前科をつけたくない/不起訴・無罪にしてほしい

前科を付けたくない

前科があると社会の中で生きにくくなる、というのは、誰でも何となく分かっていることでしょう。

では、実際に前科がつくとどういう影響があるのでしょうか?そして、もし逮捕されてしまった場合、前科をつけないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?

1.前科とは?前歴との違い

前科」とは、なんらかの犯罪で起訴され、有罪の判決を受けてその判決が確定した、という事実のことです。
前歴」とは、捜査機関(警察、検察)の捜査の対象となったことがある、という事実のことです。

前歴が問題になるのは、次に何か罪を犯したときです。その際、前歴があることが悪い情状の1つになります。

これに対して、前科がつくことによる影響は多々あります。

ちなみに、一般人が前科・前歴を調べることはできません。犯罪歴は警察・検察・本籍地で管理されており、外部に漏れることはありません。

また、前科を消すことはできません。

2.前科がつくことによる影響

(1) 職業・資格の制限

特に公的な資格の場合、前科がついてしまうことで所持している資格が停止、あるいは剥奪されてしまうことがあります。

禁固刑以上で資格制限される主な職業
国家公務員・地方公務員・警備業者と警備員・建築士・建築業者・宅地建物取引業者・不動産鑑定士・教師・教育委員会の委員・保育士・社会福祉士と介護福祉士・貸金業者・司法書士・行政書士・弁護士・裁判官・検察官・自衛隊員・質屋・古物商・公認会計士・旅客自動車運送事業者・中央競馬の調教師とジョッキー など

罰金刑以上で資格制限される可能性がある主な職業
医者・歯科医・薬剤師・看護師と准看護師・助産師と保健師・柔道整復師 など

(2) 就職で不利になる可能性がある

一般企業が前科・前歴を調べることはできません。本人からの申告がない限り、確認はできないでしょう。

しかしながら、労働者は、採用の際に真実告知義務を負います。この真実告知義務の範囲について、最高裁判所平成3年9月19日判決は、使用者が、労働力評価に直接かかわる事項のみならず、当該企業あるいは職場への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項についての必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上真実を告知する義務を負うとしています。

そのため、学歴、職歴、前科、年齢などを詐称すると、経歴詐称として懲戒解雇の原因になることもあります(その就こうとしている職種や前科の種類によって、ケースバイケースです)。

そして、最近の履歴書には、「賞罰欄」がないことが多いため、履歴書に前科・前歴を記載する必要は基本的にはありませんが、「賞罰欄」がある履歴書の場合、「罰」とは、確定した有罪判決のことをいうとされていますから、前科を記載することになります。前歴は記載する必要がありません。

一方、「刑の消滅した前科」については、「その存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるを得ないといった特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当である」とされています(仙台地方裁判所昭和60年9月19日判決)ので、基本的には記載する必要がなくなります。

「刑が消滅する」のは、下記の場合です(刑法第34条の2)。刑が消滅すると、資格制限が解かれるという効果もあります。

  • 禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき
  • 罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年経過したとき
  • 刑の免除の言渡しを受けた者が、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したとき

一般企業が前科を知った場合に、それでもその人を採用するかというのは、その会社の自由なので、事実上不利になることはありえると言えます。

そして、前科があることを隠して就職した場合には、それが万が一発覚すると、上記のとおり、経歴詐称で解雇事由に当たる場合もありますし、そのような場合にあたらなくとも、心情的に会社に居づらくなってしまうことはありえるでしょう。

また、上記の資格制限される職業については、前科があると一定期間、資格試験を受ける権利を失う、あるいは一定期間、就業できないという定めもあります。金融機関では前科がないか身辺調査をするという話も聞きます。

(3) 海外旅行に行けない場合がある

例えば、アメリカに旅行しようと思った場合には、前科のある人の入国が認められないことがあります(前科の内容によって異なり、一律入国禁止になっている犯罪とビザの発給の審査結果によっては入国可能な犯罪があります)。

そのため、例えば、子供がグアムやハワイで結婚式を挙げようとしたところ、親が前科を理由に入国を拒否されて、子供の結婚式に参加できないということが起こりえます。

もっとも、前科の申告義務がなく、海外旅行に行くことができる国も多くあります。

(4) 再犯時に罪が重くなる可能性がある

再度何かしらの事件を起してしまった場合、「前科があるから」という理由で、検察の処分や裁判での判決が重くなる可能性があります。

特に、同種の犯罪を再び起こしてしまった場合には、初犯のときより重い罪に問われる傾向にあります。

3.前科をつけないためには?

