痴漢

痴漢とは

痴漢とは、女性の服の上から、もしくは直接、相手の身体をさわったり、自分の股間を相手に押し付けたりするわいせつ行為をさします。主に電車やバスなどの交通機関内で行われます。

これらの行為が“痴漢”にあたります

  • ◇バスの中で服の上から女性の胸をさわった
  • ◇電車の中で女性の太ももやお尻を撫でまわした
  • ◇混雑した電車の中で、自身の身体や股間を相手に押し付けた
  • ◇相手の下着の中に手を入れた
  • ◇ショッピングモールなどの商業施設で混雑しているすきを見て女性の下半身を触った

痴漢の刑罰

相手の身体のどの部分をさわったかによって犯罪内容が異なります。衣服の上から少しさわる場合には、各都道府県で制定されている“迷惑行為防止条例違反”で処罰されます。条例名ですが、都道府県で名称は異なり、東京都、千葉県では、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例と言い、神奈川県、埼玉県では、神奈川県迷惑行為防止条例、埼玉県迷惑行為防止条例と言っていますが、規制内容は同じで、公共の場所(不特定多数の出入りする場所)で他人に迷惑、困惑、不安などを与える行為を防止するための条例で痴漢行為や盗撮などを規制対象としています。

一方、服や下着の中にまで手を入れるといった悪質な場合は、刑法上の“強制わいせつ罪”(刑法176条)で処罰されます。強制わいせつ罪は迷惑行為防止条例違反とは異なり罰金刑がありませんので、起訴されると略式起訴での罰金刑はなく正式裁判となり、懲役刑などが宣告されます。

具体的な刑罰内容は次のとおりです。

罪名 都道府県 通常 常習
迷惑防止条例違反 東京都 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
千葉県
埼玉県
神奈川県 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 2年以下の懲役または100万円以下の罰金
強制わいせつ罪 6ヶ月〜10年の懲役

◇迷惑防止条例違反にあたるケース

迷惑防止条例違反の痴漢とは、公共の場所または公共の乗り物の中で、衣服の上から、もしくは直接、相手の身体をさわるなどしたケースが該当します。公共の場所などではないところで痴漢行為を行うと、迷惑行為防止条例違反にはなりませんが、代わりに強制わいせつや暴行罪に問われることになります。

迷惑防止条例違反の痴漢の法定刑は、都道府県ごとに異なりますが、多くの場合、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。

迷惑防止条例違反に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず、弁護士を依頼しなかった場合ですが、初犯であれば多くの場合には、略式手続で罰金刑になります。罰金額は30万円前後が多いようです。同種の前科がたくさんあるときなどは、正式起訴、つまり公判請求され裁判になり初めての裁判であれば執行猶予がつくでしょうが、懲役刑の有罪判決が宣告されることになります。
罰金刑でも前科となりますので、罰金刑と言えども避けるに越したことはありません。その意味で刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼することを強くお勧めします。

弁護士は依頼を受けますと、被害者と示談交渉をすることになります。示談とは、被害者の精神的苦痛の賠償である慰謝料を弁償するとともに、被害者から被疑者の犯行を許してもらい、刑事処罰を望まないとの宥恕内容を入れた合意を言います。被害者との示談が成立した場合には、初犯であれば不起訴処分となるのが通常です。

仮に前回は弁護士を頼まずに罰金になったような場合でも、今回弁護士に依頼して被害者との示談交渉をし、示談が成立すれば今回の痴漢行為については不起訴になる可能性が高いです。当所泉総合法律事務所では初回の痴漢行為だけでなく2回目、3回目の痴漢行為をした方の刑事弁護の依頼を受けることがかなりありますが、被害者に示談をしていただくことで不起訴になった方が多数いらっしゃいます。

