逮捕・勾留後に期間延長になったら?理由の開示・準抗告なら弁護士へ

刑事事件弁護

逮捕・勾留後に期間延長になったら?理由の開示・準抗告なら弁護士へ

刑事事件で逮捕された場合、引き続き勾留されるだけでなく、勾留期間が延長されることがあります。

以下においては、勾留期間延長の手続等、勾留期間延長の「やむを得ない事由」の意義、被疑者の黙秘・否認と勾留期間延長の関係、余罪捜査と勾留期間延長の関係、勾留期間延長の裁判を争う方法などに触れながら、勾留期間延長について解説することとします。

なお、以下では、刑事訴訟法は「法」、刑事訴訟規則は「規」と略記します。

1.勾留期間延長の手続等

被疑者の勾留期間は、検察官が勾留を請求した日から10日間です(法208条1項。以下では「10日の法定期間」といいます。)。

裁判官は、「やむを得ない事由」(詳細は下記2のとおり)があると認めるときは、検察官の請求により、裁量で必要と思われる日数だけの延長をすることができ、その期間は通じて10日間とされています(同条2項)。

したがって、検察官は、通算して10日を超えない限り、やむを得ない事由があれば数回、勾留期間の延長請求を行うことができるのです。

その結果、通常の犯罪については、勾留請求の日から最長20日間の勾留が可能となります。

さらに、裁判官は、内乱罪、外患罪、国交に関する罪又は騒乱罪に当たる事件については、検察官の請求により、延長された期間を更に延長することができ、その期間は通じて5日間とされています(法208条の2)。

検察官の再延長請求の手続は、延長の場合と同様になります。その結果、内乱罪等の犯罪については、勾留請求の日から最長25日間の勾留が可能となります。

なお、検察官が勾留期間の延長請求をするには、やむを得ない事由及び延長を求める期間を記載した書面によることを要し、併せて、勾留状を差し出すとともに、やむを得ない事由があることを認めるべき資料の提供が必要です(規151条、152条)。

2.「やむを得ない事由」とは

(1) 勾留期間延長の「やむを得ない事由」の意義

法208条2項の勾留期間延長の理由は、やむを得ない事由を意味しますが、判例によれば、やむを得ない事由があると認めるときとは、事件の複雑困難(被疑者若しくは被疑事実が多数であるほか、計算複雑、被疑者・関係人らの供述又はその他の証拠の食い違いが少なからず、あるいは取調べを必要と見込まれる関係人、証拠物等多数の場合等)あるいは証拠収集の遅延若しくは困難(重要と思料される参考人の病気、旅行、所在不明若しくは鑑定等に多くの日時を要すること)等により、勾留期間を延長して更に取調べをするのでなければ、起訴、不起訴の決定をすることが困難な場合をいうとされています(最判昭37.7.3民集16巻7号1408頁)。

また、同判例は、この「やむを得ない事由」の存否の判断には、当該事件と牽連ある他の事件との関係も相当な限度で考慮に入れることを妨げるものではない、としています。

同判例のいう「牽連ある他の事件」とは、勾留事実と同時期に敢行された同一・類似の手口の余罪など、勾留事実の犯情を判断するために必要な犯罪事実をいうと考えられています。実務も、上記判例の趣旨に沿って、勾留期間延長の判断がなされているものと思われます。

そして、実務では、延長の理由は、勾留状裏面の「勾留期間の延長」欄に記載されますが、理由の記載がどのように記載されるべきか、具体的に見てみましょう。

(2) 勾留期間の延長理由の記載

事件の複雑困難」に起因する捜査未了については、被疑者多数、共犯関係複雑、被疑事実多数、被疑事実の内容複雑、計算関係複雑、検討を要する関係人、証拠物多数等、「証拠収集の遅延若しくは困難」に起因する捜査未了については、被疑者・共犯者・重要参考人の病気・旅行・所在不明・不出頭・逃走・遠隔地居住等による取調べ未了、被疑者の供述の裏付け捜査未了、実況見分未了、遠隔地への捜査照会未着、鑑定未了、被疑者の精神診断未了等、「余罪関係」の捜査未了については、余罪を取り調べなければ勾留事実について処分を決し難い、勾留事実と一罪の関係にある余罪の取調べのため、などというように記載するのが望ましいとされています。

