刑事弁護 [公開日]2018年4月20日[更新日]2022年3月24日

警察に逮捕されたらどうなるのか?

警察に逮捕されたらどうなるのか?

「魔が差して痴漢をしてしまい、その場で現行犯逮捕されてしまった」「防犯カメラで万引きがバレて、自宅に警察がやってきて逮捕された」

このように、刑事事件を犯して逮捕されたらどうなるのでしょうか。
また、警察に逮捕された場合、実刑を免れるためには何をすべきなのでしょうか。

今回は、警察に逮捕・検挙されてしまった場合、ご本人や家族が冷静に対処できるように、逮捕までの流れ・逮捕後の流れ、逮捕後にやるべきことなどについて解説します。

1.逮捕とは?

警察は、罪を犯した疑いのある人物(被疑者)について、逃亡・証拠を隠滅する危険のあるときには、その身柄を強制的に一定期間拘束することができ、これを「逮捕」といいます。

逮捕には、通常逮捕・現行犯逮捕・緊急逮捕があります。

通常逮捕は、捜査機関があらかじめ令状を裁判官に請求し、この令状を基に被疑者を逮捕するものです。逮捕の条件が備わっているかどうかを事前に裁判官が審査するもので、逮捕の原則的な手続です。

他方、現行犯逮捕は、捜査機関や私人が、①犯行を現に行っている者、②犯行を終えた直後の者、③犯行を終えてから間がないと明らかに認められる者(例:「泥棒だ!」と呼ばれながら追いかけられている者)を令状無くして逮捕するものです。

痴漢の犯人を駅員が取り押さえたり、万引き犯を万引きGメンが現場で確保したりするのが現行犯逮捕です。

[参考記事]

私人逮捕は違法ではない?|条件・誤認だった場合の責任など

【緊急逮捕は珍しくない?】
緊急逮捕は、現行犯の要件を充たさず、まだ逮捕状も発布されていないが、一定の重い犯罪を犯した十分な疑いがあり、逮捕状を求めている余裕のない場合に行われる緊急時の例外的な逮捕です。逮捕後直ちに逮捕状を求める必要があり、発布されない場合は被疑者を釈放しなくてはなりません。
重い犯罪といっても、刑の長期が3年以上の場合とされているので、非常に多くの犯罪がこれに含まれます。例えば、万引きの窃盗罪、悪質な痴漢の強制わいせつ罪、喧嘩相手を怪我させた傷害罪などです。他方、暴行罪、迷惑防止条例違反にとどまる痴漢行為、盗撮行為などは、緊急逮捕の対象に含まれません。
(参考)裁判所サイト:逮捕状の請求数と発付数等(地簡裁総数)

 

警察に逮捕されることを事前に知ることは稀であり、多くの場合、逮捕は突然されてしまうものです。

逮捕状を準備したことが知られれば逃走や証拠を隠滅されてしまう危険がありますから、逮捕が予想される事案でも、捜査機関は決して逮捕の予定があるとは明かさないことが原則だからです。

「ある日、自宅にいたら警察がやってきて、事前の連絡もなく逮捕されてしまった!」ということが通常です。
(なお、時間帯としては、朝に逮捕されることが多いようです。)

2.警察に逮捕された後の流れ

(1) 逮捕と取り調べ

警察は被疑者を現行犯逮捕・通常逮捕した後、警察署に連行してその者を取り調べます。その後、被疑者を逮捕してから48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送ります。
これを検察官送致といいます。

なお、あらかじめ検察庁から指定された軽微な犯罪の場合には、警察は事件を検察官に送致することなく終了させ、被疑者を釈放する場合があります。これを「微罪処分」といいます。

[参考記事]

微罪処分になる要件とは?呼び出しはあるのか、前歴はつくか

たとえば、スーパーにおいて数百円の食品を万引きし、警察官に見つかってしまい逮捕されたものの、それが初犯で素直に罪を認め、その場で被害弁償も済ませ、反省をしていれば、微罪処分として早期に釈放されることがあります。

(2) 勾留による身柄拘束

警察から事件を送致された検察官は、被疑者の取り調べを行います。

被疑者が罪を犯した疑いがあり、証拠隠滅・逃亡の恐れがあって、引き続き被疑者の身柄を拘束すべきであると判断すれば、裁判所に勾留を請求します(これは送致後24時間以内かつ逮捕から72時間以内に行われます)。

そして、裁判所により勾留が認められた場合には、勾留を請求した日から10日間被疑者の身柄は拘束されることになります。

[参考記事]

逮捕後の勾留の要件とは?勾留の必要性を否定して釈放を目指す

また、勾留は、その必要性が認められる場合には、最大で10日間延長することができます。
その場合、被疑者は逮捕から最大23日間、身柄を拘束されることになるのです。

勾留が認められない場合、被疑者は釈放されます。

[参考記事]

在宅事件の流れ|起訴・前科がつくことはあるのか

(3) 検察官による処分の決定(起訴・不起訴)

検察官は、勾留により被疑者の身柄を拘束している間に必要な捜査を遂げた結果、「犯罪の事実を証明でき、被疑者を処罰すべきである」と考えた場合には起訴します。

逆に、犯罪の事実を証明できない、あるいは犯罪の事実は証明できるが処罰する必要はない、と考えた場合には不起訴とします。

なお、被疑者を起訴するケースでも、罰金刑に処する場合には、被疑者の同意の下、裁判所が公開の裁判を開くことなく、書類上の手続だけで罰金刑を言い渡す「略式手続」を求めることもできます。これを「略式起訴」といいます。

