刑事弁護 [公開日]2017年12月6日[更新日]2024年2月1日

自首・出頭をする時、弁護士に相談・同行してもらうメリットとは?

痴漢や盗撮、万引きなど犯罪行為をしてしまい、後から「防犯カメラの映像でバレるのでは」「逮捕されるかもしれない」と不安になった時、自ら警察に出頭する(自首する)べきかどうか悩むかと思います。

最終的にはご自分で厳しい決断をしていただくことになりますが、その前に、自首・出頭するべきかどうかを刑事弁護の専門家である弁護士に相談してみることも考えてみてください。

また、自首・出頭の際、弁護士に警察へ同行してもらうことも大きなメリットをもたらすので、こちらも検討に加えてください。

今回は、自首と出頭の違いや実行する際の注意点、弁護士が同行するメリットについて、刑事事件に詳しい弁護士が解説いたします。

なお、泉総合法律事務所では、自首・出頭への同行は行なっておりません

1.自首・出頭の違い

一般的には、自首とは、犯罪者が自ら進んで警察に赴くことで、それによって罪が軽くなると理解されているようです。
ただ法的に「自首」と認められるには厳格な条件が定められており、たんに警察へ身を運ぶだけの「出頭」とは区別されています。

「自首」と「出頭」は何が異なるのかを説明しましょう。

(1) 自首とは

①自首が成立するための要件

自首とは、捜査機関が犯罪や犯人を把握していない段階で、犯人が自ら警察や検察に犯罪を申告し、処罰を求めることを言います(刑法42条1項)。
つまり、自首が成立するためには、「まだ捜査機関に発覚していない」ことが必要です。

犯罪自体が発覚していない状態で警察に行っても自首が成立しますし、犯罪自体は発覚していても「誰がやったかわからない」という犯人不詳の状態で警察に行った場合にも、自首は成立します。
被害者や目撃者には知られていたとしても、警察などの捜査機関に知られていなければ自首は成立するのです。

反対に、自分が罪を犯したことが既に発覚しており、手配されている状態で警察に行っても「自首」は成立しません。

②自首すると、刑が減軽される可能性がある

自首が成立すると、裁判所が刑罰を適用するときに「減軽することができる」とされています(刑法42条1項)。

必ず減軽されるのではなく、減軽しても良いという意味なので、実際に減軽されるかどうかは、裁判官の裁量次第です(※)。

※ただし、犯罪によっては自首が成立したときには、必ず刑を減軽しなくてはならないとされるものもあります。例えば、身代金目的の誘拐は、その準備を行っただけで身代金目的略取等予備罪として2年以下の懲役刑となりますが、実行するまえに自首した場合には、必ず刑の減軽または刑の免除を受けることができるとされています(刑法228条の3、225条の2第1項)。

自首で刑が減軽され得る理由としては、自首している犯人は反省していると考えられることや、自首減軽の制度を作ることによって自首を促し、犯罪捜査と処罰の負担を軽減することなどが指摘されています。

(2) 出頭とは

それでは、「出頭」とはどのようなことなのでしょうか?

出頭は、犯人や参考人等が警察や検察などの捜査機関に出向くこと一般を指します。犯行の被害者や目撃者が事情を聴取されるために捜査機関に呼び出されて出向くことも「出頭」であり、犯人に限らないことに注意して下さい(刑事訴訟法223条1項)。

つまり出頭は、誰かが捜査機関に身を運ぶ物理的な行動を意味するだけの言葉です。

したがって、もちろん犯人が自首のために出頭する場合もありますが、後述のように自首は手紙や電話でも成立し、警察に身を運ぶ必要はないので、自首と出頭は無関係な概念です。

既に逮捕状が発布されている場合などには、出頭したらその場で逮捕される可能性もあります。そして、自ら出頭した事実は被疑者に有利な事情として考慮される場合もあります。
例えば、捜査機関が被疑者の行方を把握できていない場合に、進んで出頭するケースです。捜査の末に身柄を確保された場合よりは、情状が良いと言えるでしょう。

(3) 自首と出頭の違い

自首と出頭の第1の違いは、捜査機関に赴くことの要否です。

出頭とは、物理的に捜査機関に赴くことを指します。
これに対し自首は、犯罪を申告して処分を求める行為であって、必ずしも物理的に捜査機関へ赴く必要はありません。書面の提出や、他人を介しての申告でも自首と認められます。

