住居侵入

住居侵入罪・建造物侵入罪とは

住居・建造物侵入罪とは、正当な理由なく、無断で他人の住居や人の看守する邸宅、建造物、艦船に侵入した場合に成立する犯罪です。(刑法130条)いわゆる、“不法侵入”と言われる行為のことです。

ちなみに、“住居侵入罪”は人が寝泊まりする建物に不法侵入した場合に成立するもので、 “建造物侵入罪”は、それ以外の看守者がいる建物に不法侵入した場合に成立するものです。

住居侵入罪と聞くと軽微な犯罪のように受け取られるかもしれませんが、住居侵入はそれ自体が目的ではなく窃盗や強盗などの不法な目的で行われることが多いです。
そのため、窃盗や強盗に着手することなく、単に住居に侵入しただけという結果に終わったとしても、被害感情はとても強いものがあります。法定刑が3年以下と軽いにも関わらず、被害者に及ぼす心理的影響が大きいため、時としてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまうケースもあるくらいです。

また、賃貸住宅に住んでいた被害者の多くは、転居する傾向があります。他人が自宅に押し入ることの怖さは被害者でなければわからないものと言えます。

これらの行為が“住居侵入罪・建造物侵入罪”にあたります

  • ◇深夜、勝手に学校へ忍び込んだ
  • ◇盗撮目的で、女子更衣室に忍び込んだ
  • ◇金品を盗る目的で、一軒家に忍び込んだ
  • ◇下着を取る目的で、住宅の敷地内に侵入した
  • ◇風呂に入浴中の女性をのぞきみるつもりで庭に忍び込んだ

住居侵入罪・建造物侵入罪の刑罰

3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法261条)

一般的に、住居侵入罪・建造物侵入罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • 示談の有無
  • 示談金額
  • 被害弁償の有無
  • 被害弁償額
  • 侵入行為の態様(悪質性、計画性など)
  • 侵入行為の動機

住居侵入罪・建造物侵入罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず、弁護士に依頼しなかった場合ですが、被害の程度が軽ければ、微罪処分(警察による厳重注意を受けるだけで終わり、検察庁に送致されない処分)で済む可能性があります。

微罪処分で済まなかったとしても、初犯であれば、公判請求(刑事裁判)になることなく、略式手続での罰金になるケースが多いです。同種の前科が多数あるような場合には、公判請求されて検察官から懲役を求刑されますが、その場合であっても、よほど行為内容が悪質でなければ執行猶予とされるケースが多いです。

弁護士に刑事弁護を依頼した場合、もし住居侵入だけであれば、示談が成立すればほとんどは不起訴となるでしょう。ただし、被害者は加害者が侵入した目的によっては、相当に加害者を恐れており、また引っ越しの金額等を請求されることも多く、示談に応じていただけないことも結構あり、仮に応じてもらえる場合でも、引っ越すなどした場合には、示談金がかなりの多額になる可能性があります。

また、住居侵入は、強制性交等罪(旧強姦)や強盗、窃盗の手段となり、これら強制性交等罪(旧強姦)、強盗、窃盗が未遂でも既遂でも起こることも多いです。そのような場合には、当然、住居侵入だけでなく、強制性交等罪(旧強姦)、強盗、窃盗事件について示談が成立しないかぎり、強制性交等罪(旧強姦)、強盗は実刑判決の可能性が高いといえます。

住居侵入罪・建造物侵入罪の時効

犯罪行為が終わった時点から数えて、3年経過すると時効が成立します。

ただし、起算点、つまりどの時点から時効が進行するのかという点は、色々と複雑なケースもあるため、刑事弁護経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

住居侵入罪・建造物侵入罪の弁護方針

(1)被害者との示談成立を目指す

住居侵入罪・建造物侵入罪は、被害者からの告訴がなくても起訴することができる非親告罪であるため、示談を成立させて告訴を取り消してもらえたからと言って、必ずしも不起訴になるというわけではありません。

しかし、示談成立となれば、検察官や裁判官への心証が良くなり、不起訴処分や執行猶予付き判決を下してもらえる可能性が高まります。

そのため、まずは刑事弁護の依頼を受けた弁護士が被害者との示談交渉を行い、告訴を取り消してもらえるよう粘り強く説得します。その結果、告訴を取り消してもらうことができれば、初犯であれば不起訴の可能性が高いといえます。

ただ、当事者間で示談を行うことも可能かもしれませんが、お互いに感情的になってしまい、冷静な話し合いが行えない可能性もあるため、示談交渉は刑事弁護経験豊富な弁護士に任せることをお勧めします。

(2)反省文・謝罪文を書く

不法侵入をしてしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。そして、被害者が許してくれるかどうか、という点はとても重要ですので、被害者に対して十分に謝罪します。

また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、反省している姿勢をアピールしていきます。当所泉総合法律事務所では被害者の心情、立場を踏まえて、被疑者に助言して、例えば侵入した場所の近隣には立ち寄らないなどの誓約事項を謝罪文、反省文に織り込むこと(被疑者が厳守することが当然の前提ですが)を助言などします。

(3)早期釈放を目指します

住居侵入罪・建造物侵入罪の場合、逮捕等の身体拘束の可能性は高くはありません。仮に、在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束された場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

・勾留請求をしないよう検察官に対して家族の身元引受書、上申書、弁護士意見書を提出して釈放を働きかけます。検察官の取り調べ段階で釈放されることも結構あります。

(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に対して、家族の身元引受書、上申書、弁護士意見書を提出して釈放を働きかけます。検察官よりも裁判官の方が釈放に応じていただけることが多いと経験上受け止めております。

(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。いわゆる、“準抗告”を行う。裁判官が勾留決定をした場合には、3名の裁判官からなる合議体の裁判所に準抗告という裁判を申し立てます。ここでは勾留のもたらす被疑者などへの不利益の大きさ、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがないことを十二分に主張することで準抗告が認容されて釈放されることで少ないですが、あります。当所泉総合法律事務所では、4週間連続して4件準抗告が認容され釈放されています。

泉総合法律事務所ではこれまでに、住居侵入罪・建造物侵入における勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、どうぞご安心ください。