強制性交等罪

強制性交等罪とは

強制性交等罪とは、13歳以上の者に対し、相手の抵抗を著しく困難ならしめる程度の暴行又は脅迫を用いて、性交等(肛門性交又は口腔性交を含む)をすることです。
ただし、13歳未満の者に対しては、たとえ暴行や脅迫を用いることなく、相手の同意があった場合にでも、強制性交等罪が成立します。(刑法177条)

また、強制性交等罪に当たる行為によって、相手にケガを負わせたり、死亡させたりした場合は、強制性交等致死傷罪が成立します(刑法181条2項)。

これらの行為が“強制性交等罪”にあたります

  • 女子を羽交い絞めにして、抵抗できない状態にしてから性交に及んだ
  • 男子にナイフを突きつけて「騒ぐと殺すぞ」と脅して肛門性交に及んだ
  • 何度も相手を殴打して、抵抗する気力を失わせてから性交に及んだ
  • お互い同意のうえで、10歳の女子小学生と性交に及んだ

準強制性交等罪とは

相手の心神喪失(※1)・抗拒不能(※2)に乗じ、又は相手を心神喪失・抗拒不能にさせて、性交等に及んだ場合に成立します(刑法178条2項)。

準強制性交等罪は、言葉のイメージからして、強制性交等罪を少し軽くした罪だと想像されるかもしれませんが、そうではありません。刑罰は強制性交等罪と同じであり、重く処罰されます。

心神喪失又は抗拒不能を利用した例としては、被害者が高度の精神遅滞の状態にあるのを利用した場合、睡眠中であるのを利用した場合、泥酔状態にあるのを利用した場合などがあります。

他方、心神喪失又は抗拒不能にした例としては、被害者にアルコールを飲ませて泥酔状態にさせ、あるいは睡眠薬を飲ませて眠らせるなどしてそのような状態にした場合などがあります。

※1心神喪失(しんしんそうしつ):精神障害や意識障害などにより、正常な判断ができない状態のこと
※2抗拒不能(こうきょふのう):物理的もしくは心理的に抵抗できない状態のこと

強制性交等罪の刑罰と量刑

強制性交等罪:懲役5年以上20年以下の懲役 (準強制性交等罪も同じ)
強制性交等致死傷:無期懲役、または6年以上20年以下の懲役

一般的に、強制性交等罪の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

  • 強制性交等の結果の程度(重大か軽微か)
  • 示談の有無
  • 示談金額
  • 被害弁償の有無
  • 被害弁償額
  • 性交等の行為の態様(悪質性、計画性など)
  • 性交等の行為の動機

強制性交等罪に関する量刑相場について、これまでの泉総合法律事務所での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。

まず、平成29年6月に強姦罪が強制性交等罪に改正(同年7月施行)された際に、この罪は非親告罪となりました。そのため、まだ実務上の運用は定かではありません。

この改正の趣旨が「性犯罪の厳罰化」にあることは間違いありませんし、親告罪でなくなったため、起訴前に示談が成立すれば必ず不起訴になる、とは言えなくなりました。しかし、このことは、起訴前に示談しても絶対に不起訴にならない、ことを意味するものではありません。

また、後述するように、仮に公判請求された場合には、示談が成立しているかどうかは、刑の重さを決める上で最も重視される要素です。そのため、被害者の示談の受け入れやすさや、示談交渉にかけられる時間の面から、起訴される前から示談交渉を行うべきであることは、従前と変わりありません。

一方、示談が成立しなかった場合には、ほぼ間違いなく公判請求され、裁判となります。裁判になった後は、犯行態様の悪質さなどが問題となりますが、強制性交等罪の場合には初犯であっても実刑となってしまう可能性もあります。

もし、同種の前科などがあれば、その可能性は高まるといえます。

さらに、上記の改正により、法定刑が引き上げられた結果、酌量減軽(刑法66条)がなされない限り、執行猶予が付かないことになったという意味では、従来よりも、強制性交等罪に対する社会一般の評価を反映した厳しい量刑になることが考えられるでしょう。

強制性交等罪の時効

犯罪行為が終わった時から数えて、10年経過すると時効が成立します。

なお、強制性交等致傷罪は15年、強制性交等致死罪は30年経過すると時効となります。

ただし、起算点、つまりどの時点から時効が進行するのかどうかという点は、いろいろと複雑なケースもあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

強制性交等罪の弁護方針

◇罪を認めている場合

①被害者との示談成立を目指す

平成29年の刑法改正により、強姦罪から強制性交等罪へ変更され、同時に、告訴がないと起訴できない親告罪ではなくなりました。そのため、告訴を取り消してもらえれば、確実に不起訴になるとは言えなくなりました。

