財産事件 [公開日]2018年1月20日[更新日]2019年10月29日

クレプトマニア(万引き癖)の特徴とは?診断基準・治療法と弁護方法

クレプトマニア(窃盗癖または万引き依存症)という言葉をご存知でしょうか?
実は、これは国際的な基準が存在するほど有名な精神疾患です。日本にもこの病気で悩んでいる方が多くいらっしゃいます。

クレプトマニアの方は、何度も万引きを繰り返してしまう、つまり万引きがやめられないことが多く、結果的にどんどん重い量刑が科せられることになります。

ここでは、クレプトマニアの原因や、具体的な症状や特徴、診断基準、治療方法について解説します。

1.そもそも万引きとは

万引き」は、客を装って商店等に入り、店員に分からないように金銭などの対価を払わずに商品を持ち去るという窃盗のひとつです。刑法上の用語ではなく、犯罪としては刑法235条の「窃盗罪」にあたります。

万引きを含む窃盗行為は、一般的に「貧困で物を買うお金がない」「盗む対象となる物が欲しい」あるいは「スリルを楽しみたい」等といった理由から行われます。

しかし、これから説明するクレプトマニアによる万引きは、そのような理由から行われるものではありません。

2.クレプトマニアとは

クレプトマニアとは、経済的事情からではなく、万引きなどの窃盗行為の衝動を抑止できず、反復的に窃盗行為をしてしまう症状です。「万引き依存症」、あるいは「窃盗癖」と呼ばれることもあります。
摂食障害、うつ病、アルコール依存症などと併発することも多いと言われています。

窃盗行為をする時の緊張感を快感として、窃盗行為が成就した時に達成感、満足感を得ることができるために、依存的に窃盗行為を繰り返すいわば精神障害の一種とされており、窃盗の対象は何でもいいと言われています。

このようなクレプトマニアが原因の万引きは、治療を受けなければそのまま犯罪を繰り返すことになります。

(1) 診断基準

クレプトマニアは精神疾患の一つですから、通常は、精神科医が問診を行って判断することになります。その際に使われるのが、DSM-5という診断マニュアルに記載されている診断基準です。

DSMはアメリカ精神医学会が作成している精神疾患・精神障害の分類マニュアル(正式には「精神障害の診断・統計マニュアル」と言います)で、精神疾患・精神障害の国際的な診断マニュアルとして使われています。DSM-5はその第5版になります。

DSM-5におけるクレプトマニアの診断基準は、次のようになっています。

  • 個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
  • 窃盗に及ぶ直前の高まり。
  • 窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
  • 盗みは、怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない。
  • 盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

なお、DSM-5における診断基準はあくまでひとつの目安であり、絶対の基準ではありません。
実際の医療現場においては、専門医が問診など行って、必ずしも上記の基準にとらわれずにクレプトマニアにあたるかどうかを診断します。

(2) 治療方法

クレプトマニア専門クリニックは、東京、神奈川などの首都圏で増えてきています。

事情によっては病院に入院することもありえますが、その場合通常3カ月間前後入院することになります。入院すると保険適用にはなりますが、それでも入院費用は結構な額になります。家族への影響も大きいでしょう。

クレプトマニア専門病院に入院したからといって、執行猶予などの減刑が必ず得られるという保証はないので、泉総合法律事務所では、最終的には被告人や家族に入院するかどうかについて判断してもらうことにしています。

3.クレプトマニアによる万引き事件の弁護

(1) 万引きを繰り返した場合の刑罰

クレプトマニアの万引きは、初犯や2回目の犯行までは(少額で商品買い取りを行うならば)不起訴の確率が高いでしょう。

しかし、3回目からは、少額の万引きでも罰金刑となり、前科がついてしまうことが多いです。
そして、4回目以降は、検察官が逮捕・起訴して正式裁判となる可能性が高いでしょう。そこで執行猶予がついても、猶予期間中に再度万引きをしてしまうと、不起訴にならない限り、1年から2年程度の懲役の実刑判決を宣告されます。

そうなると、執行猶予が取り消され、合計2年ないし3年前後刑務所に服役することになります。

これまで万引きの刑事弁護に多数取り組んでいる泉総合法律事務所でも、このようなパターンは非常に多いです。

(2) クレプトマニアの弁護方針

まず、クレプトマニアに限らず、万引き事件では被害者の方と示談することが重要です。

検察官は示談の成立の有無も起訴するか否かの考慮要素とするため、示談が成立していると、不起訴となったり執行猶予を獲得できたりする可能性があるのです。

もっとも、店によっては一律示談に応じてくれないこともあります。その場合は、贖罪寄付などを行うのが良いでしょう。

[参考記事]

贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?

次に、クレプトマニアの万引きの場合、治療の必要性を主張していくことになります。

クレプトマニアの方は衝動的に物を盗んでしまう病気のため、刑罰による更生をあまり期待できません。「窃盗の原因となったクレプトマニアは精神疾患なので、厳罰ではなく治療が必要」ということを検察官や裁判官に訴えていくことになります。

具体的には、医師の診断書、治療に対する本人の固い意志、また、家族の献身的なサポートも求められます。

検察官・裁判官に認めてもらえた場合、刑期を軽くしてもらえたり、再度の執行猶予を得られたりすることもあるでしょう(なお、クレプトマニアだから無罪になるということはなく、あくまで減刑を目指す弁護活動となります)。

ただ、以上のことは、刑事事件に詳しい弁護士でなければ、適切に主張できないと思われます。

4.窃盗(万引き)の刑事弁護は弁護士へ

泉総合法律事務所は、様々な刑事弁護の経験が豊富な弁護士が多く在籍しており、窃盗事件、万引き事件の弁護も多数経験がございます。

何回も窃盗・万引きを繰り返してしまうという方は、実刑判決となってしまう前に(できれば万引きで最初に検挙された時点で)、お早めに泉総合法律事務所にご相談ください。クレプトマニアの治療も含めて早期に対応いたします。

また、執行猶予中に万引きをしてしまった場合にも、万引きの犯行をした時点で直ちに泉総合法律事務所にご相談・ご依頼ください。

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