財産事件 [公開日]2018年3月29日[更新日]2022年10月12日

業務上横領罪で刑事告訴・被害届!横領・着服事件の示談の重要性

業務上横領罪で刑事告訴されたら?本当は怖い横領・着服事件

【この記事を読んでわかる事】

  • 横領罪・業務上横領罪の刑罰の重さ
  • 業務上横領で会社側と示談する際の示談金相場
  • 業務上横領が発覚し刑事告訴されそうな場合の対応方法

 

例えば、会社勤めの方が会社のお金を使って個人の借金の返済をしてしまった、会社の在庫商品を転売してそのお金を好きに使ってしまった、という場合、財産犯の一類型である横領・着服事件になります。

このような業務上横領事件を犯してしまった場合、刑事告訴をされると刑事処罰を受ける可能性が高いです。
では、これを避けるためにどのような対応をすべきなのでしょうか。

1.横領罪・業務上横領罪とは

(1) 横領・着服の違いと構成要件

会社のお金を自分のものにして使ってしまった、会社の品物を勝手に転売してお金に換えて使ってしまったという事件は、泉総合法律事務所にもよく相談がある刑事事件のひとつです。

このような行為を「着服」と言います。着服が犯罪にあたることは当然ですが、その全てが「横領罪」に該当するものではありません。

横領罪は、会社などから信頼関係に基づいてその物の管理を委託されているような方が、その指示に反して、その物を自分の物として勝手に使ってしまったというような場合に成立します。

そのような委託を受けていない者が勝手に会社のお金や品物を取ってしまったという場合は、単なる「窃盗罪」にあたります。

(2) 横領・業務上横領の罪の重さ

横領罪は、条文において以下のように定められています。

・横領罪(単純横領罪)

第二五二条一 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
第二五二条二 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

・業務上横領罪

第二五三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

・遺失物等横領罪

第二五四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

横領罪は、窃盗等、財産に対する犯罪の中でも、特に被害金額が大きい傾向が高い犯罪です。それこそ、横領・着服金額が何百万円ということもあります。
窃盗事件では、被害金額が大きければ大きいほど、犯情が悪いということになってしまいます。

また、業務上横領は、会社から委託された責任・立場を利用した、信頼関係を害するものでものあるため、悪質と判断され、通常、窃盗よりも重く処罰されます。

業務上横領罪は罰金刑がないため、刑事告訴をされた場合、裁判所の法廷で刑事裁判を受け、被害金額が多額など最悪の場合実刑となることになります。

横領罪・業務上横領罪は、初犯でも起訴され、実刑・懲役刑になってしまう可能性が高い犯罪であるといえるでしょう(もちろん、横領・着服金額が少額な場合には執行猶予になる可能性も十分にあります)。

2.横領・着服事件の示談交渉について

横領・着服を実際に行ってしまった方でも、被害者(被害会社)への対応次第では、不起訴・執行猶予を獲得できる可能性があります。

以下、横領・着服事件における弁護活動と、実刑判決を免れるための手段・方法を解説します。

(1) 被害弁済による和解(示談)の重要性、メリット

裁判所・検察ともに、刑罰を決定する上でかなり重視しているのは、被害者に対する被害回復・慰謝の措置があるかどうかという点についてです。
特に、横領・着服によって多額の被害を与えてしまったというときには、少しでも多くの被害弁償をする必要性があるでしょう。

横領・着服が露見した後、被害者が被害届・告訴状を提出していない段階であれば、被害者は「横領・着服した金額を返済してくれれば良い」と言ってくれることもあります。

その場合は、速やかに被害者(会社)と示談交渉を行い、横領・着服によって生じた被害金額を適切に支払う限りは、被害届を提出しないことを約束してもらえるでしょう。

被害届や告訴状を提出されなければ、民事事件として不法行為に基づく損害賠償義務は残ったとしても、刑事事件として立件されることはありません。

示談金額の相場

横領した金額(場合によっては+遅延利息)がそのまま示談金となるケースもあれば、これに追加で迷惑料・慰謝料を支払うケースもあります。

横領・着服などの窃盗を犯す場合、被疑者がお金に余裕があることは少ないです。
また、被害会社から解雇や退職を余儀なくされ、収入が途切れていることも多いため、適切な返済計画やその支払い方法をしっかりと検討することが必要です。

一方、被害会社は、全額返済は難しいとしても、できるだけ短期間で多くの被害金額を弁償してほしいと考えますので、被害会社に納得をしていただけるような示談交渉が必要になってきます。

