万引き常習犯の原因―クレプトマニアの特徴、診断基準

窃盗・万引き

万引き常習犯の原因―クレプトマニアの特徴、診断基準

万引きの常習犯には、クレプトマニア(窃盗癖・窃盗症)の方が多いと言えます。クレプトマニアとは、どのような症状で、何を基準として診断されるのでしょうか?
クレプトマニアについての基礎知識を解説していきます。

1.クレプトマニアとは?

数ある犯罪の中でも比較的身近な犯罪に「万引き」があります。「万引き」は、客を装って商店等に入り、店員にわからないように金銭などの対価を払わずに商品を持ち去るという窃盗の手口のひとつです。「万引き」というのは刑法上の用語ではなく、犯罪としては刑法235条の「窃盗罪」にあたります。

ちなみに、「万引き」の語源については諸説ありますが、商品を間引いて盗むという意味の「間引き」が変化して「万引き」(「万」は当て字)になったとする説が有力です。

万引きを含む窃盗行為は、盗む対象となる物が欲しいという理由で行われるのが通常です。「あれが欲しいけどお金がないから盗ってしまおう。」とか、「高すぎて自分にはとても買えそうにないから盗んでしまおう。」などといった理由です。

1-1.精神疾患(窃盗癖・窃盗症)

ところが、中には、特にその物が欲しいわけではないのに、万引きをするときのスリルに快感を覚えて何度も万引きを繰り返す人や、イライラすることがあると気づくと何かを盗んでしまっているという人もいます。そのような心理の人たちは、「クレプトマニア」である可能性があると考えられます。

クレプトマニア」(kleptomania)とは、常習的に万引きなどの窃盗行為を繰り返すことを主な症状とする精神疾患の一種で、日本語に訳す場合には「窃盗癖」や「窃盗症」などと訳されます。簡単に言いますと、物を盗みたいという衝動や欲求を自分自身で抑えられない病気ということです。

2.物を盗みたいという衝動

クレプトマニアの人は、自分では必要としないものを繰り返し盗んだり、盗んだ物の代金を支払えるだけのお金があるのに盗んでしまったりします。また、逮捕されたり、刑罰を受けたりして、そのときは罪悪感から二度としないと反省をしても、盗みたいという衝動や欲求を自分自身で抑えられず、また窃盗を繰り返してしまいます。

このように、利益目的でなく、物を盗みたいという衝動を抑えられずに繰り返し窃盗を行ってしまうというのが、クレプトマニアの特徴です。そのため、クレプトマニアは、「窃盗のための窃盗」とも言われています。また、クレプトマニアによる盗みの多くは万引きの態様で行われるため、「万引き依存症」と呼ばれることもあります。

3.DSMが定める診断基準

クレプトマニアかどうかの判断ですが、精神疾患の一つですから、通常は、精神科医が問診を行って判断することになります。その際に使われるのが、DSM-5という診断マニュアルに記載されている診断基準です。

DSMはアメリカ精神医学会が作成している精神疾患・精神障害の分類マニュアル(正式には「精神障害の診断・統計マニュアル」と言います。)で、精神疾患・精神障害の国際的な診断マニュアルとして使われています。DSM-5はその第5版になります。

DSM-5におけるクレプトマニアの診断基準は、次のようになっています。

A 個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。

B 窃盗に及ぶ直前の高まり。

C 窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。

D 盗みは、怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。

E 盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

なお、DSM-5における診断基準はあくまでひとつの目安であり、絶対の基準ではありません。実際の医療現場においては、専門医が問診など行って、必ずしも上記の基準にとらわれずにクレプトマニアにあたるかどうかを診断します。

4.原因、治療方法、弁護方法

クレプトマニアの原因、治療方法、弁護方法については「万引き(窃盗)の再犯原因は精神障害?クレプトマニアとは?」をご覧ください。

5.クレプトマニアによる万引き事件の弁護

泉総合法律事務所ではクレプトマニアの万引き事件も扱っており、執行猶予中の万引き犯行でも起訴されてから相談される方が少なからずありますが、それでは遅すぎて実刑判決が避けられない可能性が高いといえます。

クレプトマニアとの診断書だけで執行猶予中の万引き犯行について再度の執行猶予付き判決を下すほど裁判所は甘くはありません。

万引きを繰り返して罰金刑を受けた時点で家族の方はできるだけ早期にクレプトマニアを疑って泉総合法律事務所にご相談ください。クレプトマニアの治療も含めて早期に対応いたします。また、執行猶予中に万引きをしてしまった場合にも、万引きの犯行をした時点で直ちに泉総合法律事務所にご相談・ご依頼ください。

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