用語集
あ行
アリバイ
犯罪が行われた時間に、被疑者・被告人が犯行現場に居なかった事実、立証のこと。
もし、アリバイが認められれば、被疑者・被告人にとって、犯罪を行うことが不可能であるとされ、捜査機関の容疑者候補から外れるため、無罪・嫌疑なしとみなされます。
一事不再理の原則(いちじふさいりのげんそく)
ある刑事事件の裁判において、有罪・無罪または免訴の判決が確定した場合、ふたたび同じ事件について起訴されることを許さないとする刑事訴訟法上の原則のこと。
一部実行全部責任の原則(いちぶじっこうぜんぶせきにんのげんそく)
ある犯罪を複数人で共同して行った場合、そのうちの一人が犯罪の一部分しか行っていなかったとしても、犯罪の結果の全部について責任を負うとする原則のこと。
違法収集証拠排除の法則 (いほうしゅうしゅうしょうこはいじょのほうそく)
違法な手続きによって収集された証拠は、裁判における証拠から排除すべきであるという理論。判例によって採用された法則。
たとえば、令状なしで警察官が差し押さえた証拠物など。
違法性阻却事由 (いほうせいそきゃくじゆう)
形式的には犯罪にあたるとされる行為であっても、ある特殊事情によって例外的に違法性が否定され、犯罪が成立しないとする場合があります。その特殊事情のことを違法性阻却事由といいます。刑法では正当防衛・緊急避難・正当行為の3種類が認められています。
たとえば、格闘技の試合で殴り合う行為、医師の手術行為など
疑わしきは罰せず (うたがわしきはばっせず)
刑事裁判において、検察官が犯罪事実をきちんと証明しないかぎり、裁判所は犯罪事実が存在しないものとして考えなければならないという原則のこと。
冤罪 (えんざい)
実際には無実である者が、逮捕され被疑者として扱われたり、刑事裁判にかけられ刑罰を受けたりした場合のこと。“無実の罪”“濡れ衣”と呼ばれることがあります。
押収(おうしゅう)
証拠となる物や、没収対象物などの占有を取得することの総称。押収には,強制処分である「差押」と任意処分である「領置」があります。
押収拒絶権 (おうしゅうきょぜつけん)
医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士、弁理士、公証人、宗教の職に就いている者またはこれらの職に就いていた者は、業務上の委託を受けて、保管または所持する物の中で他人の秘密に関するものに関しては、押収を拒絶することができるとする権利のこと(刑事訴訟法105条)
ちなみに、本人が承諾した場合や、権利濫用と認められるような押収拒絶権の行使である場合は対象外とされます。
押収物の還付(おうしゅうぶつのかんぷ)
刑事事件の証拠物として押収された物が、事件終結後、一定の期間を経て、元の所有者に戻ってくること。なお、裁判終了前であっても、犯罪立証に不要とされるものは返還されます。
押収目録(おうしゅうもくろく)
捜査機関が証拠品や事件に関連するものを押収した際に、作成を義務付けられている書類(目録)のこと。物品を押収された者には、この押収目録が交付されます。
おとり捜査 (おとりそうさ)
捜査機関やその協力者が“おとり”となって捜査対象者に対して犯罪を行うよう働きかけ、その者が実際に犯行にでたところを逮捕する捜査方法のこと。
か行
過剰防衛(かじょうぼうえい)
予測できなかった不意の攻撃に対するものだったとはいえ、その程度が正当防衛としての必要限度を超えたものであるとみなされる防衛行為のこと。
たとえば、素手や棒で殴りかかってくる相手に対して、拳銃を撃った場合など。
仮釈放(かりしゃくほう)
改善更生のために相当であるとの決定を受けた場合に、刑事施設に収容されている受刑者が刑期の期間満了前に釈放されること。
科料(かりょう)
1、000円以上1万円未満を強制的に徴収する、最も軽い刑罰のこと。主に暴行罪や侮辱罪といった軽微な犯罪に対して科されます。ただし、軽い刑罰とは言え、前科が付くのでご注意ください。
間接正犯(かんせつせいはん)
自分では直接手を下すことなく、他人を道具のように利用して犯罪を実行すること。
鑑定留置(かんていりゅうち)
精神障害などの理由で刑事責任能力の有無を調べるために、継続的に鑑定を行うべく、裁判所が被疑者・被告人の身柄を病院などに留置すること。
起訴猶予(きそゆうよ)
犯罪を行ったことが確実であっても、被疑者の年齢や性格、境遇、そして犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況などを総合的に考慮したうえで、刑罰を科す必要性がないと判断した場合に、検察官が不起訴処分にすること。
ちなみに、起訴猶予で事件終了となった場合には、前科がつきません。
逆送(ぎゃくそう)
検察官から送致された少年について家庭裁判所が調査した結果(審判の結果)、犯罪の程度や情状などに照らして、成年と同じ公開裁判とするのが相当だと判断した場合に、家庭裁判所が少年を検察官に再び送り返すこと。
