少年事件 [公開日]2018年4月6日[更新日]2021年4月30日

少年事件とは?息子が逮捕されたら弁護士にご相談を

息子さんが少年事件で逮捕されてしまったら弁護士にご相談ください

大切なお子様が突然「警察に逮捕された」と聞かされたら、どのような方でも気持ちが動転してしまうでしょう。

少年事件とはどのようなもので、もしも子どもが少年事件で逮捕されてしまったら、親として、保護者としてどのように対応すれば良いのでしょうか?

今回は、「少年事件」の仕組みと、少年事件で子どもが逮捕された場合の対処方法について、弁護士が解説します。

1.「少年事件」とは

20歳未満の未成年者が犯罪行為をすると、大人とは違って少年法が適用されて「少年事件」になります。

少年事件の対象となる少年のことを「非行少年」と言います。

非行少年は、以下の3種類に分類されます。

  • 犯罪少年
  • 虞犯少年
  • 触法少年

それぞれについて見ていきましょう。

(1) 犯罪少年

犯罪少年は、何らかの犯罪行為を行った、14歳以上20歳未満の未成年です。

14歳未満の場合、未成熟で、刑事責任を問えないので犯罪は成立しません(刑法41条)。男女の区別はありません。

(2) 虞犯(ぐはん)少年

虞犯少年とは、実際には犯罪を犯していませんが、不良行為(虞犯事由)が確認され、その性格や周囲の環境からして、将来犯罪を犯す危険性が高い未成年のことです。

虞犯事由は次のとおりです。

  • 保護者の正当な監督に服さない性癖がある
  • 正当な理由がないのに、家庭に寄り付かない
  • 犯罪性のある人(例:暴力団員)や不道徳な人と交際していたり、いかがわしい場所(例:ストリップ小屋)に出入りしたりしている
  • 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖がある(例:繁華街を徘徊して不純異性交遊を繰り返す)

(3) 触法少年

触法少年は、刑罰法令に触れる犯罪行為をしたけれども、行為当時に14歳未満だったため犯罪が成立しない未成年のことです。

2.少年事件と成人の刑事事件の違い

それでは、少年事件と成人の刑事事件では、具体的にどのような点が異なるのでしょうか?

(1) 刑事裁判が開かれない

まずは、原則として「刑事裁判」が開かれないことが、大きな特徴です。

成人の場合、起訴されると、多くの場合は公開の法廷において、裁かれることになります。どのような方も自由に傍聴することができるので、被告人のプライバシーは守られません。

また、被告人は、検察官から厳しく追及されることになります。

これに対し、少年事件の場合、原則として起訴されることはありませんし、原則として審判の席には検察官も登場しません。

成人に対する刑事裁判は処罰するための手続ですが、少年事件は処罰するためではなく、少年の保護育成を目的とするからです。

少年鑑別所や家庭裁判所の調査官による調査が行われて、裁判所が保護的な見地から、少年に対する適切な処分を決定します。

(2) 全件家庭裁判所に送致される

成人の刑事事件の場合には、検察官の裁量により、起訴するか不起訴にするかが決定されます。不起訴になれば、刑事裁判にならず、身柄が解放されます。

しかし、少年事件の場合、検察官にこういった裁量が認められず、原則として全件が家庭裁判所に送致されます。

このことを、「全件送致主義」と言います。

(3) 刑罰が適用されない

通常、犯罪を犯した人には「刑罰」が適用されるものです。たとえば、懲役刑や罰金刑などの言い渡しを受けて、被告人は刑に服する必要があります。

これに対し、少年事件の場合には、原則として刑罰が適用されません。懲役刑を受けて刑務所に行くこともありませんし、罰金の納付命令が出ることもありません(例外は後述します)。

(4) 身柄拘束方法について

成人が犯罪を犯し、逮捕勾留されたときには、警察の留置場に身柄を拘束されて、取り調べを受けることになります。起訴されると、拘置所に身柄を送られます。保釈が認められない限りは、裁判が終了するまで拘置所での勾留が継続します。