ここで、あまりにも従業員の方に有利な条件を求めた場合、示談は成立しないでしょうし、逆に会社の求めるままに応じて示談をしても、その内容通りに弁償ができず、かえって被害感情を逆撫でしてしまうことになります。

示談交渉はあくまで会社側との交渉になりますので、刑事事件に強い弁護士が、その方の収入状況、家計での支出内容、第三者の援助の可否等を検討することで、その方の支払い可能な条件を会社に説得的に説明することが有効です。

泉総合法律事務所での示談交渉事例

以下は、泉総合法律事務所の弁護士が実際に経験したことです。

依頼者Aさんは会社のある部門の責任者として活動していましたが、横領を行ってしまい、後から露見しました。Aさんは、会社からの連絡が怖く、会社からかかってきた電話連絡を取ろうとしませんでした。すると、会社から「連絡を取らないなら被害届を出す」という手紙が届き、来所されました。

受任後、会社代表と数回にわたり面談し、交渉をしていたところ、最終的に会社はAさんのこれまでの努力や謝罪の意思も認めており、被害回復及び若干の迷惑料を分割で支払ってくれれば被害届を出さない、との示談が成立しました。

[解決事例]

業務上横領が勤務先に発覚、被害届を警察に出すと言われた

(2) 示談金が支払えない場合の対応

被害者側が主張している金額を支払えないなどの理由で示談がまとまらなければ、横領・着服事件についての被害届を提出されてしまうことになるでしょう。

しかし、横領・着服事件についての被害届を提出されたり、刑事告訴されたりした場合、即座に警察官に逮捕されてしまうのかというと、そんなことはありません。

横領・着服事件は、何回も横領・着服が行われ、結果的に被害金額が高額になっているケースがあります。
また、すぐに発覚しないということは、横領をした者が会計担当であったりして、発覚しないような手口をとっていることも多々あります。

その場合、捜査側も、一時点のことだけを調べて済むわけではなく、時間的な経過を追い、横領・着服の疑いをかけられた者がやったということを立証するため、膨大な会計資料などを確認するなど、裏を取っていく必要性があります。

このことから、横領・着服事件は、警察の捜査に時間がかかることが多いです。

ということは、横領・着服事件の捜査のための時間を利用して、横領・着服によって被害者に対して与えてしまった被害を少しでも回復させるために、再就職したり、適切に資金調達をしたりするための時間に充てることができます。

実際、横領から年単位で動きがなく、その間に被害弁償金額をきちんと貯め続けていたケースもありました。

3.業務上横領罪に関するよくある質問

  • 業務上横領罪の具体例は?

    会社における業務として財物を占有しており、それを勝手に使ってしまった場合は「業務上横領」となります。

    例えば、次のような行為が考えられるでしょう。

    • 会社から管理を任された銀行預金口座から勝手に自分の口座に送金する
    • 営業先で集金した売掛金を持ったまま逃げてしまう
  • 業務上横領罪の示談金はいくら?

    業務上横領では、被害会社に対する被害回復(被害弁償)が重要となります。

    特に、横領・着服によって多額の被害を与えてしまったというときには、少しでも多くの被害弁償をする必要性があるでしょう。

    そこで、まずは被害額全額を弁償することを目指します。
    その上で、慰謝料・迷惑料、場合によっては一定の遅延利息を加算するケースもあるでしょう。

    慰謝料・迷惑料は、被害金額や会社の方針などによって異なりますが、被害回復さえすればそれ以上の請求はされないというケースも多いと言えます。

  • 1,000万円以上横領したら実刑になる?

    実刑とは、執行猶予がつかず直ちに刑務所等に収容されてしまう刑罰です。

    「○○万円以上の横領は実刑」という決まりがあるわけではありません。
    しかし、被害額が高額であるほど重い刑罰を受ける可能性が高くなることは確かです。

    弁護士としての感覚知としては、被害金額が100万円を超えると起訴される可能性が高くなると思われます。
    200万円を超えていれば、逮捕され実刑となる可能性が極めて高いと言えるでしょう。

    泉総合法律事務所が過去に取り組んだ事件ですと、300万円の業務上横領で3年ほどの実刑判決になった事例があります。

4.横領事件なら泉総合法律事務所へ

横領の刑事事件で一番重要なことは、横領・着服した金銭の返済ができるかどうかということです。

返済の目処が立ったら、被害者・被害会社と交渉して、一括ないし分割返済をすることを考えましょう。
(※起訴されれば、分割返済では返済とみなされないとご理解ください。)

単独での交渉では不安だ、などの事情があれば、弁護士に依頼することをお勧めします。

泉総合法律事務所では、このような横領・着服事件の刑事弁護に多く取り組んでおりますので、安心してご依頼ください。

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