実刑判決と執行猶予付判決の違い
この2つは、有罪判決である点は共通です。ただし、判決が下された場合、直ちに刑務所に収容されるか否か、という点において異なります。
実刑判決とは
実刑判決とは、執行猶予が付されていない有罪判決のことです。この判決が下されると、刑務所に収容され、その後、数か月・数年間を刑務所で過ごすことになります。
そのため、日常生活において多大な影響が生じてしまいます。この場合、新たな刑罰である「懲役1年」と、もともとの「懲役3年」が合計された「懲役4年」の刑罰に処せられ、刑務所の中で4年間を過ごすことになります。
実刑判決が下されるケースとは?
実際に実刑判決が下されるケースとしては、以下の場合が考えられます。
重罪の場合
法定刑の下限が懲役3年以上の罪であると、実刑判決の可能性が極めて高いです。
具体的には、殺人罪、強盗罪、強姦罪など、いわゆる“重罪”と分類される罪を犯した場合に実刑判決が下されやすいと言えます。
犯罪内容が悪質である
上で述べた“重罪”に該当しない罪であっても、犯罪内容が悪質であれば、実刑判決の可能性が高いです。
これまでに、懲役刑・禁錮刑を受けたことがある
過去に懲役刑や禁錮刑を受けたことがある場合も、実刑判決が下されやすいと言えます。「刑務所に収容されて、一度は反省したはずなのに、また罪を犯した。反省していないじゃないか」とみなされてしまうからです。
再犯の恐れがある
再犯リスクがある被告人に対しては、「刑務所に収容せず、社会一般の中で生活しながら更生してくれるだろう」との期待ができないからです。
執行猶予中の再犯
執行猶予中にふたたび罪を犯してしまうと、実刑を下される可能性が高いです。
執行猶予付判決とは
執行猶予付判決とは、たとえ有罪判決が下されたとしても、一定の期間(執行猶予期間)において、他の刑事事件を起こさないことを条件に、その刑罰の執行(たとえば、刑務所に収監されること)を待ってもらえる判決のことです。したがって、執行猶予付判決の場合、直ちに刑務所に収容されることはなく、自宅に戻れます。
執行猶予判決の場合、「懲役3年執行猶予5年」という具合に判決が言い渡されます。これは、「懲役3年の刑に処するが、直ちに刑の執行はしない。今後、5年間、新たな罪を犯さなければ、懲役3年の刑はなかったことにする」という意味です。
実刑判決、もしくは執行猶予付判決になるかは、被告人の今後の将来を大きく左右する重要なことなのです。
執行猶予期間中に注意すべきこと
新たな罪を犯さないようにする、これに尽きます。
もし、執行猶予期間中に、ふたたび犯罪を起こした場合、執行猶予の効力が取り消されてしまいます。しかも、“猶予されていた前の刑罰”と“新たに犯した犯罪の刑罰”とを合算した刑罰が執行されるため、長期間刑務所に収容されることになります。
たとえば、仮に「懲役3年執行猶予5年」と言い渡され、その後、執行猶予期間中にふたたび罪を起こして「懲役1年」との判決が言い渡されたとします。
この場合、新たな刑罰である「懲役1年」と、もともとの「懲役3年」が合計された「懲役4年」の刑罰に処せられ、刑務所の中で4年間を過ごすことになります。
執行猶予が取り消されてしまうケースとしては、以下のケースなどがあります。
1. 執行猶予期間中にさらに禁錮以上の刑に処せられその刑の全部について執行猶予の言渡しがない場合
この場合には、情状の余地なくしてただちに取り消されます。
2. 執行猶予期間中にさらに罪を犯して罰金刑に処せられた場合
この場合には、執行猶予が取り消されてしまう可能性が生じます。実際に取り消されるかは、裁判官の判断に委ねられます。
参考:執行猶予中の生活について〜前科がつく?仕事は?パスポートは?〜
執行猶予のメリット
- 刑務所へ行かずにすむ実刑判決が下されると、刑務所へ連れていかれますが、執行猶予付判決であれば、その場で釈放されます。
- 元の日常生活が送れる執行猶予付判決が下されれば、すぐに釈放されて、その日のうちに自宅に戻ることができます。その日から、元の日常生活が取り戻せるのです。
- 会社の取締役を継続できるたとえ有罪判決を受けたとしても、執行猶予付判決を得られれば、法律上、取締役を継続することができます。(会社法331条)
執行猶予を獲得するためには
- 被害者との示談成立十分な謝罪と被害弁償を行い、被害者との示談を成立させることで、「すでに被害者の処罰感情が解消されているので敢えて実刑を下す必要はない」と、裁判官に対してアピールします。
- 贖罪寄付(しょくざいきふ)をするどうしても被害者が示談に応じてくれない場合や、薬物事件のような“被害者なき犯罪”の場合には、弁護士会や慈善団体などに寄付をすることで、反省している姿勢をアピールします。
- ご家族に誓約してもらう今後の被告人の監督をご家族に誓ってもらい、その誓約書を裁判官に提出します。
また、情状証人としてご家族に出廷してもらい、「今後、きちんと監督していく」旨を述べてもらいます。 - 軽微であり、前科がない点をアピール犯罪被害が軽微である点や、被告人に前科がない点を裁判官に主張します。
実刑判決となるか、執行猶予付判決となるかで、被告人の今後の人生が全く違ってきます。被告人であるご依頼者様が、刑務所に収容されず、平和な日常生活が送れるよう、泉総合では、全力で弁護活動を行い、執行猶予付判決を勝ち取ります。