保釈と釈放

被疑者や被告人が身柄を拘束され続けた場合、かなり長い期間、警察の留置場ないしは拘置所で留置されて日常生活から隔離されてしまいます。そのため、学校から退学処分を受けたり、会社から解雇通告される可能性が高くなります。

また、家族や友人、恋人とも会えないか会えるとしてもかなりの制約があるため、精神的なストレスも大きなものがあります。

また、起訴されるまでは警察官や検察官の取り調べがあり、否認などの場合には非常に厳しい取り調べが連日行われるなどして精神的にも厳しい状況におかれることになります。

そのような状況を解決する方法として、起訴前には釈放、起訴後には保釈という2つの方法があります。

保釈とは、起訴後の制度で、一定額の保釈金を払うことや裁判官が定めた保釈条件の順守を条件に、被告人の身柄が解放されて自宅に戻ることができることです。なお、保釈は起訴された後に適用される制度で起訴前には適用されません。

一方、釈放とは、起訴前に、逮捕・勾留により警察の留置場で身体を拘束されている被疑者が解放されて自宅などに帰ることができることです。

まずは保釈について説明します。

保釈の流れ

保釈の流れのフロー図

保釈の種類

保釈には、権利保釈、裁量保釈、義務的保釈の3種類があります。

・権利保釈

以下の6つの事項のいずれにも該当しなければ(つまり1つでも該当すれば保釈不可)、裁判所は保釈を認めなければなりません。

(刑事訴訟法第89条)

  1. (1)被告人が、死刑・無期・短期1年以上の懲役刑や禁固刑にあたる罪の有罪宣告を受けたとき。
  2. (2)以前、被告人が死刑・無期・長期10年を超える懲役刑や禁固刑にあたる罪の有罪宣告を受けたことがあるとき
  3. (3)被告人が常習として長期3年以上の懲役刑や禁固刑に当たる罪の有罪宣告を受けたとき。
  4. (4)被告人に、罪証隠滅のおそれがあるとき。
  5. (5)被告人に、被害者やその事件の関係者や親族の身体もしくは財産に害を加えまたはこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがあるとき。
  6. (6)被告人の氏名または住所が分からないとき。

権利保釈の場合には上記(1)から(6)のいずれにも該当していない場合、それだけで自動的に保釈されるものではなく、弁護士(弁護人)が裁判官に保釈申請して権利保釈の要件を満たしていることを主張し、裁判官が検察官の意見を聞いたうえで要件を充足しているかどうか検討し判断しているとの結論に達すれば、一定の保釈金や保釈条件の順守を条件として保釈決定することになります。

・裁量保釈

上記6つの事項のいずれかにあたる場合であっても、裁判所の職権によって保釈を許可できます。(刑事訴訟法90条)

この保釈を裁量保釈といいます。裁量保釈の手続きは権利保釈と同じですが、弁護士(弁護人)が証拠隠滅の恐れがないことや逃亡の恐れがないことを中心とした保釈申請を裁判官に行い、裁判官は検察官の意見を聞いて裁量保釈するかどうか判断します。

裁量保釈すると判断した場合には、一定額の保釈金の納付と保釈条件の順守を条件として保釈決定します。東京地裁の場合には最短で土日祝日を除き3日間で保釈決定されることになります。

なお、保釈金の相場は事案によって異なりますが、重大事件でなく否認でなければ200万円を基準に加減されるとお考えください。保釈金を用立てることができない場合には日本保釈支援協会の保釈金立て替え制度を利用することができますので、ご希望の方は弁護士にお尋ねください。

・義務的保釈

勾留期間が不当に長くなったとき、保釈請求権者の請求、または裁判所の職権により、裁判所は保釈を認めなければなりません。(刑事訴訟法第91条第1項)この義務的保釈は当所では取り扱ったことはありません。他の弁護士でも取り扱ったことは極めて少ないと思います。

保釈中に気をつけるべきこと

裁判所から保釈許可決定が下されたとき、守らなければいけないとされる、いくつかの条件提示がなされます。もし、この条件に違反すると、保釈は取り消され、保釈金も全部または一部を没収(没取)されます。そうならないように、事前に弁護士に確認するようにしてください。

代表的な条件としては、住居の指定・住居変更の制限や旅行の制限、共犯者・被害者との接触禁止、公判期日に出頭すること、などです。

保釈金は裁判が判決を宣告して終わった時に、数日後通常弁護士の口座に返金され、弁護士から被告人ないし保釈金を出した家族に返金されることになっています。

続いて、釈放について説明します。

逮捕されてから釈放されるまでの流れ

逮捕されてから釈放されるまでの流れフロー図

検察官の勾留請求阻止、釈放

警察は逮捕したあと、48時間以内に被疑者を検察庁に送致しなくてはいけません。そのあと、被疑者を送致された検察官は24時間以内に、被疑者を取り調べてその結果を踏まえて裁判官に勾留請求すべきかどうかを判断・決断します。

