刑事事件弁護 [公開日]

微罪処分になる要件とは?呼び出しはあるのか、前歴はつくか

微罪処分になる要件とは?呼び出しはあるのか、前歴はつくか

【この記事を読んでわかる事】

  • 微罪処分とは、警察が被疑者を送致せず早期に釈放する手続きのこと
  • 微罪処分は身体拘束が短く前科もつかないなど、メリットが多い
  • 微罪処分となるためには、事件様態の他、被疑者の反省態度なども重要

 

刑事事件の中でも特に軽微なものの場合、警察に逮捕されたとしても、勾留されずに釈放してもらえることがあります。

そのような処分のことを「微罪処分」と言います。

微罪処分となるのはどういったケースで、その後どのような流れになるのでしょうか?

以下では、微罪処分について、その要件やメリット・微罪処分を獲得する方法など、必要な知識を弁護士が解説いたします。

1.微罪処分

(1) そもそも微罪処分とは

そもそも微罪処分とは、どのようなことなのでしょうか?

これは、警察が被疑者を逮捕したり事情聴取をしたりしても、事件が軽微であることを理由に送検せずに釈放する手続きです。

微罪処分の判断をされた場合には、たとえ犯罪を犯していたとしても、検察官のもとに送られることがありません。警察に1日2日留置されただけで、そのまま釈放してもらうことができます。

また、いったん微罪処分として釈放された場合には、その後同じ罪で逮捕されることはほとんどありませんし、あらためて捜査を進められて勾留されたり起訴されたりすることも少ないです。

(2) 微罪処分が認められる理由

なぜ、犯罪を犯しているのに、「微罪処分」となると、身柄を釈放してもらえるのでしょうか?

それは、刑事手続の効率的な運営のためです。

日本では、犯罪の認知件数、検挙件数とも年々減少気味ではありますが、それでも年間では相当な件数の犯罪が起こっています。たとえば、平成27年には、刑法犯の認知件数だけで109万件を超えています。

【参考】平成26,27年の犯罪情勢(警察庁)

確かに、犯罪者はすべて処罰すべきですし、警察や検察は、犯罪を検挙して適正に処罰を受けさせることが仕事です。

しかし、実際の犯罪には重大なものと非常に軽微なものがあり、軽微なものと重大なものを同列に扱うことが、必ずしも公平・適切とは言えません。

また、警察や検察の人員などのリソースも有限ですから、有効活用すべきです。

微罪事件に集中することによって、重大事件を取り逃がしてしまっては本末転倒です。

また、事件を受けて被告人を裁く「裁判所」も有限ですから、すべての微罪事件を起訴されては、パンクして対応できなくなります。

そこで、警察が犯人を逮捕した段階で、微罪と思われる場合には警察の裁量で釈放することが認められるのです。

(3) 微罪処分の例

たとえば万引きが見つかって警察署に連れて行かれたとしても、事情聴取だけ受けて微罪処分として家に帰してもらえることがありますし、暴行事件を起こして警察に逮捕されたけれども、1日だけ警察の留置所で過ごし、微罪処分として釈放してもらえるケースなどがあります。

2.微罪処分の要件

被疑者にとっては、微罪処分となると勾留されずに釈放してもらえるので、とても大きなメリットがありますが、具体的にはどのようなケースで微罪処分としてもらえるのでしょうか?

法律上「このような場合、微罪処分となる」というはっきりした決まりはありませんが、一般的に、以下のようなケースで警察は微罪処分として被疑者を釈放する傾向があります。

