少年事件 [公開日]2020年6月15日[更新日]2021年4月30日

家庭裁判所に少年が呼び出される理由とその後の流れ

中学生や高校生が窃盗などの罪を犯した場合、少年法に基づき、成年に対する通常の刑事手続とは異なった手続が行われます。

簡潔に言うと家庭裁判所が原則として少年の処分を決定するのですが、その手続きにおいて、少年が家庭裁判所から呼び出されることがあります。

ここでは、家庭裁判所に少年が呼び出される理由と、その後の流れについて解説します。

なお、以下では、14歳以上20歳未満で犯罪を行った少年(犯罪少年・少年法第3条1項1号)の場合について説明します。

※14歳未満の少年が刑罰法規に違反した場合(触法少年・少年法第3条1項2号)や20歳未満で素行不良などで将来犯罪を犯す危険がある場合(虞犯少年・少年法第3条1項3号)は、児童福祉施設などに送致される場合があるほか、家庭裁判所に送致される場合もあります。家庭裁判所に送致された後の流れは、犯罪少年と同じです。

[参考記事]

14歳未満の者が事件を起こしたらどのような手続きになるか

1.少年が家庭裁判所に呼び出される理由

犯罪を犯した少年が家庭裁判所に呼び出されるのは、以下の理由のよるものです。

(1) 家庭裁判所調査官が調査を行うため

成年が犯罪を犯した場合、事件は警察官から検察官に送致され、検察官が成年たる被疑者を起訴するか否かを決定します。

他方、少年が犯罪事件を起こした場合、警察官又は検察官は捜査のうえ事件を家庭裁判所に送致するのが原則です(少年法第41条、42条)。
そして、家庭裁判所の関与のもと少年の処分を決定します。

これは、成人の刑事事件の場合には刑事罰を与えることが目的なのに対して、少年事件の場合には少年の保護育成が目的(少年法第1条)であるという大きな違いによるものです。

家庭裁判所が少年の処分を決定するにあたっては、少年の罪責だけでなく、少年の「家庭及び保護者の関係、境遇、経歴、教育の程度及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況」(少年審判規則11条1項)、少年の周囲の「家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等」(同11条2項)など様々な情報が必要です。

この情報を集める役割を担うのが家庭裁判所調査官です(少年法第8条2項)。

家庭裁判所調査官は、これらの情報を聴取するため、必要に応じて、少年やその保護者を呼び出すことができます(少年法第11条)。

(2) 少年審判を行うため

事件の送致を受けた家庭裁判所が審判開始の決定をすると、少年審判の期日が設定されます(少年法第21条)。
審判とは、事件を犯した少年の処遇を家庭裁判所が決定する手続きをいいます。

少年審判に際しても、少年の呼び出しが行われます(少年法第11条、少年審判規則第15条)。

2.家庭裁判所から呼び出された後の流れ

次に、家庭裁判所から呼び出しを受けた後の流れを説明します(なお、事件が極めて軽微で犯罪の原因・少年の性格などからみて、家庭裁判所の専門的判断によらなくても保護処分の必要性がないことが明白であるなど一定の要件を充足する場合、警察官は「簡易送致」という手続きをとります。その場合、基本的に調査や審判が開始されないので、以下で説明する事態とはならず事件は終了します)

事件が家庭裁判所に送られると、家庭裁判所調査官による調査が始まります。
家庭裁判所調査官による調査結果を受けた後、家庭裁判所は少年審判を行うか否かを決定します。

調査の結果、審判の必要がないと判断された場合には、少年審判は行われません(審判不開始)。

なお、調査の結果、次の事実が明らかとなった場合、家庭裁判所は事件を検察官に「逆送」し、以後は、成人と同じ刑事手続となります。

  • 本人が20歳以上と判明したとき(少年法第19条2項)
  • 死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の犯行時14歳以上で、罪質・情状から、成人と同じ刑事手続が相当な場合(少年法第20条1項)。
  • 16歳以上のときに、故意に被害者を死亡させた犯罪の場合。但し、諸般の事情から刑事処分以外が相当と認めるときは除外(少年法第20条2項)。

上の事情がなく、少年審判の開始決定がなされると少年審判期日が設定されます。

当日の少年審判は非公開で行われ、裁判官、少年、両親などの保護者、付添人、家庭裁判所調査官、事案によっては今後の監督を引き受ける担任教師や雇い主などの証人が出席します。

服装などは自由ですが、審判も裁判の一種ですので、社会常識としてふさわしい服装で出席しないと、その者の発言の信用性、説得力が損なわれますから気をつけましょう。

審判では、家庭裁判所の裁判官(審判官)、調査官、付添人から、少年や保護者に、事件について、少年の生活環境や反省の内容等について聞かれることになります。また、付添人や少年に発言の機会が与えられ、処分に関する意見を述べることができます。

裁判官は、通常、審判手続の最後に少年の処分を決定して告げます。処分には以下のものがあります(①~④を保護処分といいます)。

①保護観察:少年を施設に収容せずに、社会内で保護司や保護観察官の監督・指導を受けながら更生を図る処分
②少年院送致:少年院において矯正教育を受けさせること
③児童自立支援施設または児童養護施設への送致:児童福祉法上の支援を行うことを目的として設けられた開放的で家庭的な施設に少年を入所若しくは通所させること
④都道府県知事または児童相談所への送致:少年を児童福祉機関で指導するのが相当と考えられる場合に行われる
⑤試験観察(中間処分):直ちに処分を決めることができない場合に、処分を一時留保し、少年を一定期間、調査官が観察すること(この場合、試験観察期間経過後、改めて審判が行われる)。
⑥不処分:犯罪事実が存在しないと認められた場合や、保護処分が不必要と認められた場合に行われる

