刑事弁護 [公開日]2018年5月2日[更新日]2021年2月25日

起訴猶予とは?不起訴・無罪との違い

罪を犯した場合、捜査機関に検挙されても「起訴猶予」と判断される場合があります。

起訴猶予されたとして「以降、捜査や訴追されることはないのか?」「自分は無罪になったのか?」と気になる方は多いのではないでしょうか。

ここでは、起訴猶予は具体的にどのような処分なのか、起訴猶予となった後に捜査が続いたり起訴されたりすることはあるのかなど、起訴猶予についての疑問や不安について解説します。

1.起訴猶予とは具体的にどのような処分?

起訴」とは、検察官が裁判所に対し、被告人の処罰を求める行為で、「公訴」、「公訴提起」、「訴追」などとも呼ばれます。
これに対して「不起訴」とは、文字通り検察官が当該事件を起訴しないで終わらせることを決めたということです。

起訴された場合(正式起訴の場合※)には、公開の法廷での裁判となります。裁判で有罪判決となった場合、罰金刑や懲役刑・禁固刑(執行猶予付きを含む)などが科され、前科がつくことになります(前科とは有罪判決が確定したことを指しますので、無罪ならば前科はつきません)。

これに対して、不起訴処分ならば有罪判決を受けることはありませんので、該当の事件について前科がつくことはありません

※起訴は、公開法廷での正式裁判を求める「公判請求」が原則ですが、例外として、書面による手続だけで罰金刑を科す略式命令を裁判所に求める「略式請求」などもあります。

前科による影響については、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

前科があると就職に影響するのか?

[参考記事]

前科がつくと海外旅行に行けない?パスポートへの影響とは

このように、被疑者にとって、起訴処分となるか不起訴処分となるかはとても重要なものです。

不起訴になる主な理由は、大きく分けて以下の3つがあります。

  1. 嫌疑なし
  2. 嫌疑不十分
  3. 起訴猶予

1.「嫌疑なし」とは、犯罪の嫌疑がかかったので捜査したが、全くの人違いが判明したとか、何の証拠もないことが判明した場合のように、そのような嫌疑はなかったことが明らかとなったというケースです。

2.「嫌疑不十分」とは、罪を犯したという疑いは残っているが、これを証明するための証拠が十分ではないので起訴しないという判断です。

3.「起訴猶予」とは、犯罪を犯したことを裁判で証明できるが、被害が軽微である、示談ができて被害者も許してくれた、社会的制裁を既に受けている、深く反省しているなどの諸事情を総合考慮して、今回は起訴を見送るという判断です。

このように、起訴猶予とは不起訴処分の理由の1つです。起訴されたものの犯罪の証明ができず「無罪」となるケースとは異なります。
実際に刑事犯罪を犯してしまっている場合では、起訴猶予による不起訴を目指すことになるでしょう。

2.起訴猶予と無罪の違い

無罪判決が確定すると、その犯罪容疑(公訴事実)では2度と起訴されることはありません。これを「一事不再理」と呼び、憲法39条が定めています。
万一、同じ公訴事実で起訴されたことが判明した場合は、裁判所は「免訴」という判決で裁判を打ち切らなくてはなりません(刑訴法337条1号)。

他方、起訴猶予処分には、このような「一事不再理」は適用されないので、起訴猶予となった後に、起訴することを相当とする事情が生じた場合などには、公訴時効が完成していない限り、いつでも起訴することができると理解されています(※司法研修所検察教官室編「検察講義案(平成21年版)」法曹会83頁)。

例えば、起訴猶予処分時点では知られていなかった同種の余罪多数が明らかになったとか、示談が成立したことを考慮して起訴猶予としたところ、後に、被害者が強迫されて示談に応じていた事実が判明した場合などが典型的です。

起訴・不起訴の最終的な判断するのは検察官です。

検察官は起訴するか起訴猶予にするかの判断において、広範な裁量を有しています。
その際の考慮要素として、刑事訴訟法248条では、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情状が挙げられています。