しかし、実際の理由の記載例では、一般的に、①事案複雑、②関係人多数、③証拠物多数、④証拠物検討未了、⑤被疑者取調未了、⑥共犯者取調未了、⑦被疑者及び共犯者取調未了、⑦関係人取調未了、⑧参考人取調未了、⑨実況見分未了、⑩鑑定未了、⑪精神診断未了、⑫裏付捜査未了、⑬被疑者の供述の裏付捜査未了、⑭補充捜査未了、⑮示談未了、⑯同種余罪あり、⑰処分決定上必要な余罪取調べのため、⑱捜査になお相当日数を要する、などのような定型文言が用いられています。

しかも、以上の定型文言については、手書きによる場合だけでなく、各裁判所で作製した定型ゴム印が用いられることも多いというのです。

しかし、上記のような理由の記載だけで、勾留期間の延長が認められるわけではなく、やむを得ないというためには、10日の法定期間内に捜査を尽くすことができなかった障害があり、かつ、勾留期間を延長すればその障害がなくなる見込みがあるといえなくてはならないのです。

では、それはどういうことなのでしょうか。

(3) 勾留期間の延長のその他の要件

勾留期間の延長がやむを得ないといえるためには、前述の「事件の複雑困難」、「証拠収集の遅延・困難」の理由記載のほか

①捜査官が可及的に捜査を尽くしたにもかかわらず、10日の法定期間内に必要な証拠を収集できなかったこと
②収集未了の証拠が、勾留の基礎となった事件の解明あるいは起訴、不起訴の決定に重要であり、かつ、客観的に存在するものであること
釈放すれば被疑者が罪証隠滅を図るおそれがあること

などを満たしている必要があるのです。

そして、最終的に、勾留期間の延長が認められるかどうかは

㊀起訴、不起訴の決定をするため勾留期間を延長して捜査する必要があるか
㊁10日の法定期間内にその捜査を遂げることができなかったことが相当か
㊂勾留期間を延長すればその期間内にその捜査を遂げる見込みがあるかどうか

という視点も加えて、判断されることになるのです。

他方で、「やむを得ない事由」があるとはいえないとされる事情としては、

❶専ら余罪捜査の必要のためであること
❷被疑者の供述拒否により、証拠の収集が遅延し又は困難になっていること(供述が得られる見込みがない場合)
❸法227条の証人尋問を請求する必要があること
被疑者の住居が不定であり、再犯のおそれがあること
❺担当検察官の病気、出張、多忙によること

などが挙げられています。

3.被疑者の黙秘・否認と勾留期間延長の関係

被疑者が黙秘・否認していることを理由に、勾留期間を延長することができるかについては、これを認めることは自白を得るために身柄を拘束することになり、許されないと解されています。

したがって、被疑者が黙秘・否認しているという、ただそれだけの理由で、勾留期間を延長するようなことがあってはならないのです。

上記2に見た「やむを得ない事由」があると認められることが、勾留期間の延長が認めるための要件なのです。

4.余罪捜査と勾留期間延長の関係

余罪捜査と勾留期間延長の関係

問題は、余罪捜査を理由とする勾留期間の延長が許されるかということです。

一個の勾留を利用して、任意に、余罪の取調べをすることは、差し支えないと考えられ、捜査機関としても、同時審判の可能な事件については、できるだけ同一勾留期間中に取調べを終えて、一括起訴をすることが、むしろ望ましいこととされています(本件と一罪の関係にある余罪を取り調べなければ、勾留の基礎となっている被疑事実について処分を決し難い場合、事実の同一性・単一性のある範囲では当然余罪を斟酌できることになります。)。

しかし、注意しなければならないのは、そのことは、勾留の基礎となっている被疑事実について、勾留の理由と勾留の必要性のあることが前提であって、前述のとおり、勾留期間延長の理由の有無についても、当該勾留の基礎となっている被疑事実について考えるべきですから、単に余罪捜査のためだけの理由による勾留期間の延長は許されません。

すなわち、単なる余罪捜査の必要だけでは、「やむを得ない事由」には当たらないことは当然なこととされています。

他方、検察官が、その余罪の捜査をしなければ、当該勾留の基礎となっている被疑事実についての起訴、不起訴の決定をすることができない場合には、「やむを得ない事由」に該当し、勾留期間の延長は許されるものと解されています。