刑事裁判で有罪判決を受けると前科がつきます。略式裁判で罰金刑を受けた場合でも、有罪判決を受けたということですから、前科になります。

そこで、犯罪の嫌疑をかけられ、捜査対象になっている人が「前科をつけずにすむ場合」は、不起訴になるか、起訴後に無罪判決を勝ち取るかのどちらかということになります。

犯罪の嫌疑が、全くの事実無根、えん罪であるというような場合であれば、前科がつく、つかないということ以前の問題として、汚名をはらすために無罪を勝ち取るために戦うことになるでしょう。

しかし、罪を犯してしまっている場合には、起訴されれば有罪判決となり、前科がつきます。罰金刑でも、執行猶予付き判決でも、実刑判決でも「前科」であることに変わりありません。

そこで、えん罪ではない人が前科をつけずにすむ方法は「不起訴処分を得る」しかないということになります。

4.不起訴処分を得るために

(1) 起訴と不起訴

起訴とは、検察官が犯罪の有無とその量刑の判断を求めて、裁判所に公訴を提起することです。

これに対して、不起訴とは、検察官が、起訴しないことを決めたということです。

不起訴になる理由は、大きく分けて、①嫌疑なし、②嫌疑不十分、③起訴猶予の3つがあります。

  • 嫌疑なし
    事件に関わった可能性が認められない
  • 嫌疑不十分
    事件に関わったかもしれないが、証拠が足りない
  • 起訴猶予
    事件に関わったと認められるが、反省しており罪の程度も軽度なので、今回は起訴しないでよいと判断された

(2) 起訴・不起訴の決まり方

起訴にするか不起訴にするかを決めるのは検察官です。

検察官が、起訴か起訴猶予かを考えるときの考慮要素として、刑事訴訟法248条では、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状」が挙げられています。

(3) 不起訴処分を得るための弁護活動

①迅速な示談交渉

被害者がいて罪を認めている場合、被害者と示談をすることが不起訴のためには必須です。

泉総合法律事務所では、被害者の連絡先が分かり次第すぐに示談交渉をスタートさせます。なぜなら、起訴するか不起訴にするかを判断できる期間として、逮捕勾留されている事件では23日間という厳格な時間制限が定められているからです。

つまり、その期間内に被害者との示談を成立させ、検察官や裁判官に“不起訴が妥当”と判断してもらう必要があるのです。

示談交渉が長引いた結果、タイムオーバーで起訴されてしまったという事態は避けるべきです。

②検察官との交渉

検察官が起訴・不起訴の判断を下してしまう前に、犯行の経緯や動機、被疑者の事情、つまり、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状」の観点から、不起訴処分が妥当であるという事情を適切に説明することで「不起訴処分」にしてもらえるよう粘り強く働きかけます。

たとえば、公務員や一部の有資格者の場合、刑罰によって資格を失うだけでなく、同時に失職してしまうリスクがあります。

そういった個別様々な事情を考慮してもらえるよう、検察官と粘り強く交渉していきます。

5.無罪を勝ち取るために

えん罪の場合に無罪を勝ち取るための弁護戦術は、事案によってケースバイケースです。

しかし、どのような事件でも共通して気を付けなければならないのは、捜査段階でやってもいないことを自白しないということ、不利な供述調書に署名・押印しないことです。

(1) やっていないことは自白しない

やってもいないことを自白するわけがない、と思うかもしれませんが、これまでえん罪が明らかになった事件の多くが、やってもいないことを自白してしまっています。

警察官の暴力や恫喝、利益供与(認めたら出してやるなど)が存在する場合もありますが、そうでなくとも、自分が犯人であると考えている警察官に囲まれて、自分の言うことを否定され続けていると、人間は、自分の方が間違っているのではないかという気持ちになってしまう場合があるそうです。

また、取り調べの過酷さから、諦めて「自分はやっていないのだから、いずれ分かるだろう」とその場では妥協してしまうケースもあるといいます。

しかし、一旦自白してしまうと、裁判でこれを覆すのは困難なのです。

そこで、無罪を訴える人には、弁護士が頻繁に接見を行うことによって、被疑者の気持ちを支えていく必要がありますし、不適切な取り調べがある場合には、警察や検察に抗議することもあります。

(2) 不利な供述調書に署名捺印しない

取り調べの結果作られる供述調書は、よく読み、間違っているところは訂正してもらいましょう。訂正されない限り署名してはいけません。

また、曖昧な表現も「まあ、これでいいか」と妥協せずに、指摘して書き換えてもらう必要があります。

このようなことについても、弁護士が適宜アドバイスしていきます。

このように、無罪を勝ち取るためには、捜査段階から弁護士が被疑者を支えることが重要になります。初動がとても重要なのです。

6.まとめ

  • 前科がつかないようにするための活動を弁護士が一手に引き受けてくれます。
  • 弁護士に依頼すれば「不起訴処分」で終わる可能性が高まり、早期に身柄が解放され、日常生活に戻れます。
  • 不起訴処分を勝ち取ることで、失職のリスクを回避できます。
  • 不起訴処分となり前科がつかなければ、今後の就職の不安を解消できます。
  • 弁護士による十分なサポートを受けながら、安心して無罪を主張できます。

前科がつくと、人生のさまざまな部分で不利益を受けることがあります。

不起訴処分を得る、もしくは無罪判決を得るためには、早急に刑事事件を専門とする弁護士に依頼することが必要です。

刑事事件で逮捕されてしまった方やそのご家族は、お早めに示談実績豊富・刑事事件解決実績多数の泉総合法律事務所にご相談ください。初回のご相談は無料となっております。