刑事弁護 [公開日]2017年10月24日[更新日]2023年3月22日

自首の仕方と成立要件|出頭との違いとは?

刑事事件を起こしてしまい、いつ逮捕されるのだろうかと不安な日々を送っているという方の中には、自首すべきかどうか迷っている方もいらっしゃるでしょう。

実際、自首をすることで刑が減軽される可能性は高いです(刑法42条)し、自首により証拠隠滅や逃走の可能性がないと判断されることで逮捕・勾留などの身体的拘束を免れる可能性もあります。

しかし、「捕まらない可能性があるなら自首はしないほうが良いのではないか」「自首をすることでデメリットはあるのか」などの不安から、自首に踏み切れない方も多いでしょう。

ここでは、自首について以下のことを解説していきます。

  • 自首の成立要件
  • 自首と出頭の違い
  • 自首をした後の流れ
  • どれくらい減刑される可能性があるのか

1.自首の要件

刑法42条では、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定めています。

「犯罪事実が捜査機関に発覚する前に」「捜査機関に対して」「自分の罪を申告して、その処分を委ねること」という要件を満たしていなければ、法的に「自首」が成立したとは扱われません。

(1) 「捜査機関に発覚する前」である

これには、「犯罪事実が警察・検察などに全く発覚していない場合」だけではなく、「犯罪事実は発覚しているけれど、犯人が誰であるかが発覚していない場合」も含みます。

しかし、犯罪事実及び犯人が誰かは発覚していて、単に犯人の所在だけが不明な場合は含まれないとされています(最高裁判所昭和24年5月14日判決)。

(2) 捜査機関に対して罪を申告する

自首は、捜査機関、すなわち「検察官又は司法警察員」に対してすることが必要と法定されています(刑事訴訟法243条、241条1項)。
「司法警察員」とは刑事訴訟法において捜査の中心的な役割を与えられた者を指し、警官の階級では、通常、巡査部長以上が該当します。

したがって、警察の階級で、ただの「巡査」に自己の犯罪を申告しても、それだけでは未だ法的には自首ではありません。

ただし、自首する者があった場合、巡査は直ちにその者の身柄を司法警察員に移さなくてはならない(犯罪捜査規範63条2項)とされているので、実際上は、交番の巡査に自首しても問題はありません。

申告の方法は、犯人自身がしても他人を介してもよいとされています(最高裁判所昭和23年2月18日判決)。
また、捜査機関に電話をして申告することも可能ですが、申告後は指示に従う必要があります(その場で待つ、警察署へ行くなど)。

【申告内容に嘘が含まれていたら自首が認められるか?】
では、自首の申告内容に虚偽があった場合、自主の扱いはどうなるのでしょうか?これについては以下のような判例があります。
犯人Aは、けん銃と実弾を所持し、そのけん銃を暴力団事務所に向かって発砲しました。これらはいずれも、銃砲刀剣類所持等取締法違反となる犯罪ですが、Aは発覚前に自ら警察にその事実を申告しました。ところが、Aが警察に持参したけん銃は、犯行に使用した物とは別のけん銃で、そのけん銃を使用したと虚偽の事実を述べていました。
このため裁判では、虚偽内容を含むAの申告が自首にあたるかどうかが問題となり、高裁は自首にあたらないとしました。
しかし、最高裁は、捜査機関に発覚する前に自己の犯罪事実を捜査機関に申告している以上、虚偽の事実が含まれていても、それは自首にあたると判断しました。(最高裁判所平成13年2月9日判決

2.自首と出頭の違い

例えば指名手配犯のように、「警察に自分が犯人であることが既にバレているけれど、捕まるのが嫌で逃げていた」というケースで、考え直して自ら警察署に赴いたときには、「自首」は成立しません。

自己が犯人であることが特定されていたら、単なる「出頭(捜査機関に身を運ぶ物理的な行動)」という扱いになります。

出頭は、減刑の事由として法定されているわけではありません。
とは言え、有利な事情として酌量減軽(刑法66条)の判断要素のひとつとなるとは考えられるでしょう。

自首と出頭の詳しい違いについては、以下のコラムでも解説しています。

[参考記事]

自首・出頭をする時、弁護士に相談・同行してもらうメリットとは?

3.自首の仕方と自首後の流れ

では、自首をした後は具体的にどのように事件が進んでいくのでしょうか。

(1) 自首前の準備

身一つで捜査機関に犯罪を申告し処分を求めに行っても、自首自体は成立します。

しかし、その日のうちに逮捕されることも考えられるので、周囲への事前の連絡や身の回りのもの・お金を準備する必要があるでしょう(警察署の留置場では食べ物や筆記用具、ノート、書籍など買い物ができるので現金を持参することをお勧めします)。

(2) 任意の取り調べをうける

自首をしても即時逮捕されることはありません。
なぜなら、自首の場合は捜査機関に事件や犯人が「発覚する前」に警察に行っているわけですから、警察としても、「そのような犯罪が実際起こったのかどうか」「その人が本当に犯人であるのかどうか」ということについて、ある程度裏付けをとらなければ逮捕状を裁判所に請求できないからです。

そこで、自首を受けた警察は、まず、任意の取り調べに入ります(ここで捜査機関は「自首調書」(犯罪捜査規範64条1項)を作成します)。

(3) 逮捕もしくは在宅捜査となる

裁判所は、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」(特定の犯罪行為を行ったという客観的かつ合理的な嫌疑があるということ)及び「逮捕の必要性」(逃亡や証拠隠滅の恐れなど)がある場合に逮捕状を発行します。

