強姦事件
強制わいせつ同様、同意の有無や被害者は反抗できない状態だったかが問題となることが多い類型です。当事者の証言のほか、様々な事実をもとに多角的に判断されますので、弁護人には多数の証拠に的確な評価を施す能力が求められます。
平成27年3月6日東京高等裁判所判決
路上で声をかけた風俗嬢を強姦した上に傷を負わせたとされた事案ですが、被告人が被害者にわざわざ名刺を交付していること、通報を受け駆け付けた警察官が被害者に土下座して謝罪する被告人を目撃していること、被害者が被害届の提出や警察官への被害申告に及ばなかったこと、無理やり脱がされたとされた下着やストッキングは被害者自身の協力なくして脱がすことは物理的に困難と考えられること、被害者の負傷はその夜に被告人以外に情交した他の男性につけられた可能性もあることなどをつぶさに評価し、裁判所は被告人を無罪としました。
平成26年3月27日鹿児島地方裁判所判決
ゴルファーがゴルフ教室の生徒との間で指導にかこつけて性的関係を結んだことが準強姦罪に問われた事案。当時18歳の被害者は抵抗らしい抵抗をせず、性的関係に対する明確な拒否もしなかったため、検察は単純な強姦罪として起訴することができず、被害者が恩師として信頼していた被告人に性交渉を持ちかけられて混乱したことをもって、通常は薬物や飲酒によってもたらされる「抗拒不能(抵抗できない状態)」になっていたという法律構成を取らざるを得なかったと思われる。
しかし、性交渉を持ったのがラブホテル内であり、被害者にも被告人が何を意図していたか察することができたと思われたこと、被害者と被告人の関係はあくまでゴルフ指導に関連するものであって被害者の意思で師事していたため、被害者が被告人との人間関係を壊さないように考えたとしてもそれを理由に性交渉の拒否が著しく難しかったとも言えないことから、被害者が「抗拒不能」に陥っていたとの事実は否定され、被告人は無罪となった。