例えば、窃盗で同種余罪がある場合などです。

なお、余罪が重大である場合には、それにつき改めて令状を求めるべきですし、余罪が非常に軽微である場合には、それを考慮することなく勾留事実につき処分を決定すればよいし、余罪が逮捕状請求もできないほど証明の乏しい事実の場合には、それがないものとして取り扱うべきであると考えられています。

要するに、勾留期間の延長は、勾留の基礎となった被疑事実の起訴、不起訴の決定に必要な余罪捜査未了の場合に限られるということになります。

5.勾留期間延長の裁判を争う方法

(1) 準抗告

勾留期間延長の裁判を争う方法は準抗告です(法429条1項2号)。

準抗告を申し立てるためには、勾留期間延長の理由を知る必要があります。

その理由を知る方法としては、

①勾留状謄本の交付を請求すること(規154条)
②書記官から口頭で教えてもらうこと
③検察庁に電話して教えてもらうこと
④被疑者に聞いて確認すること(規153条4項参照)

が考えられます。

勾留期間延長の理由を正確に知り得るのは、勾留状謄本の交付請求による場合ですので、その他は次善の方法ということになるでしょう。

そこで、検察官の勾留期間延長請求が却下されたり、検察官請求の延長期間が短縮されたりすることはあるのか、あるとすればどのような場合なのかについて、準抗告決定の具体例を見てみましょう。

(2) 準抗告決定の具体例

①勾留期間延長の原裁判を取り消し、検察官の延長請求を却下(弁護人申立て)⇒理由のポイントのみ

㈠ 特段の事情もないのに、10日の法定期間内において、検察官が被疑者及び関係人らに対する取調べを一切行っていないこと、本件が特に複雑困難な事案でもないこと、捜査上証拠収集の障害となるような事情があったともうかがわれないこと(公印偽造事件。上記2⑶の①③㋥を満たさない)

㈡ 被疑者は非行歴のない17歳の女子高生で、男性から暴行脅迫を受けて無理やり注射された旨一貫して供述していること、尿鑑定で陽性反応が出ていること、途中まで行動を共にしていた友人(女子高生)の通報を受けて捜索していた警察官に発見されたこと、被疑者及びその友人の言う男性の身柄が確保されていること(覚せい剤使用事件。上記2⑶の③㋥㊂を満たさない)

🉁 特段の事情もないのに、10日の法定期間内において、検察官が被疑者及び目撃者に対する取調べを一切行っていないこと、被害者が意識不明で、延長期間内に回復の見込みがないこと、必要な実況見分が終了していること(交通事故・交通違反事件。上記2⑶の①㋥㊂を満たさない)

②勾留期間延長の原裁判を取り消し、検察官の延長請求のうち、短縮した日数に限って認容(弁護人申立て)

㈠ 4日間に限って認めたもの(住居侵入事件)

㈡ 5日間に限って認めたもの(窃盗事件・2件)

③勾留期間延長請求却下の原裁判を取り消し、検察官の延長請求のうち、短縮した日数に限って認容(検察官申立て)

○ 7日間に限って認めたもの(公務執行妨害・交通違反事件)

④勾留期間延長請求却下の原裁判を認容(検察官申立て)⇒理由のポイントのみ

㈠交通違反(酒酔い運転)については、被疑者も自認し、かつ客観的証拠が揃っていること、窃盗の犯行態様が自動車窃盗で、関係人の供述により裏付けられていること、必要な実況見分も終了していること、未了の関係人の取調べを待つことなく、起訴、不起訴の結論を決し得ると推認できること(窃盗・交通違反事件。上記2⑶の①②③㊀㋥㊂を満たさない)

㈡ 検察官は余罪の捜査を遂げなければ本件の起訴、不起訴を決し得ないと主張するが、被疑者が余罪を犯したことを疑うに足りるだけの相当な疎明がされていないこと(窃盗事件。上記2⑶の②③㊀㊂を満たさず、❶に当たる)

6.勾留阻止は泉総合法律事務所へ

このように、10日間の勾留後、更に勾留期間が延長されることがあります。その理由を知りたい場合や、その裁判を争いたい場合には、法律のプロである弁護士に依頼するのが早道ということになります。

泉総合法律事務所は、刑事事件専任の弁護士が多数在籍しており、刑事事件の弁護経験も大変豊富な弁護士事務所です。準抗告による勾留阻止の実績も多くございますので、刑事弁護ならば当事務所にどうぞお任せください。

初回の法律相談は無料となっております。

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