(1) 犯罪が軽微

まず、犯罪が軽微なことが必要です。

たとえば、窃盗の場合であれば被害額がおおむね2万円以下、暴行や傷害の場合、被害者の受傷程度が全治1週間以内程度であることが目安となります。

(2) 被害回復されている

次に「被害回復」されているかが重視されます。

たとえば、万引きの場合などで、商品がそのままの状態で返還されていたら微罪処分になりやすいです。

示談が成立して被害弁償されている場合にも同様です。

(3) 犯行態様が悪質ではない

犯行態様が悪質ではないことが必要です。

たとえば普段は素行良好な人が、何らかの事情で突発的に暴行を振るってしまったり、万引きしてしまったりしたようなケースです。

(4) 被害者が処罰を望んでいない

被害者が処罰を望んでいない小さな事件であれば、多くの場合、微罪処分として釈放してもらえます。

たとえば被害届が提出されていないケース、いったん被害届が提出されたけれども示談が成立して取り下げがあったケースなどです。

警察が被害者に事情聴取して、被害者が「被疑者にも将来があるので、厳しい処罰は望みません」などと供述した場合にも微罪処分となりやすいです。

(5) 初犯

微罪処分になるためには「初犯」であることが重視されます。

万引きなどの軽微な犯罪でも、何度も繰り返していたら送検されますし、起訴もされます。

(6) 監督者がいる、逃亡や証拠隠滅の恐れがない

被疑者に信頼できる監督者がいること、逃亡や証拠隠滅などのおそれがないことも重要です。

監督者がいたら再犯可能性が小さくなりますし、今後捜査を進めることになった場合には、逃亡や証拠隠滅をされると不都合があるからです。

(7) 被疑者が反省をしている

被疑者の反省状況も重要です。

小さな事件で初犯であり、なおかつ本人もしっかり反省しているということになると、通常は再犯可能性もないだろう、ということで、釈放してもらうことができます。

以上のように、微罪処分として認められるための要件は、いくつかあります。

警察に逮捕されたり事情聴取を受けたりした場合には、上記に当てはまることをしっかりアピールするのが良いでしょう。

3.微罪処分のメリット

微罪処分となると、以下のようなメリットがあります。

(1) すぐに釈放される

1つは、すぐに身柄を釈放してもらえることです。
通常、刑事事件になると、逮捕・勾留されて、逮捕後最大23日間は身柄拘束されてしまいます。

その間、外の世界と自由に接触することはできず、基本的に手紙と電報しか使えませんし、留置所の生活は決して心地よいものではありません。

微罪処分になったら、1日2日ですぐに解放されますし、警察官から厳しい取り調べを受けることもありません。

身柄拘束されるとしても短期間なので、社会生活への影響もほとんどありません。

(2) 刑事事件にならない(前科がつかない)

微罪処分となった場合には、それ以後の刑事事件につながりにくいです。

つまり、微罪処分として釈放されると、被害者の気が変わるか大きな余罪でもない限り、その罪で再び捜査をされて逮捕・勾留されたり起訴されたりすることがないのです。

起訴されないので、当然有罪判決を受けることもなく、前科もつきません

いったん前科がつくと、一生記録が残ってしまうので、それと比べると微罪処分となることには大きなメリットがあると言えるでしょう。

(3) 周囲に迷惑をかけない

微罪処分になった場合、家族や会社、周囲の人などに迷惑をかける度合いが非常に小さくなります。

確かに、家族には心配をかけますし、身元保証人になってもらう必要もありますが、微罪処分なら、その後身柄拘束されたり起訴されたりすることがないので、家族も安心です。

会社にも普通通りに通勤することができますし、仕事に支障を発生させたり解雇されたりすることもありません。

(4) 周囲に知られない

微罪処分となって早期に釈放された場合には、犯罪を犯したことを周囲に知られにくいです。

1日2日で帰ってくるので、近所の人などが不審に思うこともありませんし、会社でも、有休を使えば対応できる範囲です。

有休を取得するときに理由を告げる必要はないので、会社に逮捕されていたことを告げる必要もありません。

家族には知られることになりますが、黙っておいてもらったら、その他には誰にも知られずに済みます。

犯罪を犯したことを周囲に知られるとさまざまな不利益が及びますので、このことも、微罪処分の大きなメリットと言えるでしょう。

4.微罪処分と不起訴の違い

刑事手続きでは、前科をつけないことが大切です。

微罪処分になった場合には前科はつきませんが、「不起訴」になった場合にも前科がつかないので、「犯罪を犯したときには不起訴を狙いましょう」という論調の説明文も多いです。

同じ「前科がつかない処分」ですが、微罪処分と不起訴には、どのような違いがあるのでしょうか?

