集団痴漢で逮捕された場合と単独痴漢で逮捕された場合に違いはある?

痴漢

集団痴漢で逮捕された場合と単独痴漢で逮捕された場合に違いはある?

【この記事を読んでわかる事】

  • インターネットの普及に伴い横行している集団痴漢とは
  • 単独犯の痴漢と集団犯の痴漢の逮捕後の流れに違いはあるか
  • 集団痴漢の場合、単独痴漢よりも示談金は高額になるのか

 

痴漢の犯人は一人とは限りません。インターネットの掲示板等で複数犯による痴漢(以下「集団痴漢」といいます。)を計画し、集団痴漢で逮捕される場合もあるのです。

そのような場合、示談はどうなるのでしょうか。集団痴漢は単独犯による痴漢(以下「単独痴漢」といいます)とどのような点で違いがあるのでしょうか。

また、集団痴漢の示談金は単独痴漢のそれよりも高額になるのでしょうか。

以下においては、集団痴漢と単独痴漢の間に違いがある場合にはその点の指摘もしながら、痴漢には二種類の罪、集団痴漢の現状、集団痴漢で逮捕された後の流れ、集団痴漢における示談金の相場などについて解説することとします。

1.痴漢には二種類の罪

痴漢には、強制わいせつに至らない条例(都道府県が制定する、いわゆる迷惑防止条例)違反の罪に当たる痴漢と刑法の強制わいせつ罪(刑法176条)に当たる痴漢の二種類があります。

条例違反の罪に当たる痴漢の法定刑は、東京都の場合ですと、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例8条1項2号)、常習であれば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(同条例8条8項)となっています。

他方、強制わいせつ罪に当たる痴漢の法定刑は、6月以上10年以下の懲役となっています。

痴漢の罪の種類につきましては「迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪の違い~痴漢の罪名、罰則、罰金」で詳しく解説しています。

2.集団痴漢の現状

集団痴漢の現状

インターネットの普及に伴い、インターネット上には性犯罪願望者が集うコミュニティ・サイトが存在します。

にわかには信じがたいかもしれませんが、そこでは、匿名性が高い掲示板で「痴漢仲間募集」や「一緒に痴漢しませんか?」などの書き込みがなされて、共犯者の募集が行われ、現実に集団痴漢や集団性的暴行事件を引き起こしているのです。

2009年(平成21年)10月には、こうした交流サイトで仲間を募り、女性への集団性的暴行を繰り返したとして、40代の男4人が集団強姦致傷容疑で逮捕され、さらに、2017年(平成29年)11月には、インターネット上で痴漢情報を交換する掲示板を見て集まり、電車内で集団で女性に痴漢したとして、30代と40代の男4人が強制わいせつ容疑で逮捕されました。

後者の事件の場合、4人に面識はなく、犯行当日が初対面でしたが、男らは、特定の電車を指す数字や隠語などの「合言葉」を使い、痴漢のしやすい車両や、女性の容姿などの情報に関するインターネット掲示板の書き込みを読み、電車に乗り込んで犯行に及んだというものでした。

また、匿名性があるため、アカウントを変えての募集が跡を絶ちません。

3.集団痴漢で逮捕された後の流れ

(1)逮捕、勾留、勾留延長

集団痴漢で逮捕された後の基本的な流れは、単独痴漢で逮捕された後の流れと同じです。すなわち、集団痴漢で逮捕された場合、自由が制限されるのは最大72時間となっています。

その後、検察官から勾留の請求がありますと、裁判官は、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときに、被疑者の勾留を認めます。

ところで、住居不定であるか否かは、被疑者の住居の種類・形態(自宅、寮、飯場、簡易宿泊所等)、居住期間、住民登録の有無等の住居の安定性、被疑者の地位・職業・勤務状況・家族関係等の生活の安定性、被疑者の意思(家出していたが自宅に戻ったような場合)等が総合して判断されますが、実務上、客観的な認定が可能であり、余り問題になることはないとされています。

また、逃亡のおそれがあるか否かは、生活不安定による所在不明の可能性(被疑者の年齢、経歴、職業、職歴、身分、性格、行状、家族関係、交友関係、暴力団とのかかわり、住居の形態、居住期間、身元引受けの有無等)、処罰を免れるための所在不明の可能性(当該事案の内容・軽重、前科前歴の有無、執行猶予中、保釈中等)、その他の理由による所在不明の可能性(身上関係が不明でないかどうか等)が総合して判断されますが、この点も、実務上、ある程度客観的な認定が可能とされているようです。