しかし、裁判になり刑の重さを決める際に最も重視されるのが、示談の有無であることは間違いありません。依然として、示談成立を目指すべきであることに変わりはありません。

しかし、強制性交等罪の被害者は、被疑者(加害者)に対する憎悪巻、恐怖心がとても強いです。

そして、強制性交等罪のような性犯罪事件の場合、警察などの捜査機関が加害者に被害者の連絡先を教えてくれることは絶対にありません。弁護士にのみ被害者の了解を得て教える仕組みとなっています。

そのため、弁護士を頼まずに示談交渉することは、現実的に不可能です。被害者の心情に配慮した慎重な対応が必要とされるため、示談交渉の経験豊富な弁護士に任せることを強くおすすめします。

ちなみに、起訴されてしまった後でも、やはり示談成立の可否は重要です。

示談成立したことをアピールして、裁判所の心証をよくすることで、執行猶予付き判決を下してもらえる可能性が高まるためです。

②反省文・謝罪文を提出する

被疑者の方には、強制性交等罪を犯してしまったという事の重大さを理解してもらい、深く反省してもらいます。

それから、「十分反省しています」という姿勢を強くアピールするためにも、被疑者の方に反省文を作成してもらい、検察官や裁判官にその書面を提出します。

また、被害者に対する謝罪文も被疑者の方に作成してもらい、猛省している姿勢を理解していただき、示談交渉を受け入れてもらえるようにしております。

③性障害専門医の診断を受ける

「どうしても自分の性欲を抑えられない……」

こういった過剰な性欲をコントロールできず強制性交等の行為を繰り返してきた被疑者の方は、性嗜好障害(性依存症)という病気の可能性がありますので、性障害専門医の治療を受けることが重要です。

性犯罪再犯防止のクリニックに通院して、再犯防止の努力をしていることを検察官や裁判官に理解してもらうことも重要な弁護活動になってきます。治療の証拠となる診断書やカルテを検察官や裁判官に提出することで、不起訴処分や執行猶予付き判決を目指します。

さらには、これはご自身の今後の更生のためにも必要な処置であると考えられます。

④家族による今後の監督をアピール

「今後、二度と同様の行為を起こさないよう、被疑者をきちんと監督していきます」といった誓約書を被疑者の家族に作成してもらい、検察官や裁判官に提出します。

⑤被害者と今後の接触を絶つ

“今後、被害者との接触は一切絶つ”と被疑者の方に約束してもらいます。

被害者との示談書の中にもその旨を盛り込むことで、「今後また被疑者(加害者)が襲いに来るのではないか」という被害者の恐怖心や不安を少しでも軽減できるよう、配慮していきます。

⑥早期釈放を目指す

強制性交等罪の場合、ほとんどのケースでは逮捕されてしまいます。

被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。

  • 勾留請求をしないで釈放してもらえるよう、家族の身元引受書や意見書を提出して、検察官に働きかけます。
  • それでも勾留請求されてしまった場合には、勾留決定をしないよう、釈放してもらうよう、意見書などを提出して、裁判官に働きかけます。
  • それでも勾留決定が下されてしまった場合には、勾留決定を取り消してもらう手続である準抗告を申し立てます。
    (準抗告審は、3名の裁判官で構成され、別の裁判官が下した勾留決定について勾留の要件があるかどうかを審査します。要件がないと判断されれば、勾留決定が取り消され、被疑者は釈放されます。)

泉総合法律事務所では、これまでに、性犯罪事件における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、安心してご依頼ください。

 

◇“相手の同意があった”と主張したい場合

「相手も同意の上だった」と主張したい場合もあるかと思います。このような場合、合意のもとで行われたことが事実であれば、13歳以上の者に対しては強制性交等罪が成立しません。

しかし、一般的に捜査機関は、被疑者(加害者)よりも被害者側の「同意はなかった」という主張を重くみて、その主張に沿った捜査を進めていきます。

被疑者が「同意の上だった」と強く主張して容疑を否認し続けたことで、捜査機関の心証を悪くしたり、逮捕されて身柄を拘束されたりする可能性もあるため、慎重な対応が必要とされます。

また仮に、被害者は合意をしていないとしても、加害者が合意していると思っていた場合、そしてそう思うことに合理的な理由があると認められる場合にも、強制性交等の故意がないので、強制性交等罪は成立しません。

泉総合法律事務所の弁護活動としては、“両者合意のもとで行われた”という点を、検察官や裁判官に粘り強く説得力ある形で裏付けを収集して主張していくことで、不起訴処分や無罪を目指していきます。