示談交渉が困難な盗撮事件における弁護活動・贖罪寄付

盗撮

示談交渉が困難な盗撮事件における弁護活動・贖罪寄付

1.盗撮事件における示談

盗撮事件を起こしてしまっても、初犯の場合、被害者との間で示談が成立していれば起訴猶予となることがほとんどです。

もっとも、盗撮事件の加害者は、被害者と面識がありません。そこで、示談交渉を行うためには、捜査機関を通じ被害者の連絡先を確認する必要があります。しかし、被害者の連絡先が加害者本人に開示されることは被害者保護の観点から行われず、加害者が刑事弁護を依頼した弁護士限りで開示されることが通常です。

したがって、盗撮事件において、被害者と示談交渉を行うためには弁護士に刑事弁護を依頼することが不可欠であり、示談交渉を成立させることが弁護活動の大半を占めます。

しかし、被害者から連絡先の開示を拒否されることもあり、示談交渉が困難なケースもあります。
そこで、ここでは盗撮事件で示談が困難であった場合に、どういった方法を取ることができるのか、具体的な過去の弁護活動を見ていきたいと思います。

2.実際の弁護活動例

被疑者は、通勤途中の駅で女性をスマートフォンで盗撮していたところを、警戒中の警察官に発見され、現行犯逮捕されました。

逮捕翌日、被疑者の身柄は検察庁に送られましたが、被疑者が定職に付いており、身元を引き受けてくれる家族がいたことや罪を認め反省していたため、検察官は裁判官に対する勾留請求をすることなく釈放して帰宅することができました。

なお、盗撮が常習的と伺われる事情があったり、否認した場合には検察官が裁判官に対して勾留請求するおとになり、結果として10日間の勾留となります。

2-1.不起訴処分の必要性

被疑者は、釈放後、被害者に謝罪し、被害弁償を行うことを希望し、当所泉総合法律事務所に相談したうえで、刑事弁護を依頼しました。

また、被疑者は、仕事に使う国家資格を持っており、罰金刑でも刑事処分を受けると国家資格が取り消しとなり、会社を解雇される可能性も考えられたため、国家資格の取消しがない、前科の付かない不起訴処分に是非ともしてほしいという意向が担当弁護士に対してありました。

2-2.連絡先の不開示

まず、弁護士から検察官に対し、被疑者が被害者に対し謝罪と被害弁償を希望していることを伝え、被害者に連絡先が開示していただけるか、確認を依頼しました。

しかし、数日後、検察官から、連絡先の開示を拒否されたとの連絡があり、再度、被害者の説得をしてもらうよう検察官に対して依頼しましたが、結局開示は受けられませんでした。連絡先の開示をしてもらえないことは性犯罪の場合は強制性交等罪(旧、強姦罪)や強制わいせつ罪の場合は結構ありますが、盗撮や通常の痴漢(迷惑行為防止条例違反)の場合にはめったにないと言っていいです。

その理由としては、被疑者がどんな人物なのか、ストーカー的なものではないかなど被疑者としては弁護士から被疑者の人物像などを知りたいとの思いがあるのが通常だからです。そして連絡先を開示していただいた被害者の方はほとんど示談に応じていただけますが、少数ですが、示談に応じていただけない場合もあります。

示談には応じないが弁護士には会うというパターンは、示談に応じるつもりはないが、先ほど述べたように被疑者の人物像を知りたいという場合だと思います。

・本件の場合

弁護士が検察官に、被害者が連絡先の開示を拒否した理由を聴取すると、単に関わり合いになりたくないだけとのことで、被害者の処罰感情が大きいわけではない様子でした。被害者の処罰感情は被害者の受け止め方ですので、性犯罪で最も軽微な盗撮だからといって被害感情が小さいとは言えないものです。

もっとも、盗撮は他の迷惑行為防止条例違反の痴漢や強制わいせつ罪や強制性交等罪と比べると被害感情が小さい場合が多いとは言えます。

2-3.示談に代わる贖罪寄付

そこで、弁護士から検察官に対し、被疑者が国家資格を有しており、失職を避けるために不起訴処分が望ましいこと(ある意味予想される罰金刑よりも国家資格の取消しの方が被疑者に対しては重すぎる制裁であるとの見方ができます)や、被害弁償の代替手段として贖罪寄付を検討しているが、処分時に考慮されるか打診したところ、検察官も被疑者の事情は承知しており、贖罪寄付についても処分決定時に考慮する旨の回答が得られました。

そこで、示談に代わる贖罪寄付を行い、被害者との接触回避(後程述べますが、被疑者が被害者に遭遇することのないように通勤経路の変更など)も主張することにしました。

・本件の結末

まず、贖罪寄付する金額については、罰金額に達しない部分について別途罰金が科される可能性もありましたので、想定される罰金額を下回らない額を寄付しました。

また、具体的な再犯防止策として、本件事件後、被疑者が事件を起こした駅を利用していないことや、家族が日々の生活を監督していることを、弁護人の意見書に記載し、検察官に提出しました。

その結果、被疑者は起訴猶予となり、仕事や国家資格に影響を与えることなく、生活を続けることができました。

3.本件刑事弁護の示唆するところ

被疑者は、被害者と示談できませんでしたが、不起訴処分となりました。しかし、盗撮事件の場合、示談が成立しなければ罰金が科されるケースがほとんどです。

また、贖罪寄付を行っても、被害者への被害弁償とは性質が異なることから、処分決定時に重視されることも多くはありません。

では、被疑者のケースが他の事件と異なる点はどこにあったのでしょうか。

①被害者の消極的な対応

被害者から連絡先は開示されませんでしたが、その理由は、単に関わり合いになりたくないという消極的なものであり、被害者の処罰感情が大きいものではありませんでした。

②被疑者の仕事面での影響

被疑者は、国家資格を持っており、前科が付くと仕事を失う可能性もありましたので、前科が付かない方法を検討する必要がありました。

③弁護人と検察官との事前交渉

弁護人から、検察官に対し、②を考慮した処分の必要性を伝え、検察官も事情を理解し、贖罪寄付を考慮する旨の回答がありました。検察官との事前の交渉なく、単に贖罪寄付を行っただけでは、このような結果にはならなかったと思います。

4.粘り強く諦めない泉総合法律事務所

本件被疑者の事例は、例外的な事例であり、全ての盗撮事件に一般化することはできませんが、示談が困難になった状況になっても、弁護士が粘り強く捜査機関と交渉することによって、不起訴処分につながったことは、前述した事例が示している通りです。

盗撮に限りませんが、示談をすれば不起訴となる事案でも示談できなくとも不起訴となることはあります。その意味では示談だけでなくそれ以外の不起訴に向けての弁護活動にも慣れた弁護士に刑事弁護を依頼することをお勧めします。

当所泉総合法律事務所では、どの弁護士も不起訴やより軽い刑事処分に向けて全力で取り組むことにしており、示談が取れなくとも不起訴の実績もかなりありますので、是非とも当所泉総合法律事務所に刑事弁護をご依頼ください。

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