釈放・保釈してほしい
逮捕・勾留で身柄拘束されている人の最大の関心事は、「いつ出られるのか」ということでしょう。
被疑者や被告人が逮捕・勾留され、警察などの留置場で身体を拘束され続けた場合、さまざまなデメリットが生じます。
まず、日常生活から隔離されてしまうため、退学・解雇される可能性があります。また、家族とも会えず、日々の行動を厳しく管理されるため、精神的に追い込まれ、事実と異なる自白をしてしまう可能性もあります。そうすると、より厳しい状況に追い込まれることになるでしょう。
そのため、泉総合法律事務所では、刑事弁護経験豊富な所属弁護士が、身体を拘束されてしまったご家族(被疑者・被告人)が一日も早く解放され、日常生活を取り戻せるよう、全力で釈放・保釈に向けての弁護活動を行います。
1.刑事手続きの流れ
刑事手続きの段階ごとに、釈放や保釈を目指すためにやるべきことは変わります。
基本的な刑事手続きは、下記のとおりです。
- 逮捕(72時間)
警察から検察への送致まで(48時間)
送致から勾留請求まで(24時間)- 勾留質問
- 勾留(原則10日最大20日)
- 検察官による処分の決定(起訴or不起訴or略式起訴)
不起訴の場合・・釈放
略式起訴の場合・・罰金納付後に釈放- 起訴
- 起訴後勾留
拘置所へ
保釈申請が可能になる- 裁判
- 判決
上記において、検察官の処分までが捜査の段階です。捜査段階では、「早期の釈放」を目指すことになります。
検察官が起訴した場合には、「保釈」による身柄解放を目指すことになります。
2.釈放
「釈放」は法律用語ではありませんが、刑事手続きにおいては、逮捕や勾留などの身柄拘束から解放されること全般を言います。
(1) 捜査段階での釈放
①勾留請求の阻止
まずは、勾留請求されるのを阻止することを考えます。
そのためには、弁護士が被疑者本人や家族から聞き取りを行った上で、検察官と面会したり、意見書を出したりして、勾留の必要性や相当性がないこと、在宅捜査に対応すること、家族が身元引受をすることなどを検察官に対して説明することが重要です。
②勾留決定の阻止
勾留請求された場合には、裁判官に対して意見書を提出したり、裁判官に面接を求めたりすることによって、勾留請求の却下を目指します。
泉総合法律事務所では、検察官の勾留請求がされた後、裁判官の勾留質問前の時点で刑事弁護の依頼を受けて裁判官の勾留決定を阻止し、釈放した案件も多数あります。
③準抗告
準抗告とは、勾留決定に対する不服申立です。
準抗告が認められるためには、決定を覆すに足りる「相応の理由」が必要となりますので、ハードルが高くなります。
準抗告では、そもそも被疑事実(疑われている犯罪)が重いものではないこと、被疑者には仕事や家族があり、逃亡するおそれがないこと、証拠を隠滅する蓋然性がないこと、健康状態、前科前歴がないこと、余罪がないことなどから、勾留の必要性や相当性がないことを主張することになります。
泉総合法律事務所では、4週間連続して裁判官の勾留決定に対して準抗告を行い、4件とも準抗告が認められて裁判官の勾留決定取消しを勝ち取り、釈放となった経験があります。4件のうち2件は裁判官の勾留決定があってからの依頼でしたので、最後まで諦めずに弁護士に相談依頼することをお勧めします。
④勾留の取消請求
勾留された後に勾留の必要性がなくなった場合には、勾留の取消請求をすることができます。
準抗告が、勾留決定が不当であることを主張するものであるのに対して、勾留の取消請求は、勾留決定は不当ではなかったが、その後に勾留の必要性がなくなったため、勾留決定の取り消しを求めるというものです。
⑤勾留執行停止
病気で入院する必要性が生じた場合や、親族や配偶者が危篤状態となったり、亡くなったりした場合などにおいて、被疑者を一時的に解放してもらう手続です。
(2) 釈放されても在宅捜査を受ける必要
上記の弁護活動の結果釈放されたからといって、刑事手続きが終わるわけではありません。
釈放後は、自宅で生活しながら、警察や検察から呼び出しを受けたときに取り調べなどに応じるという形で、捜査を受け続けることになります。これを「在宅捜査」と言います。
検察官は、捜査がすべて終われば、不起訴処分にするか、正式起訴するか、略式起訴にするかを決めます。
捜査段階で釈放された人は、仮に起訴されても、身柄拘束を受けることはなく裁判までの間も自宅で過ごすことになります。
(3) 処分保留による釈放
これは、勾留満期日、もしくは勾留延長満期日までに、証拠が不十分などの理由で検察官が起訴・不起訴を決定できなかった場合に釈放されることを言います。
検察官による処分は保留されているだけですので、いずれは、起訴か不起訴か略式起訴かという処分がでます。
(4) 不起訴処分による釈放
①不起訴処分とは
起訴とは、検察官が、犯罪の有無とその量刑の判断を求めて、裁判所に公訴を提起することです。
これに対して、不起訴とは、検察官が起訴しないことを決めたということです。不起訴は捜査の対象になったことがあるという意味で「前歴」がつきますが、前科にはなりません。
不起訴になると、刑事手続きが終わりますので釈放されます。
②不起訴による釈放を目指すには?
