財産事件 [公開日]2018年8月31日[更新日]2021年6月24日

万引きで逮捕後の流れと弁護士に依頼するメリット

万引きすると、いつかは見つかって逮捕・起訴される可能性が高いです。

それでは、万引き等の窃盗事件の容疑で逮捕された後の具体的な流れは、どのようなものでしょうか?

今回はそのあたりを中心に解説しつつ、万引き事件を弁護士に依頼するメリットを、弁護士が解説していきます。

1.万引きで逮捕された後の流れ

万引きは「窃盗罪(刑法235条)」に該当する犯罪です。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

万引きが発覚して逮捕されるパターンとしては、商品を盗むところを店員、店主、客、警備員などに見つかってその場で取り押さえられる(現行犯逮捕)場合や、被害届が提出され、監視カメラ(防犯カメラ)の映像等の証拠により犯人が割れ、警察官が逮捕状による通常逮捕(後日逮捕)を行う場合が考えられます。

(1) 送検される

警察に逮捕されると警察署に連行されて取り調べを受け、その後48時間以内に検察官のもとに身柄を送致されます(送検)。

ただし、被疑者が素行不良者ではなく、初犯である、反省している、被害額が僅少、被害品の返還や買い取りがなされている、被害者が処分を望んでいない等の条件を満たす場合は、現行犯逮捕の場合に限り、「微罪処分」として釈放される可能性があります。

微罪処分では検察官に送致をされず、警察の説諭を受けて事件が終了となるので、特別な事情がない限り、その万引き事件の捜査は終了となります。

[参考記事]

微罪処分になる要件とは?呼び出しはあるのか、前歴はつくか

(2) 勾留される

万引で逮捕後、検察官の元に送られると、検察官も取調べを行い、被疑者の身柄を引き続き拘束する必要があるかどうか判断します。

身柄拘束が必要な場合とは、罪証隠滅の恐れがある場合や逃亡の恐れがある場合をいいます。例えば、万引きの事実を否認している、定職についていないなどの場合には、身柄拘束が必要と判断されやすいでしょう。

身柄拘束の継続が必要と判断した検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留を請求します。

裁判官が犯罪の嫌疑と逃亡や証拠隠滅のおそれがあることを認めると勾留状を発布し、被疑者の身柄は引き続き警察の留置場で拘束されます。

逮捕後から勾留までの3日間は、弁護士以外の者は、たとえ家族であっても本人に面会できません。逮捕から勾留に切り替わると、原則として、家族を含めて弁護士以外の者でも、警察の留置場で被疑者に面会できるようになります。

勾留は勾留請求の日から10日間(勾留延長された場合は最長20日間)続きます。そのため、逮捕・勾留による身体拘束は、最長で逮捕から23日間続きます。

検察官が勾留の必要性がないと判断した場合や、裁判所が勾留請求を却下した場合には、被疑者の身柄は釈放されます。ただし、刑事手続きが終了するのではなく、被疑者在宅のまま引き続いて捜査が行われます。

このように被疑者在宅で捜査が続けられる事件のことを、在宅事件と言います。これに対して、逮捕や勾留で現に身体拘束を受けている事件を身柄事件と呼びます。

[参考記事]

在宅事件の流れ|起訴・前科がつくことはあるのか

(3) 起訴・不起訴の処分が決まる

検察官は、身柄事件では勾留期間が満期になるまでに、被疑者を起訴するか不起訴にするか、それとも処分保留で釈放し、在宅事件に切り替えるかを決定します。

在宅事件では、警察、検察の捜査による証拠収集が終わった段階で起訴不起訴を判断することになります。

起訴には、公判請求(正式裁判を求めるもの)と略式起訴(略式裁判を求めるもの)があります。略式起訴の場合は簡略な書類上の刑事裁判手続だけで罰金刑を受け、その罰金を納めるのみで終わりますが、公判請求されると公開法廷での刑事裁判を受けなくてはなりません。

万引きの場合、刑事裁判で有罪判決が出されると、罰金刑や懲役刑が言い渡されます。
懲役刑で執行猶予がついたなら、執行猶予期間中に再度犯罪を犯すなどして執行猶予が取り消されない限りは、刑務所に行かずに済みます。執行猶予がつかない場合は、懲役刑では、有罪判決が確定すれば収監されて服役することになります。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い

他方、不起訴になると、原則として、その刑事事件は終了します。裁判にはなりませんし、身柄事件の場合には被疑者の身柄が釈放されます。

2.万引きで逮捕された際の刑罰

刑法235条の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、万引きで逮捕されると、どのような場合に懲役刑となり、どのような場合に罰金刑となるのでしょうか?

