刑事弁護 [公開日]2017年12月12日[更新日]2021年1月19日

勾留期間が延長された場合の対処法は?

刑事上の罪に問われて逮捕された場合、その後「勾留」によってさらに長期の身柄拘束が行われることがあります。

被疑者が起訴される前の勾留を「起訴前勾留」と呼んでいますが、起訴前勾留は1回だけ延長される場合があります。

もし起訴前勾留が延長された場合には、弁護士を通じて準抗告などの対応を検討しましょう。

この記事では、勾留期間延長の理由や対処法などを中心に解説します。

1.起訴前勾留の期限

逮捕・勾留といった刑事手続き上の身柄拘束は、本来被疑者に対する重大な人権の制限に当たります。

そのため、捜査上の必要性と被疑者の人権とのバランスを図るうえで、刑事訴訟法上、逮捕・勾留については厳格な期間制限が設けられています。

(1) 逮捕の時間制限とは?

勾留は必ず逮捕が先行し、いきなり勾留することはできません。これを逮捕前置主義といいます。

勾留の期間制限の意味を正確に理解するには、逮捕の時間制限について知っておく必要があります。

そこで、最初に誤解の多い「逮捕の時間制限」について説明しておきます。

逮捕された被疑者は身体拘束を受けた時点から48時間以内に身柄を検察官に送致され(刑事訴訟法203条1項)、検察官は被疑者を受け取った時点から24時間以内で、かつ逮捕による身体拘束から72時間以内に裁判官に対して勾留請求をしなくてはならず、勾留請求をしない場合は直ちに釈放しなくてはなりません(205条1項及び2項)。

勾留請求を受けた裁判官は、勾留を認めない場合は直ちに釈放を命じなくてはならず、勾留を認める場合には速やかに勾留状を発しなくてはなりません(207条5項)。

勾留状が発せられた場合、検察官の指揮によって、通常、警察官が勾留状を留置場の被疑者に示し、「(今までは『逮捕』だったけれど)裁判所によって『勾留』が認められた。勾留の期限は○月○日までだ」と告げます。

これが「勾留状の執行」(70条、73条2項)であり、この時点までが逮捕で、これ以後が被疑者勾留となります。

このように勾留状が発布された場合は、それが執行され勾留に切り替わるまでは「逮捕の効力」として被疑者の身柄拘束を継続することが許されているわけです。

したがって、逮捕には「○○時間までしか逮捕しておけない」という意味での時間制限を定めた規定はなく、「逮捕は48時間」や「最長72時間」などという表現は、厳密には不正確なのです。

では、逮捕に続く起訴前勾留の期間制限はどうなっているのでしょうか。

(2) 原則は勾留請求日から最大10日間

上に説明したとおり、起訴前勾留は、勾留状が執行された時点から開始します。
しかし、仮に、勾留の期限も勾留状の執行時点からスタートするものとした場合どうなるでしょうか?

万一、裁判官が勾留の可否を判断するのに長時間を要したり、発布された勾留状を執行するまでに長時間がかかったりした場合、身体拘束が長期化する危険や、これらの時間の長短によって身体拘束期間に差異が生じる危険があります。

このような拘束期間の長期化と不平等を防止するために、起訴前勾留の期間は、「勾留の請求をした日から10日」とされています(208条1項)。

(3) 10日間の数え方

刑事訴訟法での期間の数え方は、初日をカウントせず(55条1項本文)、期間の末日が土日祝日や年末年始に該当するときもカウントしないことが原則です(55条3項本文)。
しかし、公訴時効期間だけは被疑者、被告人の利益(※)を考慮して例外となり初日をカウントします(55条1項但書及び3項但書)。
※ここでの「被疑者・被告人の利益」とは、恩恵を与えるという意味ではなく、人権制限につながる刑事手続は、できるだけ謙抑的に運用するという意味です。