求刑(きゅうけい)
検察官が被告人に対してどのような刑罰を科すべきかを述べること。
教唆犯(きょうさはん)
他人をそそのかして犯罪の実行を決意させ、実際に犯罪を実行させた者のこと。
供述調書(きょうじゅつちょうしょ)
警察官や検察官などの捜査機関が被疑者や参考人などを取り調べるとき、その供述を記録するために作成された書面のこと。
共同正犯(きょうどうせいはん)
2人以上の者が、共同して特定の犯罪を行うこと。
虞犯・虞犯少年(ぐはん・ぐはんしょうねん)
特定の事由(犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際したり、正当な理由なく家庭に寄り付かないなど)があり、その者の性格や環境に照らして、将来、罪を犯すおそれがあるとみなされた少年のこと。
結審(けっしん)
ひとつの刑事裁判において、すべての審理が終わること。
検視(けんし)
検察官やその代理人が、変死者および変死の疑いのある遺体を検査して、犯罪性があるかどうかを捜査すること。
公訴の提起(こうそのていき)
検察官が被疑者の刑事裁判を求める手続のこと。一般的には、“起訴”と言われる行為であり、検察官が起訴状を裁判所に提出して行われます。
公判(こうはん)
起訴されてから、刑事訴訟が終わるまでの一連の訴訟手続のこと。裁判官、検察官、被告人、弁護人が裁判所に集まり、法廷にて審理が行われます。
勾留(こうりゅう)
逃亡や証拠隠滅を防止するため、被疑者や被告人の身体を拘束すること。
拘留(こうりゅう)
1日以上30日未満の範囲で刑事施設に留置されること。主に軽微な犯罪に科されるもので、刑罰の一種。
勾留期間の延長 (こうりゅうきかんのえんちょう)
検察官が裁判官に勾留を延長してもらえるよう請求すること。被疑者の勾留期間は、原則として勾留請求した日から10日間ですが、裁判官が延長を認めた場合、さらに10日を超えない限度で延長されることがあります。
勾留執行停止(こうりゅうしっこうていし)
一時的に勾留を中断するのが適当であると裁判所が認めた場合に、勾留されている被告人が釈放されること。たとえば、緊急入院の必要性が生じたときなど。
勾留質問(こうりゅうしつもん)
裁判所または裁判官が、被疑者(被告人)を勾留するかどうか判断するにあたり、被疑者(被告人)から陳述を聞く手続のこと。
勾留取消請求(こうりゅうとりけしせいきゅう)
被疑者や被告人、弁護人が裁判所に対して、逃亡・証拠隠滅のおそれ(勾留の理由)や勾留の必要性がなくなったと主張して、勾留を取り消すよう要求すること。
勾留理由開示請求(こうりゅうりゆうかいじせいきゅう)
被疑者や被告人、弁護人が裁判所に対して、勾留されている理由を説明するよう要求すること。なお、勾留理由の開示は、公開の法廷で行われます。
告訴(こくそ)
被害者やその親族などの法定代理人が、捜査機関に対して犯罪事実を報告するとともに、被疑者を処罰して欲しいと意思表示すること。
告発(こくはつ)
被害者や告訴権者でない第三者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、捜査や起訴して欲しいと意思表示すること。
さ行
在宅起訴(ざいたくきそ)
被告人が刑事施設に勾留されない状態で起訴されること。
逃亡や証拠隠滅のおそれがないときに認められ、普段通りの生活を送ることができます。
在宅事件(ざいたくじけん)
身体を拘束されることなく捜査が進められる事件のこと。
裁判員裁判(さいばんいんさいばん)
事件ごとに一般の市民から選ばれた裁判員が、裁判官とともに刑事被告人が有罪であるか否か、どれくらいの刑に処するべきかを決める裁判制度のこと。
裁判員裁判の対象事件は、殺人罪、強盗致死傷罪など、一定の重大犯罪に限定されています。
差押え(さしおさえ)
所有者や保管者の意思に反してでも、裁判所や捜査機関が証拠物を占有・確保する刑事手続き上の強制処分のこと。
参考人(さんこうにん)
捜査機関から取調べを受ける被疑者以外の者をさします。
たとえば、被害者や目撃者など。
示談(じだん)
裁判所を介さず、法律紛争の当事者同士が話し合いで解決すること。
実刑(じっけい)
執行猶予が付いていない判決(刑罰)のこと。
執行猶予(しっこうゆうよ)
有罪判決を言い渡す際に、一定期間、その刑罰の執行を行わずに猶予する制度のこと。
準抗告(じゅんこうこく)
裁判官などが行った裁判や処分に対して、その取り消しや変更を裁判所に求めること。
たとえば、裁判官が行った“被疑者勾留の決定”に対して、その取り消しを求める場合など。
贖罪寄付(しょくざいきふ)
被疑者や被告人が、自らの過ちを償うために、慈善団体などに行う寄付のこと。
