそれが大きいと認められる場合に、迅速に、被害者の生命又は身体の安全を確保し、ひいては、家庭の平穏を確保するという観点から、国家が夫婦間の生活関係に後見的に介入し、加害者に対して、被害者への接近禁止等を命ずるものです。

2.保護命令の内容

(1) 保護命令の趣旨

保護命令は、配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者が、将来、配偶者からの身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められる場合に発せられます(法10条。ただし、法28条の2では、配偶者以外の一定の範囲の者にも準用されています。)。

ここにいう「配偶者」とは、婚姻の届出をした法律的な婚姻関係にある者のほか、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者(いわゆる内縁関係)を含む概念です(法1条3項)。

(2) 保護される被害者の範囲

被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいいます(法1条2項)が、具体的には、配偶者からの身体に対する暴力を受けた者、配偶者からの身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けた者、配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下「身体に対する暴力等」といいます。)を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合に、配偶者であった者から引き続き身体に対する暴力等を受けた者となります(法1条1項、10条1項、28条の2)。

ここにいう「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとされています(法1条3項)。

①「生活の本拠を共にする」場合

また、内縁関係に至っていないものの、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除きます。)をする関係にある相手から暴力を受けた者についても、保護命令をはじめとするDV防止法上の保護の対象とされています(法28条の2)。

そして、法28条の2の「生活の本拠を共にする」場合とは、法10条1項ただし書と同様に、被害者と加害者が生活の拠り所としている主たる住居を共にする場合を意味しています。

なお、「配偶者からの暴力」とは、「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」であると定義されています(法1条1項)。

(3) 保護命令の申立権者

保護命令の申立権者については、上記⑵の被害者のうち、「配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫)を受けた者」に限定されています(法10条1項本文)。

具体的にみてみますと、保護命令の申立権者は、法律婚、事実婚を問わず婚姻関係にある相手方から婚姻期間中に(又は生活の本拠を共にする交際相手から共同生活中に[法28条の2による準用])、生命又は身体に危害を及ぼす程度の身体に対する不法な攻撃を受けたか、生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫を受けた者、ということになります。

そして、法10条1項本文により、被害者は、配偶者からの暴力等を受けた後に離婚等をした場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力からの保護も図られていることから、同項の要件に該当する限り、元配偶者からの暴力に対しても保護命令を申し立てることができます。

なお、生活の本拠を共にする交際相手から暴力等を受けた後に生活の本拠を共にする交際関係を解消した場合にやいても、元「生活の本拠を共にする交際相手」に対する保護命令の申立が可能です[法28条の2]。

3.保護命令の類型

保護命令の類型

※ DV防止法上、裁判所が発する保護命令の類型は、次のとおりです。

(1) 被害者への接近禁止命令

被害者への接近禁止命令とは、配偶者に対し、命令の効力が生じた日から起算して6か月を経過する日までの間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除きます。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。

被害者への接近禁止命令においては、①被害者が配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けたこと、及び②配偶者からの身体に対する暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいことが発令の要件になっています(法10条1項柱書)。

①条文の解説

身体に対する暴力とは、「身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの」(法1条1項)であり、具体的には、刑法上、暴行罪又は傷害罪に当たるような行為がこれに該当します。

また、「生命等に対する脅迫」とは、刑法上の脅迫罪に当たるもののうち、「生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫」をいい(法10条1項柱書)、具体的には、「殺してやる」、「腕を折ってやるぞ」、「ぶん殴ってやる」といった言動がこれに該当します。「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれ」とは、被害者に対し、殺人、傷害等の被害が及ぶおそれをいうとされています。

(2) 退去命令

退去命令とは、配偶者に対し、命令の効力が生じた日から起算して2か月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。

退去命令においては、①被害者への接近禁止命令と共通の要件(上記⑴の①②の要件。法10条1項柱書)に加え、②申立ての時において被害者が配偶者と生活の本拠を共にすることが発令の要件になっています(同項ただし書)。

「生活の本拠を共にする」場合とは、上記のとおり、被害者及び配偶者が生活の拠り所としている主たる住居を共にする場合を意味しています。

(3) 電話等禁止命令

電話等禁止命令とは、配偶者に対し、命令の効力が生じた日以降、被害者への接近禁止命令の効力が生じた日から起算して6か月を経過する日までの間、被害者に対して法10条2項1号ないし8号所定のいずれの行為もしてはならないことを命ずるものです。

電話等禁止命令は、「前項本文に規定する場合において、同項第1号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所」が発令することと定められているため、被害者への接近禁止命令が同時に発令されること又は既に発令されていることが要件となります(法10条2項柱書)。