他方、勾留期間については特別な規定がないので、本来なら原則どおりのはずです。

しかし、身体拘束という重大な人権制限なので、実務では公訴時効期間と同様の扱いとし、初日も、休日などの末日もカウントしています(※)。なお、末日以外の土日祝日もカウントすることは当然です。
※団藤重光「新刑事訴訟法綱要7訂版」(創文社)400頁、「新基本法コンメンタール刑事訴訟法・第3版」(日本評論社)95頁

また勾留期限が土日祝日となる場合は、法律上は、その日まで勾留しておくことができるわけですが、実務では金曜日までに起訴・不起訴を決めてしまい、休み中に手続を行う事態とならないよう配慮しています。

このため、例えば日曜日が勾留満期にあたる場合で不起訴とするケースであれば、金曜日のうちに不起訴処分を決めて、その日のうちに釈放することが通常です。もちろん、どうしても必要があれば、土日祝日中に不起訴処分と釈放の手続をとる場合もあります。

なお、裁判官が10日よりも期限を短くして勾留を認めるということはできません。法律では、10日以内に起訴しないときには釈放するよう検察官に義務づけているだけで、期間を設定する権限を裁判官に与えていないからです(208条1項)。

(4) やむを得ない事由がある場合10日間まで延長可

検察官は、起訴前勾留の期限を超えて被疑者の身柄を拘束する必要があると判断した場合、裁判官に対して「勾留の延長」を請求します。

勾留延長請求を受けた裁判官は、やむを得ない事由があると認める場合に限り、勾留延長を許可することができます(刑事訴訟法208条2項)。

この「やむを得ない事由」とは具体的に何なのかについては、次の項目で詳しく解説します。

勾留の延長が認められた場合、起訴前勾留の期間は最大10日間延長されます。
したがって、起訴前勾留の通算期間は、延長前後を通じて最大20日間です。

最初の勾留決定のときとは異なり、延長に際しては、裁判官は10日間よりも短い延長期間を設定することができます。

何故なら法律では「この期間の延長は、通じて十日を超えることができない 」(208条2項)と定められており、10日より短い期間の延長を当然に予定しているからです。

なお、勾留延長が行われた事実については、特に捜査機関から家族などに対する連絡は行われません。

そのため、被疑者の家族としては、自らまたは弁護士を通じて、捜査機関に勾留延長の事実と期間を確認する必要があります。

弁護士を通じて担当の検察官・検察事務官に確認してもらうのがもっとも簡単な方法ですので、勾留延長が行われるタイミングの前に、一度弁護士と相談するのがいいでしょう。

2.勾留延長が認められる「やむを得ない事由」とは

単に捜査機関が多忙で捜査が進まないという理由では「やむを得ない事由」と認められませんが、捜査は、物理的・人員的な制限の中で、現実の人間がおこなう作業ですから一定の例外を認めないわけには行きません。

判例では「やむを得ない事由」とは、勾留期間を延長して更に捜査をするのでなければ起訴・不起訴の決定をすることが困難な場合であり、具体的には、例えば、次のような事由とされています(※最高裁昭和37年7月3日判決)。

  • 被疑者(共犯者)が多数いるケース
  • 被疑事実が多数あるケース
  • 背任や横領の損害額、脱税額、粉飾決算額など計算が複雑なケース
  • 被疑者や参考人の供述の食い違いや客観的証拠との齟齬が多数あるケース
  • 取調が必要と見込まれる参考人が多数存在するケース
  • 押収した証拠物が多数にのぼるケース
  • 重要な参考人が病気・旅行・所在不明、海外等遠隔地であるケース
  • 証拠物の科学的鑑定に日数を要するケース 