当所泉総合法律事務所に刑事弁護をご依頼いただいた場合には、検察官の取り調べ前に、家族の身元引受書や弁護士の意見書などを検察官に提出して検察官が勾留請求しないように働きかけます。その結果、検察官が勾留請求をせずに釈放することも少なからずあります。最近の案件ですが、児童買春の事案で通常勾留となる刑事事件の弁護依頼を受けて早急な釈放活動に取り組み、その結果釈放されて会社の解雇を免れて、被疑者だけでなく家族の生活が守られました。

検察官が取り調べの結果裁判官に勾留請求の必要があると判断すれば、裁判所に被疑者を勾留するよう請求します。

裁判官の勾留決定阻止、釈放

裁判官は検察官から勾留請求があると、勾留質問といって被疑者に勾留の必要があるかどうかに関して質問を行い、逃亡の恐れ、証拠隠滅の恐れなど勾留の必要性があるかどうか判断し、勾留の必要性があると判断すれば被疑者に関して10日間の勾留決定をくだすことになります。

弁護士は検察官が裁判官に勾留請求した場合には、勾留請求を審理する裁判官に対して弁護士の意見書などを提出して勾留決定阻止の働きかけをします。その結果、勾留決定をせずに被疑者を釈放することもかなりあります。

検察官の勾留請求阻止よりも裁判官の勾留決定阻止の方が経験上件数が多く可能性が高いと受け止めております。その意味では被疑者やその家族はあきらめずに弁護士に刑事弁護を依頼していなければ早急に弁護士に刑事弁護を依頼して釈放活動を弁護士にしてもらってください。

釈放される行うべき弁護活動

代表的なものは、以下の4つです。

  1. 勾留請求を阻止する方法
  2. 勾留請求を却下させる方法
  3. 準抗告
  4. 勾留取消や勾留執行停止による方法

(1)勾留請求を阻止する

被疑者を勾留する必要性がないことを主張して、検察官の勾留請求を阻止します。

具体的には、身柄を解放しても証拠隠滅や逃亡のおそれがない、という点を主張して、それを立証できる証拠(身元引受書など)を提示します。

(2)勾留請求を却下させる

勾留すべきかどうかの最終決定を判断する裁判官に対して、勾留する必要性がないことを主張していきます。

具体的には、上で述べた勾留請求阻止と同じく、身柄を解放しても証拠隠滅や逃亡のおそれがない点を主張して、それを立証できる証拠(家族の身元引受書、上申書など)を提示していくことになります。

(3)準抗告

裁判官が“勾留決定”という最終判断を下した場合、その決定に対して不服を申し立てます。これを“準抗告”といいます。

準抗告は3名の裁判官から構成される裁判所が別の裁判官がすでに判断した勾留決定について勾留の必要性があるかどうかを審理する制度で、弁護士(弁護人)が勾留の必要性がない材料をもとに準抗告書を作成して、裁判所に提出します。通常は準抗告書提出の当日に3名の裁判官が集合して審理して判断を下すことになっています。その結果、準抗告が認容されれば、別の下した勾留決定が取り消されて被疑者は釈放されることになります。

準抗告は簡単に認容されるものではありませんが、当所泉総合法律事務所では4週間連続で4件準抗告が認容されて釈放を実現しております。中には裁判官が勾留決定したのちに当所に刑事弁護を依頼されてから準抗告を行ったケースで2件準抗告が認容されて釈放となったケースがあります。

(4)勾留取消や勾留執行停止による方法

勾留取消:勾留決定後の事情変化によって、勾留する必要性がなくなった場合に身柄を解放してもらう手続のこと。勾留された場合において、被害者が個人の場合の犯罪では、弁護士が被害者と早急に示談することで勾留期限を待たずに示談を取り付けることができた場合には検察官に示談書を検察官に示談書を提出することで通常その日に勾留取り消しとなり釈放されることになります。

勾留執行停止:拘束されている本人に病気で入院する必要性が生じた場合や、親族や配偶者が危篤状態や他界してしまった場合に、被疑者を一時的に解放してもらう手続のこと。勾留執行停止はよほどの事情でなければ認められません。

以下の場合でも、ご家族(被疑者)が釈放されます。

処分保留による釈放

勾留満期日、もしくは勾留延長満期日までに、検察官が起訴・不起訴を決定できなければ、拘束されている被疑者は釈放されます。もっとも、その後新たな証拠などを検察官が入手すれば起訴されることもあります。

不起訴処分による釈放

嫌疑不十分であるとされた場合や、親告罪に分類される犯罪で被害者が告訴を取り消した場合に、不起訴処分となって釈放されます。

不起訴処分となると、被疑者が解放されるだけでなく、前科もつきません。