刑事弁護 [公開日]2017年7月3日[更新日]2020年8月18日

刑事裁判の流れと仕組み。期間・費用まで徹底解説!

逮捕・勾留のまま、あるいは在宅のまま「起訴」された場合には、裁判を受けることになってしまいます。
民事裁判や刑事裁判は極めて非日常的な出来事のため、不安を感じる方も多いでしょう。

以下においては、起訴されてからの刑事裁判の流れを中心に、第1審手続(起訴から判決まで)、控訴、上告、再審の仕組みや、裁判の審理期間や裁判における費用などについても解説します。

なお、ここで説明するのは正式裁判、つまり、公開の法廷で裁判が行われる場合についてです。
他方、公開の法廷での裁判を行わずに罰金刑を課す略式手続というものもあります。略式手続については、以下の記事をご覧ください。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判(略式請求)と不起訴処分で必ず知っておくべきこと

1.起訴されてからの刑事裁判の流れ

被疑者は、逮捕・勾留のまま起訴される場合と、在宅のまま起訴される場合がありますが、起訴から判決までの流れはほぼ同じです。

おおまかな流れは以下のようになっています。

  1. 公訴提起
  2. 冒頭手続
  3. 証拠調べ手続
  4. 弁論手続
  5. 評議・評決
  6. 判決宣告手続

(1) 公訴提起

検察官が起訴することを相当と考えて裁判所に起訴状を提出すると、刑事事件の裁判手続が開始されることになります。
被疑者は起訴されることにより「被告人」となります。

【公判前整理手続】
事件が複雑な場合など、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う必要があるときは、最初の公判期日の前に、公判前整理手続が行われます。
この手続では、事件の争点、裁判に提出する証拠等を整理し、明確な審理計画を立てます。裁判員裁判対象事件では、これが必要的になっています。

(2) 冒頭手続

公判期日(刑事裁判を行うために公開の法廷が開かれる日)となると、傍聴人がいる公開の法廷で裁判が行われます。

㈠ 人定質問

裁判に人違いや身代わり出頭があってはいけません。

裁判長が被告人に対して、氏名、生年月日、本籍、住居、職業を質問し、出廷している被告人が公訴を提起された者かどうかを確かめるのが人定質問です。被告人は、証言台の前に立って答えます。

㈡ 起訴状の朗読

人定質問の後、検察官が起訴状を朗読します。起訴状には「公訴事実」が書かれています。公訴事実とは、被告人が、いつ、どこで、どのような犯罪行為を行ったかという検察官の主張です。

この検察官の主張が真実か否かを判断することが、刑事裁判の第1の役割です。つまり検察官が、この裁判のテーマを読みあげるというわけです。

㈢ 黙秘権等の権利告知

起訴状の朗読が終わった後、裁判長は被告人に対し、黙秘権等の権利があることを告知します。

刑事裁判では、被告人は内容の有利不利を問わず、終始一切を沈黙することも許されますし、個々の質問毎に、応じたり、応じなかったりすることも許されます。これが黙秘権です。

また、進んで陳述することもできますが、その内容は証拠として有利にも不利にも利用されます。これらの取扱いについて被告人に最初に説明しておかなくてはならないのです。

㈣ 被告人及び弁護人の被告事件についての陳述

次に、裁判長は、被告人及び弁護人に対し、被告事件に関する陳述の機会を与えます。

具体的には、検察官が朗読した起訴状の「公訴事実」に間違いはないか否かを訪ねます。

これに対する被告人の応答には様々なものがあります。

大部分が自白事件である我が国では、もっとも多いのは「公訴事実に間違いはありません」という応答です。
事実を否認するのであれば「公訴事実は事実ではありません」、「公訴事実の一部に間違いがあります」という応答になります。

このようなやりとりが多いので、別名「罪状認否」とも呼ばれています。

ただし、陳述できる内容は「認否」に留まりません。

「公訴事実に間違いはありませんが、正当防衛です」、「公訴事実に間違いはありませんが、検察側の法律の解釈が間違っています。法律に違反していません」などと法的な反論をすることもできます。

「法的手続にミスがあるから起訴は無効だ」、「このような不平等な起訴は検察官の権限濫用だから、起訴自体を棄却するべきだ」などと有効な起訴か否か自体を争うこともあります。

まず被告人が陳述し、続いて弁護人が意見を述べます。

事実の認否だけを述べる場合は、「被告人と同旨です」となります。もちろん、事実の一部を否認するケースなどで被告人がうまく説明できない場合などは、弁護人がさらに丁寧に説明したり、説明の書面を提出したりします。