実務では、上のような理由を具体的に明らかとしたうえ、捜査資料を裁判所に提出して延長を請求します(刑事訴訟規則151条2項、152条)。

【余罪捜査のための勾留延長は認められるか?】
勾留期間中は、逮捕された罪だけではなく、余罪に関しても取り調べをはじめとする捜査が行われるケースがあります。
しかし、逮捕・勾留の根拠となった被疑事実(勾留事実)の捜査が完了しているのに、余罪の捜査のためだけに起訴前勾留の延長が認められることはありません。法律では、不当な身体拘束を防止するために、前述の逮捕前置主義を採用し、被疑事実について逮捕と勾留の2回にわたる裁判所の審査を要求しています。余罪捜査を目的とする勾留延長を認めることは、この要求を潜脱することになるので許されないのです。
一方、勾留事実について起訴・不起訴の判断を行ううえで、余罪に関する捜査結果を踏まえる必要があると評価される場合には、余罪捜査目的の勾留延長も認められます。それは結局、勾留事実自体の捜査に過ぎないからです。例えば、同種犯罪であったり、密接に関連していたりする場合で、余罪が明らかになることで勾留事実の犯意や全体の犯行計画が判明する場合があげられます。

3.勾留が延長された場合の対処法

次に、実際に勾留期間の延長が認められた場合、被疑者としてはどのように対処すべきかについて解説します。

(1) 勾留延長の理由を把握する

勾留延長への対処法を検討するに当たっては、まずは勾留延長が行われた理由について把握することが先決です。

勾留延長に関する裁判があった場合には、被疑者はその裁判の記載のある勾留状の謄本の交付を請求できます(刑事訴訟規則154条)。

勾留状の謄本には、勾留延長の正式な理由が記載されていますので、その記載内容を踏まえて、後述する準抗告を行うかどうかを検討しましょう。

(2) 準抗告を行う

勾留延長の裁判に対しては、「準抗告」という手続きを通じて不服申立てを行うことができます(刑事訴訟法429条1項2号)。

勾留延長を認めた裁判官が所属する裁判所に、改めて勾留延長の裁判の当否を判断してもらう手続きです。

前述のとおり、勾留延長が認められるためには、「やむを得ない事由」の存在が必要です。
しかし、実際にはやむを得ない事由があるとは言えないにもかかわらず、安易に勾留延長が認められているケースも数多く存在します。

勾留延長の理由を確認して、その記載内容が不合理であったり、事実と反していたりする場合には、弁護士が被疑者の以降を踏まえて準抗告をすることになります。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

(3) 引き続き不起訴に向けた活動を行う

勾留延長は起訴不起訴を決めるためのものですから、延長が行われた場合であっても、その後の捜査の結果を踏まえて、被疑者が不起訴となる可能性も大いにあり得ます。勾留延長されたことで起訴が確定するわけではないのです。

そのため、勾留延長前と同じく、不起訴に向けた活動を継続していくことが大切です。

特に、まだ被害者との示談が成立していない場合には、弁護士を通じて示談交渉を継続し、延長後の勾留期限が到来するまでに、できる限り示談をまとめるように努力することになります。

[参考記事]

刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説

4.逮捕・勾留・勾留延長については弁護士に相談を

刑事事件で逮捕されてしまったら、一刻も早く刑事弁護経験豊富な弁護士に相談することをお勧めいたします。

早期に弁護士に依頼をすれば、示談交渉など不起訴に向けた弁護活動へ早い段階で着手できるため、不起訴処分を得られる可能性が高まります。

また、逮捕・勾留・勾留延長と身柄拘束が長引くに連れて、被疑者は精神的・肉体的にも弱ってしまうでしょう。

その際、ご自身の味方である弁護士とコミュニケーションを取ることができれば、精神的な安定にも繋がります。

また、外部の家族などとのやり取りについても、弁護士を介することで円滑に行うことが可能になります。(家族は平日1日1回に限り15分間しか接見(面会)できません)
差し入れも弁護士を通じて行うことができるため、肉体的な苦痛も相当程度軽減されるでしょう。

泉総合法律事務所では、刑事事件の被疑者を1日も早く身柄拘束から解放するため、弁護士が誠心誠意サポートいたします。

刑事事件で身柄を拘束されてしまった被疑者やご家族の方は、お早めに刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所までご相談ください。

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