少年事件

はじめに

少年事件は、手続が成人の場合と大きく異なるため、特に専門性が要求される分野になります。

少年事件は、全事件が家庭裁判所に送致されます。そしてその多くは、少年審判を受けることになります。しかし、少年審判までの間にご家族が少年の為に何ができるかというのは、少年審判の結果に大きな影響を与えることになります。

最近では、接見禁止といって、弁護士以外の人との面会もできなくなることが多く見受けられますので、早い段階から弁護士が関与し、的確な行動を取ることがとても重要と言えます。

捜査段階の弁護活動

(1)手続は成人の事件とほとんど変わらない

捜査段階における手続は、成人の事件とほとんど変わりはありません。

しかし、身体拘束が少年に与える影響の大きさに鑑みて、勾留請求や勾留状の発付は「やむを得ない場合」に限られており、警察署の留置施設ではなく少年鑑別所に少年を収容する「勾留に代わる観護措置」という制度が設けられています。

また、起訴猶予処分がある成人事件と異なり、少年事件については「全件送致主義」が取られています。つまり、嫌疑がない場合や嫌疑が不十分な場合を除いて全件が家庭裁判所に送致されることになるのです。

したがって、成人事件のように、起訴猶予を目指す弁護活動ではなく、家裁送致そして少年審判に向けて、少年の要保護性(※)を減少させる活動に着手することになります。

※要保護性とは:少年院送致や保護観察などの処分によって、非行少年を保護する必要性のこと。

(2)取調べに対する対応が重要

少年は、成人よりも被暗示性、被誘導性が高いため、取調官の誘導のもと、記憶と異なる供述調書が作成されやすいと言えます。場合によっては、取調官の脅迫的な取調べにより、意に反する供述調書に署名をしてしまうこともあります。

少年事件では、証拠に関するルールが成人事件と異なり、少年の供述調書を証拠とする事についての制約が、ほとんど存在しません。そのため、事実と異なる供述調書が裁判官の目に容易に触れてしまい、事実と異なる判断が下されることもありえます。

そのような事態を避けるためには、以下の弁護活動が重要です。

  • 少年と頻繁に面会し、取調べ状況を確認する。
  • 少年の記憶している事実関係を聞き取り、事実と異なる供述調書が作成された場合には即座に捜査機関に抗議する。
  • 違法な取調べが行われた事実を証拠化しておく。

少年は、逮捕によって家族との日常生活から切り離され、言いようのない不安を抱えたまま取調べを受けています。そのような少年の一番の味方として活動するのが、弁護人の重要な役割です。

(3)身体拘束を避けるための活動

成人事件と同様に、少年を身体拘束から解放するための活動も重要です。勾留を避けるために検察官、裁判官に働きかけることはもちろん、勾留が決定されたとしても、勾留決定に対する準抗告を行って、身体拘束に伴う少年の不利益を軽減するために活動します。

観護措置を防ぐための弁護活動

(1)家裁への送致手続

上で述べたとおり、少年事件においては「全件送致主義」が取られているため、勾留の満期(通常であれば勾留請求日から10日間、延長されれば20日間)までには、事件が家庭裁判所に送致されます。

ただし、満期日以前に送致されることもあるため、担当検察官に確認をして正確な日時を把握しておきましょう。
少年は、送致日の朝、勾留されていた警察署から車で検察庁に向かい、午後1時頃までには記録と共に家庭裁判所に送致されます(東京地裁での運用を前提にしています)。

その後、家庭裁判所において裁判官の審問を受け、観護措置が取られるか否かが決定されます。

観護措置とは、少年の心身の鑑別を行うために、少年を少年鑑別所に収容して観護に付する措置のことです。なお、観護措置には、在宅で調査官の観護に付する「在宅観護」もありますが、実際のところ、ほとんど活用されていません。

したがって、観護措置が取られれば少年は少年鑑別所に送られることになり、観護措置が取られなければ自宅に帰って少年審判を待つことになります。なお、弁護人は、少年が家裁に送致されたのちは、「付添人」という立場で活動することになります(注:新たな選任届が必要です)。

(2)観護措置を防ぐ活動

家裁送致前の弁護人の活動で最も重要なのは、観護措置を回避するための活動です。一般的に、以下の4つの要件が満たされる場合に、観護措置に付されると言われています。

  1. ① 審判条件があること
  2. ② 少年が非行を犯したと疑うに足りる事情があること
  3. ③ 審判を行う蓋然性があること
  4. ④ 観護措置の必要性が認められること