複雑な法的問題に関しては、弁護人が法律家としての見解を主張することになります。

このように、公訴事実という検察官の主張に対して、被告人が認否や反論をする機会を与えて、その防御権を保障するとともに、事件の争点をはっきりさせるのです。

もっとも、被告人には黙秘権がありますから、公訴事実に対する認否や意見を述べること自体を拒否することも可能です。

(3) 証拠調べ手続

㈠ 冒頭陳述

起訴の段階で裁判所に提出されている起訴状に書かれた公訴事実は、被告人がいつ、どこで、誰と、何をしたか程度の事実の概要に過ぎません。

犯罪の成立要件を充たす最低限の事実を記載することで裁判のテーマを明示する一方、この段階での詳しい記載を避けて、裁判官が予断(先入観)を抱くことを防止したのです。

ただ、公判が始まれば、犯罪の成立要件に該当する事実だけでなく、犯行に至る経緯、犯行動機、具体的な犯行態様、被害の詳細、被害者や家族の感情など、公訴事実に含まれない様々な事実が認定の対象となり、検察官が証拠をもって立証することになります。

そこで、これから検察官が証拠により証明しようとしている事実を具体的かつ詳細に提示するために行うのが冒頭陳述です。

これによって、事件の全貌が明らかになり、審理の対象がより明確になるとともに、被告人側に対し具体的な防御の範囲を知らせることができます。

また、被告人側も、冒頭陳述を行う場合があります(公判前整理手続に付された事件、裁判員裁判対象事件は必要的)。

㈡ 検察官の立証

検察官は、犯罪事実やこれに関連する事実、情状を証明するため、書証(証拠書類)、証拠物、証人尋問(犯行の目撃者等)などの証拠調べを請求します。

裁判所は、求められた証拠調べ請求を全て認容するわけではありません。

まず法的に証拠とすることが禁止されている証拠は採用できません。例えば、警察官が作成した参考人の供述調書は、原則として、被告人側の同意がなければ証拠とすることはできません。

また、証拠とすることが禁止されたものではなくとも、証拠としての価値がないものや、他の証拠と重複しており不必要なものは、証拠として採用しても時間の無駄なので採用されません。

このような個々の判断のために、裁判所は、被告人側の意見を聴いたうえで、検察官請求証拠の採否を決定します。

そして、採用した証拠の取調べを実施します。

書証の取調べは検察官が朗読するか又は要旨の告知(要旨を口頭で説明すること)で行います。

もちろん、その書類は裁判所に提出しますから、裁判官は後に自分で読みますが、法廷での手続としては朗読又は要旨の告知が行われるのです。

また、証拠物の取調べは展示(裁判官らに示して見せる)で行います。

証人尋問は、証人が証言台の前に立ち、「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。」と宣誓した上、通常、証言台の前の椅子に座って証言します。
証人が宣誓したにもかかわらず、記憶と異なる事実を証言すると偽証罪に問われることになります。

㈢ 被告人側の立証

検察官の立証が終了すると、これに続いて、被告人側も、反証を行うための証人や情状証人などの証拠取調べを請求します。

裁判所は、検察官の意見を聴き、被告人側請求証拠の採否を決定し、採用した証拠を、前述の手続に従って取り調べます。

なお、証拠のうち、被告人の自白調書及び被告人の自白を内容とする第三者の供述(つまり、被告人が犯罪事実を認めていたという趣旨の供述)の取調べについては、他のすべての証拠についての証拠調べが終わった後に行うこととされています。

これは裁判官が予断を抱くことを防止するとともに、自白に先行して、それ以外の証拠を要求することで、自白偏重による冤罪を防止するためです。

㈣ 被告人質問

最後に、被告人質問を行うのが通例となっています。もちろん、被告人の供述も証拠となります。

(4) 弁論手続

㈠ 検察官の論告・求刑

証拠調べが終わった後、検察官は、事件に対する事実面、法律面の意見を述べます。これを論告といい、刑の重さに関する意見は特に「求刑」と呼ばれます。

㈡ 弁護人の弁論

弁護人は、被告人の立場から見た事件に対する事実面、法律面の意見を述べます。これを弁論といいます。

㈢ 被告人の最終陳述

最後に、被告人が事件についての意見陳述等を行います。

裁判官から「最後に述べておきたいことがあれば、簡潔に述べてください。」と問われます。自由に発言することができますが、あまり長くなると制止されてしまいます。

(5) 評議・評決

三名の裁判官で審理する合議事件では、裁判官は、証拠や主張を踏まえ、事件の内容について議論をし、被告人が有罪かどうか、有罪の場合はどのような刑にするのかを裁判官室で話し合い、意見が割れた場合は過半数で結論を決めます(これを「評議」と呼びます)。

(6) 判決宣告手続

裁判所が判決期日において判決の言渡しをして裁判は終了します。起訴事実の存在が証明され、その事実が刑罰法令に触れるときは、有罪判決が言い渡されます。

他方、起訴事実が罪とならないとき又は犯罪の証明がないときは、無罪判決が言い渡されます。

有罪無罪の判決以外にも、起訴の手続に法令違反があり無効であるとき等の「公訴棄却」判決、時効が成立していたとき等の「免訴」判決などがあります。

2.判決言い渡し後の対応

(1) 控訴

地方裁判所又は簡易裁判所のした第1審の判決に不服がある場合に、高等裁判所に対し、その取消し・変更を求める申立てを控訴といいます。

控訴ができるのは、第1審の審理の方法(訴訟手続)が法律に定められた方法に反しているとか、第1審の判決が事実の認定や法律の解釈適用を間違えているとか、刑が重過ぎるとか軽過ぎる等の場合です。

