刑事弁護 [公開日]2017年7月25日[更新日]2021年2月10日

示談できない、示談不成立、示談を拒否された場合の対処法を解説

痴漢や盗撮、傷害、暴行、恐喝、交通事故など、被害者がいる刑事事件を起こしてしまった場合には、不起訴獲得・前科回避のために被害者と示談を成立させることが最も重要です。

しかし、場合によっては、相手方が示談を拒否するケースがあります。

この記事では、示談を拒否されてしまった場合の対処法について解説します。

1.示談とは

示談とは、被害者に発生した損害を賠償して民事的な解決を図るとともに、被害者に犯罪行為を許してもらい、刑事罰を望まないと意思表示してもらうことです。

私人間の民事的な解決ではありますが、被害者に生じた被害が回復しているかどうか、また、刑事罰を望まないかどうかは検察官や裁判官が加害者の処分を決めるうえで非常に重視されるので、示談の成否は国が行う刑事処分に大きな影響を与えます。

このため、起訴前に示談が成立していれば、初犯であり、悪質性も低く、重大事件でなければ、検察官が不起訴処分としてくれることが期待でき、前科が残らない可能性が大きいといえます。

検察官が起訴して裁判になってしまったとしても、示談していることにより罰金になる・判決に執行猶予が付く可能性が大きくなります。

他方、示談が不成立ですと、検察官に起訴され、裁判でも被告人に不利な判決が出る可能性が高まります。
また、後から民事訴訟で損害賠償を請求される可能性も残ります。

刑事事件における示談の重要性を詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

[参考記事]

刑事事件における示談の意義、タイミング、費用などを解説

2.示談ができない場合

被疑者としては、何とかして被害者との示談を成立させたいところでしょう。
しかし、被害者と示談ができないケースは存在します。

理由としては以下のようなものがあります。

(1) 被害者が連絡先を教えてくれない

被疑者は、被害者の連絡先を知らないことが大半かと思います。
その場合には、刑事弁護の依頼を受けた弁護士が、検察官・警察官に被害者の連絡先を尋ねます。検察官・警察官は、被害者の同意を得られたケースに限り、弁護士に被害者の連絡先を教えてくれます。

しかし、被害感情が強い場合には被害者が被疑者の弁護人(弁護士)に連絡先を教えることを拒否することがあります。
その場合には、弁護士であっても連絡先が分からない以上、被害者との示談交渉すらできません。

(2) 示談条件が折り合わない

被害者が検察官などを通して弁護士に連絡先を教えてくれたとします。早速、示談交渉がスタートします。

しかし、示談は互いの合意によって成立するものですから、最終的に示談金などの条件が被害者との間で折り合わなければ示談が成立しません。

(3) 未成年である被害者の両親が示談をしてくれない

また、被害者が20歳未満の場合には、示談交渉の相手方は被害者の親権者である両親となります。未成年者との示談を、親権者の同意なく成立させても、後で親権者から取り消されてしまう危険があるからです(民法5条)。

ところが、特に性犯罪の場合には、「我が子にとんでもないことをした奴」との思いから、親権者の被害者に対する見方には大変厳しいものがあるのが通常で、示談交渉が難航しやすいです。実際、弁護士に連絡先を教えることすら拒否することもあります。

また、親権者が示談交渉には応じてくれても、激しい怒りから、要求する示談金額が通常よりも高くなるのが通常です。
その結果、示談金が用意できず示談が成立しないこともあります。

3.示談が成立しない場合の対処法

上記のような理由で示談が成立しない場合でも、取り得る対処法は存在します。

(1) 被害者の怒りや恐怖が原因の場合

示談に応じてもらえない理由のひとつに、被害者の怒りや恐怖がおさまっていないことが原因となっているケースがあります。

被害者の怒りが強い場合、弁護士は、①加害者本人が犯行を心から反省・後悔し謝罪していることを伝え、②逆に被害者が如何に深刻な被害を受け、加害者を憎んでいるかを聴き取って加害者にも伝え、③加害者が被害者の心情を聞いて、さらに反省を深めた言葉を弁護士を通じて被害者に伝えます

このフィードバッグを何度か行い、弁護士を介したコミュニケーションで被害者の心を溶かすことができれば示談交渉が進みます。

もちろん、被害者の被害者意識、怒りが固く、一切を拒絶される場合もあります。
これは時間の経過で被害者の精神的な傷が癒えるのを待つしかありません。

身柄事件の場合、起訴・不起訴の判断が決まる勾留満期、そのような場合には示談は間に合いませんから、しばらく時間を置きます。

そして、起訴後、まずは第一回公判期日までの間に示談交渉できないか打診し、それが無理でも第一審判決前、それも無理なら控訴して控訴審の判決前まで示談の可能性を探ることになります。

