痴漢で逮捕された場合の示談交渉は弁護士へ依頼
痴漢の容疑で警察官や目撃者に現行犯逮捕・後日逮捕(通常逮捕)されてしまった場合、起訴を免れるためにも早急に被害者と示談交渉を行う必要があります。
痴漢事件をはじめとした刑事事件では、逮捕〜起訴(略式起訴)まで時間の余裕がありません。よって、被疑者となってしまった方はもちろん、そのご家族も、示談交渉がいかに重要かを理解した上で早期に行動に移すことが大切です。
また、痴漢の示談交渉を当事者が行うことは困難ですので、弁護士に依頼をして代行してもらうことがおすすめです。
この記事では、痴漢で捕まったらどうなるのか、逮捕後の流れと示談交渉の流れについて、長年の実務経験を経た泉総合法律事務所の弁護士が解説します。
1.痴漢で逮捕された後の流れ
痴漢には「迷惑防止条例違反」で立件される痴漢と、「強制わいせつ罪」で立件される痴漢があります。
迷惑防止条例違反の痴漢は、性犯罪の中でも比較的軽微な犯罪と扱われるので、犯行を認めれば(否認をしなければ)逮捕による身体拘束はされず、当日、警察署で供述調書を作成した後に釈放され、在宅での捜査となることが多いです。
しかし、同一女性を対象として連続して痴漢を行なっていたなどという事情があった場合には、迷惑防止条例違反として取り扱うとしても「悪質」とみなされ、逮捕・勾留を伴う捜査を受けることもあります。
また、強制わいせつ罪として立件される可能性もあります。
痴漢の中でも、下着の中に手を入れて直接触るなどの悪質な痴漢や、常習性のある悪質な痴漢は「強制わいせつ罪」で立件されます。
これが発覚した場合、警察に逮捕・勾留され、身体拘束されつつ取り調べを受ける可能性が高いでしょう。
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痴漢の定義と種類|痴漢を事例ごとに徹底解説
痴漢事件の詳しい流れは以下の通りです。
痴漢で逮捕されると、その後48時間以内に検察庁に身柄を送致(送検)され、検察官の取り調べを受けます。
それから24時間以内(逮捕から72時間以内)には、検察官が裁判官に10日間の勾留請求をするかどうかを判断します。
一般的に、強制わいせつ罪の痴漢の場合、検察官は勾留請求を行うことが多いでしょう。
裁判官は、勾留請求を受けたら勾留質問を行い、勾留決定するかどうか判断します。強制わいせつ罪の痴漢は極めて悪質であるため、多くのケースで勾留決定をされます。
その結果、逮捕に続いて原則10日間勾留されます。
その後、さらに勾留延長されると、合計で最大20日もの期間勾留されることになります。
このような長期の勾留となれば、会社や学校に痴漢の件が発覚してしまいます。
仮に事件の概要を知られなくとも、会社が納得できる欠勤理由を家族が説明することは難しいでしょうから、無断欠勤として会社を解雇される可能性があります。
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痴漢で職場を解雇されたくないという方が知っておくべきこと
最大20日に及ぶ勾留期間が経過する前に、検察官は目撃者からの情報収集や繊維鑑定などの捜査を進め、起訴・不起訴の判断をします。
公判請求の判断が下されると、起訴後も勾留が継続します。
起訴後の勾留から釈放されるには、裁判所に「保釈」を認めてもらう必要があります。
被疑者が容疑を認めている場合には、逃亡や証拠隠滅などの恐れがなく、身体拘束する必要性が欠けるため、家族が身元引受人となることで、弁護士が保釈申請すれば多くの場合保釈が認められます(裁判所が指定する保釈金の納付を条件とします)。
もっとも、性犯罪の厳罰が支持される昨今では、強制わいせつ事犯に対する裁判官の眼も厳しいものがあり、示談ができていない場合や被疑者(被告人)が起訴事実を否認して無罪を主張している場合などには保釈が認められないこともあります。
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痴漢は、初犯であれば(示談が成立すれば)執行猶予がつくことが大半ですが、同種前科があれば実刑の可能性もあります。
なお、強制わいせつに罰金刑はないため、起訴されれば必ず懲役刑となります。
【罰金刑であっても前科がつく】
迷惑防止条例違反の痴漢(初犯)であっても、被害者と示談をしなければ「罰金刑」となるのでご注意ください。
通常の裁判を行わず、簡単な書面審理で終わる「略式手続」によって罰金刑を受けた場合、多くの方はあまり深刻に捉えません。しかし、刑罰が 罰金であっても前科は付きます。前科がつくことで自己の職業に影響を与える可能性もありますので、甘く考えずに弁護士に刑事弁護・示談交渉を依頼することをお勧めします。
2.痴漢の示談交渉について
このように、痴漢事件の被疑者となった後に何もしないと、罰金や公判請求となり前科がつく可能性が高いです。
これを避けるためには、弁護士に示談交渉を依頼するべきと言えます。
(1) 刑事事件の示談とは?