◇強制わいせつにあたるケース

強制わいせつの痴漢とは、電車内などの場合ですと、女性の下着の中に手を入れて性器などを触る行為となりますが、強制わいせつにあたる痴漢行為が行われる場所は迷惑行為防止条例違反の場合とは異なり、公共の場所または公共の乗り物である必要はありません。女性の住居に侵入して胸や下半身に触れる行為をすれば強制わいせつにあたります。もっとも、相手の身体に軽くさわる程度では該当しません。軽く触る程度ですと、暴行罪に該当します。具体的には、相手の下着の中に直接手を入れたり、下着を脱がして触ったり、何度も執拗に相手の身体を撫でまわすといった悪質な行為が強制わいせつに該当します。

強制わいせつ罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず弁護士を依頼せずにいた場合ですが、まずは、逮捕され、その後勾留されて検察官によって起訴、つまり公判請求され、正式裁判になります。強制わいせつには法定刑で罰金が定められていないため、迷惑行為防止条例違反のように略式手続で罰金ですむということはありえません。

近時の性犯罪の厳罰化の傾向から、被害者から示談を取り付けない場合、同種前科があり繰り返している場合、犯行態様が悪質な場合や被害が重大な場合には、初犯でも実刑判決の可能性が高いとお考えいただいた方がよろしいと思います。強制わいせつは繰り返す方がかなり多い(性的依存症)のですが、執行猶予中に強制わいせつを行って起訴されると、特別の事情は認定されないでしょうから、実刑判決となり、前刑の執行猶予は取消しとなり、今回の実刑と前刑の刑期の合計した刑期を服役することになります。

他方、刑事弁護経験豊富な弁護士に刑事弁護を依頼して起訴前に被害者との示談が成立すれば、不起訴の可能性が高いといえます。平成29年7月13日の刑法改正の前は強制わいせつは親告罪といって、検察官が起訴するために告訴があることが条件となっている罪でしたので、被害者と示談でき告訴取消となった場合には必ず不起訴になりましたが、刑法改正により示談しても必ず不起訴になるとは限らなくなりました。

痴漢の弁護方針

痴漢の場合、罪を認めている場合と無罪を主張する(否認)場合とで、弁護方針が異なります。

◇罪を認めている場合

(1)何はともあれ、まずは被害者との示談成立を目指す

刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、被害者と示談交渉を行い、とにかく早期の示談成立を目指して全力を注ぎます。と言うのも、被疑者を起訴するかどうか判断するにあたり、検察官は示談の成否をとても重要視するからです。

ただ、性犯罪事件の被害者の連絡先を、警察官や検察官などの捜査機関が加害者に教えることは絶対にありません。警察官や検察官が被害者の連絡先を教えるのは弁護士に限ります。したがって、弁護士を依頼しないかぎり、示談交渉を始めることが不可能な場合です。

また、仮に被害者が友人であるなどの事情から、被害者の連絡先を知っているような場合でも、当事者が示談しようとして接触することはおすすめしません。感情的になってしまい、示談交渉が進まない可能性が高いからです。弁護士が示談をするために検察官など捜査機関に対して被害者の連絡先を教えてくれるよう頼むと、検察官は被害者に意向確認しますが、被害者も、弁護士限りであれば、と連絡先を検察官経由で弁護士に教えてくれます。弁護士はこのようにして被害者と示談交渉を行い、被疑者の代わりに謝罪をし、また、被疑者の謝罪の手紙を渡して、被害者のお気持ちや受け止め方を聞いて、示談の申し入れをいたします。

迷惑行為防止条例違反の痴漢

迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合には、強制わいせつの痴漢と比べると、痴漢の程度が軽いこともあり、多くの場合、被害者の方には示談に応じていただけていると思います。これに対して強制わいせつの痴漢は痴漢の程度が重いため、被害者の被害感情が強いのが通常ですので、示談交渉は難しいことが多いといえますが、誠意をもって粘り強く示談交渉することで示談をしていただけることも少なくありません。

迷惑行為防止条例違反の痴漢の場合には、逮捕、勾留されることは少なく多くは在宅事件ですので、示談交渉の時間的制限は1か月はありますので、その間に通常示談を成立させることができます。被害者が示談していただけない場合には初犯であれば略式起訴での罰金刑となります。

