身近な法律の疑問 [公開日]2017年10月20日[更新日]2021年3月31日

軽犯罪法違反は誰でも起こし得る!?全条文の具体的なケースを解説

「軽犯罪法」という名称はよく耳にするとしても、実際にどんなことが「軽犯罪」にあたるのかは案外知られていません。

この記事では、軽犯罪法に定められた軽犯罪のすべてについて解説を加えていきます。

1.軽犯罪法とは

(1) 軽犯罪法の目的

軽犯罪法は、「国民が日常生活で守るべき最低限度の道徳を定めた法律」と説明されることがあります。

この説明が本当に正しいかどうかはさておき、確かに軽犯罪法の中には、日常見かけることの多い、「悪い行為」が処罰対象となっているものが多いようです。

なお、軽犯罪法が規制している行為は全部で33個あります(条文は34号までありますが、現在、21号の罪は削除されています、その詳細も後ほど説明します)。

(2) 軽犯罪法の刑罰

軽犯罪法違反の法定刑は「拘留」又は「科料」です(第1条柱書)。
拘留は、1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束することです。科料は、1000円以上1万円未満の範囲で金銭を徴収することです。

軽犯罪違反に対しては、「情状に因り、その刑を免除し、又は拘留及び科料を併科することができる」(第2条)とされています。

「刑の免除」とは、軽犯罪法違反の犯罪は成立しており、有罪であるが、刑罰は科さないという扱いです。

情状を考慮して刑の免除に相当すると検察官が判断する場合には起訴猶予となりますが、検察官に起訴され裁判官が刑の免除が相当と判断したときは、有罪判決の中で刑の免除を言い渡されます(刑事訴訟法334条)。

「拘留及び科料を併科することができる」とは、情状を考慮して、拘留と科料の両方の罰を与えることも可能ということです。

なお、拘留・科料は、刑の執行猶予の対象外ですので、軽犯罪法違反には執行猶予は付きません(刑法25条)。

また、軽犯罪法違反は未遂を処罰する規定がありません。

(3) 軽犯罪法違反の公訴時効

軽犯罪法違反は犯行終了から1年で時効となり、検察官は起訴できなくなります(刑事訴訟法250条2項7号)。

2.各違反行為の解説

では、軽犯罪法違反の各条文を見ていきましょう。

(1) 潜伏の罪

1号 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者

人が住まず、管理もしていない建造物や船の内部に隠れる行為が処罰対象となります。正当な理由とは違法性がない場合を意味し、例えば暴漢に追われて身を隠すケースのように緊急避難が成立する場合などが考えられます。

(2) 凶器携帯の罪

2号 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

日本刀、匕首、包丁、登山ナイフ、鉄パイプ、防犯スプレー、スタンガンなどが禁止対象の典型例です。隠して携帯することが禁止されていますから、バッグやポケットに入れて、外部から見えないように持ち歩く行為が処罰されます。

正当な理由とは、やはり違法性がない場合を意味しますが、最高裁判例によると、隠匿携帯行為が、①器具の用途・形状・性能、②職業や日常生活との関係、③日時・場所、行為態様、周囲の状況、④動機・目的などを総合的に勘案して、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上相当と認められる場合をいうとされており(※護身用催涙スプレーの携帯に正当な理由があるとした最高裁平成21年3月26日判決)、単に「護身・防犯目的」というだけで正当な理由と認められるわけではありません。

[参考記事]

軽犯罪法と刃物|凶器携帯の罪について

(3) 侵入具携帯の罪

3号 正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

禁止対象は、合かぎ、のみ、ガラス切りだけでなく、縄ばしご、ロープ、ドライバー、カッター、懐中電灯などが含まれ、外部から見えないようにバッグやポケット内で持ち歩く行為が処罰されます。