在宅事件の場合は、身柄事件ほど時間はタイトではありませんが、逆に、検察官がいつ処分を決めるのかはまったくわかりませんから、時間を置いているうちに起訴されてしまう危険があります。

そこで弁護士は、定期的に担当の警察官・検察官に連絡をし、検察官送致の時期や検察官の判断時期がいつになりそうか探りを入れ、その結果に応じて被害者への交渉打診を再開します。

他方、痴漢による精神的なショックや、怪我を負わされた恐怖のために示談に応じてもらえない場合もあります。

この場合には、被害者の恐怖心をできるだけ払拭できる条件を示談書に盛り込むことを提案します。

条件の例
・被害者が通学などで利用している電車・バスなどは利用しない
・被害者の家から遠い場所に引っ越す

当然のことながら、示談内容に盛り込んだ以上は被疑者には絶対に守っていただくことになりますし、弁護士としては被疑者に守っていただけないと思われる事項は示談条件には盛り込みません。

示談は被疑者と被害者の間の契約ですから、示談内容を守ることは被疑者の義務であって、保証人ではない弁護士には何らの義務もありません(ただし、示談書の中に、被害者の情報を加害者とその関係者に漏らさない旨を弁護士が誓約する旨を記載することはあり、その場合は、弁護士も契約の当事者として誓約を守る法的義務を負います)。

しかし、被害者が示談に応じてくれるのは、弁護人である弁護士を信頼してのことであることは間違いありません。法的には弁護士に責任はなくとも、道義的・社会的な責任として、弁護士は被疑者に示談の条件を守らせる責任があると言えます。

ですから、それが難しいと判断する場合には、示談書に盛り込まないのです。

(2) お金がない場合

適切な金額の示談金を請求された場合でも、被疑者にお金がない場合があります。

民事賠償として法的に適切な金額の請求と判断される場合は、次善の策として、その金額の示談金支払義務を認めたうえで、分割払いを約束する示談を成立させ、示談書の調印と同時に頭金を支払います。

この場合、示談は成立しますが、全額を支払い終わるまでは被害は回復していませんし、被害者の宥恕も条件付きですから、示談としての効果は限定的です。

それでも、きちんと被害者と交渉して、一定の約束を成立させているのですから、お金がないなりに誠実な態度といえ、示談に至らないよりはマシと言えます。

示談書の調印と同時に頭金を支払うことは必須ではありませんが、これがないと書類を作っただけで実行が伴っていないことになるので、できる限り、頭金を入れるよう努力します。

ただ、このような分割払では、被害者が応じてくれるとは限りません。分割払なら保証人をつけるよう要求される場合もありますし、もちろん、それができれば例えば親族に保証人になってもらいますが、この手の金銭について保証人となってくれる人物は中々いないものです。

分割払いの示談が成立しない場合には、全額は無理でも、適正な金額の一部だけでも支払えるなら、一部だけでも被害者に受けとってもらうべきです。もちろん領収書をもらうか、振込明細書を残しておきます。

たとえ一部といえども、まったく賠償金を支払っていない場合よりは有利な事情となります。

賠償金の一部では受け取ってくれないという場合は、法務局へ供託をすることや、後述の贖罪寄付をすることもひとつの方策です。

法務局へ供託すると、例え被害者が受取りを拒否していても、供託した金額については被害者に支払ったものと取り扱われます。加害者にとっては、その部分についての遅延損害金(遅延利息)が発生しなくなるという民事面でのメリットもあります。

(3) 連絡が取れない、示談交渉にすら応じてくれる余地がない場合

被害者とそもそも連絡がとれなかったり、被害者の示談拒否の気持ちが強く最初から示談交渉にすら一切応じてもらえなかったりすることもあります。

このような場合であったとしても、被害者に対する自身の謝罪、賠償の姿勢を示すため、これを形にしておくべきです。
被害者の気持ちが変わった段階で示談交渉に入れるように、被害者への謝罪文を用意したり、場合によっては、示談金を弁護士に預けて今後いつでも被害者に渡せるようにしたりするべきです。

被害者の住所氏名の開示を受けていれば、供託をすることが可能です。

また、贖罪寄付で謝罪の気持ちをあらわすという方法もあります。被害者の住所氏名の開示を受けられず供託もできない場合には、この方法を取ることになります。

例えば、各都道府県の弁護士会が贖罪寄付を受け入れています。贖罪寄付を行った証明書が発行されるので、贖罪・反省の気持ちを形にすることができる。

[参考記事]

贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?

4.示談交渉でお困りならば弁護士へご相談ください

被害者のいる事件を起こしてしまった場合には、何よりも示談を行うことが重要です。

刑事事件の示談交渉でお困りならば、刑事弁護活動の経験、示談経験豊富な泉総合法律事務所に示談交渉を含む刑事弁護をご依頼ください。
初回60分相談無料ですので、一人で悩まず、まずは当事務所へお問い合わせください。

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