刑事弁護 [公開日]2017年10月5日[更新日]2021年2月5日

在宅事件とは?起訴・前科がつくことはあるのか

在宅事件」とは、被疑者が身柄拘束(逮捕・勾留)されていない状態で、捜査機関(警察官、検察官)が捜査(在宅捜査)を行う事件を言います。

在宅事件の反対語は、「身柄事件」です。
身柄事件は、被疑者が捜査機関に身柄を拘束されている事件のことです。

さて、「刑事事件で逮捕されたけれども、すぐに釈放されて在宅事件となった」という場合、その後の手続の流れはどのようになるのでしょうか?
また、在宅事件でも起訴され、前科はついてしまうのでしょうか?

今回は、在宅事件について解説します。

1.在宅事件について

(1) 在宅事件とは?

逮捕」も「勾留」も、ひらたく言えば、被疑者が犯罪を犯したという疑いがあり、社会に置いたままでは逃亡したり、証拠隠滅をしたり、証人を脅かしたりする危険があると考えられる場合に、被疑者の自由を拘束するものです。

ですから、犯罪を犯した疑いはあるものの、逃亡や証拠隠滅の恐れが無いだろうと判断されたケースでは、身柄は拘束されません(詳しくは(3)で後述)。
これが「在宅事件」となるケースです。

最初から逮捕すらしないケースもありますし、逮捕したけれど裁判官に勾留請求まではしないケース、勾留したけれど起訴になる前に釈放されたケースなど、在宅事件には様々なパターンがあります。

これらに共通するのは、裁判の判決を受けるまで、逃げたり証拠を隠滅したりしないであろうと認められたケースであるということです。

逆に、当初は逮捕・勾留されておらず在宅事件となっていたのに、被疑者が逃亡を計ったり被害者宅に押しかけたりした場合、逮捕されて後から身柄事件となる場合もあるわけです。

なお、「在宅事件」「身柄事件」という言葉は、法律用語ではありません。刑法にも刑事訴訟法にもこの言葉は書いておらず、ただの業界用語です。
逮捕、勾留されていれば「身柄」、されていなければ「在宅」と呼んで区別しているだけです。

(2) 在宅事件と起訴

このように、「在宅事件」という言葉には「逮捕・勾留されていない」という意味しかありませんので、それ以外の点は身柄事件と何も変わりはありません。
つまり、在宅事件だからといって実刑とはならない、実刑の確率が低いということにはなりません

また、よく、在宅事件=略式起訴(略式命令)になると誤解されている方がいます。

もちろん、略式命令となるのは微罪が多く、したがって在宅事件が多いとはいえます。
しかし、在宅事件でも通常の公判請求(公開の法廷での裁判)をされて、実刑となるケースはあります。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い

[参考記事]

公判請求とは?略式請求との違い

(3) 在宅事件となる条件

在宅事件となるのはどんな場合か決まっているわけではありませんが、事実上の条件はあります。

第一に、被疑事実を認めていることです。
被疑者が容疑を否認しているのであれば、捜査機関は「証拠隠滅の危険がある」と見ますので、逮捕されるでしょう。

次に、身元がしっかりしていることです。
家族と生活している、学校に通っている、しっかりとした勤務先があるといった場合には、逃亡するとは考えにくいでしょう。

また、事件の内容次第であることはもちろんです。いかに身元がしっかりしていて、犯行を素直に認めていても、殺人や強盗のような重大事件は在宅になりません。

また、詐欺や薬物事件も証拠隠滅の可能性が高いと見られ、逮捕・勾留されるケースが多いようです。
特に、共犯者がいてその者が所在不明といった場合は、接触・連絡を防止するために身柄を取られる場合が多いです。

【交通事故はほとんどが在宅事件】
ほとんど在宅事件となるのは、交通事故事件です。交通事故事件の場合は、例えば被疑者が過失を否認していても逮捕はされないことが多いです。
不幸にして、被害者が死亡してしまうと事故現場で逮捕されるケースもあります。これは事故の捜査が開始された段階では、被疑者の身上を明らかにする余裕がないため、現場から逃走されないよう身柄を確保せざるを得ない場合があるからです。
ですから、多くの場合、勾留期限を迎える前に処分保留で釈放され、在宅事件に移行することになります。

2.在宅事件の流れ

(1) 在宅事件の手続の進行

在宅事件といっても、先にお話した通り色々なパターンがあります。

最初から在宅事件としての扱いを受けたケースで考えると、被疑者は警察から出頭するよう呼び出しを受け、何度か警察署で取り調べを受けます。

その後、警察が事件を検察庁に送ります。
送検後も検察庁から出頭するよう連絡が来て、検察官の取り調べを受けます(微罪であると通常は1回で済みます)。

[参考記事]

検察庁に呼び出された場合の正しい対応と対策

その後、検察官が起訴するか否かを決めます。

起訴されれば、起訴状が自宅に郵送され通知されます。

略式起訴の場合は、略式とすることについて検察官から説明があり、被疑者本人の同意を得ます。

簡易裁判所が略式命令(つまり罰金の命令)を出すと、書類が郵送されてきます。
その後、検察庁から、罰金の納付書が送られてきますから、記載された指示にしたがって納付します。

通常の公判請求がされた場合は、裁判所から呼出状が郵送されてきます。その後は通常の裁判の流れとなります。

[参考記事]

刑事裁判の流れと仕組み。期間・費用まで徹底解説!

(2) 起訴までの時間

身柄事件の場合、警察官は被疑者を逮捕してから48時間以内に身柄を検察官に送致しなければなりません。
そして検察官は、被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内かつ身柄拘束から72時間以内に、裁判所へ勾留請求をするか、被疑者の身柄を釈放しなければなりません。

裁判所が勾留決定した場合には、身体拘束は更に10日間(延長された場合は合計最大20日間)続き、この期間中に検察官は被疑者を起訴するか否かを決定します。

このように、身柄事件の場合、逮捕から最大で約23日間で起訴・不起訴が決まります。

しかし、在宅事件ではそのような期間制限がありません。そのため、捜査の開始から、起訴・不起訴の決定までどれほどの期間がかかるかは不明です。

事案により数ヶ月で済む場合もあれば、何年も放っておかれる場合もあります。
いつまでも処分が下されず不安な生活が続くという点は、在宅事件のデメリットともいえます。

3.在宅事件における弁護活動

起訴前の段階で弁護士を依頼する大きなメリットは、身柄事件であれば、本人と面会して、取調べへの助言や外部との連絡役を担当してくれることです。

在宅事件の場合は、その必要はありません。
ただ、在宅事件でも身柄事件でも、有利な処分を得るためになすべきこと(被害者との示談交渉や、被疑者に有利な事情・証拠を集めて検察官に提出するといった役割)は同じです。

特に、被害者との示談が成立すれば、検察官が起訴の判断を控える可能性が高まります。
弁護士に示談を依頼すればスムーズに示談交渉が進みますので、早急に弁護士にご相談ください。

示談したい

4.在宅事件でも弁護依頼を

在宅起訴でも、裁判となれば無罪にならない限り前科がつくことになります。

略式起訴の罰金も前科であることは間違いありません。在宅事件だからといって甘く見ずに弁護士に相談することをお勧めします。

泉総合法律事務所は、様々なパターンの刑事事件弁護の経験が豊富です。
身柄事件・在宅事件問わず、刑事事件を起こしてしまったという場合はお早めにご相談ください。ご相談者様それぞれの状況に応じて臨機応変にサポートいたします。

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