(4) 浮浪の罪

4号 生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの

収入がなく、通常の働く能力に欠ける事情もないのに、働くつもりがないまま、住むところもなく、浮浪徘徊する行為を処罰しています。

(5) 粗野乱暴の罪

5号 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者

不特定多数人が出入りし、利用する公共の娯楽場、公共の乗物における迷惑行為を処罰しています。「著しく粗野な言動」とは場所柄や礼儀をわきまえない言動であり、「乱暴な言動」とは荒々しい言動を意味します。

典型的な例として、禁煙場所での喫煙行為、悪臭を発する物を携帯して乗車する行為、他の客にからむ行為、大声でわめき散らす行為などが考えられます。

他人に有形力を行使したり、害悪を及ぼすことを告知したりすれば、粗野乱暴の罪と同時に、刑法の暴行罪脅迫罪が成立します。

(6) 消灯の罪

6号 正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し、若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者

「標灯」とは明かりを標識(目印)としているもので、例えば警察署や病院の赤色灯が典型例です。
「灯火」は明かりを指し、蝋燭、松明、ガス灯、電灯など種類を問いませんから、「消した」とは火を消したり、電気スイッチを切ったりして消灯することを意味します。

いたずら目的で街灯を消してしまい通行者などの安全が害されること等を防止する狙いがあります。

(7) 水路交通妨害の罪

7号 みだりに船又はいかだを水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者

水路とは、船やいかだが往来する河川、運河、湖沼などです。交通が予想されない池や用水路は含まれません。その他水路の交通を妨げる行為としては、虚偽の通行止め標識を立てる行為や、スクリューにからまる網などを投棄する行為なども考えられます。

(8) 変事非協力の罪

8号 風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、正当な理由がなく、現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み、又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者

例えば、天災、事故、事件の際に、現場での出入りを禁止する警察官などの指示に従わない行為などを処罰しています。

「その他の変事」としては火山噴火、落雷、ガス爆発などが考えられます。公務員を「援助する者」とは、例えば公務員の指示を伝達して避難誘導する民間人が挙げられます。

「公務員から援助を求められ」て応じない場合も処罰対象となっていますが、法律で義務づけられていない行為を罰則をもって国民に強制することはできませんので、これに該当する場面は想定し難いと評されています。

(9) 火気濫用の罪

9号 相当の注意をしないで、建物、森林その他燃えるような物の附近で火をたき、又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者

火災の起きやすい場所でのたき火行為や、引火しやすい燃料などの近くで火を扱う行為は、それによって火災を発生させれば刑法の失火罪(刑法116条)で処罰されますから、火気濫用の罪は、火災発生に至る前の危険な行為を処罰対象としているものです。

「相当の注意をしないで」とは、通常人に一般的に期待される程度の注意を払わないことで、例えば、十分な消火器や消火用水を準備せずにキャンプファイヤーを行った場合などが考えられます。「引火しやすい物」とは、火薬、アルコール、油、ガス、セルロイド等です。

(10) 爆発物使用等の罪

10号 相当の注意をしないで、銃砲又は火薬類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者

過失で火薬やボイラーを爆発させた場合は、刑法の過失激発物破裂罪(刑法117条2項)となりますから、爆発物使用等の罪は、爆発に至る前の危険な行為を処罰対象としているものです。

「その他の爆発する物」としては火炎瓶や圧縮ガスボンベなどが該当します。禁止されるのは、一般人に期待される程度の注意を欠いて「使用」することと、「もてあそぶ」ことです。

「使用」は、その物の通常の用法にしたがって使うことですが、「もてあそぶ」とは、なぐさみ、好奇心、いたずらなどで、何ら本来の必要がないのに、これを取り扱うことです。

(11) 危険物投注等の罪

11号 相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者

人体や財物(動産・不動産を問いません)の安全を守るために、人に怪我をさせたり、財物の価値を低下させたりする危険のある行為を処罰するものですが、禁止対象となっている行為が、特定の場所への投げ込み、注ぎ、発射行為に限定されていることに特徴があります。

