刑事弁護 [公開日]2018年1月15日[更新日]2023年10月16日

接見交通権とその制限とは?被疑者が弁護士と面談できる!

被疑者が弁護士と面談できる!接見交通権とその制限について

刑事事件で逮捕・勾留され身体拘束を受けている被疑者には、弁護人との「接見交通権」が認められています。
被疑者はこれにより弁護人との面会が可能となり、他方で(一定の制約があるものの)家族との面会も許されています。

これらの面会には、何らかの制限がつくこともあります。以下においては、刑事事件の接見交通について詳しく解説します。

なお、以下では、刑事訴訟法は「法」、刑事訴訟規則は「規」、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律は「刑事収容施設法」と略記します。

1.面会・接見・接見交通とは?

身体の拘束を受けている被疑者や被告人(以下「被疑者」と総称)は、外界から遮断されることになります。精神的にも不安定な状態に置かれ、そのままでは自己の権利・利益を防御することができません。
そこで、被疑者を精神的に支え、あるいは法的な助言をする者が必要になります。

家族や友人など(以下「家族」と総称)は、精神的な支えになるでしょう。
そして、弁護人は、被疑者から事案の内容やその言い分などを十分聴取して理解し、法的な助言を与えてくれるでしょう。

しかし、そのためには、被疑者は家族や弁護人と面会しなければなりません。この面会を「接見」「面会」又は「接見交通」と呼んでいます(接見に際して、書類や物の授受が許されることがあります)。
接見交通には、「家族との接見交通(=面会)」と「弁護人との接見交通(=接見)」があります。

2.弁護人との接見

(1) 接見交通権の意義

身体の拘束を受けている被疑者は、弁護人と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができます(法39条1項)。
これを被疑者と弁護人との「接見交通権」といいます。立会人なしで接見できることから「秘密交通権」とも呼ばれます。

なお、書類・物の授受は、接見場所の職員を介して行われます。

最高裁判所は、被疑者と弁護人との接見交通権について、

身体を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの一つである」

と述べ(最判昭53.7.10民集32巻5号820頁)、法39条1項の規定は

「身体の拘束を受けている被疑者が弁護人と相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、その意味で・・・・憲法の保障に由来するものであるということができる」

と位置付けています(最大判平11.3.24民集53巻3号514頁)。

では、接見交通権は全く自由に行え、制限されることはないのでしょうか。

(2) 弁護士による接見の制限

上記のとおり、接見交通権は、憲法の保障に由来する重要な権利であり、捜査段階における被疑者側の防御にとって欠かせないものである以上、捜査機関は、弁護人から被疑者との接見等の申出があった場合には、原則としていつでも接見等の機会を与えなければなりません。

しかし、法39条3項本文は、捜査機関の判断で接見交通権の行使に一定の制約を加えることを認めています。それは、捜査機関が「捜査のため必要があるとき」、公訴の提起前に限り、接見交通権の行使に関し「その日時、場所及び時間を指定することができる」というものです。

これを「接見指定」といいます。ただし、接見指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはなりません(法39条3項ただし書)。

上記の「捜査のため必要があるとき」とは、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られます。
そして、弁護人から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や、実況見分・検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に取調べ等をする確実な予定があって、弁護人の申出に沿った接見等を認めたのでは取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合とされています(前掲最判昭53.7.10、最判平3.5.10民集45巻5号919頁、前掲最大判平11.3.24)。

さらに、そのような捜査のために顕著な支障を生ずる場合であっても、捜査機関は、弁護人と協議してできる限り速やかに接見等のための日時を指定し、被疑者が弁護人と防御の準備をすることができるような措置を採らなければなりません(前掲最判昭53.7.10、前掲最判平3.5.10、前掲最大判平11.3.24)。

特に、逮捕後の初回接見は、弁護人の選任を目的とし、かつ取調べを受けるに当たっての助言を得る最初の機会ですから、その重要性は特に高く、一刻も早い接見が実現されるべきで、捜査機関が行う接見指定もより限定的になされるべきとされます(最判平12.6.13民集54巻5号1635頁)。

弁護士や被疑者は、捜査機関の行った接見指定に不服がある場合には、準抗告により争うことができ、裁判所に対してその指定の取消し又は変更を請求することができます(法430条1項)。

また、弁護人との接見又は書類・物の授受については、法令で、被疑者の逃亡、罪証隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができるとされています(法39条2項。規30条、刑事収容施設法145等参照)。