(1) 罰金刑になるケース

窃盗罪には罰金刑と懲役刑がありますが、一般的には罰金刑の方が軽い罪と理解されています。

万引きの場合では、以下のように犯行態様が悪質でなく、かつ、情状が良い場合に罰金刑となる可能性が高いです。

  • 初犯
    初めて万引きをした場合です。
  • 被害額が小さい
    たとえば、被害物品の価格が数百円程度の少額の場合です。
  • 計画性がない
  • 転売目的がない
  • 被害弁償している
    被害物品をそのまま返している場合や、被害品の対価を支払った場合です。
  • 被告人が真摯に反省している
    被告人が反省しており、再犯の可能性が低いと判断された場合です。
  • 家庭、勤務先がしっかりしており、家族や上司など、今後の監督を誓約する者がいる
  • 示談が成立している

(2) 懲役刑になるケース

万引きで懲役刑になるのは、罰金刑のケースより犯行態様が悪質または情状が悪い場合です。

具体的には以下のようなケースだと懲役刑になりやすいです。万引きであっても場合によっては、実刑判決(執行猶予がつかないこと)が出される可能性もあります。

  • 余罪あり
    逮捕が1回目でも、同種の余罪が多数ある場合です。
  • 前科・前歴あり
    被害額が僅少でも、前科・前歴、特に同種の前科が複数回ある場合です。
  • 計画的犯行
    事前に盗品を入れるためのバッグや手元を隠すための荷物など、万引きに役立てるための道具を用意していたり、数人で見張り役・実行役などを分担したりなど、計画された犯行の場合です。
  • 転売目的がある
    盗品をネットや買取ショップで販売して換金する目的がある場合です。
  • 被害額が高額
    たとえば被害額が数十万円程度の場合です。
  • 被害弁償できていない
  • 再犯のおそれが高い
    反省していない、定職に就いていないので収入がない、同居家族などの監督者がいないなどです。

3.なるべく早く釈放してもらう方法

万引きの被疑者がまず目指すべきは、不起訴処分です。不起訴処分になると、その場で身柄を釈放されて、その後同じ案件で逮捕される可能性はほとんどなくなるからです。

以下では、万引きで不起訴処分を勝ち取る方法を説明します。

(1) 被害者と示談を進める

被害者(被害店舗)との示談交渉を進めることが、まず何よりも重要です。

万引きでは、被害者との示談が成立すると、示談金の支払や被害品の還付によって損害が補てんされたうえ、被害者の処罰感情がなくなったことが明らかになるため、処分が軽くなる可能性が高いからです。

起訴前に示談を成立させられたら、被害額等他の犯情にもよりますが、不起訴の可能性がかなり濃厚になります。

(2) 被害弁償、贖罪寄付をする

被害者(被害店舗)が示談に応じてくれない場合や、資力がなくて被害額の一部しか支払えない場合であっても、払える分の弁償金だけでも受け取ってもらうべきです。

被害者が被害弁償を受けつけてくれない場合でも、振り込み送金や現金書留を送付する方法などにより弁償金を支払うことは可能です。
後で突き返されたとしても、支払う行為を行ったという事実は残りますので、何もしないより情状が良くなります。