第2の違いは、犯人特定の有無です。

未だ捜査機関に犯罪事実が発覚していない場合や自己が犯人であることが特定されていない場合には「自首」となりますが、自己が犯人であることが特定されていたら単なる「出頭」です。

第3の違いは、法律上の刑罰の減軽事由であるか否かです。

前述のとおり、自首が成立したら刑の減軽を受けられる可能性があることが法定されています。
これに対し、出頭は減軽事由として法定されているわけではありません。

ただ、自首が成立しても、特別な規定がない限り減軽するかどうかは裁判官の裁量であり、裁判官は、形式的な自首の成立だけでなく、自首の動機も含め、情状に関する事実の全体を考慮して判断しますから、必ず罪が軽くなるわけではありません。

他方、単なる出頭でも、有利な事情として、酌量減軽(刑法66条)の判断要素のひとつとなりますし、酌量減軽が認められない場合でも、最終的な量刑(※)にあたって刑を軽くする方向に考慮してもらえる場合があります。

したがって、裁判官の裁量によって、罪を軽くする方向に作用する可能性がある事実という点では、自首も出頭も同じと言えます。

※詳しくは後述しますが、自首による減軽や酌量減軽は、適用される法定刑の内容や上限・下限の範囲を軽い方向に減じるものです。減じられた範囲の中で、裁判官が具体的な刑の年数や罰金額を決めることが最終的な量刑です。

2.自首・出頭することのメリット・デメリット

次に、自首や出頭をすることのメリットとデメリットをご説明します。

(1) メリット

①突然逮捕されずに済む可能性を高める

自首・出頭すると、当然のことではありますが、突然逮捕されずに済む可能性が高くなります。

自首した犯人は、逃亡や証拠隠滅の恐れが薄いと判断されて、逮捕や勾留による身体拘束を回避できる可能性があります。

仮に身柄拘束が避けられないとしても、いきなり警察に逮捕されて家族や職場に大きな心配と迷惑をかけることは避けるべきですから、きちんと家族や上司に事情を説明した上で、自分から自首・出頭した方が良いでしょう。

②起訴されずにすむ可能性が高まる

比較的軽い犯罪の場合には、自首した結果、起訴されずに済む可能性もあります。

犯罪が行われると、検察官は捜査を進めて最終的に起訴するかどうかを決定します。このとき、犯人の情状が良ければ、あえて起訴せずに不起訴処分で済ませることがあります。

特に、ある程度軽い罪で、犯人が自首した場合などには、不起訴の可能性がかなり高くなります。

③刑が軽くなる

自首した場合は、刑が軽くなる可能性が高いです。

自首が成立する場合には、裁判になったときに大きく刑を減軽してもらえる可能性があります。具体的な減軽の基準は以下の通りとなっています(刑法68条)。

  • 死刑を減軽するときには、無期懲役もしくは禁固または10年以上の懲役もしくは禁固とする
  • 無期懲役や無期禁固を減軽するときには、7年以上の有期の懲役または禁固とする
  • 有期懲役または禁固を減軽するときは、長期と短期を2分の1にする
  • 罰金を減軽するときには、多額と寡額を半額にする
  • 拘留を減軽するときには、長期を半分にする
  • 科料を減軽するときは、多額を半額にする

このように刑の減軽とは、法定刑の内容や上限・下限を減じるものですが、死刑、懲役や罰金、拘留、科料、すべての刑において、相当な減軽を受けることができることがわかります。

また、前述のとおり、自首が成立せず単なる自主的な出頭のケースで、それが考慮事由のひとつとなって酌量減軽が認められる場合も、自首と同じ刑の減軽が行われます(刑法71条、68条)。

また、酌量減軽が認められない場合でも、法定刑の範囲内で、裁判官が最終的な刑期や金額を決める際に、自発的な出頭を評価して、月数や金額を少し削ってくれるケースもあります。

そのため、犯罪、特に重罪を犯した場合、自首・出頭するかどうかで適用刑罰が全く変わってくる可能性があるので、できるだけ勇気を出して自首・出頭するべきです。

④気持ちが楽になる

罪を犯して逃げている場合、気分的にはとても暗くなるものです。

まだ犯罪が発覚していなくても「いつバレるのだろう」と不安になりながら生活しなければなりません。何かあったらすぐに転居を繰り返して、逃げ続ける状態が続きます。犯罪を犯したことを後悔しながら一生を過ごすことになるかもしれません。
このような状態で生活していくのはとても辛いものです。

自首・出頭したら、このような張り詰めた生活から解放されます。たとえ留置所や刑務所に行くことになっても、ずっと気が楽でしょう。

(2) デメリット

それでは、自首や出頭にデメリットはあるのでしょうか?

