刑事事件弁護 [公開日][更新日]

逮捕後勾留される要件とは?身柄拘束の不要性・準抗告を主張し釈放

逮捕後勾留される要件とは?身柄拘束の不要性・準抗告を主張し釈放

【この記事を読んでわかる事】

  • 勾留の要件は厳格に定められている
  • 勾留の必要性がないことを主張する方法は「裁判官との面談」と「準抗告」
  • 勾留阻止、釈放のためには、刑事事件の弁護経験豊富な弁護士に依頼する

 

刑事事件で逮捕された場合には、引き続き勾留されることが多いものです。

罪を犯し逮捕された被疑者の場合、勤務先を解雇されるおそれがあったり、また、結婚や就職試験、その他各種の受験を控えているというように、被疑者にとって、勾留により受ける不利益が大きい場合があります。

以下においては、勾留の必要性の意味、勾留の必要性の具体的検討、勾留の必要性がないことを主張する方法、最高裁が勾留の必要性がないと判断した事例などに触れながら、勾留の必要性について解説することとします。

なお、以下では、刑事訴訟法は「法」、刑事訴訟規則は「規」と略記します。

1.勾留の必要性の意味

被疑者の勾留(法207条1項、60条以下)は、逮捕に比し長時間、人の身体及び行動の自由を侵害する処分であるため、法は勾留の要件を厳格に定め、裁判官に慎重な判断を要求しています。

勾留の要件は、

  • 罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(法60条1項柱書)
  • 定まった住居を有しないこと(同項1号)、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること(同項2号)、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること(同項3号)のうち、少なくとも1つに該当することを前提に、さらに、勾留の必要性が認められること

です。

勾留の必要性については、法60条1項には明示されていないものの、勾留の必要がなくなったときは勾留を取り消さなければならないこと(法87条)、勾留よりも期間の短い逮捕の必要性を裁判官が審査することが許されていること(法199条2項ただし書)から、実務上、勾留の必要性も勾留の要件であると解されています。

これらの各要件のうち、法60条1項各号の理由を勾留の必要性と呼ぶ見解もありますが、通常は、上記①②の要件を併せて「勾留の理由」とした上、勾留の必要性とは、勾留の理由がある場合においても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これにより被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留することが必要であることをいうとされています。以下において、具体的に検討してみましょう。

2.勾留の必要性の具体的検討

勾留の理由がある場合においても、被疑者を勾留することにより得られる積極的な利益(公益的利益)と、被疑者が勾留によって被る不利益・苦痛を比較衡量すると、被疑者を勾留することが相当でない(適当でない)と認められることがあります。

勾留の必要性については、実務上、事件の性質(犯罪の種類、法定刑の軽重、犯行の動機・態様・結果等)、法60条1項各号の事由の強さの程度(罪証隠滅や逃亡のおそれが認められる場合でも、その程度にはなお強弱があり、程度が比較的弱いときには、勾留の必要性を否定する方向に働きます)、捜査手続に関する要素(逮捕中の処理の可能性、捜査上の著しい怠慢や落ち度の有無、別件あるいは余罪の捜査を主たる目的としていないかどうか、捜査の進展状況、勾留の濫用の有無、告訴告発などの要件欠如の有無、少年について、勾留を「やむを得ない場合」と認める事由の有無等)、前科前歴の有無、被害の程度、起訴価値、示談の成立、被疑者に関する要素(年齢、境遇、心身の状況、健康状態、就職・結婚・試験など、人生の重大事に関する予定の有無、勤務先解雇のおそれ等)、身元引受人の存在、家庭の事情、特に、被疑者を勾留することが家族に与える不利益が極めて重大か否か等を総合して判断されています。

被疑者を勾留することにより得られる利益が極めて弱い場合や、被疑者が勾留によって被る不利益・苦痛が著しく大きい場合は、勾留の実質的相当性(必要性)を欠くことになります。

実務上、勾留請求が却下されたり、準抗告審で勾留の裁判が取り消された事例を見ますと、勾留の必要性の有無は、起訴価値が乏しく事案が軽微と考えられたり、略式手続による罰金刑が予想されたりする場合などに、問題となることが多いとはいえ、勾留の必要性が否定されている事情としては

  • 事案軽微
  • 罪証隠滅のおそれ及び逃亡のおそれが低いこと
  • 逮捕中の処理が相当な事案であること(略式手続による罰金)
  • 被疑者の健康状態が不良で、身柄拘束に適しないこと
  • 被疑者の人生や家族に著しい不利益が生じること(結婚・就職・試験等の場合)