強制わいせつの痴漢

強制わいせつの痴漢は逮捕勾留されるのが通常ですので、勾留延長された場合ですと23日間の期間内に被害者の示談を取り付ける必要があります。

もっとも、刑法改正以前と異なり親告罪ではなくなりましたので、示談が成立しても前科があったり犯行態様が悪質などの事情があれば不起訴とはならず起訴、正式裁判の可能性が高いといえます。初犯だから示談できたら必ず不起訴となると保証することは性犯罪の厳罰化の傾向を考えると断言することはいたしかねます。

もし起訴されてしまったあとでも、示談が成立していれば、執行猶予付き判決を下す可能性が高くなるため、やはり示談交渉は重要です。示談ができていなければ初犯でも実刑判決の可能性があると思ってください。

(2)反省文・謝罪文を提出する

被害者の思いを被害者の立場に立って感じ取ってもらい、痴漢行為を犯してしまったということの重大性を被疑者として受け止めてもらい、深く反省してもらいます。そのうえで、十分反省しているという姿勢を理解してもらうために、被疑者の方に反省文を作成してもらい、それを検察官や裁判官に提出します。

また、被害者に対する謝罪文も被疑者の方に作成してもらい、猛省している姿勢を被害者に理解していただきます。

(3)今後の家族による監督をアピール

「今後、二度と同様の行為をおこさないよう、被疑者をきちんと監督していきます」といった誓約書を被疑者のご家族に作成してもらい、検察官や裁判官に提出します。もちろん、誓約書を提出する以上は被疑者のご家族に守ってもらうことはもちろんです。

(4)専門家の診断、カウンセリングを受ける

“やってはダメなことだ”と理解していても、痴漢行為がやめられない・・・・

こういった痴漢常習者である被疑者は、性嗜好障害(性依存症)という病気の可能性があります。この場合、性犯罪再犯防止のクリニック(専門クリニックがなければ心療内科)に通院したり、専門家のカウンセリングを受け、それらクリニックや専門家の診断書やカルテなどを検察官や裁判官に提出することで反省と今後の更生を理解してもらいます。

(5)早期釈放を目指します

在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指すべく、泉総合法律事務所では以下の弁護活動を全力で行います。

・勾留請求をしないでもらえるよう、検察官に対して要求する。被疑者の家族の身元引受書や上申書、意見書を検察官に提出して釈放を働きかけます。


(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に要求する。裁判官に伝わっていない事情や勾留のもたらすデメリットなどを記載して意見書を裁判官に提出して釈放を働きかけます。

(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。いわゆる、“準抗告”を行う。準抗告は3名の裁判官からなる裁判所に勾留決定の取り消しを求める裁判で、認められれば勾留決定取消し釈放となりますが、通常は認められないと言っていいです。当所泉総合法律事務所では4週間連続で4件準抗告が認容されて釈放を勝ち取っています。釈放をお望みの場合には、釈放活動実績多数の泉総合法律事務所にご依頼ください。

◇無罪を主張する場合(痴漢冤罪の場合)

(1)自白調書を取らせない

捜査機関はさまざまな手を使って、被疑者に自白させようと働きかけてきます。「本当に痴漢はやっていない」ということであれば、このプレッシャーに屈することなく、否認する態度をとり続けましょう。

しかし、実際のところ、長時間の取調べや捜査機関の威圧的な態度に、何度も心が折れてしまいそうになるでしょう。
そのようなときは、泉総合法律事務所の弁護士が、被疑者ご本人を励ますのはもちろん、今後の取調べにおける注意点もアドバイスするなどして、被疑者の方を全面的にバックアップしていきます。違法な取り調べがあれば警察署長や検察官に抗議を行います。

(2)被害者供述の信ぴょう性について検証する

被害者の供述調書の内容について、客観的な事実との矛盾点がないかを細かく検証します。

たとえば、電車内で行われた痴漢行為であれば、実際に同じような混雑具合の電車に乗って、被害者の供述と同じ状況が再現できるかを検証します。そこで矛盾点が見つかれば、その点を検察官や裁判官に主張していきます。