刑事事件弁護 [公開日]

刑事手続の各段階における警察官と検察官の役割

刑事手続の各段階における警察官と検察官の役割

刑事事件が発生すると、警察官や検察官はどのようなことを行うのでしょうか?

以下では、刑事手続の各段階における警察官と検察官の役割について解説していきます。

なお、少年の場合には成人の場合と異なる取り扱いがなされることがありますが、少年が罪を犯した場合の流れについては別のコラム(息子さんが少年事件で逮捕されてしまったら弁護士にご相談ください)で詳しく解説していますので、以下では、少年に関する特則には触れず、成人が罪を犯した場合を前提に解説します。

1.事件発生直後の段階

事件発生直後の段階

(1) 警察官の役割

捜査は、事件が発生した後、それを捜査機関が知ったときに開始されます。検察官が自ら事件を見つけて捜査を開始することもありますが、それは財政経済事件等のごく一部の事件だけで、ほとんどの場合は警察官が事件を見つけて捜査を開始します。

事件発生後初期の段階で行われる捜査のことを初動捜査と呼ぶことがあります。初動捜査のミスは取り返しがつかないことが多いため非常に重要です。

事件現場での検証や鑑識活動などは重要な初動捜査の典型ですが、被害者や被疑者からの資料採取も重要な初動捜査です。

例えば、痴漢事件では被疑者が警察官に引き渡された直後に被疑者の手の微物を採取し、採取された微物の中に被害者の衣服の繊維と同種のものがあるかどうかを調べることがあり、その結果が痴漢事件の有罪の証拠になることもあれば、無罪の証拠にもなることもあります(もっとも、それが単体で決定的な証拠になるのではなく、他の証拠と相まって有罪又は無罪の判断が導かれるという場合が多いです。)。

また、事件に関係する場所の防犯カメラ映像の保全も重要な初動捜査です。防犯カメラ映像は様々な犯罪において決定的な証拠となることがしばしばありますが、多くの防犯カメラは、そのままにしておくと次々とデータが上書きされて古いデータがなくなっていき、1~2週間程度でデータがなくなってしまいますので、事件発生後、速やかに保全しておかないと決定的な証拠が失われてしまうことになるのです。

犯罪の種類や事件の内容によって行うべき初動捜査は様々で、前記のものは初動捜査のごく一例にすぎませんが、初動捜査の出来不出来がその事件の成否(起訴して適正な刑の有罪判決を得られるかどうか)を左右するというのは多くの事件に共通していえることです。

圧倒的多数の事件において初動捜査は警察官が行っており、初動捜査に携わった警察官の力量が事件の成否に大きな影響を与えます。

(2) 検察官の役割

前記のとおり、検察官が自ら事件を見つけて捜査を開始することもありますが、そのほとんどが財政経済事件等のいわゆる知能犯事件で、検察官が殺人や傷害、痴漢等の事件を自ら見つけて捜査を行うということはほぼありません。

そのため、検察官が自ら事件発生現場の検証や鑑識活動を行うようなこともほぼありません。

鑑識活動などを適切に行うためには、専門的な技術や機材等が必要になりますが、そもそも検察官は鑑識活動などに関する専門的な技術も機材等も持っていないため、行おうにも行えないという面もあります。

検察官は、警察官が初動捜査を行い、ある程度証拠が集まった段階で事件送致を受け、その後に補充的に捜査を行うのが通常ですが、殺人等の重大事件や複雑な経済事件等の場合には、事件送致前の段階から検察官が警察官から事件の報告を受け、警察官に対して、被疑者を逮捕すべきかどうかを含めた具体的な捜査方針を指示する場合もあります。