問題は、罪証隠滅のおそれがあるか否かですが、下記の(2)で触れることとします。

そして、勾留の必要性があるか否かは、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留することが必要であるかが判断されます。

個別的な事情の問題ですので一概には言えないものの、被疑者やその家族が受ける不利益が極めて大きい場合(被疑者や家族の病状、就職、結婚、試験など、人の生死や人生の重大事に直面している場合)には、勾留の必要性が否定されることがあるとはいえ、そうでない場合には勾留の必要性が肯定されることが多いようです。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない場合には、更に10日以内の延長が認められることもあります。

(2)単独痴漢と集団痴漢における「罪証隠滅のおそれ」の違い

単独痴漢であれ、集団痴漢であれ、罪証隠滅のおそれが一番の問題になります。

①単独痴漢

まず、単独痴漢について考えてみましょう。

捜査機関は、被疑者が犯行を認めている場合はともかく、被疑者の否認それ自体を、罪証隠滅行為と結び付けて考える傾向にあります。

しかし、否認の供述をもって、安易に罪証隠滅のおそれを肯定することは、まさに被疑者の自白を得るために勾留を認めることと同じになります。

被疑者の否認の供述態度は、罪証隠滅の主観的可能性を判断する一資料にすぎませんから、罪証隠滅のおそれがあると言えるためには、その罪証隠滅のおそれの程度が、具体的資料に基礎付けられた相当高度の可能性に達していると認められる必要があります。

被疑者と被害者、目撃者との間に全く面識がなく、お互いの行動範囲や生活圏も異なり、犯行とされる現場に偶然居合わせたにすぎない場合には、被疑者が当該関係者に働きかけるなどして、罪証隠滅を図るだけの客観的可能性は低く、実効性も現実的ではないともいえます。

その判断には、特に、被疑者の年齢、職業、家族関係、交友関係、前科前歴の有無等が大きく影響してきます。定職のある家庭持ちの被疑者であれば、思慮分別なく被害者や目撃者に接触したりして罪証隠滅行為に及ぶとは通常は考えられないからです。

そして、その実効性が抽象的可能性にとどまる場合には、罪証隠滅のおそれは否定されると解されます。それが、最近における実務の一般的な傾向です。

他方、上記とは異なり、被害者や目撃者と接触する機会があるような具体的な状況がある場合には、罪証隠滅のおそれが肯定されることになります。

②集団痴漢

では、集団痴漢ではどうなのでしょうか。単独痴漢と集団痴漢では、罪証隠滅のおそれに関し、大きな違いが出てきます。

集団痴漢では、罪証として、共謀に至る具体的事情、計画性の有無、共謀の成立過程とその具体的内容、集団の組織や構成、各自の地位や役割分担(以下、これらを「共謀等」といいます。)、各自の犯行内容や態様などが重要になります。

集団痴漢の場合には、ある被疑者が自らの犯した被害女性に対する痴漢をおおむね認めているとしても、上記の共謀等に加え、各自の犯行内容や態様などについて十分な証拠がなければ、自己の刑責を有利に導くため、少なくとも、他の共犯者に不正な働きかけをするなどして、罪証隠滅行為に及ぶ現実的可能性が認められますから、結局、「罪証隠滅のおそれ」が肯定されることになります。

集団痴漢の場合には、上記の共謀等、さらに、各自の犯行内容や態様などが解明されない限り、勾留はもとより、勾留期間を延長すべきとされます。

そして、起訴された場合には、釈放され、又は保釈が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

(3) 最終的な処分

集団痴漢で逮捕された被疑者の場合、その最終的な処分としては、条例違反の罪(東京都の場合)や強制わいせつ罪の法定刑からしますと、検察官による不起訴処分(起訴猶予)、罰金(条例違反の罪の場合)、執行猶予付、保護観察付執行猶予、実刑が考えられます。

そして、その処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談です。

集団痴漢で逮捕された人に有利となる結果を導くには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっているわけです。

集団痴漢の場合であっても、前科があればともかく、示談が成立すれば、不起訴処分(起訴猶予)になる可能性もないとはいえないでしょう。

示談となりますと、被害者の心情に配慮しなければなりませんので、かなり高度な交渉ごとになります。

被害者側との折衝や示談交渉、さらに事案や各自の責任に応じた共犯者との調整などは、法律のプロである弁護士に委ねるのが望ましいといえます。

被害者の心情にも配慮しながら、適切な金額で示談成立に尽力していただけるはずですし、場合によっては、嘆願書まで作成してもらえるかもしれません。

示談が早ければ早いほど、集団痴漢で逮捕された人に有利な処分結果が出ることが期待できますので、被疑者が逮捕された直後の早い段階で、弁護士に依頼することが望ましいことになります。