なお上記④の「観護措置の必要性」とは、以下のいずれかの事由がある場合に認められることになります。

  • 身体拘束の必要性(住所不定、逃亡ないし罪証隠滅のおそれなど)
  • 緊急保護の必要性(自傷、自殺のおそれ、家族からの虐待のおそれなど)
  • 少年を収容して心身鑑別を行う必要性(継続的な行動観察や外界と遮断して鑑別を行う必要性など)

家裁送致日の段階で「観護措置の必要性がない」と言えるだけの状況にすべく、家裁送致日までの10日間ないし20日間のあいだに、弁護人は様々な活動を行います。

少年審判における審判対象は、非行事実と要保護性です。ですので、家裁送致の段階で、少年の要保護性を減少させるための活動が完了しており、「家裁送致の段階で審判を開いても問題がない」といえるような状況にまで達していれば、もはや観護措置を取って心身鑑別を行う必要性はないと言えます。

そのためには、後述する「少年審判に向けての活動」に記載した活動を前倒しで行い、家裁送致日までに、少年の要保護性をこれ以上ないほどに減少させておかなければなりません。少年自身と何度も話し合い、事件の原因を把握し、反省を深めてもらうことはもちろんですが、保護者や親族と協議して家庭環境を改善したり、学校や職場関係を調整したり、被害者への被害弁償を進めたりと、考え付くかぎりの弁護活動を行います。

その上で、家裁送致日においては「付添人」として裁判官に面会し、観護措置の要件を満たさないこと、観護措置を付すことで少年に多大な不利益が生じることを伝えて、観護措置を取らないように説得します。

観護措置後〜少年審判に向けての活動

(1)少年は鑑別所に送致される

観護措置が決定された場合、その期間は原則2週間とされていますが、「特に継続の必要があるとき」には1回にかぎり更新できます。実際には、4週間の観護措置が取られると考えてよいでしょう。

観護措置が取られると、少年は鑑別所に送致され、鑑別技官との面接や各種の検査による資質鑑別と、鑑別所内での行動観察が行われます。

観護措置決定がされたとしても、その後の事情の変化によっては観護措置の必要性がなくなったとして観護措置が取り消される場合もありますし、入学試験や定期試験、親族の葬儀等に際して、一時的な観護措置決定の取り消しが認められる場合もあります。

よって、観護措置の期間中であっても、積極的に観護措置の取消しを求めていきます。

(2)事件記録の確認

事件が家裁に送致されたあと、付添人は家庭裁判所で記録を閲覧することができます。少年事件の記録には、以下の2種類があります。

  1. ① 捜査関係の書類がつづられた事件記録
  2. ② 少年に関する家裁調査官の調査結果などがつづられた社会記録

①はコピーを取ることができますので、記録を精査し、事実関係を正確に把握します。他方、②は少年の要保護性に関する重要な情報が記載されていますが、コピーを取ることができません。そこで、精査した上で重要部分はメモを取り、十分な検討を行います。

(3)調査官との面会

少年事件においては、家庭裁判所の調査官が大きな役割を果たします。調査官は、少年に関する社会調査を行い、要保護性判断の基礎となる資料を収集したうえで、少年の処遇について意見を述べることになります。

ちなみに裁判官は調査官の意見を重視するため、付添人が事前に調査官と意見交換しておくことは、極めて重要な弁護活動になります。

具体的には、調査官から指摘された少年の問題点を付添人の働きかけで解消したり、調査官が気づいていない視点を付添人から提供したり、付添人活動の進捗状況を適宜報告したり、場合によっては調査官が誤解している事実を訂正したり、といった活動です。

そして最後に、調査官が最終的な処遇意見を固める前に付添人の意見を伝え、調査官の処遇意見に付添人の意見が反映されるよう、働きかけることになります。

(4)環境調整活動と意見書作成

少年に少年院送致等の重い処分が下ることを避けるために、家裁送致後も引き続き少年の要保護性を解消させるための活動(環境調整活動)を継続します。家裁送致後は、調査官の問題意識も踏まえた上で活動することになります。

具体的な活動は、以下のとおりです。

・家庭に少年の居場所を作り、家族と共に更生できる環境づくりのために保護者と面会を重ねる。
・学校や職場など、少年が社会内で更生できるための居場所を模索する。
・被害者との示談交渉を進めたり、不良交友関係を解消するための方法を検討する。