[参考記事]

少年審判を分かりやすく解説|その意味と当日の流れ

3.家庭裁判所から呼び出された場合の対応

呼び出しの理由と以降の流れを理解していても、急に家庭裁判所から呼出状が届いた場合、これからどのようなことになるのだろうか?と非常に不安になると思われます。

とは言え、呼び出しを正当な理由なくして無視すると、同行状が発せられ家庭裁判所に連れてかれる可能性があります。したがって、呼び出しには素直に応じるべきです。

また、家庭裁判所から呼び出しがあった場合に限らず、少年が事件を犯してしまった場合には、法律のプロである弁護士に相談するべきです。

4.少年事件全般を弁護士に相談するメリット

少年の問題性は様々で、付添人となった弁護士は、その少年の置かれた環境や、更生に協力してくれる周囲の人材に応じて、多様な弁護活動を行います。

具体的には、弁護士に相談し付添人となってもらうと、以下のようなメリットがあるでしょう。

(1) 観護措置措置の回避

先述のように、少年が事件を起こすと事件は家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所は、少年審判を開始するか否かを決定しますが、それに先立って少年を「観護措置にするか否か」を決定します(少年法第17条1項2号)。

観護措置に付されると、少年鑑別所に送られます。

少年鑑別所は「少年院」ではありません。少年鑑別所では、少年の生い立ちや性格等、処分を決めるための事実一切についての観察がなされます。

少年事件の場合、鑑別所送致を回避することが必ずしも最良とは言えませんが、少年鑑別所に送られると、最低2週間、通常は4週間以上の期間に渡り拘束されることになるので、通学や通勤ができず、日常生活に支障が出てきます(少年法第17条3項4項)から、事案によっては回避が適切な場合もあります。

そのようなケースでは、付添人となった弁護士は、できれば観護措置を回避するため、家庭裁判所に意見書を提出する等の活動を行います。

[参考記事]

少年鑑別所とは|生活、入る理由、期間などを解説

(2) 審判不開始決定を求める

家庭裁判所に事件が送致された後、家庭裁判所は少年の審判を開始するか否かを判断します(少年法第21条)。

これは、先述の観護措置がとられたか否かに関わらず行われます。審判不開始の決定がされると、事件はそこで終了します(少年法第19条1項)。

そこで弁護士は、保護処分が不要と判断される事案では、家庭裁判所に、少年に審判を行う必要が欠ける等の主張をしていくことになります。

例えば、事件が軽微である・示談が成立し被害者が処分を望んでいない・深く反省している・両親が事態を重く受けとめて家庭環境が改善された・雇用主が引き続きの雇用を約束してくれているなど、保護処分をしなくても、今の時点で十分に更生が可能であることを主張するのです。

(3) 審判において少年院送致の回避を求める

審判開始決定がされた場合、少年は家庭裁判所で審判に付されます。その際に、弁護士は少年の付添人として出席することになります。

家庭裁判所は審判において少年の処分を決定するのですが、少年院送致が見込まれる事案では、これを避ける活動が眼目となります。

少年院は成人の刑務所とは異なり、刑罰を受けるための施設ではなく教育機関です。
しかし、少年院に送られると、最短で4ヶ月、長い場合は2年間にわたって収容されることになります。

このような施設に行かずとも、社会内で更生が期待できるなら、少年院送致は回避したいところです。

そのため弁護士は、少年院送致をさけ、保護観察処分(少年を施設収容せず、社会内で保護司や保護観察官の監督・指導を受けながら更生を図る処分)の獲得を目指して活動します。

通常、少年審判の処分内容は、審判期日の前日までに決まっており、その内容は調査官の意見に左右されます(少年審判規則第13条)。

付添人となった弁護士は、審判期日前までに(通常は監護措置開始から3週間程度の間に)次のような活動を行い、その結果をできるだけ早期に調査官に報告するのです。

  • 保護者に同行して、被害者への謝罪をおこなう
  • 被害者と交渉して示談を成立させる
  • 事実関係に争いがあれば、事件現場にいた少年の友人や目撃者などに話を聞き、報告書を作成し提出したり、審判当日の証人尋問の実施を裁判所に求める(少年法第14条)
  • 学校と交渉し、身柄解放後の復学や担任教師らの指導監督を誓約してもらう
    雇い主と交渉し、身柄解放後の復職や雇い主らによる指導監督を誓約してもらう
    少年が無職、無就学の場合は、保護者などと相談し、就職先や通学先を選定・確保する
  • 両親の不和、放任など、家庭環境に問題性があるなら、親の自覚を促し、改善を求め、その成果を裁判所に示す

5.まとめ

少年事件においては、少年鑑別所や少年院への収容が、逆に少年やその周囲にネガティブな影響を与えてしまい、かえって更生の障害となってしまう事例も珍しくありません。

そのような事態を避けるためにも、ご子息が万引き等の犯罪を犯してしまった場合には、経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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