以下で、確認しておきましょう。

(1) 身柄釈放までの期間

微罪処分の場合には、逮捕されたり事情聴取されたりした後、送検されずにすぐに釈放されます。検挙から釈放までは1日ないし2日です。

これに対し、不起訴の場合には、逮捕後送検されて、勾留されるかもしくは勾留されずに在宅のまま捜査が進み、捜査が終了した段階で、最終的に検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。

そこで、逮捕や検挙から不起訴になるまでは、身柄事件なら13~23日間程度、在宅事件ならば数か月程度かかります。

身柄事件なら、不起訴になるまでの約13~23日間、警察の留置所で過ごさなければならないので、不利益も大きくなります。

このようなことを考えると、不起訴処分よりも微罪処分として釈放してもらえた方が、明らかに大きなメリットがあります。

(2) 要件

微罪処分にしてもらえるのは、犯罪が軽微で被害回復されていて被疑者が初犯などの要件が揃っている場合に限られます。

ある程度大きな犯罪になると微罪処分にはならないので、不起訴を狙うことになります。

5.微罪処分と在宅事件の違い

微罪処分と在宅事件の違い

在宅事件になった場合には、警察に逮捕されても勾留されず、すぐに釈放されます。この点では微罪処分と同じなのですが、何が異なるのでしょうか?

微罪処分と在宅事件の違いについても、見ておきましょう。

(1) 捜査が継続するかどうか

大きな違いは、在宅事件の場合、釈放後も捜査が継続されることです。

在宅事件の場合、単に「身柄拘束せずに捜査を進める方法」が選択されただけだからです。

そこで、捜査が進んだら被疑者は検察官から呼び出しを受けて供述調書を作成させられますし、検察官の判断によっては起訴されるかもしれません。

そうなったら前科がつく可能性も高くなります。

これに対し、微罪処分の場合には、そもそも送検されないので、検察官の指揮の下に捜査が行われることもありませんし、起訴されることもありません。

そこで、在宅事件よりも微罪処分の方に、明らかにメリットが大きいです。

(2) 要件

ただ、先ほども説明したように、微罪処分としてもらえるのは、相当軽微な犯罪で初犯、被害回復されている事件などに限られています。

警察が送検やむなしと判断したら、在宅捜査を狙うしかありません。

以上のように、微罪処分は、刑事事件で一般に推奨されている「不起訴」や「在宅捜査」よりも、被疑者にとってさらにメリットが大きいものとなります。

6.微罪処分の流れ

微罪処分になった場合、どのような流れで身柄が解放されるのか、ご説明します。

(1) 事情聴取

まずは、警察で事情聴取が行われます。

たとえば、万引きや痴漢などで現行犯逮捕されたり、警察に任意同行されたりした場合、警察署において、警察官が、被疑者及び被害者の双方に対して話を聞きます。

そして、犯罪の内容が軽微で被疑者も初犯であり、被害者も処罰を望んでいないことが明らかになったり、盗んだ商品がそのまま返還されていたりする事が明らかになったら、「微罪処分」として送検しない(=微罪処分)ことが検討されます。