などのさまざまな活動を行います。

いざとなれば審判に提出できるよう、それらの活動を証拠化しておくこともポイントです。

その上で、環境調整活動を前提に、少年の要保護性が解消されていった事実を意見書の形で裁判官に伝えていきます。

少年審判期日における活動

少年審判期日には、少年、保護者、付添人が出席します。場合によっては少年の学校の担任の先生などが出席することもあります。

審判では、主に①非行事実と②要保護性について審理されることになります。

以下、審判期日当日の流れを簡単にご説明します。

①まず、裁判官から少年の氏名と本籍の確認が行われます。

②次に、少年に対して黙秘権が告知され、審判対象である非行事実の内容が告げられます。少年および付添人は、非行事実の内容に間違いがあるかどうかについて、意見を述べます。

③そして、非行事実、および要保護性の審理が行われます。非行事実に争いのある事件では、証人尋問を行うこともあります。
少年に対しては、まず裁判官から質問がされ、その後に付添人、調査官が質問をします。保護者に対しても同様の形で質問がなされます。

④その後、調査官から少年の処遇に関する意見(少年院に送致すべきか、保護観察にすべきか等)が述べられます。
調査官の意見のあと、付添人が処遇意見を述べ、最後に少年が意見を述べることになります。

⑤以上の手続が終了すると、少年の処分について、裁判官が決定を言い渡します。

処分について

(1)決定の種類

家庭裁判所が行う決定には、終局決定と中間決定があります。
中間決定としては、試験観察があります。

(2)試験観察

試験観察とは、少年に対する終局処分を一定期間留保し、その期間の少年の行動等を調査官が観察した上で、再度審判をおこない、終局処分を決めるものです。

具体的には、以下のケースで試験観察の措置が取られます。

  1. ① 少年院送致の可能性があるものの、一度社会内での更生可能性を模索するべきケース
  2. ② 最終的には保護観察になりそうであるが、引き続き社会内で環境調整を行うことで不処分もありうるケース

少年院送致が強く見込まれるケースでは、「社会内での更生可能性を見て欲しい」として、付添人も試験観察の処遇意見を述べることがあります。

試験観察中に再非行に走ってしまうと、当然重い終局処分が予想されるため、少年自身に自覚を持って生活してもらうことはもちろんですが、付添人も少年と定期的に連絡を取り合い、協力して要保護性を解消していくことになります。

(3)終局決定

◇不処分

保護処分に付すことができず、または保護処分に付す必要がないと認めるときは、不処分の決定が下されます。たとえば、非行事実が存在しない場合や、正当防衛が成立する場合などです。

◇保護観察

保護観察とは、少年を収容することなく、社会の中で生活させながら、保護観察所(実際には保護司)の指導監督などの下で、少年の改善更生を図ることを目的として行う保護処分のことです。

原則として少年が20歳になるまでの期間となりますが、成績が良好であれば早期に解除されることもあります。

保護観察においては、少年に対して遵守事項が定められます。遵守事項を守らない場合は保護観察所から警告を受け、従わない場合には少年院送致等の処分が下されることもあります。

◇少年院送致

少年院には、以下の4種類があります。

  1. ① 初等少年院(12歳〜16歳程度)
  2. ② 中等少年院(16歳〜20歳程度)
  3. ③ 特別少年院(16歳〜23歳程度で犯罪的傾向の進んだ者)
  4. ④ 医療少年院(12歳〜26歳程度で心身に著しい故障のある者)

なお、収容期間は下記の処遇区分に従って定められます。

(1)短期処遇
特修短期4ヶ月以内
一般短期6ヶ月以内

 

(1)長期処遇
比較的短期10ヶ月程度
処遇勧告なしおおむね1年
比較的長期1年〜2年
相当長期2年を超える期間

◇検察官送致

家庭裁判所は、以下の場合、事件を検察官に送致する決定をしなければなりません(逆送決定)。

  1. ① 調査あるいは審判の結果、本人が20歳以上であることが判明したとき
  2. ② 死刑、懲役または禁錮にあたる罪の事件について、調査の結果、その罪質および情状に照らして刑事処分相当と認めるとき

逆送決定がなされた場合、成人と同様の刑事手続が行われることになります。

処分後について

少年院送致の保護処分が出た場合、2〜3日以内に少年は鑑別所から少年院に送致されます。収容先の少年院については、少年院から保護者に通知が送られてくることで分かりますが、入所前でも調査官を通じて入所先を知ることができる場合があります。

少年院送致の保護処分決定に対しては、決定の言渡日の翌日から2週以内に、具体的な抗告理由を記載した高裁宛ての抗告申立書を、原審の家庭裁判所に提出して争うことができます。

ただし、成人の事件と異なり、抗告申立をしても少年院への収容処分を止めることはできません。