等が考えられています。

3.勾留の必要性がないことを主張する方法

(1) 勾留担当裁判官に対する面談の申出

裁判官が被疑者に対し勾留質問をする前に、面談を求めることが考えられます。

裁判官が、弁護士から事情を聴くのは、事実の取調べに当たります(法43条3項)。

弁護士は、勾留請求却下の可能性がある限り、積極的に、裁判官との面談を求め、その面談を通じて、勾留の理由だけでなく、仮に勾留の理由があるとしても、勾留により受ける不利益の大きさなどを訴え、また、裁判官からの事情聴取に応じるなどして、身柄拘束の必要性がないことの判断材料を提供するのが望ましいといえます。

(2) 準抗告の申立て

勾留の裁判を争う方法は準抗告です(法429条1項2号)。

勾留の理由については、勾留状謄本の交付請求により知ることができます(規154条)。勾留の理由がある場合でも、勾留の必要性がないとして、準抗告審で取り消されている例もあるわけですから、弁護士としては、積極的に、勾留の裁判の取消しを求めて、準抗告の申立てをすべきものと思われます。

【参考】逮捕・勾留後に期間延長になったら?理由の開示・準抗告なら弁護士へ

4.最高裁が勾留の必要性がないと判断した事例

・最決平成26.11.17裁判集刑事315・183、判時2245・124、判タ1409・123頁

①事案の概要

本件は、勾留請求を却下した原々審の裁判を取り消して被疑者を勾留した原決定に対して特別抗告が申し立てられたところ、特別抗告審が原決定を取り消し、原々審の判断を是認した事案です。

本件被疑事実の要旨は、「被疑者が、通勤通学電車内で、当時13歳の女子中学生に対し、右手で右大腿付近及び股間をスカートの上から触った」という、いわゆる痴漢の事案(迷惑防止条例違反)です。

原々審が「勾留の必要性なし」として勾留請求を却下したところ、原決定は、要旨、

「被疑者と被害少女の供述が真っ向から対立しており、被害少女の被害状況についての供述内容が極めて重要であること、被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあることからすると、被疑者が被害少女に働きかけるなどして、罪体について罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があると認められる」

旨説示して、勾留の必要性を肯定し、原々審の裁判を取り消しました。

②決定の要旨

被疑者は、前科前歴のない会社員であり、原決定によっても逃亡のおそれが否定されていることなどに照らせば、本件において勾留の必要性の判断を左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度と考えられ、原々審が、勾留の理由があることを前提に勾留の必要性を否定したのは、この可能性が低いと判断したものと考えられる。

本件事案の性質に加え、本件が京都市内の中心部を走る朝の通勤通学時間帯の地下鉄車両内で発生したもので、被疑者が被害少女に接触する可能性が高いことを示すような具体的な事情がうかがわれないことからすると、原々審の上記判断が不合理であるとはいえないところ、原決定の説示をみても、被害少女に対する現実的な働きかけの可能性もあるというのみで、その可能性の程度について原々審と異なる判断をした理由が何ら示されていない。

そうすると、勾留の必要性を否定した原々審の裁判を取り消して、勾留を認めた原決定には、法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法がある。

③説明

本決定は、本件の具体的事情を踏まえて罪証隠滅の現実的可能性が低いとして勾留の必要性を否定したものと理解される原々審の裁判について、このような判断が不合理とはいえないとして是認したものです。

電車内の痴漢事案(迷惑防止条例違反のもの)では、特殊事情がなければ類型的にみて被害者への働きかけに及ぶ客観的可能性は低いといえると思われるところ、本決定の説示によれば、本件でそのような特殊事情はうかがわれなかったようです。

その一方で、本決定は、基本的には事後審である原審の判断について、原々審の裁判と異なる判断に至った理由、すなわち原々審の裁判が不合理であると評価した理由を何ら説示していない点において、単に勾留の必要性に関する実体判断にとどまらず、準抗告審の判断方法としても誤っている旨を指摘したものと理解されます。

本決定は、事例判断ではありますが、最高裁が勾留を取り消した事例は本決定まで見当たらなかっただけに、実務上の参考価値は極めて高いと思われます。

・最決平成27.10.22裁判集刑事318・11

①事案の概要

本件は、勾留請求を却下した原々審の裁判を取り消して被疑者を勾留した原決定に対して特別抗告が申し立てられたところ、特別抗告審が原決定を取り消し、原々審の判断を是認した事案です。