刑事事件における「示談」とは、当事者間における犯罪行為に関する民事の和解です。
痴漢事件では、被害者の精神的苦痛に対する補償である慰謝料(示談金)を支払う代わりに被疑者を許してもらうという「合意」が和解の内容となります。
痴漢をされたという事実は、被害者に大きな心の傷を残します。お金で解決できる問題ではありませんが、せめてものお詫びの気持ちで示談金を支払うことで、被害が金銭的に回復したとを示すことができます。
(2) 痴漢で逮捕された際に示談する重要性
示談が刑事手続きの早い段階(逮捕・勾留中)に成立した場合、検察官からしたら、以降は被疑者を身体拘束して捜査を進める必要性に欠けると判断されることも多いです。
そのため、示談成立により、「逮捕や勾留請求がされない」「勾留請求が却下される」「勾留から早期に釈放される」など、身柄拘束を回避できる可能性が高くなります。
また、痴漢事件のように被害者が存在する刑事事件の場合、検察官が処分(起訴・不起訴)を決める上では、被害者の処罰意思の有無が重要な考慮要素となります。
示談が成立した場合、被疑者の刑事処罰を望まない旨の文言を記載した示談書の作成をしてもらうため、被害者の処罰意思が無くなったことが明らかとなります。
さらに、被害も示談金によって金銭的に回復していることから、この示談書を提出することにより検察官が初犯なら不起訴とする可能性が高まります。
示談成立によりそもそも逮捕や勾留請求がされなかったり、勾留から早期に釈放されたりする可能性が高くなります。
また、検察官が処分(起訴・不起訴)を決める上では、被害者の処罰意思の有無が重要な考慮要素となります。示談により被害者の処罰意思が無くなり、示談金も支払ったと示すことで、検察官が起訴を控える可能性が高まります。
3.痴漢の示談を弁護士に依頼した後の流れ
痴漢で逮捕後に弁護士に示談交渉を依頼すると、以下のような流れになります。
- 弁護士が被害者の連絡先について警察・警察から提供を受ける
- 被害者と弁護士が直接示談交渉をする
- 示談の内容について依頼者と弁護士が擦り合わせを行う
- 示談が成立したら、示談書を作成する
- 示談金を支払う
- 示談書を弁護士が検察官に提出する
痴漢事件の被疑者と被害者は、これまでに面識がないケースがほとんどです。しかし、検察官・警察官は、性犯罪の被害者の個人情報を被疑者本人には教えてくれません。
刑事弁護(示談)の依頼を受けた弁護士は、担当の検察官に連絡をし、被害者の連絡先を示談交渉のため教えてくれるよう依頼します。
被害者が了承してくれれば、検察官から弁護士に被害者の連絡先が伝わります。
その後、弁護士から被害者に連絡して示談交渉開始となります。
痴漢事件の具体的な示談金額は、痴漢の悪質性や被害感情にもよりますが、20万円~50万円前後で示談を成立させるケースが多いといえます。
しかし、被害者が未成年の場合、示談の相手方はその両親となり、両親の怒りから示談交渉が難航したり示談金が高額になる傾向があります。強制わいせつ罪の痴漢の場合も示談金は高額になります。
また、場合によっては、事件を起こした電車を特定の時間は使わない、普段被害者が使用している電車(路線)は使用しない、などといった附随的な条件を組み入れる場合もあります。
示談金や条件について依頼者と弁護士が擦り合わせを行い、無事に示談がまとまったら、弁護士が被害者との間で示談書を作成し、これを検察庁に提出することになります。
担当検察官は、提出された示談書の内容を考慮して本件に関する処分を決定します(初犯であれば不起訴処分となることが多いです)。
このように、示談交渉において、被疑者と被害者が直接顔を合わせることはありません。
4.痴漢による逮捕・拘束を回避する示談交渉は弁護士へ
現行犯や後日逮捕など、痴漢で検挙・逮捕された場合、被害者との示談を行わなければ、前科がついてその後の生活に影響が出る可能性があります。
早期釈放・不起訴のためには、一日でも早い対策(示談交渉への着手)が必要です。
逮捕から起訴・不起訴までは時間の余裕もありませんので、痴漢事件を起こしてしまったらお早めに弁護士までご相談ください。
痴漢などの性犯罪の示談交渉は、弁護士に依頼をしなければ成立させることは不可能とも言えます。
泉総合法律事務所では、様々な痴漢事件に取り組み、多くのケースで示談していただいております。お困りの方は、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。
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