脅迫・恐喝

脅迫罪・恐喝罪とは

“脅迫罪”は、通告される本人または親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を告知して、相手に恐怖心を与え脅迫した場合に成立します。(刑法222条)
典型例としては、「殺すぞ!」と脅した場合です。

一方、“恐喝罪”は、人を恐喝して財物などを交付させた場合に成立します。(刑法249条)
典型例としては、「秘密をばらすぞ」と脅して金銭を巻きあげた場合などがこれにあたります。

脅迫罪は「害悪の告知のみ」である一方、恐喝罪は「害悪の告知+財物の交付要求」であり、「財物の交付要求」の有無が両者における相違点です。

その他、脅迫罪・恐喝罪に類似、関連した犯罪は、次のとおりです。

◇強要罪:生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を脅迫したり、暴行することで、人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害した場合に成立します。(刑法223条)
◇威力業務妨害罪:威力によって相手の業務を妨害した場合に成立します。
◇強盗罪:暴行または脅迫によって財物を強取した場合に成立します。(刑法236条)

これらの行為が“脅迫”“恐喝”にあたります

<脅迫>
◇「お前を殺すぞ」と言って相手を脅した
◇「お前の妹に危害を加えるぞ」と言って相手を脅した

<恐喝>
◇「金を出さなければ、痛い目にあわすぞ!」と脅して金銭交付を要求した
◇路上を歩いていた相手に因縁をつけ、「財布をよこせ!」と脅した

脅迫罪・恐喝罪の刑罰

<脅迫罪>
2年以下の懲役または30万円以下の罰金(刑法222条)
<恐喝罪>
10年以下の懲役(刑法249条)

一般的に、脅迫罪・恐喝罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • 脅迫行為の内容、文言、執拗さの程度
  • 加害者と被害者の人間関係(上下関係の有無)
  • 脅し取った金銭の額の程度
  • 示談の有無
  • 示談金額
  • 被害弁償の有無
  • 被害弁償額
  • 脅迫/恐喝行為の動機
  • 被害者側の事情(被害者側が原因で害悪が生じたかどうか)

脅迫罪、および恐喝罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まずは弁護活動を何も依頼しなかった場合についてです。脅迫罪の場合、初犯であれば、略式手続により罰金刑となるのが通常です。ただ、同種の前科があれば、公判請求されて刑事裁判になることもあります。その場合には、執行猶予になる可能性が高いです。

一方、恐喝罪の場合、法定刑に罰金がないため、初犯であっても公判請求されて懲役を求刑されます。ただ、初犯であれば執行猶予となる可能性が高いと言えるでしょう。

脅迫事件、恐喝事件ともに、刑事弁護経験豊富な弁護士に弁護を依頼して、被害者との間で示談が成立すれば、初犯の場合、再犯でも悪質性が低い場合には、不起訴となる可能性は高いといえます。ただし、この類型の中には、もともとあった人間関係上の上下関係を利用して事件を起こしてしまっているケースがあります。その場合には、脅迫行為が執拗になっていることが多く、示談が成立したとしても不起訴とはならないような場合もあります。

もっとも仮に示談後に公判請求されてしまったような場合にも、示談が成立していることは加害者に有利に考慮され、執行猶予判決が得られる可能性は相当に高まります。いずれにしても、刑事弁護経験豊富、示談経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して、事件後できるだけ早く被害者との間で示談交渉を始めるのが重要です。

なお、執行猶予中に事件を起こした方はご存知かと思いますが、起訴されれば通常執行猶予判決にはならず実刑判決となり前刑の執行猶予は取り消されダブルで服役することになりますので、その方は直ちに刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して早期に示談を取り付けて不起訴を勝ち取る必要があります。これは服役して出所後5年以内の方も同様です。さらには、執行猶予付き判決を過去受けて執行猶予期間が明けても判決から7年は経過していないと事件にもよりますが、実刑判決の可能性が高いといえますので、不起訴となるよう刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して示談を取り付けるようにしてください。