被害店舗の方針で絶対に示談しないというときであったり、被害者の怒りが強くお金を受け取ってもらえないことが明らかな場合には、被害金額を供託する方法も考えられます。

また、贖罪寄付(罪の償いとして金銭を犯罪被害者などのために役立ててもらうよう弁護士会などに寄付すること)によって反省の気持ちを示す方法もあります。

(3) 反省の態度を見せる

不起訴処分の獲得には、反省の態度を見せることも重要です。被疑者が悪びれる様子もなければ、検察官は「起訴して処罰を与えるべき」と考えます。

取り調べ時には、しっかり反省して自分を見つめ直し、決して同じ過ちをしないと誓っていることを伝えましょう。

自筆で反省文を書いて、検察官に提出するのも有効です。握りつぶされないように、弁護士を通じて提出することがお勧めです。

(4) 事実と異なる不利な供述をしない

万引きで逮捕されると、捜査官から事件について取り調べを受けます。このとき、捜査官の誘導に乗って事実と異なる不利益な供述をしないことが大切です。

実際に万引きをした事実を認めるとしても、動機や犯行態様などの点で悪質だと思われると、起訴される可能性が高まるからです。

捜査官が「本当は罪の意識など全くなかったのだろう」「事前に計画していたのだろう」「これまでも何度もやっているよな?」「高く売れたらいいなという気持ちもなかったとは言えないよな?」などとさまざまな誘導をしてきても、事実と違うなら否定すべきです。

事実と異なっていたとしても、一度供述調書になってしまうと、後で否定することが困難になってしまいます。

供述調書の内容についても自分の認識と異なることがないかしっかり確認してから署名押印してください。

4.弁護士に依頼するメリット

万引き窃盗で早期に身柄を釈放してもらうには、弁護士に依頼する必要性が非常に高いです。
最後に、その理由を説明します。

(1) 示談を進めやすい

逮捕された被疑者本人が被害者と示談を進めることは困難ですが、弁護士であれば、被害者に連絡を入れて示談の話合いを進められます。

また、被害者は窃盗の犯人に対して怒りを感じているのが通常なので、被疑者本人との示談には応じにくいものですが、弁護士からの申し入れであれば、受け入れやすい場合もあります。

弁護士が、被疑者が反省していることや、家族がいること、初犯であることなど、被疑者の状況を伝え、示談に応じるように説得することも可能です。

このように弁護士が早期に弁護活動を開始すると、起訴前に示談ができて不起訴処分になりやすいです。

(2) 事実と異なる不利益供述を防げる

万引きで逮捕されると「この先どのように手続きが進んでいくのか」など不安に思いますし、「家族や会社はどうなるのか?」など心配になるものです。

そのようなとき、取調官から厳しく追及されたら、つい誘導に乗って、事実と異なる供述までしてしまうおそれが高いです。

また、逮捕後勾留に切り替わるまでの3日間は、たとえ家族であっても面会できないので、本人は大変心細い思いで生活しなければなりません。

逮捕当初の段階から弁護士が被疑者に接見に来ていたら、弁護士が今後の手続きの流れや適切な対応方法をアドバイスしますし、弁護士が本人を励ますので、本人の気持ちも落ち着きます。

これにより本人が捜査官の誘導に乗って不利な供述をするリスクを避けられます。

(3) 十分な打ち合わせができて、家族との連絡役になれる

勾留中は家族であっても10~20分程度しか面会できませんし、その間、留置係の警察官が立ち会う上、事件の内容にかかわる会話は禁止されていますから、本人と十分な話をすることはできません。

弁護士であれば、警察官の立会なしに、時間も内容も無制限に面会できるので、充分に対応方針を練ることができますし、家族との連絡役をつとめることも可能です。

以上のように、万引き窃盗犯が早期に身柄を釈放されるためには、逮捕後のなるべく早い段階から弁護士に依頼する必要性が高いです。

5.万引き事件の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

万引きは、窃盗罪の中でも軽く考えられることが多い犯罪行為ですが、再犯や悪質なケースでは実刑になる可能性もあります。また、仮に処分が罰金だったとしても、前科がつくことになります。

一般の方だけで出来ることは限られていますが、刑事事件に強い弁護士の力を借りることで、早期釈放、不起訴などの有利な処分を導くための具体的な対策を行動に移せます。

不利益をなるべく小さくするために、逮捕されたらすぐに刑事事件に強い弁護士に相談しましょう。また、窃盗がやめられないという方はクレプトマニア(窃盗症、窃盗癖)の可能性がありますので、すぐに治療等する必要があります。

[参考記事]

クレプトマニア(万引き癖)の特徴とは?診断基準・治療法と弁護方法

泉総合法律事務所では、刑事事件の経験豊富な弁護士が多数在籍しており、万引き事例で不起訴処分を獲得した実績なども豊富です。

[解決事例]

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