3.家族との接見交通

家族との接見交通

(1) 逮捕直後の被疑者は面会できない

実は、逮捕された直後(勾留前段階の)被疑者が弁護人以外の者と接見することを権利として認めた明文規定はありません。

むろん、規定がないだけで、接見が全く許されないということではありませんが、弁護人以外の者が面会できることは稀なようです。

(2) 勾留されている被疑者とは制限付きで面会が可能

逮捕後に続く勾留をされている被疑者は、弁護人以外の者(=家族)とも、法令の範囲内で接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができます(法207条1項、80条)。

しかし、刑事施設職員の立会い、面会状況の録音・録画などの法令上の制限があります(刑事収容施設法116条、117条、218条、219条等)。

(3) 家族の接見等禁止

共犯者がいる場合など、事案によっては被疑者を勾留しただけでは罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれを防ぐことが困難な場合があります。
このような場合、勾留中の被疑者について、裁判官は、弁護人以外の者(=家族)との接見を禁止し、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁止し、若しくはこれを差し押さえることができます(法207条1項、81条本文)。

これは「接見等禁止決定」と呼ばれ、実務上は検察官の請求により行われています。

なお、この場合であっても、糧食の授受(いわゆる差入れ)を禁じたり、これを差し押さえたりすることはできません(法207条1項、81条ただし書)。

もっとも、被疑者の勾留それ自体が罪証隠滅や逃亡を防ぐための手段ですから、被疑者を勾留すれば、罪証隠滅や逃亡のおそれはある程度払拭できるはずです。
したがって、接見等禁止が認められるためには、被疑者を勾留しただけでは払拭しきれないほど高度かつ具体的な罪証隠滅や逃亡のおそれが必要とされます。

具体的に接見等禁止決定がなされる事件の種類としては、主に、公安労働事件、贈収賄事件、公職選挙法違反事件、薬物事件(特に薬物密売事件)、けん銃所持事件、暴力団等による組織的な殺人や傷害(致死)事件、会社ぐるみや犯罪組織による大規模な詐欺事件、「黙秘・否認」の重大事件が挙げられます。

これらの事件では、被疑者が関係者と通謀して罪証の隠滅を図るのを防止するためとして、検察官は、勾留の請求と同時に裁判官に接見等禁止を求めることが多いといわれています。

被疑者に接見等禁止の決定がなされ、これに不服がある場合には、準抗告により争うことができ、裁判所に対してその裁判の取消し又は変更を請求することができます(法429条1項2号)。

4.被疑者との接見交通における弁護人の役割

特に、逮捕直後や、裁判官の接見等禁止決定がなされた場合だと、被疑者は家族と面会できず、外部との関わりは弁護人を通じてしか行うことができません。
したがって、弁護人の行う被疑者との接見は、非常に重要になります。

弁護人は、接見等禁止決定がなされた場合、上記のとおり準抗告により争うほか、必要性に応じ、特定の者との接見・特定の物の授受についてのみ、接見等禁止の一部解除の申立てをします。

また、接見指定がなされた場合も、弁護人は準抗告により争う方法がありますが、裁判所の判断を待つ時間を費やすより、電話などにより捜査機関と交渉・調整を行い、できる限り早期の接見の実現に努めることが実際的です。

例えば、弁護人選任意思の確認と取調べに対する助言を行う初回接見の場合、状況によっては「立会人のいる部屋での短時間の接見(面会接見)でもよいから直ちに接見をさせるように」と求めることも考えられます(最判平17.4.19民集59巻3号563頁参照)。

他にも、弁護人は被疑者との接見において以下のような役割があります。

  1. 家族や職場との連絡についても、被疑者の希望を十分に聞き、伝達係となること
  2. できる限り頻繁に被疑者と接見し、必要な事情聴取や助言を行うこと(弁護士職務基本規程47条参照)
  3. 被疑者の権利・利益を擁護するため、被疑事実をなるべく正確に把握した上、被疑者から「逮捕手続に問題はないか」「被疑事実に関する言い分」などを十分に聴取すること
  4. 被疑者から取調べの具体的状況を聴取して書面化したり、「被疑者ノート」を差し入れて、被疑者自身に取調べの状況を記録してもらうこと
  5. 被疑者に対し、黙秘権の意味はもちろん、供述録取書の訂正申立権や署名押印拒絶権、逮捕・勾留に関する手続など、今後予想される刑事手続や不服申立ての方法などについて正確に説明すること

刑事事件で逮捕・勾留されてしまった場合、家族と面会することで安心感が得られますし、弁護士と接見すれば今後の見通しも立てることができます。

上記のとおり、弁護士にしかできないことも多くありますので、勾留されてしまったらお早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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