なお、控訴審で出される判決は、主に次の各内容です。

  • 「控訴棄却」控訴を認めないこと。
  • 「原判決破棄及び差戻し・移送」一審判決が間違いなので差し戻してやり直させること。一審の裁判所には担当する権限(管轄)がなかったことが明らかとなったので正しい裁判所に事件を送ってやり直させること。
  • 「原判決破棄及び自判」一審判決が間違っているが、やり直させるまでもなく、控訴審の裁判所で判決を下せるので、控訴審自身で判決をすること。

(2) 上告

控訴審の判決に不服がある場合に、最高裁判所に対し、その取消し・変更を求める申立てを上告といいます。

上告ができるのは、控訴審の判決が憲法に違反していたり、憲法の解釈を誤っていたり、あるいは最高裁判所の判例に違反していたりすることなどを理由とする場合です。

なお、上告審では、上告の申立て自体が手続違反で不適法な場合などの「上告棄却」の決定、上告の申立て手続は適法だが申立ての理由が認められない場合の「上告棄却」の判決、2審判決が間違っている場合の「原判決破棄及び差戻し・移送」、「原判決破棄及び自判」の判決などがなされます。

(3) 再審

確定した判決に主に事実認定の誤りがある場合に、これを是正するためにとられる非常救済手続が再審です。

判決が確定した後でも、まだ争うことができるとするならば、いつまでも裁判が終わらない事態となってしまい法的安定性が害されます。

そこで確定判決には不服申立てができなくなる効力が認められています。これを既判力(形式的確定力)と呼びます。この効力によって、通常の手続では争うことができません。しかし、誤った裁判をそのままにしておくことは司法の正義に反します。

そこで、認められているのが、再審制度であり、被告人のための非常救済手段なのです。

再審は、①再審を始めて欲しいという「再審請求手続」に対して、②再審開始の理由があると判断された場合に「再審開始決定」が下され、ここから③裁判のやり直しである「再審公判」が行われるというステップを踏みます。

再審請求手続は再審で取り消してほしいと願う「確定した判決(原判決)」をくだした裁判所に対して行います。

再審請求に理由があるときには、この裁判所が再審開始決定を下します。この再審開始決定が確定すると、さらに、この裁判所が裁判のやり直しを行います。

3.裁判の審理期間

公表されている裁判統計資料(※)によりますと、地方裁判所における刑事通常第1審事件の平均審理期間は、平成30年の場合、3.3月です。

2月以内が39%、3月以内が約32%、6月以内が約17%、1年以内が約7%、2年以内が2%、2年を超える事件は2.6%程度となっています。

※「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)(令和元年7月19日公表)」 地方裁判所における刑事通常第一審事件の概況

 

審理期間は、自白事件か否認事件かによって大きく異なるのはもちろんです。

上記の統計によると、平成30年では、全体の平均審理期間3.3月に対し、自白事件の平均審理期間は2.7月と短く、否認事件の平均審理期間は9.2月と長くなっています。

なお、これも上記統計によると刑事通常第1審事件の否認率は、平成30年において全体の9.3%となっています。

4.裁判にかかる費用

刑事裁判を受けるからと言って、裁判を開催する費用を請求されることはありません。

ただし、出廷させた証人の旅費・日当・宿泊料、鑑定人等の鑑定料、国選弁護人の旅費・日当・宿泊料・報酬は、有罪判決を受けた被告人に負担させることが刑事裁判の原則であり、裁判官が判決で負担を命じます。被告人にその経済力がないときは、判決で一部負担にとどめたり、免除することができます。

実際の運用では、次のような傾向があります(※)。

①実刑判決では、負担が命じられない例が多い。
②執行猶予判決で、釈放後の就労先と収入が確保されているケースでは負担が命じられる例が多い(但し、収入額や家計の情況次第です)。
③私選弁護人を選任していた場合は、資力があることを窺わせるものとして負担を命じられる例が多い。
※参考文献:「新基本法コンメンタール刑事訴訟法・第3版」日本評論社224頁

負担を命じられたが支払えない場合は、判決確定から20日以内であれば執行免除の申立てが可能です。

国選弁護人の費用は、ケース毎に異なりますが、例えば、起訴後の被告人となってから国選弁護人を選任し、公判が第1回期日と判決期日の2回開廷された場合で、7~8万円程度です(これが大部分の自白事件での標準的な金額です)。

私選弁護人に支払う費用は、その報酬基準は弁護士によって違いますので、一概には「いくら」とはいえませんが、自白事件の場合、着手金、報酬金とも30~50万円前後の場合が多いといえます。

5.刑事事件のご相談は泉総合法律事務所へ

刑事裁判の有罪率は99%と言われています。逮捕あるいは起訴された場合、先行きの見えない裁判に立ち向かうのは大きな不安に感じられると思います。

刑事裁判の流れが分かったところで、もし自分や家族が逮捕あるいは起訴されてしまった場合、早めに経験豊富な刑事事件弁護士が所属する、泉総合法律事務所へご相談ください。依頼者のために様々な活動(被害者との示談等)を行います。
初回相談は無料となっております。

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