また、弁護士に依頼すれば、弁護士が、逮捕に引き続く勾留、あるいは勾留延長を阻止する活動により、また起訴された場合でも、信頼できる身元引受人の「身元引受書」、被告人の被害者や共犯者と接触しない旨の誓約書など、逃亡や罪証隠滅を防止できる資料等を揃えて保釈の手続をとることにより、早期釈放の可能性も出てきます。

4.集団痴漢における示談金の相場

集団痴漢における示談金の相場

集団痴漢の示談金の相場と単独痴漢の示談金の相場には、違いがあるのでしょうか。

まず、単独痴漢であれ、集団痴漢であれ、示談金(損害の賠償金や慰謝料)の相場を見いだすことが可能なのかについて考えてみましょう。

同じ痴漢であっても、条例違反の罪に当たる痴漢もあれば、強制わいせつ罪に当たる痴漢もあり、また、単独痴漢、集団痴漢というように、それぞれの事案ごとに、犯行に至る経緯・動機・目的、犯行の方法、犯罪の結果の重大性や犯行態様が異なりますので、被害の深刻さ、その程度や被害感情は一律ではありません

さらに、被害に遭った際の恐怖等の被害感情や捜査への協力等の被害者の負担も勘案しなければなりません。

そして、被害結果の大小や深刻さ、将来に及ぼす影響、被害感情の強さについては、被害者ごとに斟酌すべき点も異なりますし、実際の事件では、犯人側の支払能力が決定的な要素になることも少なくありません。

上記のように、痴漢事件の場合、被害者ごとに斟酌せざるを得ない不確定要素が多いため、示談金の相場を見いだすことは難しいと言われているのも事実なのです。

その示談金額(民事裁判で認められている金額を含みます)の幅については、結論のみを示しますと、条例違反の罪に当たる痴漢の場合は、おおむね10万円~80万円(その中では、30万円~50万円が多いようです)、強制わいせつ罪に当たる痴漢の場合は、おおむね30万円~300万円(その中では、100万円前後が多いようです。)となっています。

しかし、上記の例は、あくまでも単独痴漢として紹介されている場合ですので、集団痴漢となりますと、共同不法行為の側面が加わりますので、更に示談金額の算定には困難さを伴います。

被害者は、平安な日常生活を取り戻したいため、犯人側とのかかわりから早期に解放されることを望むでしょう。そのため、場合によっては、資力のある犯人との間で、共犯者全員を含む形で示談する方法を強く望むことも考えられます。

そのような場合は、示談成立後に、示談金の負担割合について、共犯者間で内部的に解決することになります。このような解決が得られなければ、犯人各自と個別に折衝しなければなりません。

その場合、犯人の人数が多ければ多いだけ、被害者の精神的負担(被害者の通勤、通学や日常生活における行動範囲と犯人各自の行動範囲が重なる度合いが増すことになります)、被害の深刻さやその程度、さらには、被害に遭った際の恐怖、男性に対する不安感あるいは男性との接し方を含む影響等も大きくなりますので、金銭的賠償では消し去ることのできないような精神的打撃も加わり、示談成立には困難さが伴うとされているのも現実なのです。

したがって、集団痴漢の方が、単独痴漢よりも、その悪質性に照らし、示談金の相場を導き出すことは難しく、また、集団痴漢の示談金の総額が、単純痴漢の示談金よりも高額になる可能性は否めません。

5.まとめ

痴漢で逮捕された場合、その行為の悪質性に照らし、集団痴漢の方が単独痴漢よりも勾留の可能性が高く、示談の成立も難しくなります。

単独痴漢であれ、集団痴漢であれ、もし痴漢で逮捕されてしまった場合には、刑事弁護に造詣の深い弁護士にお早めに相談をするべきです。

ノウハウのある弁護士が弁護活動することで、早期に示談が成立すれば、不起訴になる可能性もありますし、起訴となった場合でも、罰金、執行猶予付判決など、有利な処分結果が期待できます。

痴漢事件を犯してしまった方は、お早めに刑事事件の弁護実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴されたりしますし、処分が罰金であっても前科となります。

不起訴などで最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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