強制わいせつ

強制わいせつ罪とは

13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いて、相手方の同意なく、わいせつな行為をした場合に、強制わいせつ罪が成立します。
ただし、13歳未満の者に対しては、たとえ暴行や脅迫を用いることなく、相手方の同意があった場合にでも、強制わいせつ罪が成立します。(刑法176条)

これらの行為が“強制わいせつ”にあたる可能性があります

  • 電車内で相手の下着の中に手を入れた
  • 相手が嫌がっているにもかかわらず、キスをした
  • 強引に抱きつき、相手の胸をさわった
  • 女性の住居に侵入して胸を触った

強制わいせつの刑罰

6か月以上10年以下の懲役

強制わいせつ罪は、法定刑に罰金刑がないため、起訴されれば必ず公判請求(刑事裁判)となり懲役を求刑されます。

一般的に、強制わいせつ罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • わいせつ結果の程度(重大か軽微か)
  • 被害者の処罰感情
  • 示談の有無
  • 示談金額
  • 被害弁償の有無
  • 被害弁償額
  • わいせつ行為の態様(悪質性、計画性など)
  • わいせつ行為の動機

強制わいせつ罪は、刑法改正により非親告罪になりました。そのため、初犯で示談が成立した場合でも起訴される可能性があります。

また、最高裁大法廷は、平成29年11月29日、「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」に関し、それまで性的意図を必要とした最高裁判例(最判昭45.1.29)を変更する判決を下しました。その要旨は、次のとおりです。
《刑法176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが、行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない。》

準強制わいせつ罪とは

相手の心神喪失(※1)・抗拒不能(※2)に乗じ、又は相手を心神喪失・抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした場合に成立します(刑法178条1項)。

準強制わいせつ罪は、言葉のイメージからして、強制わいせつ罪の軽いバージョンであると想像されるかもしれませんが、そうではありません。刑罰は強制わいせつ罪と同じであり、重く処罰されます。

心神喪失又は抗拒不能の状態を利用した例としては、被害者が高度の精神遅滞の状態にあるのを利用した場合、睡眠中であるのを利用した場合、泥酔状態にあるのを利用した場合などがあります。
他方、心神喪失又は抗拒不能にした例としては、被害者にアルコールを飲ませて泥酔状態にさせ、あるいは睡眠薬を飲ませて眠らせるなどしてそのような状態にした場合などがあります。

1心神喪失(しんしんそうしつ):精神障害や意識障害などにより、正常な判断ができない状態のこと
2抗拒不能(こうきょふのう):物理的もしくは心理的に抵抗できない状態のこと

強制わいせつ罪の弁護方針

◇罪を認めている場合

①示談成立を目指す

強制わいせつ罪は、法改正により、非親告罪になりましたので、示談が成立しても不起訴になるとは限りません。

初犯で犯行態様や犯行結果が重大でなければ不起訴になる可能性が高いですが、そうでない場合には起訴、正式裁判となる場合があります。

もっとも、正式裁判では被害者との示談が成立しているかどうかが、執行猶予付き判決か実刑判決かを左右することが多いので、できるだけ早い段階で、刑事弁護の経験が豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することをおすすめします。

なお、示談交渉ですが、強制わいせつ罪のような性犯罪事件の場合、警察などの捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えてくれることはありません。被害者の連絡先は、弁護士にのみ被害者の了解を得て教える仕組みとなっています。

すなわち、弁護士は、検察官を通じて、被疑者(加害者)の反省態度や謝罪メッセージを被害者に伝えることで、被害者が「弁護士にだけなら」という条件付きで連絡先を開示してくれます。

もっとも、弁護士に連絡先を教えていただけない被害者の方も少なからずいらっしゃいます。

②反省文・謝罪文を提出する

被疑者の方には、強制わいせつ罪を犯してしまったという事の重大さを理解してもらい、深く反省してもらいます。それから、「十分反省しています」という姿勢を強くアピールするためにも、被疑者の方に反省文を作成してもらい、検察官や裁判官にその書面を提出します。

また、被害者に対する謝罪文も被疑者の方に作成してもらい、猛省している姿勢を理解していただき、示談交渉を受け入れてもらえるようにしております。

③専門家の診断を受ける

起訴前の段階で釈放された場合や起訴後に保釈された場合には、再発防止のためにクリニックに通院して治療を受けることも重要です。

“頭では分かっていても、わいせつ行為の欲求を抑えられない……”こういった常習性のある被疑者の方は、性依存症の可能性がありますので、性依存症の専門医か心療内科の治療を受けることが重要です。

再発防止の努力をしていることを裁判所に理解してもらうことも重要な弁護活動になってきます。再発防止の治療の証拠となる診断書やカルテを検察官や裁判官に提出することで、不起訴処分や執行猶予付き判決を目指します。

もっとも、これだけで不起訴や執行猶予となることはありません。強制わいせつ罪では、何よりも示談を被害者から取り付けることが重要です。

④家族による今後の監督をアピール

「今後、二度と同様の行為を起こさないよう、被疑者をきちんと監督していきます」といった誓約書を被疑者の家族が作成して、検察官や裁判官に提出します。

⑤早期釈放を目指します

在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

  • 勾留請求をしないで釈放してもらえるよう、家族の身元引受書や意見書を提出して、検察官に働きかける。
  • 勾留決定をしないよう(釈放してもらうよう)、意見書などを提出して、裁判官に働きかける。
  • それでも勾留決定が下されてしまった場合、勾留決定を取り消してもらう手続である準抗告を申し立てる。

準抗告審は3名の裁判官で構成され、別の裁判官が下した勾留決定について勾留の要件があるかどうかを審査します。勾留の要件がないと判断すれば、勾留決定を取り消して釈放します。

泉総合法律事務所では、これまでに、強制わいせつ事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、安心してご依頼ください。

◇相手の同意があったと主張したい場合

「確かに行為自体は事実だけれども、相手の同意があった」と主張したい場合もあるかと思います。

このような場合、合意のもとで行われたことが事実であれば、13歳以上の者に対しては強制わいせつ罪が成立しません。また、仮に被害者は合意をしていないとしても、加害者が合意していると思っていた場合、そしてそう思うことに合理的な理由があると認められる場合にも、強制わいせつの故意がないので、強制わいせつ罪は成立しません。

泉総合法律事務所の弁護活動としては、“両者合意のもとで行われた行為だった”という点を検察官や裁判官に粘り強く説得する形で、裏付けを収集して主張していくことで、不起訴処分や無罪を目指していきます。

まとめ

刑事事件は、誰でも起こし得るものです。

強制わいせつ罪は懲役刑がないため、起訴されてしまえば実刑(執行猶予付き)判決になってしまいます。前科をつけないためには、被害者との示談が何よりも大切になります。

泉総合法律事務所は、性犯罪を始めとした刑事事件の弁護経験につきまして大変豊富です。勾留阻止・釈放・不起訴獲得の実績も豊富にあります。

強制わいせつ罪で逮捕されてしまったという方は、お早めに泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。