少年事件でも逮捕、勾留される手続は成人と同じです(ただし、警察の捜査段階で罰金以下の刑にあたる犯罪と判断した場合は、警察から直接に家庭裁判所に送致され、検察を経由しない点は異なります。また、触法少年、虞犯少年が逮捕されることはありません)。

しかし、少年事件では、家庭裁判所に送致された後、「観護措置」という手続きが用意されています。これは身柄を少年鑑別所において、少年を調査するための措置です。

ここで規則正しい生活を送りながら、問題行動の原因、背景、家庭環境、生い立ちなど、様々な観点からの調査を受けつつ、少年が自発的に自己の問題に気づけるよう指導も行います。

少年鑑別所でも、家族と面会ができますし、手紙のやり取りや差し入れなども可能です。

警察の留置場や拘置所とは異なり、面会場所もアクリル板による遮蔽などが行われず、家族や付添人と和やかに面会ができるようになっています。

[参考記事]

少年鑑別所とは|生活、入る理由、期間などを解説

3.少年事件の逮捕後の流れ

以下では、少年事件における逮捕後の流れを見ていきましょう。

(1) 犯罪少年のケース

犯罪少年の場合、逮捕後、検察官送致され、勾留請求されて、勾留決定された場合には、成人の刑事手続と同様、引きつづき警察の留置所で身柄拘束されます。身柄拘束期間(原則10日、最大20日)についても、成人の手続きと同じです。

逮捕後、検察官送致されたが、検察官が勾留に代わる観護措置(少年法43条)を請求した場合には、通常は身柄拘束場所が少年鑑別所となり、期間も10日が限度となります(同44条)。

もう1つのパターンとして、警察が罰金刑以下の犯罪と判断した場合は、検察官送致されることなく、逮捕後すぐに直接に家庭裁判所に送致され(少年法41条)、家裁調査官による観護措置が行われるケースがあります。

勾留期間や勾留に代わる観護措置の期間が満期になったり、必要な捜査が終了したりすると、検察官は少年を家庭裁判所に送致します(少年法42条)。

すると、ほとんどの場合、家庭裁判所で少年に対して観護措置がとられて少年審判に向けた手続きが始まります。

少年の身柄は少年鑑別所に送られます。それまで勾留に代わる観護措置がとられていた場合には、引き続き少年鑑別所で過ごすことになります。家庭裁判所の判断によっては、事件が軽微などの事情があるときは観護措置がとられず、少年鑑別所に収容されないこともあります。

通常、審判を開始するか否かは、監護措置中に決められ、審判日が指定されます。

審判開始が決定された後も、引き続き、家庭裁判所の調査官による調査が行われたり、鑑別所のメニューに従った調査や指導が行われたりします。

[参考記事]

少年事件における家庭裁判所調査官の役割

両親や保護者も、家庭裁判所に呼び出されて調査官と面談して話をすることになりますし、調査官が学校環境などを調べることもあります。保護者の調査官との面談は、処分において重要な意味をもってきます。

裁判官は、審判をするときに、調査官の意見を重視するので、調査官調査への対応は非常に重要です。

審判では保護観察や試験観察、少年院送致や不処分など、少年に対する具体的な措置が決められます。重大犯罪の場合、検察官に送致されて刑事処分を受ける「逆送」となる場合もあります(少年法20条)。

(2) 虞犯少年

虞犯少年は犯罪を犯していないので、犯罪少年と異なり、逮捕・勾留されることはありません。

警察が街頭での補導などによって、虞犯少年を発見した後の取扱いは、少年の年齢によって異なります。

①14歳未満

警察は、児童相談所(又は福祉事務所)に通告します(少年法3条2項、児童福祉法25条)。

児童相談所では必要な調査を行なう間、少年を「一時保護」(児童福祉法33条)とすることが少なくありません。調査・報告をふまえ、都道府県知事が、次の各措置を選択します(児童福祉法26、27条)。