取り調べの結果、逮捕の要件を満たした場合には、その日のうちに逮捕されるでしょう。
しかし、証拠が不十分で裏付けなどの捜査に日にちがかかる場合には、すぐに逮捕状が請求できないので、身柄拘束されずにその日は帰宅することになります。

その後の警察の捜査により逮捕の要件が揃えば、警察が逮捕状を取得して逮捕になります。

なお、軽微な犯罪で逮捕(身体拘束)の必要性がないと判断されれば、在宅事件のまま刑事手続が進むこともあります。

[参考記事]

在宅事件の流れ|起訴・前科がつくことはあるのか

逮捕された後の刑事手続きの流れは、通常の手続きと同じです。

[参考記事]

刑事事件の流れ〜弁護士へ依頼することで裁判を避け不起訴に!

4.自首をするメリット・デメリット

(1) 自首のメリット

刑の任意的軽減事由である

刑法42条では、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定めています。
どれくらい減刑されるかは、刑法68条に定められています。

  • 死刑を減軽するときは、無期の懲役もしくは禁固又は10年以上の懲役若しくは禁固とする
  • 無期の懲役又は禁固を減軽するときは、7年以上の有期又は禁固とする
  • 有期の懲役又は禁固を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる
  • 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額(下限として定められている金額)の2分の1を減ずる
  • 拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる
  • 科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる

しかし、条文による「自首」の効果は、刑を軽減することが「できる」なので、減刑は任意的、つまり、刑が軽くなるかどうかは裁判官や裁判員の判断にゆだねられるということです。

実際、自首に該当したとしても、自首を理由に刑を減軽することが相当とは言えないとして、最終的には刑を減軽しなかった判例もあります。

しかし、例外的に自首が必要的な刑の免除になっている犯罪があります(内乱罪・私戦予備及び陰謀罪など)。
いずれも戦争につながりかねない格別に重大な犯罪なので、自首すれば必ず利益があるとして犯行抑止を狙ったものです。

有利な情状となる

自首したという事実は、情状においても考慮されます。
「情状」とは、有罪であると認定された被告人に対して、起訴・不起訴の判断や刑罰を決める際に考慮される一切の事情です。

刑法66条では、「犯罪の情状に斟酌すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる」とされています。

情状には、犯罪の軽重、犯行の手段や方法、結果、社会的影響、動機、年齢、過去の境遇、普段の行状、前科前歴、反省の有無、謝罪や被害弁償の有無など多数の要素が含まれますが、「自首した」という事実は、反省していることを裏付ける行動としてよい情状となるでしょう。

なお、自首が成立せず「自ら出頭した」という場合であっても、やはり反省していることを裏付ける行動として、よい情状として考慮される可能性は高くなります。

量刑以外にも、身柄拘束されずに在宅捜査となったり、起訴後に保釈が認められやすくなったりするなどの効果が見込める場合もあります。

(2) 自首のデメリット

自首をするデメリットといったら、捜査機関に自らの罪が発覚してしまうことでしょう。

自首をしたからといって、逮捕されない(身体拘束をされない)・不起訴になるとは限りませんので、これを目的として自首することにはリスクがあります。

なお、自首をするより、被害者と示談をするべき事案もあります。
痴漢や盗撮などの性犯罪や暴力事件などは、示談が成立することにより被害届が出されず(事件化せず)終わることもあります。

そもそも自首すべき案件なのか、示談をするべき案件なのかは、一度弁護士に相談した方が良いでしょう。

5. まとめ

泉総合法律事務所では、刑事事件に非常に力を入れており、警察に逮捕された後の対応・被害者との示談交渉も万全の体制で執り行っております。
刑事事件でお悩みの方は、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所にお早めにご相談ください。

なお、泉総合法律事務所では、自首・出頭への同行は行なっておりません。

6. 自首に関するよくある質問

  • 自首の成立要件は?

    自首は、「犯罪事実が捜査機関に発覚する前に」「捜査機関(検察官又は司法警察員)に対して」「自分の罪を申告して、その処分を委ねること」という要件を満たす必要があります。
    自己が犯人であることが特定されていたら、単なる「出頭」という扱いになります。

    刑法42条
    罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる

  • 自首でどれくらい減刑される?

    刑法42条では、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定めています。
    どれくらい減刑されるかは、刑法68条に定められています。

    とはいえ、あくまで刑を軽減することが「できる」なので、減刑は任意的、つまり、刑が軽くなるかどうかは裁判官の判断にゆだねられます。

    また、刑法66条では、「犯罪の情状に斟酌すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる」とされています。
    そして「自首した」という事実は、反省していることを裏付ける行動として良い情状となるでしょう。

  • 自首はするべき?

    罪を犯してしまい、いつ発覚するかと怯えているならば、自首をした方が良いケースもあります。
    しかし、自首をして刑事事件とするより、被害者と示談をするべき事案もあります。

    痴漢や盗撮などの性犯罪や暴力事件などは、示談が成立することにより被害届が出されずに終わることもあります。

    そもそも自首すべき案件なのか、示談をするべき案件なのかは、一度弁護士に相談した方が良いでしょう。

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