本件被疑事実の要旨は、「被疑者が、家庭裁判所審判官からAの成年後見人に選任され、同人名義の預金通帳等を保管し、同人名義の通常郵便貯金口座の貯金を同人のため業務上預かり保管中、平成23年11月、同口座から現金300万円を払い戻し、これをBに対し、ほしいままに貸付横領した」という、業務上横領の事案です。

原々審が「勾留の必要性なし」として勾留請求を却下したところ、原決定は、要旨、

「①本件事案の性質及び内容、取り分け、被害者が成年被後見人であって現在死亡していることや被害額、被疑者の供述内容等に照らすと、被疑者が、本件の罪体等に関し、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が認められ、また、これらの事情に加え、被疑者の身上関係等を併せ考慮すると、被疑者が逃亡すると疑うに足りる相当な理由も認められる、

②家庭裁判所からの告発が平成23年になされ、捜査が相当遅延しているものの、現時点においては、本件の公訴時効の完成が迫っており、起訴不起訴を決する最終段階に至っていることからすると、勾留の必要性がないとまではいえない」

旨説示して、勾留の必要性を肯定し、原々審の裁判を取り消しました。

②決定の要旨

本件において、原々審が、勾留の理由があることを前提に勾留の必要性を否定したのは、罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高いとはいえないと判断し、また、犯行が行われたとされている時点あるいは告発時からかなりの年月が経過しており、被疑者は警察からの任意の出頭要請には応じて一定程度の事実関係は認めるという態度をとっているなどの事情があること、さらに、原決定の前記②(注・上記①の原決定の要旨「②」のこと)の説示に係る事情は勾留の必要性を大きく高める事情とはいえないこと等を考慮したものと考えられる。

本件は、被害額300万円の業務上横領という相応の犯情の重さを有する事案ではあるものの、平成20年11月に起きた事件であり、平成23年6月に大阪家庭裁判所から大阪府警察本部に告発がされ、長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること、本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず、被疑者は警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと、被疑者の身上関係等からすると、本件が罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高い事案であるとは認められない

原決定は、捜査の遅延により本件の公訴時効の完成が迫ったことなどを理由に、勾留の必要性がないとまではいえない旨説示した上、原々審の裁判を取り消したが、この説示を踏まえても、勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず、原決定の結論を是認することはできない。

以上のとおり、原決定には、法60条1項の解釈適用を誤った違法がある。

③説明

本件では、本決定が指摘するように、原々審は、罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高いとはいえないと判断し、犯行時あるいは告発時からかなりの年月が経過しており、被疑者が警察からの任意の出頭要請には応じて一定程度の事実関係は認めるという態度をとっているなどの事情があること等を考慮したものと考えられます。

本決定は、本件が相応の犯情の重さを有する事案ではあるものの、平成20年11月に起きた事件であり、平成23年6月に告発がされ、長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること、本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず、被疑者が警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと等からすると、罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が高い事案であるとは認められないと説示し、原決定の説示を踏まえても勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず、原決定の結論を是認することはできないとして、原決定には60条1項の解釈適用を誤った違法があると判断しました。

なお、本決定は、法426条の解釈適用の誤りがあるとは指摘しておらず、原決定が原々審の裁判を不合理と評価した理由自体は示していることを前提に、これが原々審の裁判を不合理であるとして覆すに足りる理由とはいえないとの判断をしたものと解されます。

これまで、勾留請求を却下した原々審の裁判を取り消した原決定に対する特別抗告事件において、勾留の必要性を否定した原々審の裁判の判断を不合理とはいえないとして原決定を取り消した事例は、上記⑴の最高裁決定のみであったところ、本決定は、この種の一事例を加えるものといえます。

5.まとめ

刑事事件で逮捕後は、更に勾留・勾留延長され、身体拘束が続くことがあります。

勾留により受ける不利益が大きい場合に、勾留の必要性がないことを理由に、勾留請求却下を求め、あるいは、勾留の裁判がなされてもその取消しを求めるには、法律のプロである弁護士に依頼しましょう。

泉総合法律事務所は、過去に4週連続で4回準抗告が認められて被疑者の釈放に成功した事例があるなど、刑事事件の解決実績が非常に豊富な弁護士事務所です。

元検事の弁護士も在籍しておりますので、刑事事件弁護には自信があります。是非、無料相談をご利用ください。

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