①確実に刑事処分を受ける

自首・出頭をすると、確実に刑事手続のレールに乗り、処分を受ける可能性が現実化することがデメリットと言えるかもしれません。

ずっと逃げ続けていたら、そのまま刑罰の適用を受けずに済む可能性もあります。
刑事事件の立件には、公訴時効があるからです。

犯罪の内容と法定刑の軽重によりますが、犯罪が行われてから一定の年数が経過すると、時効にかかって検察官は起訴できなくなってしまうのです。このことは、発覚していて手配されていても同じことです。

ただ、日本の捜査機関は非常に優秀です。特に重大事件の場合、かなり高い検挙率を誇ります。捜査機関の手を逃れて何年もの間逃げ続け、確実に刑事時効を迎えるのは相当困難です。

②心理的な抵抗

もう1つのデメリットは、心理的に抵抗があることではないでしょうか。

確かに、警察や検察に自分で赴いて「捕まえてください」と言うのは、恐ろしいという気持ちがあるでしょう。

とは言え、気持ち的に抵抗感があっても、それを推して自首・出頭した方が、明らかに利益が大きいです。
冷静になって将来のことを考えて、自首・出頭を検討しましょう。

3.自首・出頭時に弁護士が同行するメリット

以上のように、自首や出頭をすると刑罰が減軽される可能性があるのでメリットが大きいのですが、自首・出頭するときに弁護士が同行する意味はあるのでしょうか?

(1) スムーズに自首することができる

弁護士が自首や出頭に同行するときには、弁護士が、上申書を作成して捜査機関に提出します。

これによって、捜査機関は、申告される犯行の概要を把握することが可能となり、自首、出頭当日の取調べ時間を短縮できるだけでなく、自首・出頭したという事実の証拠として後に利用できます。

なお、上申書を自分で作成することは、おすすめできません。不用意な記載が不利に作用する危険がありますし、自首・出頭するからといって、必要以上に不利な事実や証拠を相手に与えるべきではないからです。

弁護士に相談して、簡にして要を得た書面を作成してもらうべきです。

(2) 処分を軽くしてもらえる可能性が高くなる

また、上申書とは別に、弁護士の立場から捜査機関に対し、処罰を軽くするよう求める意見書も作成して提出します。このことにより、自分1人で自首するよりも、処分を軽くしてもらえる可能性が高くなります。

うまくいけば、逮捕や勾留されずに在宅捜査となり、そのまま家に帰してもらえる可能性も出てきます。

(3) 心理的な負担もかなり軽くなる

弁護士が同行してくれると、自首・出頭するときの心理的な負担もかなり軽くなるものです。

1人ではなかなか警察署の方へ足が向きにくいものですが、弁護士と一緒なら覚悟を決めて、きっちり自首・出頭しやすいものです。

(4) 捜査機関から不当な扱いを受けない

弁護士が一緒なら、捜査機関に出頭したときに取調べ等において不当な扱いを受ける可能性も低くなります。そのようなことがあったら弁護士が抗議をするからです。

(5) 仮に逮捕されても、弁護士ならすぐに面会できる

自首・出頭すれば、そのまま逮捕されてしまう可能性も考慮しておかなくてはなりません。

逮捕中は家族であっても面会できませんが、自首・出頭に弁護士に同行してもらっていれば、逮捕状が執行された後、時間をおかずに弁護士が面会することが可能です。

以上のように、自首・出頭するときには、弁護士に同行を依頼すると大きなメリットがあります。
もっとも、弁護士に同行を依頼する場合は費用が掛かりますので、よく検討してから弁護士に依頼をしましょう。

4.刑事事件のサポートは泉総合法律事務所へ

刑事犯罪を犯してしまったけれどもまだ逮捕されていない状態であれば、逃げずに自首・出頭すべきです。

泉総合法律事務所では、刑事事件に非常に力を入れており、警察に逮捕された後の対応も万全の体制で執り行っております(※泉総合法律事務所では、自首・出頭への同行は行なっておりません)。

刑事事件でお悩みの方、自首・出頭しようかどうかの判断で迷われている方は、お早めにご相談ください。

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