比較的軽微な犯罪で、前科がなく、被疑者が犯行を反省している、被害者との示談が成立した場合などには、起訴猶予を理由とする不起訴処分となる可能性が高くなります。

3.起訴猶予と前科・前歴

過去の犯罪に関する事実には、「前科」と「前歴」があります。

前科」とは、なんらかの犯罪で起訴され、有罪の判決を受けてこの判決が確定したという事実のことです。
したがって、不起訴処分の場合、そもそも刑事裁判の判決を受けていないので「前科」がつくことはありません

先述の通り、略式命令によって罰金刑が科された場合も、裁判を経て有罪になっているので「前科」がつきます。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い

他方、「前歴」とは、捜査機関(警察、検察)の捜査の対象となったことがあるという事実のことです。

起訴猶予を含む不起訴処分は、前科としては残りませんが、前歴として残ります。

前歴があっても、その犯罪事実が証明されたわけではありませんから、前例があるだけでマイナスの情状の1つになるわけではありません。

ただし、嫌疑がかかっている犯罪と同種の前歴、例えば窃盗犯の嫌疑ある場合には窃盗容疑で捜査を受けた前歴が複数回あれば、事実上、常習犯ではないのかと判断されるのは当然ですから、起訴不起訴の判断や裁判での量刑上、不利な事実となります。傷害犯に暴行の前歴があれば、粗暴な振る舞いをしやすいのではないかと評価されてしまうのも同じです。

また、同種犯罪ではなくとも、逮捕の前歴が多数回あれば、事実上、不利に評価されてしまうのは致し方ないところです。

4.起訴猶予を勝ち取るためには

実際、不起訴処分になる理由としては起訴猶予が最も多いので、自白事件の刑事弁護活動は起訴猶予の獲得に重点を置くことになります。

起訴猶予の獲得には、被害者と示談をすることが重要です。被害者と示談が成立しているということは、通常、示談金の支払で金銭的に被害回復がされており、示談書における宥恕文言(※)の記載で、被害者の処罰感情がなくなっていることが明らかという意味で検察からも良い情状として扱ってもらえます。

※宥恕(ゆうじょ)とは、「許す」との意味で、「処罰を求めない」、「宥恕する」、「寛大な処分を望む」などの記載を宥恕文言と呼び、被害者の同意のもと、示談書に記載させてもらいます。

示談交渉は被害者と行うことになるのですが、犯人が示談交渉をしようとしても、被害者としては恐怖のために犯人と会うのを拒んだり、犯行に対する怒りから示談交渉を一切受け付けないとの立場をとったりすることが通常です。

また、被疑者と被害者に面識がなければ、そもそも被害者の氏名も連絡先もわからず、警察も検察も、決してその情報を教えてはくれませんから示談交渉は不可能です。

しかし、弁護士が弁護人となれば、警察・検察は被害者の承諾を得た上で、弁護士には、被害者の連絡先を開示してくれます。

また犯人との直接交渉を拒む被害者も、弁護士であれば示談交渉に応じてくれることは珍しくありません。弁護士は被害者の感情にも寄り添い、適切な示談金額でのスムーズな示談成立を目指します。

仮に示談が不成立でも、供託や贖罪寄付を行ったり、検察官に意見書や反省文を提出することにより、被疑者が反省している姿勢をアピールし、起訴猶予を目指して活動いたします。

[参考記事]

示談できない、示談不成立、示談を拒否された場合の対処法を解説

罪を犯してしまった場合は、不起訴を獲得するためにすぐに弁護士に相談するべきです。

5.起訴猶予の獲得のためには弁護士に相談を

起訴猶予による不起訴処分を得るためには、先述のように被害者との示談を成立させることや、検察官に対する意見書の提出などをすることが重要です。

実際に犯罪を犯してしまい、刑事事件で逮捕されてしまった方でも、弁護士のサポートにより不起訴処分を目指すことは可能です。どうぞお早めに刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所にご相談ください。

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