次のような例が考えられます。

  • 路上にバナナの皮やガラスの破片を投げ捨てる行為
  • 歩道でキャッチボールをする行為
  • かんしゃく玉を歩道に投げつける行為

(12) 危険動物解放等の罪

12号 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠つてこれを逃がした者

例えば、過去に人に噛みついたことがあり、噛みつく癖があることの明らかな犬の飼い主が、わざと犬を解放したり、不注意で逃がしたりしてしまう行為が処罰対象です。

その犬が実際に他人に噛みついてしまえば、買主は傷害罪(わざと噛みつかせるために開放した場合)や、過失傷害罪(不注意で逃がした場合)に問われるので、本号は、それに至る前の開放行為など自体を禁止するものです。

(13) 行列割込み等の罪

13号 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物、演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち、若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者

前段の「公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ」は、5号粗野乱暴の罪と同じであり、娯楽場ではない公共の場所での言動が本号の対象となります。
「威勢を示す」とは、人の意思を制圧する勢力、威力があることを示すことです

※現在は物資の配給制はありませんから、条文を読む際には「割当物資の配給」は無視して構いません。

条文の後段を整理すると、処罰対象は次の行為となります。

威勢を示して、次の行列に「割り込む行為」及び「列を乱す行為」
・公共の乗物への乗車・乗船を待つ行列やその切符を買う行列
・演劇その他の催しを待つ行列やその切符を買う行列

(14) 静穏妨害の罪

14号 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者

公務員とは通常、警察官を想定しています。異常に大きい音か否かは、場所や時間を考慮したうえで、社会通念上相当な限度を超えているかどうかで判断されます。

例えば、次のような裁判例で、本号の適用が認められています。

市街地の電柱に拡声器を取り付けて、連日、午前8時30分ころから午後7時ころまで、間断なく、4メートル先の喫茶店のガラス窓にビリビリと響く程度の音量での放送宣伝を行い、近隣から苦情が寄せられた警察が、再三にわたって注意を受けたにもかかわらず、これに従わなかった事案(東京高裁昭和27年3月11日判決・高裁刑集5巻3号409頁)。

(15) 称号詐称、標章等窃用の罪

15号 官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者

例えば、警察官ではないのに警察官だと名乗ることは、地方公務員である警察官の職名を詐称することに該当します。博士号を取得していないのに、○○博士と名乗ることは、学位の詐称です。法令によって定められた称号とは、弁護士、医師などの名称です。外国におけるこれらに準ずる称号の詐称とは、例えば、事実でないのに「私は米国弁護士の資格を持っています」と偽る場合です。

法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章とは、例えば、警察官、自衛官、消防隊員の制服やバッジなどを指します。資格がないのに、これらを身につけたり、本物と誤信されるような偽物を身につけたりすることが禁止されています。

最高裁は、現役の裁判官が、「検事総長の○○だ」と名乗って、総理大臣に電話をかけたという事件において、その人物自体に成りすます場合も本号の適用があると判断しています(※最高裁昭和56年11月20日決定)。

(16) 虚構申告の罪

16号 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者

いわゆる「狂言強盗」、例えば、会社の売上金を使い込んでしまったことを隠すために、警察に「強盗に金を取られた」と110番通報すれば、虚構の犯罪を公務員に申し出た者として、本号に該当します(もちろん、別途、会社を被害者とする業務上横領罪も成立しています)。

特定の人を罪に陥れるために、その人が犯罪を犯したとの虚偽の申告(例えば被害届けや刑事告訴)をした場合は、刑法の虚偽告訴罪(刑法172条)となります。「○○に脅されて金を奪われた」と申告する場合がこれにあたり、この場合は、本号の適用はありません。

(17) 氏名等不実申告の罪

17号 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に、法令により記載すべき氏名、住居、職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者

質屋営業法や古物営業法では、犯罪の被害品が流通することを防止し、また窃盗など財産犯罪の捜査を容易にするために、取引の際に、法定された内容の帳簿の記載を義務づけています。

