勾留とは
勾留とは
勾留とは、被疑者・被告人の身柄を留置施設などに拘束することをさします。
勾留するために必要とされる要件“3つ”
勾留するためには、3つの要件が必要となります。
- (1)犯罪の嫌疑が十分あり、かつ勾留手続が適法であること
- (2)勾留の理由があること
- (3)勾留の必要性があること
(1)犯罪の嫌疑が十分あり、かつ勾留手続が適法であること
犯罪の嫌疑が十分あるとは、簡単に言えば、「被疑者が罪を犯した疑いが十分ある」という意味です。
もちろん、身柄が拘束されるわけですから、「罪を犯したであろう」というある一定レベルの疑いが必要とされます。しかし、逮捕・勾留段階においては、まだ十分な証拠がそろっているわけではありません。したがって、“有罪が濃厚である”といった裁判時に求められるほどの嫌疑レベルまでは、求められていません。
勾留手続が適法であるとは、勾留に先立って行われている“逮捕”が適法になされているという意味です。もし、逮捕が違法になされていた場合、それに続く勾留もまた、違法性ありとみなされてしまうからです。
(2)勾留の理由があること
勾留の理由とは、具体的に、以下の3つです。これらのうち、1つでも該当すれば勾留することができます。(刑事訴訟法60条1項)
- 定まった住居を有していない場合
- 証拠隠滅のおそれがある場合
- 逃亡のおそれがある場合
(3)勾留の必要性があること
上で述べた(1)(2)の要件を満たしていれば、“勾留の必要性あり”とみなされるのが一般的です。ただ、その場合であっても、事件の内容、被疑者の年齢・体調などを総合的に考慮して判断する必要があります。
勾留に至る流れ
被疑者としての勾留
警察が被疑者を逮捕して警察の留置場に身体拘束して取り調べをしますが、逮捕から48時間以内に被疑者を検察庁に身柄送検します。
検察官は被疑者を取り調べて検察官が勾留すべきであると判断した場合、裁判官に勾留請求をします。弁護士に刑事弁護を依頼した場合には、被疑者の身元引受書や弁護士意見書を作成するなどして検察官に勾留請求しないよう、釈放するように働きかけます。その結果勾留の必要性なしとして、検察官が勾留請求せずに釈放することも結構多くあります。
検察官から勾留請求された裁判官が、被疑者の勾留質問を行い、勾留決定を下すと、原則として10日間(勾留延長されると最大で20日間)、被疑者の身柄が勾留されることになります。弁護士に刑事弁護を依頼すると、裁判官に勾留決定しないように弁護士の意見書を提出したり面会したりして勾留決定を阻止して釈放する活動を行います。その結果勾留の必要性なしとして裁判官が勾留決定せずに釈放することが結構あります。
裁判官の勾留決定が出た場合でも、3名の裁判官から構成される裁判所に勾留決定取消しを求めて準抗告を出すことができます。準抗告が認容されれば勾留決定が取り消されて釈放されますが、準抗告認容、釈放のハードルはかなり高いといえます。
被疑者段階での勾留は、逃亡や証拠隠滅のおそれを理由とするものです。
被告人としての勾留
被告人段階での勾留は、逃亡や証拠隠滅のおそれ、および裁判をスムーズに進行させるのが、その理由です。
勾留中に起訴された場合、起訴後も勾留継続となるのが通常です。勾留期間は2か月間とされ、その後、必要性が認められれば1ヶ月ずつ更新されます。
なお、起訴されると、保釈が可能となり、弁護士が裁判官に対して保釈請求すれば、保釈の要件を満たしていれば検察官の意見も踏まえ、保釈金の納付、保釈条件の順守を条件として保釈を認めることになります。保釈により、被告人の身柄は解放されます。保釈は裁判官に申請して最短で東京地裁の場合には3日(土日祝日を除く)で決定されます。
参考:勾留請求とは?準抗告で釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!
勾留と拘留の違いは?
「勾留」とは、被疑者・被告人の身柄を留置施設などに拘束することです。
一方、「拘留」とは、有罪判決が下された場合の刑罰の一種です。刑罰の内容は、1日以上30日未満の拘束です。
「拘留」の場合、刑事罰の一種であるため、刑務作業を行うことになります。一方、「勾留」の場合、刑罰ではないため、刑務作業はありません。