詐欺(オレオレ詐欺など)

詐欺罪とは

詐欺罪は、人をだまして誤解させ、その誤解を利用して、財産を交付させたり、支払いを免れたときに成立する罪のことです。(刑法246条)

詐欺罪が成立するための4つのポイント

詐欺罪が成立するためには、4つの要件と、それらの間に因果関係があるかどうかがポイントになります。
まず4つの要件は、以下のとおりです。

(1)欺罔行為(ぎもうこうい)

欺罔行為とは、簡単に言えば人をあざむき、だますことです。詐欺罪における“あざむく・だます”とは、実際の事実や評価とは異なることを相手に告げて、その相手に誤った判断をさせる行為のことです。

(2)被害者の錯誤(さくご)

錯誤とは、内心で思っている真意と、意思表示の内容が異なっており、かつその異なっていることに表意者が気づいていない状態のことです。

加えて、この欺罔行為が原因で錯誤の状態におちいったことが必要です。もし、欺罔行為と錯誤に因果関係がなく、単に財産移転がなされただけであれば、容疑としては詐欺罪でなく窃盗罪になります。

(3)被害者による財産の交付行為

錯誤におちいった被害者が、加害者へ財物を交付することが必要です。もし、交付した動機が「だまされたから」ではなく、「脅されたから」ということであれば、容疑としては詐欺罪でなく恐喝罪になります。

(4)財物の移転

被害者による財物の交付行為が行われ、実際に加害者がその財物を受け取ったことが必要です。

これら4つの行為・状態が必要とされます。

加えて、これら4つの行為・状態における因果関係も必要とされます。
具体的に言うと、「①欺罔行為⇒②錯誤⇒③錯誤に基づく財物の交付行為⇒④加害者の受け取り(財物の移転)」といったように、4つの行為・状態がきちんと順番に関連し合っていることが必要とされるのです。

詐欺罪における主な5つの手口

◇振り込め詐欺(オレオレ詐欺)

息子など身内を装い、「会社で損失を出しちゃって・・・その穴埋めができないと会社をクビになる・・・だからお金を振り込んで欲しい」などと言葉巧みにだまして、金銭を振り込ませる手口です。社会問題となっていることもあり、近年では厳罰化の傾向にあります。

代表的なのは「オレオレ詐欺」です。「俺なんだけど、分かる?」とあたかも、相手に「息子かな?」と誤解させる手口から、そう呼ばれています。

◇保険金詐欺

わざと自動車事故を起こし、偽物の診断書を作成して、保険会社から保険金をだまし取る手口です。

◇結婚詐欺

結婚する気もないのに、結婚をエサにして異性から金品をだまし取る手口です。

◇投資詐欺

実際には投資する価値のないビジネスや株式を、あたかもその価値があるようにだまして投資させ、その投資した金銭をだまし取る手口です。

◇ワンクリック詐欺

被害者がインターネット上のURLやバナーをクリックしたら、「ご登録が完了しました。平成○年○月○日までに金○円を下記口座にお振込みください」といった文言を表示させ、不安になった被害者に金銭を振り込ませる手口です。アダルトサイトなどでよく見られます。

インターネット上ではなく、単にメールや書面で、同じように請求する架空請求も類似の詐欺手口です。

これらの行為が“詐欺”にあたります

◇自動車事故をよそおい、保険会社から保険金をだまし取った
◇架空の共同事業を持ち掛けて、相手から金銭をだまし取った
◇結婚する気もないのに、結婚話を持ち掛けてその相手から金銭をだまし取った
◇「金を振り込んでくれないと大変なことになっちゃう」とあたかも緊急状態をよそおい、相手に金銭を振り込ませる(振り込み詐欺・オレオレ詐欺)

詐欺罪の刑罰

10年以下の懲役(刑法246条)

一般的に、詐欺罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • 詐欺罪による被害金額総額の大小
  • 起訴されている被害者の人数
  • 共犯者の有無、その人数
  • 詐欺行為の内容(入念な計画に基づくものかなど)
  • 頻度
  • 詐欺を遂行する際の手段の危険性
  • 余罪の有無
  • 示談ないし被害弁償の有無やその金額
  • 反省状況
  • 詐欺の目的・動機
  • 前科の有無

など

詐欺罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず、詐欺罪の法定刑には罰金刑がありません。そのため、たとえ初犯であっても、起訴されるときは略式手続ではなく、公判請求されて刑事裁判になります。

また、近年社会問題となっている振り込め詐欺の場合には、その犯罪類型から、被害者の人数が多数となり、それに比例して被害額の総額も非常に多額なものとなります。そのため、その判断は非常に厳しいものとなり、初犯であったとしても、その果たした役割によっては実刑判決が下されます。

すでに起訴前に示談が成立していれば、被害額が少額、被害者は1人だけ、というケースであれば不起訴になる可能性もあります。

もし起訴された場合、詐欺内容にもよりますが、振り込み詐欺のような被害者や被害額が大規模なケースでは執行猶予がつかず、実刑判決となる可能性が高いです。

詐欺罪の時効

犯罪行為が終わった時点から数えて、7年経過すると時効が成立します。

ただし、起算点、つまりどの時点から時効が進行するのかという点は、色々と複雑なケースもあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