これら業者への質入れ・売却の際に、虚偽の事実を申告して、真実と異なる記載をさせる行為が処罰対象です。

(18) 要扶助者・死体等不申告の罪

18号 自己の占有する場所内に、老幼、不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら、速やかにこれを公務員に申し出なかつた者

例えば、自分の家の庭に、老人や幼子、障害や病気で助けを必要とする者が倒れている場合、その者が自分と同居する家族であるとか、自分がその者を庭に運んできたなどの事情がない限り、これを保護しなくてはならない義務はありませんから、保護せずに放置しても、刑法の遺棄罪(刑法217条)や保護責任者遺棄罪(刑法218条)には問われません。

また、同じく庭に人の死体や死んだ胎児が置かれていても、自分が置いたものでないならば、これを放置しても、死体損壊等罪(刑法190条)には問われません。

しかし、公務員(具体的には警察官)よる迅速な保護・捜査が可能となるよう、速やかに通報する最低限の義務を課すことは不合理ではありませんから、この程度の義務を果たさない行為を本号で処罰しているのです。

(19) 変死現場変更の罪

19号 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者

死因が不明な死体または死んだ胎児が存在する場合、当然、犯罪の可能性があり、捜査の必要性があります。そこで遺体を動かしてしまったり、現場を掃除して足跡や残留品の発見を困難にしてしまったりすることのないよう、状況を変えない義務を課しているのが本号です。

火事場の死体や線路上の死体は、これを移動させないと、火災の消火ができない、電車の運行を再開できないといった社会的な支障が生じるので、正当な理由があると理解されています。

(20) 身体露出の罪

20号 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者

不特定または多数人が認識できる状態で性器を露出するなど、一般人に性的羞恥心を覚えさせる行為を行うことは、刑法の公然わいせつ罪(刑法174条)となりますから、その程度に至らない露出行為を処罰するものです。

「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」とは、一般人の風俗感情上、不快の念を抱くような方法と解説されていますが、性的羞恥心を覚えさせる行為との区別はあいまいと言わざるを得ません。

教科書的には、性器の露出は公然わいせつ罪、それ以外の身体部分の露出は本号と説明されていますが、常にそのように明確に割り切れるかどうかは疑問です。

(21) 動物虐待の罪(削除)

21号は「牛馬その他の動物を殴打し、酷使し、必要な飲食物を与えないなどの仕方で虐待した者」という「動物虐待の罪」が定められていましたが、昭和48年の「動物の保護及び管理に関する法律」の成立によって削除されました。

同法は現在では、「動物の愛護及び管理に関する法律」と名称が変更され、その44条で動物虐待行為を処罰しています。

(22) こじきの罪

22号 こじきをし、又はこじきをさせた者

こじきをする自由があるのが資本主義社会だという言葉もありますが、こじきが増えては善良な風俗が害されるという観点から、こじき自体を禁止するのが本号です。

「こじき」とは、道ばたなどで不特定の人に哀れみを乞い、同情心に訴えて、自己又は自己の扶養する者のために、生活に必要な金品の交付を求める行為です。「こじきをさせた者」も含めているのは、同情を得やすいように、子どもにこじき行為をさせる例が多かったからです。

(23) 窃視の罪

23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

人の私的領域をのぞき見する行為を処罰するもので、プライバシー保護を目的とすると理解されています。

のぞき見には、望遠鏡やファイバースコープなどの光学機器を利用した場合も含まれるので、本号の行為には、必ずしも住居への侵入を伴いません。遠くから望遠レンズでのぞいた場合も本号違反となります。

住居やその敷地への侵入を伴えば、住居侵入罪(刑法130条)となりますし、カメラなどで撮影すれば、各都道府県の迷惑防止条例違反に問われる可能性もあります。

[参考記事]

のぞきは何罪?刑罰は?