薬物犯罪などの被害者がいない事件や、被害者が示談に応じてくれない場合に行われます。
職務質問(しょくむしつもん)
挙動不審者や犯罪を行いそうな者に対して、呼び止めて質問する行為のこと。職質(しょくしつ)と略されることがあります。
所持品検査(しょじひんけんさ)
危険物などを発見する目的で、警察官が相手の衣服やバックの中を検索する行為のこと。職務質問と一緒に行われるケースが多いです。
書類送検(しょるいそうけん)
被疑者を逮捕せず、もしくは逮捕後に被疑者を釈放して拘束していない状態にしてから、警察官が事件を検察官へ送致すること。
親告罪(しんこくざい)
告訴がないかぎり起訴することができない犯罪のこと。たとえば、器物損壊罪など。
接見(せっけん)
逮捕や勾留によって身柄を拘束されている被疑者・被告人が、外部の者(弁護人・家族など)と面会すること。
接見禁止(せっけんきんし)
逃亡や証拠隠滅、第三者との口裏合わせなどの疑いがある場合に、裁判所が弁護士以外の者との面会や、書類などの受け渡しを禁止すること。
た行
逮捕前置主義(たいほぜんちしゅぎ)
被疑者の身柄を勾留する場合、必ず被疑者の逮捕が先行して行われなければいけない、とする考え方。
懲役(ちょうえき)
刑務所などに身柄を拘束して、強制的に刑務作業と呼ばれる労働を科すこと。
DNA検査・鑑定(でぃーえぬえーけんさ・かんてい)
デオキシリボ核酸、いわゆるDNA多型の存在している部位を検査することで、誰のDNAであるのかを識別するために行う検査・鑑定のこと。犯罪捜査で個人を特定するために、よく活用されます。
当番弁護士(とうばんべんごし)
日本弁護士連合会によって設置された当番弁護士制度にもとづいて、派遣される弁護士のこと。1回だけ無料で弁護士が面会に行きます。
な行
任意出頭(にんいしゅっとう)
捜査機関から「警察署・検察庁へ来るように」と求められた被疑者が、自らの意思で出頭すること。出頭は義務ではないため、拒否することができます。
は行
被害者参加制度(ひがいしゃさんかせいど)
殺人、傷害、自動車運転過失致死傷などの一定の刑事事件の被害者などが、裁判所の許可を受けて、刑事裁判に参加できる制度のこと。犯罪被害者の保護・支援を目的として設けられました。
被害届(ひがいとどけ)
犯罪の被害者が、警察や検察などに犯罪事実を申告すること。
被疑者(ひぎしゃ)
捜査機関から犯罪の疑いをかけられており、捜査の対象となっているが、まだ起訴されていない者のこと。起訴された場合、被告人と呼ばれることになります。
被告人(ひこくにん)
捜査機関から犯罪の疑いをかけられ、起訴された者のこと。
微罪処分(びざいしょぶん)
警察が微罪であると判断するような、極めて軽い犯罪の場合、検察に送致されることなく、刑事手続が警察段階で終了となる処分のこと。
保護観察(ほごかんさつ)
非行少年を一般社会の中で生活させながら、指導監督や補導援護を行うことによって、対象少年の改善更生を図る措置のこと。
保釈(ほしゃく)
起訴後、勾留されている被告人が、保釈保証金を提供することで身柄を解放してもらうこと。
ポリグラフ検査(ぽりぐらふけんさ)
被疑者に対して複数の質問を行いながら、その者の呼吸や血圧、脈拍などの変化を記録することで、真実を回答しているかを判定するための検査のこと。いわゆる、嘘発見器のことです。
この検査は、心理状態の変化に応じて、生理的な変化が同時に起こることを利用したものです。
ま行
未決勾留(みけつこうりゅう)
犯罪容疑で逮捕され、その後、判決が確定するまで刑事施設に勾留されている状態のこと。
未遂(みすい)
犯罪の実行に着手したものの、これを遂行することができなかったこと。
迷惑行為防止条例(めいわくこういぼうしじょうれい)
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良的行為を防止することで、住民の平穏な生活を保護することを目的とした条例。
免訴(めんそ)
公訴権(裁判所へ審判申立てをする権利)が消滅したことを理由に、裁判所が有罪・無罪の判断をしないまま、裁判を打ち切ること、またはその旨の判決を言い渡すこと。
や行
余罪(よざい)
逮捕もしくは勾留された原因となっている被疑事実、または起訴された犯罪事実以外の犯罪のこと。
ら行
略式起訴(りゃくしききそ)
通常の法廷審理を行わず、書面審理(検察官が提出する証拠のみを調査)で100万円以下の罰金または科料を科す簡易な裁判のこと。
留置(りゅうち)
被疑者の逃亡や証拠隠滅を防止するために、警察が被疑者を警察署内に収容すること。
量刑(りょうけい)
裁判所が実際に言い渡す刑の種類や程度を決めること。
たとえば、“懲役3年”“罰金60万円”など。
領置(りょうち)
押収の一種で、被疑者・被告人などが死後に残した物、もしくは所有者・保管者がみずから提出した物を、裁判所や捜査機関が管理下に置いておくこと。