その他、脅迫罪・恐喝罪に関連した犯罪の刑罰は、次のとおりです。

◇強要罪: 3年以下の懲役
◇威力業務妨害罪:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
◇強盗罪:5年以上20年以下の懲役

脅迫罪・恐喝罪の時効

脅迫罪の場合、犯罪行為が終わった時点から数えて、3年経過すると時効が成立します。
一方、恐喝罪の場合、犯罪行為が終わった時点から数えて、7年経過すると時効が成立します。

ただし、起算点、つまりどの時点から時効が進行するのかという点は、色々と複雑なケースもあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

脅迫罪・恐喝罪の弁護方針

◇罪を認めている場合

(1)示談成立を目指す

まずは被害者に十分な謝罪と示談金を提示して、早期の示談成立を目指します。示談が成立すれば、大半の場合において前科がつかないため、スムーズな社会復帰が可能となり、今後の人生において前科のことで悩まないで済みます。

ちなみに脅迫罪・恐喝罪は、被害者からの告訴がなくても起訴することができる非親告罪です。したがって、示談成立後、告訴を取り消してもらえれば、必ず不起訴になるというわけではありません。

しかし、不起訴処分や執行猶予付き判決を下してもらうべく、検察官や裁判官への心証を良くするためには、示談成立をアピールすることが最も有効な手段です。

また、脅迫や恐喝を受けたことで恐怖感が拭い去れない被害者にとって、被疑者(加害者)に連絡先は教えたくないのが普通です。そのような時は、弁護士に示談交渉を依頼しないと、示談交渉を始めることすらできません。

多くの場合、弁護士(弁護人)から、示談のための連絡先照会が検察官にあった場合のみ、検察官は被害者に連絡を取り弁護士(弁護人)に連絡先を教えて良いか打診します。そして、了承を得られた場合のみ、検察官から弁護士(弁護人)に被害者の連絡先が伝えられる仕組みとなっています。また、仮に相手の連絡先を知っているような場合にも、当事者同士で話をすることはお勧めしません。その交渉それ自体を、新たな脅迫だと言われてしまうリスクがあるからです。

(2)反省文・謝罪文を書く

脅迫・恐喝行為に及んでしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。そして、被害者が許してくれるかどうか、という点はとても重要ですので、被害者に対して十分に謝罪します。

また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出して、猛省している姿勢を理解していただくようにします。謝罪文や反省文については当所泉総合法律事務所では、被害者の立場、心情に立って文章について助言することにしています。また、謝罪文や反省文には、場合によったら、必ず守れるとの確認のもとに例えば事件となった場所や被害者が立ち寄る可能性のある場所には近づかないなどと言った誓約事項を織り込むこともします。

(3)今後の家族による監督をアピール

「今後、二度と同様の行為をおこさないよう、被疑者をきちんと監督していきます」といった誓約書を被疑者のご家族に書いてもらい、検察官や裁判官に提出します。

(4)早期釈放を目指します

在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

・勾留請求をしないよう検察官に対して要求する。当所弁護士が働きかけることで結構勾留請求せずに釈放していただいております。

(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に要求する。当所弁護士は検察官に対するのと同様家族の身元引受書や上申書、弁護士意見書を提出して勾留決定をしないよう働きかけし、勾留決定を見送り釈放となったことも多数あります。検察官よりも裁判官の方が釈放していただけるものと考えています。

(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。いわゆる、“準抗告”を行う。重大事件や否認事件でない場合には、準抗告が認容される可能性があります。10日間、最大20日間の勾留による被疑者の受ける不利益や家族の不利益、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを各種類を添付して準抗告を申し立てます。認容のハードルは高いですが、認容されることも結構あります。当所では4週間連続して4件準抗告を認容してもらい釈放を実現しました。

泉総合法律事務所ではこれまでに、脅迫・恐喝事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、どうぞご安心ください。