(4) 子への接近禁止命令

への接近禁止命令とは、配偶者に対し、命令の効力が生じた日以降、被害者への接近禁止命令の効力が生じた日から起算して6か月を経過する日までの間、被害者と同居する成年に達しない子の住居、就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。

①発令の要件

子への接近禁止命令は、①被害者への接近禁止命令と共通の要件(上記⑴の①②の要件。法10条1項柱書)に加え、②被害者が成年に達しない子と同居していること、③配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があることが発令の要件になっています(法10条3項本文)。

また、申立ての要件として、④当該子が15歳以上であるときは、その同意があることが必要です(法10条3項ただし書)。

そのほか、子への接近禁止命令は、「第1項本文に規定する場合において」、「第1項第1号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所」が発令することと定められているため、被害者への接近禁止命令が同時に発令されること又は既に発令されていることが要件となります(法10条3項本文)。

(5) 親族等への接近禁止命令

親族等への接近禁止命令とは、配偶者に対し、命令の効力が生じた日以降、被害者への接近禁止命令の効力が生じた日から起算して6か月を経過する日までの間、親族等の住居その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい、又は当該親族等の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものです。

親族等への接近禁止命令は、①被害者への接近禁止命令と共通の要件(上記⑴の①②の要件。法10条1項柱書)に加え、②配偶者が親族等の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があることが発令の要件になっています(法10条4項)。

①申立ての要件

また、申立ての要件として、対象となる親族等が被害者の15歳未満の子である場合を除いて、③対象となる親族等の同意(当該親族等が15歳未満の者又は成年後見人である場合にあっては、その法定代理人の同意)があることが必要です(法10条5項)。

そのほか、親族等への接近禁止命令は、「第1項本文に規定する場合において」、「第1項第1号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所」が発令することと定められているため、被害者への接近禁止命令が同時に発令されること又は既に発令されていることが要件となります(法10条4項)。

親族等への接近禁止命令の対象となる親族等とは、「被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者」をいうと解されています。

そして、「親族」とは、民法725条に規定する「親族」をいい、「被害者と社会生活において密接な関係を有する者」とは、被害者の身上、安全などを配慮する立場にある者をいい、例えば、職場の上司、DVセンターやシェルターの職員のうち、被害者に継続的な保護・支援を行っている者などがこれに当たり得ます。

5.保護命令違反の刑事罰

保護命令に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(法29条)。

なお、記載事項について虚偽の記載のある申立書により保護命令の申立てをした者は、10万円以下の過料に処せられます(法30条)。

6.保護命令違反で逮捕された後の流れ

配偶者の被害者に対する行為が、刑法上の犯罪に該当する場合には、一般の刑事事件として処理されることになります。ここでは、配偶者が、DV防止法の保護命令違反で逮捕された場合について解説していきます。

配偶者には、一般的な例でいいますと、今後も、被害者に対し、その生命や身体に危害を加えるおそれがあるわけですから、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるものとして、逮捕に続き、勾留の手続がとられるものといえます。

そうしますと、最大72時間の逮捕に加え、10日間の勾留、更に10日以内の延長が認められることも考えられます。さらに、起訴された場合には、釈放され、又は保釈が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

(1) 処分について

DV防止法の保護命令違反で逮捕された場合、その処分としては、その法定刑からしますと、検察官による不起訴処分(起訴猶予)、罰金、執行猶予付、保護観察付執行猶予、実刑が考えられます。
しかも、裁判例の中には、前科のない場合でも、保護命令違反に加え、被害者が身を寄せていた親族方に侵入した事案に関し、懲役8月の実刑が言い渡されたものもあります。

一般の刑事事件であれば、被疑者・被告人の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談といえるでしょう。しかし、配偶者と被害者の関係からしても、示談の成立は極めて難しいと考えられます。

7.おわりに

DV防止法の保護命令に違反しますと、逮捕されるのみならず、懲役又は罰金に処せられて、前科がつくことになってしまいます。

DV防止法の目的が、配偶者の暴力を防止し、被害者を保護するためであることを考えますと、被害者の保護の観点から、配偶者については、被害者と距離を置く対応を取ることの方が、むしろ望ましいわけです。被害者の心情にも配慮しながら、加害配偶者の対応はどうあるべきかについては、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)事件に精通している弁護士に委ねるのが望ましいといえます。

適切な対応が早ければ早いほど、加害配偶者に有利な処分結果が出ることが期待できますので、被疑者が逮捕された直後の早い段階で弁護士に依頼しましょう。弁護活動により不起訴となり、前科がつかないで済む可能性もあります。

最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な泉総合法律事務所に是非弁護依頼をしてください。

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