痴漢 [公開日]2017年12月12日[更新日]2020年10月15日

痴漢冤罪を証明したい! DNA・繊維鑑定は本当に有効なのか?

朝の通勤時間帯の満員電車、乗客に押しつぶされながら立っていました。そんな中、突然前の女性が振り向き「この人痴漢です!」と叫びました。もちろん、まったく身に覚えがありません。頭が真っ白になり、気が付いたら警察署に連行されていました…。

痴漢をしていないのに、被害女性や近くにいた男性の目撃者に痴漢と誤解される「痴漢冤罪事件」は稀に発生します。

冤罪は、その人の人生を大きく狂わせます。そして、満員電車内での痴漢冤罪事件というのは、誰にでも起こり得る危険があるケースと言えるかもしれません。

犯罪を証明するには証拠が必要です。痴漢事件においてもこれは例外ではなく、どのような証拠が存在するかといった点が、被告人の裁判において問題となります。

この記事では、DNA鑑定や繊維鑑定等の痴漢の証拠について解説した後、痴漢の冤罪で逮捕された場合の対応方法を説明します。

1.痴漢の証拠

(1) 証拠収集に関する警察の取り組み

刑事裁判は、被告人が犯罪を行ったとする検察官の主張について、それを支える証拠があるかどうかを裁判官が吟味する手続です。

そして、警察の犯罪捜査とは、その刑事裁判の証拠を集めるための活動です。

警察も好んで冤罪を生み出したいわけではありません。殊に実際に痴漢冤罪事件の存在が明らかになり、一方的に被疑者を犯人と決めつける見込み捜査の問題が叫ばれる現在では、警察も痴漢事件の取扱いには慎重になっています。

警察庁は「被害者の言い分だけを重視し被疑者の反論には取り合わない」というかつての捜査姿勢を改め、ひとつひとつの証拠に、有罪を支えるだけの証明力と信用性があるかどうかを逐一検討する姿勢を捜査の現場に指示しています。

この観点から、警察も痴漢事件においては、次のような視点から事件を観察し、冤罪を防止しようとしています。

  • 被害女性や目撃者の証言にあいまいなところはないか
  • 満員電車内の状況から被疑者とは別の者が痴漢をした可能性はないか
  • 被疑者と被害者の身長差や、明らかとなった被疑者の当時における腕の位置などから、痴漢行為が物理的に不可能ではなかったか
  • 被疑者の否認する態度や状況説明の供述は、痴漢と疑われた当初から一貫しており、ぶれていないかどうか

したがって、痴漢だと誤解されても、痴漢行為はしていないと、最初から最後まではっきりと否定するべきです。

また、このように事件の真相のため、捜査機関は刑事手続の中で様々な方法で多くの証拠を集めます。

痴漢事件の場合には、ビニール素材の被害者衣類についた犯人の指紋や防犯カメラの映像といった客観的な証拠や、被害者・目撃者・被疑者本人の供述などです。

以下では、痴漢の証拠について詳しく説明して行きます。

(2) 客観的な証拠

最も重視されるのは、人間の供述以外の客観的な証拠です。

人の供述には、見間違い・記憶違い・言い間違い・虚偽供述という問題が多々あり、安易に信用できませんが、これと比較すれば、客観的な証拠は信用性に問題を生じる場面が少ないからです。

痴漢の場合、客観的な証拠には以下のようなものがあります。

①防犯カメラ

たとえば、誰かが被害者の身体を触っている映像があり、その人物の顔が識別できるほどしっかりとした映像が防犯カメラに映っていれば、それがフェイク動画でない限りは、その人が犯人で間違いないと言えるでしょう。

現在では、防犯カメラを設置している電車も多くなってきています。

しかし、仮に設置されている車両での事件であっても、満員電車であれば乗客同士の体で遮られてしまい、被疑者が被害者の身体に触っている決定的な場面までは映っていないことがほとんどです。

逆に、被疑者以外の真犯人が被害者の身体に触っている場面の画像があれば問題解決ですが、そんなものはないことがほとんどです。

被疑者が身体に触っている画像がないのですから、痴漢の証拠にならないと思えそうですが、被疑者と被害者の位置関係を示す画像は残っている例が多いため、被害者の身体と被疑者の身体が隣同士にあって密着していた事実を明らかにする証拠となります。

②衣服のDNA鑑定

痴漢事件の場合、女性が触られた部分の衣服に犯人のDNAが付いているかを調べることもあります。

確かに、DNA検査で被疑者のDNAが被害者の衣服や身体から検出されてしまえば、被疑者がその服の部分に触れたことは強く推認されるでしょう。

では逆に、検出されなかったときに「触っていない」ことの証明となるのかと言うと、これは証明になりません。

何故なら、「なかったこと」の証明はできないからです。

人間が衣服や他人の身体に触れると「必ず」触れた者のDNAが残留するという事実が証明されているなら、DNAの不検出という事実は、触っていないことの証明となりましょう。