不起訴になる理由は、A嫌疑なし、B嫌疑不十分、C起訴猶予の3種類です。
Aの嫌疑なしとは、捜査の結果、嫌疑はなかったということです。
Bの嫌疑不十分とは、嫌疑はあるが、これを証明するための証拠が十分ではないため、起訴しないということです。
Cの起訴猶予とは、罪を犯しており、証明もできるが、軽い犯罪である、被害者と示談ができた、深く反省しているなどの情状により、起訴しないということです。
検察官が起訴するか起訴猶予にするかを考えるときの考慮要素として、刑事訴訟法248条では、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状が挙げられています。
この中で逮捕された後に対応できるのは、「犯罪後の情状」をよくすること、つまり、示談することになります。
早期に被害者と示談することにより、検察官が勾留期間の満了を待たずに不起訴処分にすることもありますので、早い釈放につながります。
(5) 略式起訴による釈放
略式起訴とは、有罪を認め、罰金刑を受けることです。
罰金を納めると刑事手続きが終わりますので、釈放されます。
3.保釈
保釈とは、裁判所から決められた保釈金を預けることで、一時的に勾留から解放される制度のことです。保釈されると、裁判・判決までの期間を拘置所ではなく、自宅で過ごすことができます。
保釈の申請ができるようになるのは、起訴された後です。
(1) 保釈の種類と要件
保釈には、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈の3種類があります。
①権利保釈
保釈請求がなされたとき、以下の6つの項目のいずれにも該当しなければ(つまり1つでも該当すれば保釈不可)、裁判所は保釈を認めなければなりません。
これを、権利保釈と言います。(刑事訴訟法第89条)
- 被告人が、死刑・無期・短期1年以上の懲役刑や禁固刑にあたる罪の有罪宣告を受けたとき
- 以前に死刑・無期・長期10年を超える懲役刑や禁固刑にあたる罪の有罪宣告を受けたことがあるとき
- 被告人が常習として長期3年以上の懲役刑や禁固刑に当たる罪の有罪宣告を受けたとき。
- 被告人に、罪証隠滅のおそれがあるとき
- 被告人に、被害者やその事件の関係者や親族の身体もしくは財産に害を加え、またはこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがあるとき
- 被告人の氏名または住所が分からないとき
②裁量保釈
上記の6つの項目のいずれかにあたる場合であっても、裁判所が適当であると認めれば、裁判所の職権で保釈を許可することができます。
これを裁量保釈と言います。(刑事訴訟法90条)
③義務的保釈
勾留期間が不当に長くなったとき、保釈請求権者の請求、または裁判所の職権によって、裁判所は保釈を認めなければなりません。これを義務的保釈と言います。(刑事訴訟法第91条第1項)
しかし、現在はほとんど行われていません。
(2) 保釈申請の流れ
①保釈請求
裁判所に対して保釈を求める申請書を作成し提出します。
このときに、身元引受人による身元引受書も同時に提出します。
②検察官の意見
保釈の許可、もしくは却下をするにあたり、裁判官は検察官から意見を聞きます。
なお、この検察官による意見が、保釈可否に対して大きな影響をおよぼすと言われています。
③裁判官面接
保釈請求した弁護人が裁判官と面接します。弁護人はこのタイミングで、保釈の必要性を裁判官に主張します。
このときに、準備できる保釈金額なども伝えます(必ずしもその金額で決まるわけではありませんが、考慮してもらえることもあります)。
③保釈の許可or却下
保釈が許可された場合には、保釈金の金額も同時に決定されます。
④保釈金の納付
決められた保釈金を納付します。
⑤保釈
保釈金が納付されたという連絡が警察署もしくは、拘置所に届いたら、保釈されます。
保釈請求から保釈の可否判断が下されるまで、だいたい3日前後かかります。
(3) 保釈請求における重要な主張・立証
裁判官に保釈を認めてもらうためには、以下の4点を主張・立証することが大切です。
- 被告人に逃亡のおそれがないことを主張する。
- 被告人に証拠隠滅のおそれがないことを主張する。
- 被告人が事件関係者(被害者・共犯者)と接触するおそれがないことを主張する。
- 保釈後、被告人の身元を引き受ける身元引受人の存在を主張する。
(4) 保釈金の相場
保釈金の相場は、一般的に200万円前後であるとされています。ただし、この金額は被告人の経済状況や、事件の内容・性質によって左右されるため、一概には言えません。
保釈金は、被告人が証拠隠滅や逃亡を図ることなく、裁判にきちんと出頭していれば、裁判終了後に返却されます。
(5) 保釈条件
裁判所から保釈許可決定が下されるとき、判決までの間に守らなければならないいくつかの条件提示があります。
もし、この条件に違反することがあれば、保釈を取り消され、ただちに勾留されます。また、保釈金も没収されてしまうため、この条件は必ず守るべきです。
条件提示の内容は、事案に応じて変わりますが、代表的な条件は以下のとおりです。
- 住居の指定
- 住居変更の制限(裁判所の許可を受けなければならない)
- 旅行の制限(事前に裁判所へ許可を受けなければならない)
- 共犯者や被害者との接触禁止
- 公判期日に裁判所へ出頭しなければならない
- 逃げ隠れしてはならない
- 証拠隠滅を図ってはならない など
4.まとめ
早期の身柄解放を願う場合、起訴前(捜査段階)は、早期の釈放を目指し、起訴後は保釈請求をすることになります。
勾留阻止を優先するべきか、早期示談による不起訴処分を目指すべきか、起訴を覚悟して起訴後すぐに保釈請求できるように準備をするべきか、というのは、個々の事案によって異なります。刑事事件専門の弁護士に依頼し、個々の事案にとってベストな弁護活動をしてもらうべきです。
ご家族が逮捕・勾留されてしまったという方、早期の身柄解放を望まれている方は、どうぞお早めに泉総合法律事務所にご相談ください。刑事事件の解決実績豊富な弁護士が、釈放・保釈に向けて全力でサポート致します。