強制わいせつ

強制わいせつ罪とは

13歳以上の男女に対して、暴行または脅迫を用いて、相手方の同意なく、わいせつ行為をした場合に成立します。ただし、13歳未満の男女に対しては、たとえ暴行や脅迫を用いることなく、相手方の同意があった場合でも、強制わいせつ罪が成立します。(刑法176条)

これらの行為が“強制わいせつ”にあたる可能性があります

  • ◇電車内で相手の下着の中に手を入れた
  • ◇相手が嫌がっているにもかかわらず、キスをした
  • ◇強引に抱きつき、相手の胸をさわった
  • ◇女性の住居に侵入して胸を触った

準強制わいせつ罪とは

相手の心神喪失(※1)・抗拒不能(※2)に乗じ、または相手を心神喪失・抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした場合に成立します。(刑法178条1項)

準強制わいせつ罪は、言葉のイメージからして、強制わいせつ罪の軽いバージョンであると想像されるかもしれませんが、そうではありません。刑罰は強制わいせつ罪と同じであり、重く処罰されます。

典型的な例としては、アルコールや睡眠薬で泥酔状態にさせた相手に対して、わいせつ行為を行った場合です。アルコールなどの手段を使わなくとも、熟睡している相手にわいせつ行為を行えば準強制わいせつになります。また、知的障碍者で判断能力が低い方にわいせつ行為を行えば準強制わいせつになります。

※1心神喪失(しんしんそうしつ):精神障害や意識障害などにより、正常な判断ができない状態のこと
※2抗拒不能(こうきょふのう):物理的もしくは心理的に抵抗できない状態のこと

強制わいせつの刑罰

6か月以上10年以下の懲役

法定刑に罰金刑がないため、起訴されれば、必ず公判請求(刑事裁判)となり懲役を求刑されます。

一般的に、強制わいせつ罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • わいせつ結果の程度(重大か軽微か)
  • 被害者の処罰感情
  • 示談の有無
  • 示談金額
  • 被害弁償の有無
  • 被害弁償額
  • わいせつ行為の態様(悪質性、計画性など)
  • わいせつ行為の動機

強制わいせつ罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず弁護士を依頼せずにいた場合ですが、ほとんどの場合には公判請求され、裁判になります。強制わいせつには法定刑で罰金が定められていないため、略式手続で罰金ですむということはありえません。執行猶予中の再犯の場合はもちろん、そうでなくても同種前科があり繰り返しているような場合には実刑の危険性もあります。

一方、弁護士を介して示談が成立した場合には、平成29年7月13日の刑法改正以前は強制わいせつ罪は親告罪でしたので、告訴を取り消してもらえれば、必ず不起訴になりましたが、現在は非親告罪ですので、示談が成立しても、初犯の場合でも場合によったら不起訴にならないことがあるとお考えください。

強制わいせつ罪の時効

犯罪行為が終わった時点から数えて、7年経過すると時効が成立します。

なお、強制わいせつ致傷罪は15年、強制わいせつ致死罪は30年経過すると時効となります。

ただし、起算点、つまりどの時点から時効が進行するのかという点は、色々と複雑なケースもあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

強制わいせつの弁護方針

◇罪を認めている場合

(1)被害者との示談成立を目指す

強制わいせつ罪は、刑法改正以前は、告訴がないと起訴できないとされる“親告罪”にあたり、被害者との示談交渉を行い、何とか告訴を取り下げてもらえれば、不起訴となりました。しかし、現在は非親告罪となっていますので、示談が成立しても不起訴になるとは限りません。

初犯で犯行態様や犯行結果が重大でなければ不起訴になる可能性が高いと思いますが、そうでない場合には起訴、正式裁判となります。

もっとも、正式裁判では被害者との示談が成立しているかどうかが執行猶予付き判決か実刑判決かを左右することが多いので、できるだけ早い段階で刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することをお勧めします。

なお、示談交渉ですが、強制わいせつ罪のような性犯罪事件の場合、警察などの捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えてくれることは絶対にありません。弁護士にのみ被害者の了解を得て教える仕組みとなっています。すなわち、弁護士は検察官を通じて、被疑者(加害者)の反省態度や謝罪メッセージを被害者に伝えることで、被害者が「弁護士にだけなら」という条件つきで連絡先を開示してくれます。もっとも、弁護士に連絡先を教えていただけない被害者の方も少なからずいらっしゃいます。

(2)反省文・謝罪文を提出する

強制わいせつを犯してしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。それから、「十分反省しています」という姿勢を強くアピールするためにも、被疑者の方に反省文を作成してもらい、検察官や裁判官にその書面を提出します。

また、被害者に対する謝罪文も被疑者の方に作成してもらい、猛省している姿勢を理解していただき、示談交渉を受け入れてもらえるようにしております。

(3)専門家の診断を受ける

起訴前の段階で釈放された場合や起訴後に保釈された場合には、再発防止のためにクリニックに通院して治療を受けることも重要です。すなわち、“頭では分かっていても、わいせつ行為の欲求を抑えられない・・・・こういった常習性のある被疑者の方は、性依存症の可能性がありますので、性依存症の専門医か心療内科の治療を受けることが重要です。

再発防止の努力をしていることを裁判所に理解してもらうことも重要な弁護活動になってきますので、再発防止の治療の証拠となる診断者やカルテを検察官や裁判官に提出することで、不起訴処分や執行猶予を目指します。

もっとも、これだけで不起訴や執行猶予がつくことはありません。何よりも示談を被害者から取り付けることが重要です。

(4)今後の家族による監督をアピール

「今後、二度と同様の行為をおこさないよう、被疑者をきちんと監督していきます」といった誓約書を被疑者のご家族に作成して、検察官や裁判官に提出します。

(5)早期釈放を目指します

在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

・勾留請求をしないで釈放してもらえるよう、家族の身元引受書や意見書を提出して検察官に対して働きかける。

(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、釈放してもらうよう、意見書などを提出して裁判官に働きかける。


(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらう手続きである準抗告を申し立てる。準抗告は3名の裁判官からなる裁判で、すでに別の裁判官が下した勾留決定について勾留の必要性があったかどうか審理し必要性がないと判断すれば勾留決定を取消し釈放となります。当所泉総合法律事務所では、最近ですが、4週間連続で4件準抗告を認めてもらい、釈放を勝ち取り被疑者や家族に大変喜んでいただきました。

泉総合法律事務所ではこれまでに、強制わいせつ事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、是非ともご依頼ください。

◇“相手の同意があった”と主張したい場合

「確かに行為を行ったことは事実だけども、相手の同意があった」と主張したい場合もあるかと思います。このような場合、合意のもとで行われたことが事実であれば、強制わいせつ罪には該当しません。また、仮に被害者は合意をしていないとしても、加害者が合意していると思っていた場合、そしてそう思うことに合理的な理由があると認められる場合にも、強制わいせつの故意がないので、強制わいせつは成立しません。

泉総合法律事務所の弁護活動としては、“両者合意のもとで行われた行為だった”という点を検察官や裁判官に粘り強く説得力ある形で、裏付けを収集して主張していくことで、不起訴処分や無罪を目指していきます。