しかし、そうでなく、人間が衣服や他人の身体に触れても、触れた者のDNAが残留しない可能性もある以上、DNAが検出されなくても、触っていないことの証明とはなりません。
被疑者にとっては、DNAが検出される場合よりは「まし」だったとは言えても、それだけのことなのです。

③繊維鑑定、指紋

同じ問題は、被疑者の手や指から被害者の服(たとえば下着)の繊維が発見されるか、という問題についても言えます。

被疑者に付着した繊維片を鑑定により解析した結果、これが被害者の衣服の繊維と一致した場合、被害者に触れたことが強く推認されてしまいます。

しかし、被疑者の手に被害者の服の繊維が付いていなかったとしても、触れていないことの証明にはならないのです。

痴漢の証拠に関して詳しく知りたい方は、下記記事もご覧ください。

[参考記事]

痴漢の証拠〜繊維鑑定・DNA・目撃証言〜何が根拠で逮捕されるか

(2) 被害者の供述

次に、被害者の供述の信用性が問題になります。

犯人であることについての客観的な証拠がなくとも、被害者が痴漢に遭ったこと及びその犯人がその被疑者・被告人であることを合理的に説明できるとすれば、有罪になってしまう危険はあります。

ほとんどの被害者は、意図的に嘘をついて被疑者を陥れようとしているのではなく、満員電車という現場の状況から、偶然接触したのを痴漢と勘違いしていたり、触っている手を掴み間違えたりしているだけだと思われます。

つまり、被害者は、真実被害に遭っており、被疑者に痴漢をされたのだと信じてしまっているのです。

このように虚偽を述べる動機がない被害者の供述の中に、信用性の疑問点を発見し、指摘するのは、なかなかに難しい作業です。

また、痴漢の目撃者がいた場合、目撃者の証言と被害者の証言が一致してしまえば、被疑者が犯人であることを争うのは至難の業となります。

2.痴漢冤罪で逮捕されてしまった後の流れ

被疑者が犯行を否認しても、警察が冤罪の主張を受け入れてくれない場合には、「被疑者」として、任意取り調べではなく逮捕をして取り調べとなります。

(1) 警察による逮捕

「逮捕」は約2日間ですが、被疑者が痴漢を否認している場合には、警察はさらに取り調べる必要があり、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると判断して、検察庁に身柄送検をするケースがほとんどです。

[参考記事]

「送検」とはどういう意味?|身柄送検、書類送検

検察庁に送検されると、検察官が被疑者を取り調べます。被疑者の「痴漢冤罪だ」との言い分も聞いてくれますが、単に言い分を聞くだけで納得してくれることはないでしょう。

(2) 検察官の勾留請求

他の事件でもそうですが、被疑者が容疑を否認している場合には、検察官は証拠隠滅や逃亡の恐れがあるとの理由で10日間の勾留を裁判所に請求することになります。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

裁判官は検察官の勾留請求を受けて被疑者に被疑事実に質問し、また、被疑者の言い分も聞きます。これを「勾留質問」といいます。
裁判官は被疑者が容疑を否認していると、検察官と同様に証拠隠滅や逃亡の恐れがあり勾留の要件を満たすと判断して勾留決定します。

このように、痴漢と誤解され逮捕されて2~3日間、勾留で10日間、さらに勾留延長されたら10日間、合計最大で23日間身柄拘束されます。

痴漢冤罪となり逮捕されれば、会社を無断欠勤などで解雇されるなど深刻な状況になってしまうのです。

3.痴漢冤罪の相談は泉総合法律事務所へ

痴漢事件に冤罪が多いことは捜査機関にも自覚があり、慎重に対応を目指してはいます。

しかし、現実に痴漢事件は頻発しており、日々、それを処理しなくてはならない末端の警察官が、慎重な対応という上層部の方針どおりに捜査を尽くしてくれるとは限りません。

むしろ、現場の実態は逆で、いまだに高圧的な取り調べがなくならず、それを必要悪とみる考えが幅を効かせています。

そうである以上、いったん痴漢の疑いをかけられたなら、いずれ真相が明らかになると楽観視することはできません。
最初から全力で戦わないと、痴漢犯人の汚名を着せられて、残りの人生を棒に振ることになります。

そのような事態を避けるには、痴漢の否認事件について経験のある弁護士に依頼するべきです。

泉総合法律事務所は、多数の痴漢事件の弁護経験がございます。
痴漢冤罪で逮捕されてしまっても、当所の弁護士が被疑者の方を全面的にバックアップし、勾留阻止・身柄解放を目指します。

[参考記事]

痴漢の逮捕後の流れと弁護士に示談交渉を依頼するメリットとは?

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴されたりしますし、処分が罰金であっても前科となります。

不起訴などで最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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