厳重処分(処分意見)と書類送検について

刑事事件弁護

有名人が書類送検!起訴・不起訴?厳重処分でどのような処分になるか

芸能人やスポーツ選手等の有名人が書類送検されると、テレビ報道等ですぐに話題となります。

最近、人気アイドルグループ「TOKIO」の山口達也メンバーが、女子高校生にキスをしたとして書類送検された事件で、警視庁が「厳重処分」の意見を付けて書類送検していたことがわかりました。また、横綱日馬富士が貴の岩関への暴力事件で「厳重処分」を付されて書類送検されたことはご存じの方も多いでしょう。

ニュースで「書類送検」はよく聞く言葉ですが、「書類送検」とはどのような処分なのでしょうか。また「厳重処分(処分意見)付けて書類送検」とはどういうことなのでしょうか。

ここでは、書類送検厳重処分(処分意見)について詳しくご説明します。

1.書類送検とは

まず、犯罪事件が発覚してから被疑者が刑罰を受けるまでの流れを簡単にまとめると、次の通りになります。

  1. 被疑者の特定
  2. 被疑者への事情聴取・逮捕・取調べ
  3. 検察官送致
  4. 起訴
  5. 刑事訴訟
  6. 判決確定
  7. 刑の執行

刑事事件で特に重要なポイントは、「刑罰は必ず刑事訴訟の審理を経て科される」ということです。容疑者を刑事裁判にかけることを「起訴」といい、検察官が要否を判断します。

(1) 検察官送致

警察が捜査をしたときには、書類・証拠物・事件を検察官に送致しなければなりません(刑事訴訟法246条本文)。これを「検察官送致」といい、報道等では「送検」とよぶことが一般的です。

刑事訴訟法に定められている通り、警察が捜査をしたときには、すべて送検することが原則です。

刑事訴訟法246条本文
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。

(2) 書類送検と身柄送検

「書類送検」とは、送検の方法の一種です。供述調書や被害届、犯行に用いた道具等の証拠物のみを検察官に送ることを「書類送検」とよんでいます。

これに対するのが「身柄送致」です。書類・証拠物だけでなく「被疑者の身柄」も検察官に送ります。書類送検は「身柄が拘束されない送検」である理解した方がわかりやすいでしょう。

なお、身柄送致は、逮捕・勾留から48時間以内にされる必要があります。書類送検には、期間の定めがないため、1週間以上経ってから送致されることも珍しくありません。

「書類送検」と「身柄送検」の違いに関して詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
>>参考:送検とはどういう意味?身柄送検、書類送検、逮捕の違いとは。

(3) 書類送検の条件

書類送検は「警察に身柄が拘束されていない」ことが条件となります。

捜査は、必ずしも被疑者の身柄を拘束して行われるわけではありません。逃亡・証拠隠滅のおそれがないときには、被疑者の身柄を拘束せずに捜査されます。

また、被疑者後に釈放されたときにも、書類送検されます。

書類送検は「書類・事件を検察官に送致」する手続きに過ぎず、書類送検されたからといって必ず起訴されるわけではありません。

2.書類送検されない事件

芸能人やスポーツ選手等の有名人が書類送検される。とテレビ報道等で話題となります。しかし、先程申し上げた通り、法律の立て前としては「全件送致」が原則なので、実は書類送検は驚くことではありません。

しかし、実際には捜査された事件のすべてを検察が対応することは難しいのです。そこで、一部の事件では、例外として「検察官に送致されない」ことがあります。

刑事訴訟法246条但書きでは、「検察官が指定した事件」は送検せずに刑事手続きを終了させることを認めています。これを「微罪処分」といいます。

(1) 微罪処分の基準

具体的にどのような事件を微罪処分とするかは、地方検察庁が定めた基準によって決まります。

基準を決める際には、次の要素を考慮して決められるとされています。

・犯罪の種類(窃盗、暴行など)
・被害の程度
・被疑者の情状(初犯かどうか)

なお、平成27年度犯罪白書によれば、刑法犯のうち微罪処分とされたのは、71,496人で、全検挙の29.9%なので、検挙事件の7割は送検されていることになります。

微罪処分に関して、詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
微罪処分になる要件とは?呼び出しはあるのか、前歴はつくか

(2) 微罪処分の具体例

書類送検されずに微罪処分となるケースについて、交通事故、窃盗、暴行の3つのケースで説明します。

①交通事故(人身事故)

交通事故(人身事故)は、

  • 業務上過失致死傷罪(刑法211条1項)
  • 自動車運転過失致死傷罪(刑法211条2項)
  • 危険運転致死傷罪(刑法208条の2)