2.検察官送致から処分までの段階

検察官送致から処分までの段階

(1) 警察官の役割

警察官は、前記の初動捜査を含め、必要な捜査を行った後、検察官に対して事件を送致します。

被疑者を逮捕した事件で、警察官が被疑者を釈放しない場合には、身柄拘束から48時間以内に検察官に対する事件送致を行う必要があります。

通常、警察官が検察官に事件を送致する際には被疑者の処分についての警察官の意見をつけて送致をします。

警察官が送致の際につける意見にはいくつか種類がありますが、「厳重処分」という意見をつけて送致することが多いです(厳重処分(処分意見)と書類送検について)。

被疑者が逮捕されていない在宅事件の場合は、通常、警察官が必要と考えた捜査を一通り終えた後に検察官に事件送致を行うため、検察官から指示があった場合は別として、送致後に警察官が自らの判断で捜査を行うことはあまり多くはありません。

被疑者を逮捕して釈放しない場合、逮捕から送致までに48時間しかないことから、多くの場合は送致時点で捜査が完了していないため、警察官も引き続き予定した捜査を行います。

(2) 検察官の役割

検察官は、前記したような例外はあるものの、基本的には、警察官から事件送致を受けた後に捜査を開始します。

検察官は、警察官から送られてきた事件の記録一式を読み、補充で行うべき捜査があるかどうかを検討します。

補充で捜査を行うべきかどうかは、検察官が被疑者の処分を決めるに当たって、解明しておかなければならない事項が残されているかどうかという観点から判断するのが通常です。

起訴を行う場合は、起訴後の裁判で有罪にできるだけの証拠が集まっているかどうかという観点で補充の捜査をすべきかどうかを判断します。

補充の捜査は、検察官が警察官に指示して行わせることもあれば、検察官が自ら行うこともあります。

被疑者を不起訴にする場合には全く補充の捜査を行うことなく検察官が不起訴処分を行うことがありますが、起訴(略式起訴を含む)する場合には、最低限、1回は被疑者の取調べを行った上で起訴するのが通常です(事件送致後の被疑者の取調べも補充捜査の一種です。)。

3.起訴後の裁判の段階

起訴後の裁判の段階

(1) 警察官の役割

警察官は検察官のように刑事裁判の一方当事者として裁判に直接関わることはできません。

しかし、起訴がなされて裁判の段階に入った後も、検察官の指示を受け、又は警察官自らの判断で、被告人を有罪とし、適正な判決を得るために必要な捜査を引き続き行うことがあります。

また、争いのある事件の場合には、警察官が証人として裁判所に出廷するということもしばしばあります。

(2) 検察官の役割

検察官は、刑事裁判の原告側として裁判における主張立証活動を行い、被告人が有罪であることを証明しなければなりません。

どのような主張立証を行うのかは事件ごとに様々ですが、争いのない事件では、捜査段階で作成された供述調書等の書類を用いて証明するのが通常です。

争いのある事件では、証人尋問が検察官立証の中心になることが多いです。

4.判決後の段階

判決後の段階

(1) 警察官の役割

警察官は被告人の刑の執行には関与しませんので、実刑判決が宣告されて被告人が刑務所で服役することになった場合であっても、警察官がその手続に直接関わるということはありません。

無罪判決や求刑よりも著しく軽い刑が宣告された場合は、検察官からの指示を受けて補充の捜査を行うことがあります。

(2) 検察官の役割

刑の執行は検察官の指揮によってなされるため、検察官は、被告人が実刑判決を宣告された場合であれば、刑務所側に対して懲役刑を執行するように指揮して服役を開始させます。

無罪判決や求刑よりも著しく軽い刑が宣告された場合、検察官は、控訴してその判決を是正する必要があるかどうかを検討します。

控訴するかどうかを判断するに当たって解明しておかなければならない事項がある場合や、控訴することが決まって控訴審の裁判で追加の立証を行う必要がある場合には、自ら、あるいは警察官に指示して補充の捜査を行うことがあります。

5.まとめ

以上のように、警察官や検察官は、刑事手続のほぼ全般にわたって関与し、様々な役割を担っています。

ご自身、あるいは身近な方が警察官や検察官から取調べを受けているような場合、その後、どうなってしまうのかと非常に心配になると思います。

そのような場合、お早めに泉総合法律事務所にご相談ください。刑事事件に習熟した弁護士が適切な対処方法をアドバイスいたします。

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