  • 少年とその保護者を児童福祉司に指導させる
  • 少年を里親に委託する、または児童養護施設、児童自立支援施設に入所させる
  • 家庭裁判所に送致する

家裁送致された場合は、家裁で観護措置決定がなされるケースが多数です。家裁送致後の手続は、犯罪少年の場合と同様ですが、犯罪少年のよう検察官送致(逆送)はありません。

[参考記事]

児童相談所とは?役割・一時保護等について解説

②14歳以上18歳未満の場合

警察は、児童相談所(又は福祉事務所)に通告するか、家庭裁判所に送致するかのどちらかを判断します(少年法6条2項)。

児童福祉法による措置に委ねる方が適当と認めるときは、警察は直接児童相談所に通告できます。性格・環境から、犯罪危険性が低く、拘束・制限する必要がなく、保護者が協力的であるような場合です。

児童相談所に通告された場合のその後の手続は、14歳未満と同様です。

家裁送致された場合のその後は、犯罪少年と同様です。ただし、検察官送致(逆送)はありません。

(3)18・19歳の場合

児童福祉法の対象外なので、警察は家庭裁判所に送致します。

家裁送致された場合のその後の手続は、犯罪少年と同様ですが、検察官送致(逆送)はありません。

(3) 触法少年

触法少年の場合も刑事責任を問うことができないので、「逮捕」や「勾留」はありません。

ただし、警察は「触法調査」(少年法6条の2)として、少年から事情聴取を行います。このときに、いったん児童相談所に通告をして児童福祉法33条に基づく「一時保護」の形で身柄を拘束して調査する場合もあります。

少年の行為が一定の重大な犯罪に該当することが明らかになれば、警察が少年を「児童相談所長」へと送致します(少年法6条の6)。

少年の身柄を受け取った児童相談所長は、少年を家庭裁判所の審判に付するべきかを判断し、審判が適当と認められる場合には、少年を家庭裁判所に送致します(児童福祉法27条1項4号)。重大犯罪の場合には、家裁送致が原則になります(少年法6条の7第1項)。

児童であっても、家裁へ送致されると、上記で紹介した少年審判の手続きが適用されます。

家裁へ送られなかった場合には、児童相談所において一時保護されます。一時保護の期間は、原則として2か月以内ですが、状況によってはそれより短くなったり長くなったりすることもあります。

また、その間に児童相談所の措置が行われます。

具体的には、児童相談所が児童や保護者に注意した上で誓約書を書かせたり、指導福祉司に指導を委託したりします。児童を里親に預けたり、養護施設に入れたりすることもあります。

また、触法少年のケースであっても、必要があれば、警察は捜索、押収、検証や鑑定嘱託などの捜査ができます(少年法6条の5)。

つまり、14歳未満の少年の犯罪であっても、事件によっては、突然警察が家に来て、家宅捜索をする可能性などもあるということです。

4.家庭裁判所による判断の種類

少年事件で家庭裁判所に送られると、家庭裁判所が少年に対して審判を下します。その内容により、その後の少年の処遇が大きく変わってきます。

以下では、少年事件における家庭裁判所の判断の種類と内容を説明します。

(1) 審判不開始

審判不開始は、そもそも少年審判を開かないという決定です。非行の事実がないときや、非行が軽微で審判を行う必要がないときなどに、審判不開始となります。

(2) 保護観察

保護観察は、少年がこれまでと同様の社会生活を送りながら、保護司や保護観察官による指導や監督を受ける処分です。

(3) 試験観察

試験観察は、少年への適切な処分を決定するため、最終処分を決定する前に、一定期間、その行動や生活の様子を観察するというものです。「中間処分」と呼ばれます。

(4) 少年院送致

少年を少年院に入れて、更生ための矯正教育を行う処分です。再犯の危険が強く、社会内での更生が困難と判断される場合です。

[参考記事]

少年院はどんなところ?|種類、入る理由・年齢・期間、生活を解説

(5) 検察官送致(少年法20条)