(2) 身元引受人に引き受けてもらう

次に、警察から被疑者の家族に連絡が入ります。

微罪処分となるには、基本的に家族がいてしっかり監督できることが必要となるので、家族には身元引受人になることを要求されます。

そこで、家族が警察署にやってきて、身元引受書を作成して警察に提出すると、微罪処分として、被疑者の身柄が釈放されます。

(3) 前歴がつく

微罪処分となった場合、「前科」はつきませんが、「前歴」はつくので、注意が必要です。
前歴とは、逮捕されたり検挙されたりして、犯罪捜査の対象となった履歴です。

たとえ送検されなくても、検挙されたことは一生捜査機関のデータベースに残ってしまいます。

ただ、前歴は前科とは違い、有罪判決を受けたのとは異なるので、「確定的に犯罪を犯した」扱いになりません。

将来別の犯罪で逮捕されたときにも「再犯」という扱いにはなりませんし、会社の就業規則でも、懲戒解雇の対象にはなりません。

前歴の場合、前科と比べると不利益が相当小さくなります。

(4) 被害者がいる犯罪の場合、示談を行う

微罪処分として釈放されても、被害者から損害賠償請求されることはあります。

たとえば、万引きなどのケースで、盗んだ商品をそのまま返せばその場で被害弁償が終わり、後に損害賠償されることはありません。

これに対し、暴行や痴漢などの場合、その場で被害回復することは難しいです。

釈放までに早急に示談をして賠償金を支払えば解決しますが、間に合わない場合には、刑事処分(微罪処分による釈放)終了後に民事的な争いが持ち越されてしまいます。

その場合には、加害者は被害者に対し、慰謝料やその他の賠償金を支払わなければなりません。

支払いをしなければ、訴訟を起こされたり、あらためて被害届提出や刑事告訴をされたりして、刑事事件の手続きが復活してしまう可能性もあります。

(5) 警察に後日また呼び出されることも

微罪処分として釈放されると、再度刑事手続きが復活することは少ないですが、ときにはそういったケースもあります。

それは、後に被害者の気が変わって処罰を希望した場合や、捜査が進んで微罪ではないことが明らかになった場合などです。

たとえば、微罪処分による釈放後に被害者と示談交渉をしていて、不誠実な態度を示したら、被害者は警察に被害届を提出したり告訴状を提出したりするかもしれません。

また、いったんは軽微な万引きとして釈放されたとしても、実は余罪が非常に大量にあって、被害者も多く、被害総額も多額になっていることが明らかになった場合、組織的な犯罪にかかわっていたことが明らかになった場合などには、再度呼び出されて事情聴取を受けたり逮捕されたりする可能性もあります。

7.微罪処分を獲得する方法

微罪処分にしてもらうためには、以下のようなことに注意しましょう。

(1) 反省の態度を示す

1つは、反省の態度を示すことです。

微罪処分としてもらうためには、被疑者がしっかりと反省していて再犯可能性がないと判断してもらわねばなりません。

小さな事件でも「何が悪いのか」という態度を取っていると、送検される可能性が高くなります。真摯な態度で、反省の気持ちを捜査官に伝えましょう。

(2) なるべく被害回復する

被害者がいる事件の場合には、なるべく被害回復することが重要です。

窃盗などであれば、その商品をそのまま返還すれば足りることがありますし、暴行などのケースでも慰謝料を支払うことができます。

その場で示談できない場合、後日必ず被害弁償することを約束することで、警察官が評価してくれるケースもあります。

(3) 監督者がいることを伝える

微罪処分の決定の際、監督者の有無は非常に重要です。

そこで、配偶者や親などがいる場合には、そういった人がいて同居していることなどをきちんと伝えましょう。

そして、早急に警察に来てもらい、身元引受書を作成してもらえば釈放してもらうことができます。

(4) 普段の素行が良好で、初犯であることを強調する

微罪処分としてもらえるのは、普段の素行が良好で、初犯の人による偶発的犯行のケースなどです。

そこで、警察から事情聴取されるときには、普段は真面目に生きているサラリーマンであることなどを強調しましょう。

たまたま、虫の居所が悪くてついつい喧嘩してしまったとか、万引きしてしまったなどの事情を説明すれば、微罪処分としてもらえる可能性が高くなります。

8.まとめ

刑事事件では、微罪処分にしてもらえると、勾留も起訴もされず、前科もつかないので、大きなメリットがあります。

ただし、被害者から損害賠償請求をされる可能性がありますし、被害者の気が変わって被害届を提出されることもあります。

余罪がある場合には、後にまとめて捜査対象となってしまう可能性も高くなります。

もしも微罪処分となったとしても、何かしらの心配事がおありならば、甘く見るべきではありません。なるべく早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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