少年事件 [公開日]2020年7月30日[更新日]2023年3月8日

14歳未満の者が事件を起こしたらどのような手続きになるか

20歳未満の者が犯罪行為をした場合、少年法が適用されます。その結果、20歳以上の者が犯罪を犯した場合とは異なった刑事手続きが進んでいきます。

これは、14歳未満の者が犯罪に該当する行為を犯した場合も同様で、刑法41条では、「十四歳に満たない者の行為は、罰しない。」とされています。
もっとも、何も措置が講ぜられないわけではなく、触法少年として処理されます。

ここでは、14歳未満の者が事件を起こした場合の手続きの流れについて解説します。

  • 1.14歳未満の者は処罰されない?

    人の物を盗んだり、他人に暴行を加えたりした場合には、犯罪が成立しその者は処罰されるのが通常です。

    しかし、小学生や中学生など、14歳未満の者は一律に刑事責任能力に欠けるとされています。
    そのため、例えば、13歳の中学生が万引きをしても窃盗罪は成立せず不可罰となります。

    もっとも、何も措置が講ぜられないわけではありません。
    少年が犯した事件には少年法が適用され、通常の刑事手続きとは異なった手続がとられます。

    これは、少年を保護し健全な育成を図るため、成人が犯罪を犯した場合とは違った配慮が求められるためです。

    「少年」とは20歳未満の者を言い、少年法上、以下に分類されます。

    • 犯罪少年・・・14歳以上で犯罪を犯した者
    • 触法少年・・・14歳未満で犯罪となりうる行為を犯した者
    • ぐ犯少年・・・犯罪を犯したわけではないが、素行不良のため将来犯罪を犯す危険がある者

    ※選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、令和4年4月1日から施行の改正少年法では、18・19歳の者が罪を犯した場合には「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めています。

    今回は、「14歳未満の者が事件を起こしたら」という題目に沿い、触法少年による犯罪について詳しく説明します。

2.触法少年が事件を起こした場合の流れ

(1) 事件の発生から児童相談所への通告

14歳未満の者が事件を起こした場合でも、少年のもとに警察が調査に来ることはあります。これを触法調査と呼びます。
(※犯罪ではないので、「捜査」ではなく、あくまでも任意の「調査」です。また、成人が犯罪を犯した場合のように逮捕されることはありません。)

警察は、触法少年を発見したときには、児童相談所に「通告」しなければなりません(児童福祉法25条1項本文)。
通告とは、児童相談所に報告して、その職権発動を促すことです。

さらに、触法の内容が、①一定の重大事件である場合や、②家庭裁判所の審判に付することが適当であると判断した場合には、「通告」だけでなく、調査後に「送致」しなくてはなりません(少年法6条の6第1項1号及び2号)。
「送致」とは、正式に児童相談所の扱う事件として受付けさせるということです。

警察が、家庭裁判所の審判に付することが適当と判断しても、家庭裁判所に直接に送致することは許されず、いったん児童相談所に送致して、福祉的観点からの調査と判断を行わせるのです。

①一定の重大事件とは、次の事件です。

(ア)故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
(イ)死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪

この送致に際しては、警察による事件の調査結果等も同時に送られます。

通告を受けた児童相談所は、事実や少年の状態を調査したうえで、児童福祉法上の各種の福祉的な援助措置を行います(児童福祉法26条1項)。
この措置には、次のようなものがあります。

  • 訓戒、誓約書の提出(児童福祉法第27条1項1号)
  • 児童福祉司等による指導(同2号)
  • 里親などへの委託(同3号)
  • 児童養護施設、児童自立支援施設などへの入所(同3号)

なお、前述のとおり、触法少年は犯罪者ではないので逮捕されることはありませんが、児童相談所の「一時保護」によって身体拘束を受ける場合があります。

「一時保護」とは、少年の安全を迅速に確保する目的または少年の心身の状況、置かれている環境などを把握することを目的として、原則として2ヶ月を超えない範囲で、「一時保護所」に入所させたり、適当な第三者に委託したりすることです(児童福祉法第33条)。

[参考記事]

児童相談所とは?役割・一時保護等について解説

また、児童相談所が触法少年を家庭裁判所の審判に付するのが相当と判断した場合、少年を家庭裁判所に送致します(児童福祉法第27条1項4号)。

先に説明したとおり、(ア)故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(イ)死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に該当する重大事件は、警察から児童相談所に「送致」されていますが、これら重大事件については、児童相談所が家庭裁判所の審判に付することが必要か否かを調査し、その必要がないと認められるときを除いて、家庭裁判所に送致することが原則とされています(少年法6条の7第1項、児童福祉法第27条1項4号)。

(2) 家庭裁判所に送致された後

触法少年でも、家庭裁判所に送致された後の手続は14歳以上の犯罪少年の場合と同じです。

送致を受けた家庭裁判所は、その日のうちに、少年を少年鑑別所に収容するか否かを決定します。これを観護措置決定といいます。

観護措置は、後に行われる家庭裁判所の審判のために、少年を観察し、指導することを主目的とします。収容期間は2週間から4週間です。
その間に、家庭裁判所調査官は、少年の日常生活の様子、精神状態、犯行の経緯等の事情を調査します。