特に悪質な犯罪や重大犯罪を犯した少年に対し、成人と同じ手続きによって刑事裁判を受けさせる手続きです。

家庭裁判所が検察官に少年の身柄を送り、その後、検察官が少年を起訴して刑事裁判となります。

このように、少年の身柄を家裁が検察官に送り返す手続のことを「逆送」と言います。

逆送されるのは、犯罪少年が、死刑、懲役、禁錮に相当する事件を起こし、調査の結果、罪質や情状に照らして刑事処分が相当と認められる場合です。

故意の犯罪によって被害者を死亡させた事件で、行為時の年齢が16歳以上の場合には、原則として検察官に送致されます。

逆送されたときには、検察官は、成人の刑事事件と同様に、諸事情を考慮して、少年を起訴するか否かを決めることになります。

(6) 児童自立支援施設や児童養護施設への送致

比較的低年齢の少年について、開放的な施設に入所させ、指導や教育を行う処分です。

(7) 都道府県知事・児童相談所長への送致

児童福祉施設への入所や里親への委託など、児童福祉機関の措置に委ねることが相当な場合の処分です。

(8) 不処分

不処分は、審判の結果、少年に非行が認められない場合や、非行があっても処分をする必要ないときに行われます。

審判が行われなかったら審判不開始ですが、審判の結果処分をしない場合に不処分となります。

5.少年事件における、逮捕後の弁護活動

もしも、大切なお子様が少年事件で逮捕されてしまったら、どのような対処をすべきでしょうか?

(1) 少年事件で必要な対応

少年事件では、犯罪事実が冤罪である場合は格別、犯行が事実であるなら、少年の今後のために慎重に手続に対応していく必要があります。

成人の刑事事件では、検察官と弁護人は対立関係にあり、裁判官は審判役ですが、少年事件では原則として検察官は登場せず、家庭裁判所と付添人弁護士は、少年を保護し、更生させるために共働する関係にあります。

犯行の原因はどこにあったのか?少年本人だけでなく、家庭、学校の環境、友人関係、にどのような問題性があったのか?それを除去するには、どのようにすれば良いのか?これらのことを、鑑別所職員、家裁調査官、裁判官と共に真剣に考え、環境を改善することこそ重要であり、それが付添人弁護士の重要な役割なのです。

もちろん、成人の事件と同様に、被害者との示談交渉をおこなったり、少年と面会して手続について説明したり、家庭裁判所の事実認定が適正になされるよう事実関係や法的な問題について主張することも、付添人弁護士の大切な仕事ですが、少年事件は、それらにとどまらない役割があるのです。

(2) 付添人弁護士ができること

裁判官に適正な事実認定をしてもらうために、事実を調査し、捜査の誤りを正し、少年の言い分を整理して裁判官に伝えなくてはなりません。これは成人の刑事事件における弁護人と同様です。

特に、身体も精神も未成熟な少年は、誘導に乗って虚偽の自白をしてしまうなどの危険があり、弁護士のサポートは不可欠です。

また、被害者側に謝罪する機会を設定し、被害弁償、示談交渉を行うことも成人の場合と同様ですが、さらに少年事件では、少年が立ち直るための環境整備が重要な点が特徴です。

少年事件には、成人事件と同様の捜査資料を中心とした「法律記録」の他に、少年を取り巻く環境などに関する「社会記録」があり、鑑別所や家裁調査官の調査結果、学校、病院、福祉施設などへの照会と回答など、少年をとりまく、あらゆる資料が含まれています。付添人の弁護士は、社会記録にも目をとおし、少年の保護育成のための方策を検討するのです。

例えば、親の無関心など家庭の問題を気付かせる、仕事先を探す、復学・復職の交渉をするなど、更生できる環境を整える活動を行うのです。

6.少年事件も泉総合法律事務所にご相談ください

子どもが少年事件で逮捕されたら、どのような親御さんでもショックが大きいはずです。

しかし、これを放置した場合、学校を退学になったり少年院に行かねばならなくなったりする可能性もあります。

そのようなことを避けるためには、弁護士によるサポートが必要です。

どうぞお早めに、少年事件の解決実績が豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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