(24) 儀式妨害の罪

24号 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者

「儀式」とは、ある程度の数の人が集まり、それらの人が一定の目的のために形式的な行事を行うことをいいます。公的、私的を問いません。議会の開会式、警察隊の閲覧式、結婚式、卒業式、入学式、入社式などです。

「悪戯」とは、いたずらです。あくまでも、たわむれによる行為と評価できる場合であって、暴行、脅迫、威嚇などに至らないことが必要です。いたずらとは言えない場合は、刑法の業務妨害罪(233条、234条)に問われる可能性があります。

「妨害した」ことが必要ですから、一時的にせよ式の進行に支障を生じたことを要します。

(25) 水路流通妨害の罪

25号 川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者

水路の流れを妨げ、氾濫の危険を生じさせたり、生活用水・農業用水など水の利用をに支障をきたす危険のある行為を処罰するものです。

「みぞ」とは、河川に至らない規模の、主として人工的な流水施設を指します。「その他の水路」は、水の通過を目的とする一切の施設を指し、上下水道管もこれに含まれます。

川などに大量のゴミを投棄する行為、汚物でわざと下水を詰まらせる行為も、本号に該当します。

(26) 排せつ等の罪

26号 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

公衆衛生維持と公衆道徳の観点から設けられている規定です。いわゆる「立小便」がこれにあたります。

(27) 汚廃物放棄の罪

27号 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者

環境衛生の観点から定められた規定です。「公共の利益に反して」が、ポイントであり、たとえば自宅の庭に生ゴミを捨てたことで、お隣から「臭い」と苦情がきても、いまだ「公共の利益」に反しているとまでは言えないでしょう。

ただ、庭に捨てた生ゴミが大量にたまり、お隣だけでなく近隣周囲にひろく悪臭を放つようになれば、不特定多数に被害を与えており、「公共の利益」に反したとして、本号が適用される可能性があります。

(28) 追随等の罪

28号 他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

被害者の行動の自由を保護するための規定で、処罰されるのは、次の3つの行為です。

①他人の進路に立ち塞がる行為
②他人の身辺に複数人で群がって立ち退かない行為
③不安や迷惑を覚えさせるような仕方で、つきまとう行為

①と②は、被害者の自由な行動を封じる行為であり、理解は容易でしょう。自転車、バイク、自動車などで被害者の進路を塞ぐ行為も①に含まれます。複数人で被害者を取り囲んで抜け出せなくすることが②の典型です。

問題は③です。「つきまとう」は、相手の動きに合わせてついて行く行為と理解できますが、「不安や迷惑を覚えさせるような仕方」とは何かは曖昧です。

教科書的には、「不安」とは生命・身体・自由・財産が侵害されるのではないかと心配に思う気持ちを指し、「迷惑」とは不安に至らない不都合・不快な気持ちと説明されていますが、このような気持ちを生じさせる「つきまとい行為」と生じさせない「つきまとい行為」に分けることができるのか判然としません。

(29) 暴行等共謀の罪

29号 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者

傷害、暴行、暴行を手段とする恐喝・強制性交・強制わいせつ・公務執行妨害など、広く人の身体を害することを内容とする犯罪の「共謀」が二人以上の者の間で行われ、かつ、そのうちの少なくとも一人が、それら犯罪の「予備行為」をおこなった場合、「共謀」しただけで予備行為をしていない者も処罰するという規定です。

「共謀」とは複数の者が特定犯罪の実行について意思を通じることであり、口頭でも手紙やメールでも構いません。一堂に会する必要もなく、順次、伝達形式での意思疎通も含まれます。

本号は「共謀すること」自体を処罰していますが、犯罪の成立範囲が広がりすぎないよう、共謀者の誰かが予備行為をおこなった場合に限定して処罰するという歯止めをかけています。

ただ「予備行為」とは、その犯罪を実行するための準備行為を広く含みます。例えば傷害目的でナイフを購入する行為は当然に予備行為ですが、被害者のもとへ歩いてゆくための運動靴を購入する行為のように、外形的に犯罪被害につながるとは判断できない行為までも広く予備行為に含まれてしまうので、歯止めになっているとは到底思えません。

(30) 動物使嗾・狂奔の罪

30号 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ、又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者

