刑事弁護 [公開日]2018年5月8日[更新日]2019年10月21日

無断録音した音声データ(録音テープ)は証拠能力があるのか?

【この記事を読んでわかる事】

  • 無断で録音した音声データ(録音テープ)は証拠として使えるのか
  • どのような場合、録音テープの証拠性が否定されるのか
  • 録音テープが証拠として取り上げられた事例

 

最近話題のパワハラや、政界のスキャンダルなどで、録音した音声データが注目されています。
皆さんの会社などで、同様の事件が発生した場合、「証拠として音声を録っておきたい!」と思うかもしれません。

しかし、相手に秘密で会話内容を録音することは犯罪になるのでは?と考える方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、無断録音それ自体は犯罪ではありません。
それでは、無断録音された音声データは証拠として使用できるのでしょうか?

以下では、無断録音データの証拠能力について説明します。

1.録音テープの証拠の位置付け

録音テープは、機械的に音声を記録するものです。

人づてにこういう話を聞いたという証言やそれを書面にしたものとは異なり、訴訟手続上は伝聞法則(人の知覚・記憶・表現の過程に誤謬の入り込む危険性があるという点から証拠能力を制限するもの)の適用されない信頼できる証拠として扱われることになります。

しかし、信頼性とは別に、無断で録音することそれ自体が違法とみなされれば、それを訴訟手続上利用する事を許容すれば違法行為を助長することになるので、証拠にすることができないという場合があります。

2.録音形態ごとの適法、違法の違い

録音テープの証拠能力は、録音形態やそれを証拠として利用しようとする手続の種類によって判断されます。

民事訴訟においては後に述べるように無断録音でもほとんどの場合は証拠能力を肯定されています。ですので、事実上は刑事訴訟においてのみ証拠とできない場合があることになります。

(1) 第三者が当事者の同意なしに会話を録音する場合

この場合、刑事手続においては強制捜査(相手方の意思に反して、重要な権利・利益を侵害すること)と同様に解されます。

つまり、当事者双方の同意のない録音は、捜査機関によるものであれ、私人によるものであれ、2人だけの会話というプライバシー(重要な利益)を侵害するものです。

そのため、この場合の録音テープは違法収集証拠として証拠能力が否定されると解されています。

(2) 当事者が相手方の同意なしに会話を録音する場合

私人である会話当事者同士であれば、相手方の同意を得ない録音も、私的な会話を録音されないという相手方の自由・期待のみを侵害するにすぎず、重要な利益を侵害したとはいえません

そのため、違法とはいえず、刑事訴訟にあっても証拠能力は肯定されると解されています。

例えば、以下のような事例があり、録音テープの証拠能力が肯定されています。

  • 私人Aが、殺人事件に関する被告人Xとの会話を録音した場合(松江地判昭57.2.2判時1051・162、判タ466・189)
  • 新聞記者Aが、取材の結果を正確に記録しておくため、相手方の同意を得ないで会話内容を録音した場合(最決昭56.11.29刑集35・8・797、判時1024・128、判タ459・53)
  • 詐欺の被害を受けたと考えたAが、後日の証拠とするため、被告人Xとの会話を録音した場合(最決平12.7.12刑集54・6・513、判時1726・170、判タ1044・81)

問題は、捜査機関が関与する場合(例えば、当事者のどちらかの同意を得て、捜査機関が録音をした場合)です。
これは、「必要性、緊急性なども考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである」(最決昭51.3.16刑集30・2・187)とされています。

ただ、捜査機関が関与した録音テープでも、違法として証拠能力が否定された例はありません。

実際の判例として、以下があります。

  • 警察官が捜索差押の際に小型マイクを装着して立会人である被告人の声を、同意を得ずに密かに録音した(千葉地判平3.3.29判時1384・141)

3.まとめ

昨今世間をにぎわせたスキャンダルのうち、吉本問題、森友問題、財務次官のセクハラ問題などは、刑事訴訟に持ち込まれた場合には録音テープが問題となった可能性があります。
しかし、それぞれの事案とも、裁判例によれば、違法とすべき理由はないということになります。

なお、民事裁判でも秘密録音が問題とされることがありますが、公刊物による限り、証拠能力が否定されたのは1件のみで、他の事例はすべて証拠能力が肯定されています。

これは、民事裁判が当事者の人権・自由保障の要請よりは具体的な紛争解決のための情報収集の必要性を優先していることの一つのあらわれと言えます。

とはいえ、もし仮に、それを得るための行動が一般の常識からみて極端に限度を超えていて、人格権など他人の重要な利益を侵害して得られた証拠であれば、違法収集証拠として民事裁判で使用することが許されないことも可能性としてはあります。

刑事裁判は複雑なもので、一度起訴されたら有罪率は99.9%と言われています。

刑事事件で逮捕されてしまったら、裁判になってしまう前に泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。重要な証拠が違法に録音録画されたものである場合には、その証拠能力を争うことにより、不起訴を勝ち取れる可能性があります。

民事事件でも、録音録画が無断でなされたとの事実は、訴訟となった場合の証拠能力の有無はされおき、交渉上影響を及ぼす可能性があります。
紛争の重要な証拠が無断で作られた場合のお悩みは、どちらの当事者であれ当事務所にご相談下さい。

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