また、同時に少年の保護者等も調査を受けます。

[参考記事]

少年事件における家庭裁判所調査官の役割

監護措置期間中の早いうちに、家庭裁判所は、少年を審判に付するか否かを決定します。審判に付する決定がされると、期日まで調査が継続されたうえ、少年審判が行われます。
少年審判は非公開で行われ、一時間程度で終了し、即日、家庭裁判所が少年の保護処分を決定します。

処分には、保護観察(少年を施設に収容せずに、保護観察官等の観察・指導を受けながら更生を図る処分)、少年院送致(少年院において教育を受けさせること)等の保護処分や、処分を一時留保する試験観察等があります。

3.14歳未満の者が事件を起こした場合の弁護士の活動

14歳未満の者が事件を起こした場合、少年の不利益を避けるため、一刻も早く弁護士に相談すべきです。
弁護士は付添人として以下の活動を行ってくれます。

(1) 警察の触法調査を監視し、適正化させる

社会経験もなく、精神も未熟な14歳未満の子どもは、警察による威圧や誘導に乗りやすく、虚偽の自白をしてしまい、冤罪に巻き込まれる危険が非常に高いものです。大人でさえ、虚偽の自白のリスクがある状況ですので、猶更その傾向が高いと思ってください。

ことに重大な触法事件となると、警察が児童相談所に通告すると同時に、児童相談所に警察署内の留置施設を一時保護の委託先とするよう要請することがあり、事実上の逮捕・勾留のもと、違法な取り調べが行われてしまう可能性があります。

弁護士は付添人として、そのような一時保護に抗議し、委託先を変更させる一方、警察の調査への立ち会いを求めるなどして、適正な調査が行われるよう監視します。

(2) 監護措置決定を回避する

家庭裁判所に事件が送致されてしまうと、ほとんどの場合、即日、監護措置決定がなされて、少年は鑑別所に収容されてしまいます。
これは2週間以上続いてしまうので、できればこれを回避する必要があります。

そこで付添人は、送致日のタイミングに合わせて、家庭裁判所の裁判官との面会を求め、監護措置が不要であることを主張し、意見書を提出して少年鑑別所への収容を阻止するべく活動します。

監護措置決定に対しては、異議申し立て(少年法17条の2)を行うこともできます。

[参考記事]

少年鑑別所とは|生活、入る理由、期間などを解説

(3) 家庭裁判所に審判不開始を求める

審判開始が決定されると、少年が保護処分を受ける可能性が高まります。

そのため、付添人は家庭裁判所に審判を開始しないように求める活動を行います。

家庭裁判所は、①審判に付することができない場合、または②審判に付することが相当でないと認められる場合には、審判を開始しない決定をしなくてはなりません(少年法19条)。

①審判に付することができない場合とは、例えば、そもそも触法行為が存在しないケースです。付添人は、少年が法に触れる行為をしておらず、警察の事実誤認であることを主張します。
②審判に付することが相当でないと認められる場合とは、再度の非行に走る危険性がないことが明白であるケースや、軽微な事案に過ぎず、あえて法的な保護手続きの必要性がないケースなどです。

付添人は、事件内容に応じて、被害程度が軽いこと、犯行態様が悪質でないこと、今までどおりの保護者の指導で十分なことなど、主張可能なことを主張していきます。

(4) 審判で寛大な処分を求める

審判が開始された場合、弁護士は少年の付添人として審判に出席します。少年院に送られるおそれがあるような事案では、これを回避するための活動が行われます。

少年院に送られると、最短で4か月は収容されることになるので、できるだけこれを避けたいところです。
そこで、弁護士は、事案や家庭環境などを踏まえて、少年院に行かなくとも少年の更生は可能だということを主張していきます。

もっとも、処分内容は審判前日までに決まっているので、このような付添人の主張は、審判期日よりも前に、裁判所に伝え、理解を得ておかなくてはなりません。

したがって、もちろん、それまでに被害者との示談を成立させる、無関心だった両親に反省を促す、学校長や担任教師と協議して復学と指導教育を約束してもらうなど、少年が社会復帰するための環境面での条件整備を徹底することも付添人の重要な活動です。そして、社会復帰後の環境を調整することは時間がかかることが通常です。

その意味でも、少年事件は、成人事件以上に、早めの活動が絶対に求められます。そのため、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

4.まとめ

14歳未満の少年が非行を犯した場合には、犯罪として処分されることはありませんが、少年審判に付される可能性があります。少年事件においては、特にスピード対応が求められます。

少年は身体的にも精神的にまだ若く、更生して通常の生活を行うことが可能です。
少年の将来のためにも、子供が逮捕された場合には、早急に弁護士にご相談ください。

刑事事件コラム一覧に戻る