人畜とは「人や家畜」です。①人や家畜に、犬などの動物をけしかける行為、②馬や牛を驚かせて逃げ走らせる行為という2種類の行為が処罰されています。

(31) 業務妨害の罪

31号 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者

「業務」とは人が社会的な地位に基づき継続的に行う仕事を意味し、必ずしも経済的な対価を伴う必要はありません。

「業務」を、虚偽の噂を流したり、はかりごとをめぐらせたり、暴力を含む威勢を示したりして妨害するときは、刑法の偽計業務妨害罪、威力業務妨害罪となりますから、本罪に該当するのは、それに至らない、「悪戯」すなわち、たわむれに過ぎないと評価できる行為による妨害です。

例えば、次のような行為がこれに該当するとされています。

  • 火事でもないのに、火災報知器のボタンを押す行為
  • 胡椒を振りまいて演説を妨害した行為
  • 商店の値札を高値に書きかえて売れなくしてしまう行為
  • 消防署内の消防車のサイレンを勝手に鳴らす行為

ただ、上の各行為も、度をこせば悪戯とは言っていられないように思われますから、刑法上の業務妨害罪との限界は明確とは言えないでしょう。

[参考記事]

クレーム電話で逮捕・罰金・懲役!?威力業務妨害罪とは?

(32) 田畑等侵入の罪

32号 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者

「入ることを禁じた場所」とは、「関係者以外立ち入り禁止」との貼り紙、立て看板をするなど、管理者が他人の立入りを禁止する意思を表明した場所であり、ビル・学校・団地などの建造物だけでなく、駅・公園・庭園・駐車場など、あらゆる場所が対象となる可能性があり、刑法の住居侵入罪でカバーできない場所のプライバシーをも保護する規定と言えます。

「他人の田畑」とは、文字通り、他人の所有する田畑です。こちらはプライバシー保護とは無関係ですが、農業に従事される方にとって、田畑は我が子にも等しいと言われますから、端的に田畑を保護する規定と理解すれば良いと考えられます。

(33) 張り札、標示物除去の罪

33号 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし、若しくは他人の看板、禁札その他の標示物を取り除き、又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者

「はり札」は必ずしも「札」に限らず、材質、形状、大きさは問いません。貼り付ける方法も、糊・テープ・釘づけなど、方法の如何を問いません。

「家屋」は住居を指し、「その他の工作物」とは、門・塀・電柱・公園の彫刻物などを指します。「標示物」とは、他人が何かを表示しているもので、看板、禁札(何かを禁止することの表示)は、その例示です。

これらに貼り紙をしたり、標示物を取り去ったり、汚損したりすることは、他人の財産権、管理権を侵害する行為として本号で処罰されます。

また、これらの行為が建造物や財物の効用を失わせるに至っていると判断される場合には、刑法の建造物損壊罪(刑法260条)、器物損壊罪(刑法261条)に問われる場合もあります。

(34) 虚偽広告の罪

34号 公衆に対して物を販売し、若しくは頒布し、又は役務を提供するにあたり、人を欺き、又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者

いわゆる誇大広告などを処罰するものです。「頒布」は対価を得ない交付、「役務提供」は有償無償の労務提供、つまりサービスの提供です。無料の場合も規制対象としているのは、無料での頒布やサービスを餌にして、虚偽事実の宣伝を浸透させ、次の詐欺行為につなげる場合があるからです。

3.軽犯罪法違反でも弁護士に相談を

さて、これまでの説明から、軽犯罪法違反の中にも、例えば「業務妨害の罪」のように、評価によっては刑法犯として重く処分されてしまう危険がある犯罪があることがお分かりになったと思います。

また、軽い犯罪であるからこそ、本来なら処罰の必要などない軽微な行為が有罪とされてしまう危険が潜んでいると言えます。拘留・科料であっても有罪なら前科となってしまいます。軽く考えることは禁物です。

泉総合法律事務所は、軽犯罪法違反を含む刑事事件の弁護士に注力しています。是非、ご相談ください。

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