[参考記事]

略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い

勾留された被疑者が略式起訴を受けると、裁判所から罰金刑を宣告する略式命令が届いた段階で釈放されます。
公開の裁判を経て刑罰を科す正式起訴のように、(保釈されない限り)裁判が終了するまで引き続き身柄を拘束されることはないという点にメリットがあります。

【処分保留とは】
検察官は、被疑者の身柄拘束期間の期限内に起訴・不起訴を決定するところ、同期間内での捜査では起訴・不起訴を決定できないときには、処分保留として、被疑者を釈放して在宅事件として捜査を続けることがあります。
この場合には、被疑者の最終的な処分は保留とされているため、釈放後に起訴される可能性は残りますから注意を要します。

(4) 刑事裁判

検察官により正式起訴された場合、被告人(起訴後の被疑者)は裁判にかけられます。
犯罪事実の証明がある限りは有罪とされ、相応の刑罰を裁判官(重大犯罪の場合は裁判員を含む)により言い渡されることになるでしょう。

他方、検察官が犯罪事実を証明できなければ無罪となります(身に覚えのない痴漢の疑いを掛けられたようなケースなど、いわゆる冤罪です)。

しかし、検察官は十分な証拠を準備した上で起訴を行うのが通常であるため、起訴をされたら無罪を勝ち取れる可能性は極めて低いと考えるべきでしょう。

なお、勾留中に起訴された後は、自動的に勾留の効力は継続し、裁判の終了するまで被告人は身柄を拘束されることになります。
そのため、逮捕され、正式起訴された場合には、数ヶ月に渡り身柄を拘束されることもあるのです。

もっとも、起訴後勾留には、保釈が認められることがあります。
保釈とは、保証金を納付することで身体拘束から解放される制度です。したがって、起訴後勾留された被告人の弁護人は、裁判官に保釈を求める活動を行うことになります。

保釈と釈放

【刑事裁判終了後の身柄拘束】
起訴後の勾留により刑事裁判の終わるまで身柄を拘束され続けた被告人は、裁判の結果「無罪」「罰金刑」「禁錮刑・懲役刑の執行猶予付き判決」などとされたときには、釈放されることになります。
逆に、禁錮刑・懲役刑の執行を猶予されなかった場合(いわゆる実刑判決)には、被告人は釈放されることなく、そのまま拘置所で身柄を拘束され続け、その有罪判決が確定した後、刑務所に収監されることになります。

3.逮捕の不利益と弁護士依頼のメリット

(1) 逮捕により生じる不利益

①身柄拘束による不利益

上述のとおり、一旦警察に逮捕されてしまうと、その後、非常に長期間に渡り身柄を拘束されてしまう可能性があります。

そして、長期の身柄拘束は、心身に多大な負担を強いることに加え、たとえば退学・解雇など、被疑者・被告人の社会生活にも大きな悪影響を与え、ひいてはその家族の生活を破壊することにもなりかねません。

②起訴による不利益

また、真実として罪を犯しており、略式起訴を含む起訴処分となって有罪判決を受けた場合は前科がついてしまいます(つまり、罰金刑であっても前科はつくのです)。

前科の情報は公開されるものではありませんが、履歴書に賞罰欄があるときに記載しないまま就職し、その後に前科が発覚した場合には履歴の詐称として懲戒解雇など不利益に扱われることもあります。

また、公務員、学校教員や税理士など一級建築士など、一定の職業に就く際には、前科の内容により資格制限に引っ掛かることがあります。

可能な限り、前科の付くことは避けたいところです。

③実刑判決による不利益

さらに、最終的に実刑判決になれば、一定期間刑務所に収監されることになるため、被告人の人生に大打撃を与えることは必須です。

たとえ起訴されてしまった場合でも、可能である限り執行猶予付の判決にとどめてもらうことは、将来の人生にとって非常に重要な意味を持つのです。

[参考記事]

執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活|前科、仕事、旅行

(2) 弁護人は被疑者・被告人の権利・利益を守る役割を担う

このように、警察に逮捕されると、その不利益は非常に多岐に渡る危険があります。
警察に逮捕されたときには、早期に弁護士相談の機会を持つようにしましょう。

弁護士は、弁護人として、被疑者・被告人の権利・利益を守るために活動できる唯一の専門家であります。

具体的には、長期の身柄拘束を回避するため検察官や裁判官に働きかけたり、被疑者と直接接見して取り調べのアドバイスを行ったりする他、勾留請求の却下、準抗告、勾留延長の阻止、保釈を求めたりするなどの活動を行います。

また、不起訴や執行猶予付判決を得るために、被害者との示談交渉や、情状として有利になる証拠を収集して検察官や裁判所に提出するなどの活動をします。

もちろん、無実であるならば、冤罪を晴らすため、検察官の犯罪事実の証明を阻止するために知恵を絞り、全力を尽くすことになります。

4.まとめ

警察に逮捕されてしまった後は、今回説明した通り、限られた時間の中で事件が処理されていきます。
その過程において、勾留や起訴など、被疑者にとって様々な不利益が生じる可能性があります。

警察に逮捕されたら、本人あるいはその家族の方は、なるべく早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。

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