が問われる可能性があります。

飲酒運転による人身事故が報道されることがありますが、これは危険運転致死傷罪の典型例です。たとえば、飲酒運転の上でひき逃げしたというようなケースでは、逮捕の上で身柄送致となります。

通常の人身事故でも、法律上の原則は「書類送検」です。しかし、被害者との間で示談が成立していて、被害者が加害者の処罰を望まないケースでは、微罪処分とされることもあります。人身事故の被害者が「処罰を希望するかどうか」を確認されるのは、このためです。

罪名に関して詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

業務上過失致死傷罪

業務上過失致死傷罪の概要と要件・刑罰

自動車運転過失致死傷罪/危険運転致死傷罪

自動車運転死傷処罰法とは?交通事故被疑者・被害者必見の新設法律
飲酒運転(酒気帯び運転・酒酔い運転)の刑事罰とは?逮捕後の流れ

②窃盗のケース

たとえば、「ほんの出来心」で「万引きや自転車窃盗」したが、「示談が成立」していて、「被害者も処罰を希望していない」ケースが、窃盗が微罪処分となる典型例です。

他方で、被害額が大きかったり、常習性があったり、被害者が処罰を希望しているときには窃盗でも書類送検されます。

たとえば、実務のなかでは被害額が2万円を超えるかどうかが1つの基準だといわれることがあります。

③暴行

刑法でいう暴行は、わかりやすくいえば「傷害に至らない暴力」をいいます。たとえば、相手の胸ぐらを掴んで引き倒したが怪我をしなかったという場合です。

暴行によって怪我(傷害)が生じた際には、「傷害」となります。

先に紹介した警察庁「平成27年の犯罪」によれば、暴行で検挙された約50%が微罪処分となっています。これに対して、傷害で微罪処分となったものは、僅か0.1%に過ぎません。

暴行のケースでも、被害者との示談成立、被害者が処罰を希望しているか否かが微罪処分となるか書類送検となるかの重要なポイントです。

(3) 被害者への早期対応(示談)が重要

人身事故、窃盗、暴行で検挙されたときには、被害者への対応が微罪処分となるか書類送検となるかの重要な鍵を握っています。

犯罪行為で検挙されたときには、早期に弁護士に依頼して示談を成立させることがとても重要です。

刑事事件における示談の意味を詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
刑事事件における示談総説。示談の意義、タイミング、費用など解説!

3.処分意見とは

警察は書類送検する際に、検察官に対して「処分に関する意見(処分意見)」を付します。

処分意見には、次の4種類があります。

  • 厳重処分:起訴を求める最も厳しい意見
  • 相当処分:起訴を検察官の判断に求めるもの
  • 寛大処分:厳しい処分を求めず起訴猶予を求めるもの
  • しかるべき処分:嫌疑不十分の場合に不起訴を求めるもの

最も、処分意見には法的拘束力はなく、検察官は処分意見と異なる判断ができます。

したがって、書類送検に寛大処分が付されたからといって、「絶対に安心」というわけではありません。検察官の取り調べの結果、起訴されることもありえます。

4.厳重処分になるケース

冒頭で紹介した人横綱日馬富士の事件では、書類送検に「厳重処分」が付されていることが大きな話題となりました。

しかし、上でも触れたように、検察官は警察の処分意見には拘束されません。

「厳重処分」の意見は、特に重大なケースにだけ付されると思われがちです。しかし、書類送検の際には厳重処分の意見が付されることの方が一般的です。

「寛大処分」や「しかるべき処分」が付されるケースは、「被害者との示談成立」していて「被疑者が真摯に反省している」といった、「起訴猶予が相当」といえる条件や、「逮捕・検挙したが公判維持できる証拠物が揃わなかった」ケースに限られます。

日馬富士のケースでは、鳥取区検は、傷害罪で鳥取簡裁に略式起訴しました。略式起訴について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
略式起訴・略式裁判(略式請求)と不起訴処分で必ず知っておくべきこと

5.弁護士が被疑者を全力サポートします

刑事事件において重要なのは「起訴されるかどうか」です。

報道では書類送検が話題となりますが、上で説明したように、検察官送致は原則の手続きです。また、「厳重処分」の意見が付されたからといって、必ず起訴されるわけではありません。

これとは逆に、「寛大な処分」の意見が付されたからといって「絶対に起訴猶予となる」わけでもありません。検察官による補充捜査の結果、起訴されることもあり得ます。

起訴猶予や不起訴処分を勝ち取るためには、逮捕・検挙直後の早い段階から刑事事件に精通した弁護士による支援を受けることが非常に重要です。

書類送検だからと油断してもいけませんし、「厳重処分」の意見が付されたからといって諦めて自暴自棄になってもいけません。弁護士は被疑者の利益のために最大限のサポートをします。

刑事事件を起こしてしまったら、お早め経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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