詐欺罪の弁護方針

◇罪を認めている場合

(1)示談成立を目指す

被害者と示談交渉を行い、とにかく早期の示談成立を目指して全力を注ぎます。と言うのも、被疑者を起訴するかどうか判断するにあたり、検察官は示談の成否をとても重要視するからです。不起訴処分を勝ち取るには、示談成立をアピールすることが、詐欺罪において最も効果的な手段です。

なお、詐欺罪において示談を成立させるためには、被害弁償額、つまり示談金の金額がとても重要になります。

多くの被害者は「だまされた!詐欺だ!」と感情的になっていることが多いため、お互いに冷静な話し合いができず、さらなるトラブルに発展する可能性が高いため、示談交渉は経験豊富な弁護士に任せるべきです。

万が一、起訴されてしまったとしても、裁判官が示談成立を考慮して、執行猶予付き判決を下す可能性もあるため、やはり示談成立の可否は重要です。

(2)反省文・謝罪文を書く

詐欺行為に及んでしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。そして、被害者が許してくれるかどうか、という点はとても重要ですので、被害者に対して十分に謝罪します。

また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、きちんと反省している姿勢をアピールします。

(3)詐欺グループとの縁を切る

振り込め詐欺などの場合、組織的な犯罪であるケースが多いため、「今後、二度と同じ過ちを繰り返さない」という点をアピールするためにも、詐欺グループとの縁を切ることが重要です。

(4)早期釈放を目指します

在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

・勾留請求をしないでもらえるよう、検察官に対して要求する。

(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に要求する。

(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。
いわゆる、“準抗告”を行う。

泉総合ではこれまでに、多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、どうぞご安心ください。

◇否認している場合(無罪主張)

「詐欺なんてしていない!」と容疑を否認したい場合には、検察官の主張が事実とは異なっている点を指摘して、裁判官に無実を印象付ける主張を行っていくことになります。

具体的には、「最初からだますつもりはなく、結果的にそうなっただけ」「きちんと返すつもりだった」「返済できる家計状況だった」という点を粘り強く主張していきます。

<振り込め詐欺・オレオレ詐欺>

振り込め詐欺とは、電話で息子など身内を装い、「今、大変なことになっている。トラブルを解決させるには金が必要なんだよ。だから、とにかく金を振り込んで欲しい」などと言葉巧みにだまして、金銭を振り込ませる手口です。お年寄りがターゲットになりやすい詐欺手口です。

その中でも「オレオレ詐欺」は「俺なんだけど、分かる?」とあたかも、電話の相手に「息子かな?」と誤解させて金銭を振り込ませる手口から、そう呼ばれています。

これらの詐欺は、「身内(息子)が困っているなら、早く助けてあげたい」という相手の心理状態につけこんだ卑劣な手口であり、社会問題にもなっていることから、近年において厳罰化の傾向にあります。

◇振り込め詐欺には4つの役割分担がある

通常、振り込め詐欺・オレオレ詐欺は、単独ではなくグループ単位で行われ、それぞれ以下の役割分担があります。

  1. (1)かけ子:被害者に電話をかけて、実際にだます者。
  2. (2)出し子:被害者から振り込まれた現金を銀行口座から引き出す者。
  3. (3)受け子:実際に被害者と会って、手渡しで現金を受け取る者。
  4. (4)首謀者:詐欺グループのリーダー格となる者。

ちなみに、これまで振り込め詐欺・オレオレ詐欺の容疑で泉総合にご相談いただいたケースでは、末端の出し子や受け子であるケースが多かったです。

最初、犯罪行為であるとは知らず、アルバイト感覚で気軽に関与してしまうのですが、途中になって「これって詐欺にあたるのでは?」と不安になるパターンが多いです。ゆえに、振り込め詐欺やオレオレ詐欺は、罪の意識がないまま加害者になってしまう可能性のある犯罪だと言えます。

◇ほとんどの場合、接見禁止になる

振り込め詐欺やオレオレ詐欺で逮捕・勾留されると、大半の場合、接見禁止処分となります。理由としては、これらの詐欺の場合、単独ではなくグループ単位での犯行が多く、それゆえに接見で仲間に接触させてしまうと、その仲間が証拠隠滅を図る危険性が高くなるとみなされているためです。

ちなみに、ご家族の方であっても、例外なく接見禁止の対象です。ただ、弁護士はこの禁止処分の対象外なので、弁護士ならなんら制限を受けることなく、身柄を拘束されている被疑者の方に会うことができます。

「家族(被疑者)に差し入れをしたい」「家族(被疑者)に声をかけて勇気づけてあげたい」というご要望があれば、弁護士を通じてそれらを行うことが可能です。

なお、ご家族など一部の者に限って、接見禁止を解除してもらう“接見禁止の一部解除”というものがありますが、これは、弁護士を通じて裁判所に申し立てることで認められます。この方法でも、身柄を拘束されている家族(被疑者)に直接会って励ましてあげることができます。